57 / 113
第1章 ウィムンド王国編 2
リゼパァンズ恩寵大神殿 -1-
しおりを挟む
「何だ平民! 我々を嘲笑いに来たのか⁈」
スライが書類の束を片手にそこへ辿り着いてすぐ、寝台の上から放たれた怒鳴り声は、奇しくもフェリシティアが予想したスライの訪問理由と合致していた。
「………」
バリナがフェリシティアにした返答同様、そこまで暇じゃねぇよ、と思いながら黙したスライは、どうしてくれよう……なんて、ほんのちょっと考えてから怒鳴ってきた貴族魔法士を見据えると。
「ぎゃははははははははっ! 普段あんだけ自分は優秀だ、凄いんだ、偉いんだ、敬って諂え! とか言ってる分際で、たいして活躍もしねぇで神殿に担ぎ込まれてやんの! 超ダセェ! クッソ笑えるぅ!」
「くっ……!」
ビシッと指差しながらワザとらしさすら漂うレベルでゲラゲラ笑ってやると言われていることが事実な自覚はあるのだろう、寝台の上から悔しそうに喉を詰まらせる音が聞こえて、スライは溜息と共に、すん、と態度を鎮静化させた。
「お望み通り嘲笑ってやったぞ。これで満足か?」
「何っ⁈」
「くだらないことで時間取らせんじゃねぇよ。俺が、お前らのトコに書類持って訪ねて来る理由とか、報告用の聴取以外に何があるってんだ。冒険者ギルドと傭兵ギルドの協力で、市井の報告書はもう団長のトコに上がってるんだ。お前らも、とっとと協力しな」
「馬鹿なことを! ワイバーン戦はまだ続いているのだろう⁈ 報告などしている暇がある訳……!」
「もう終わった」
「は⁈」
「何を言ってるんだ、貴様は! そんな筈なかろう!」
「まさか……負けたなどと言わぬだろうな⁈ もしそうなら貴様とて無事な筈がないのだから、すぐ露見するような嘘を口にするなよっ⁈」
これまでの彼等の常識では、その日の内に味方が全滅するか、対抗出来ても3日は消耗戦を余儀なくされる相手だ。
スライが終戦を告げても信じられないと感じて当然だったろう。
「神殿に居るから静かに感じてるんじゃねぇ。兵以外に死人も出ねぇで、ほぼ無事に終わってるから静かなんだよ」
ここに収容されて外の状況が何一つ分からない身空でも戦闘音の有無や戦闘時の緊迫感の有り無し、敗戦時に漂う何とも言えない悲壮感くらいは分かるだろう、とばかりに告げて出入口付近に置いてある椅子を寝台側へと少し寄せたスライは、その上へと腰を下ろした。
「ワイバーンが、何某かの理由で王都を去ったのか⁈」
「いいや。キッチリ討伐されたぜ?」
「討ったのは騎士団か? 魔法士か? よもや冒険者や傭兵じゃあるまいな⁈」
「そのどれでもねぇよ」
木炭と黒鉛に黒粘土を混ぜて棒状に固め、布を巻いた持ち歩き用の筆記具を取り出したスライは、右の足首を左膝の上に乗せ、自身の脛上で報告用紙に必要事項の記入を始めながら次々と投げかけられる質問へ端的に答えていた。
「ではどこの組織が討伐したと言うのだ⁈」
「どこの組織でもねぇ。たまたまここへ来た他国の王族が、通りすがりに一撃でワイバーンの首刈って終わった」
「はあぁ⁈」
(うん。まぁ、最初に聞いた時は “はあぁっ⁈” ってなるよな。そこだけは分かるわ、お前らの気持ち)
それまで黙って話しを聞いていたらしい他の寝台上に居る者達からも同音の疑問を表す声が合唱みたいに上がったことで、スライは思わず心の中でだけ彼等に共感を示していた。
「ど、どの国の王族なのだ? よもや、カルドランスなどでは……?」
休戦協定を結んでいるとは言え、150年前の大戦時から何かと因縁のある南の隣国。
今でこそ互いの行き来が多少制限されているとは言え復活こそしているものの、お世辞にも友好国とは言い難い彼の国に自分達よりも優れた戦力を保持されるのは驚異でしかない。
そんな危惧より発せられたのだろう質問にスライは、ハッキリと首を横に振った。
「安心しろ。カルドランスどころか、この大陸のどの国の王族でもないから」
「何だと⁈」
「貴様っ! 敗戦の責任を負うのが嫌で、出任せを言ってるんじゃなかろうな⁈」
「その方の国は、天空国家ヴェルザリス。あっちこっちに古代文明っつって遺跡が残ってる、あの国だ。報告書に記された入街時の身分証にもキッチリそれが記録されてた。俺もあの方の国の話しは直接、聞いた訳じゃないが、為人と魔法力、技術力はこの目で見たぜ?」
「魔法力? 通常、あれだけ高い技術力を誇る文明ならば、魔法力は反対に落ちてゆく筈だが?」
未だ謎ばかりで解析や使用が出来る物の方が少ない古代文明の遺跡や遺物。
それを考えれば技術力が高いのは察することが出来たものの、魔法力までも高い、というのが理解出来ずに魔法士の1人が疑義を示した。
「それに関しては……ええと……」
問われたことにスライは煤んだ金茶の髪を少し掻き分けるようにして、手にした筆記具の布巻きされた端側を使い、側頭部を擦り掻きながら記憶を漁った。
思い出した内容を確かめるべく、記入用紙の下敷きにしていた資料を横から引き出すと覚えのある所まで紙を捲る。
「ああ、ここだ。読むぞ。 “天空国家ヴェルザリスは、絶対王政の政治体制を敷いていながら国民皆兵を実現せねばならぬ国柄で” 」
「⁈」
スライがそこまで記載事項を読み上げた時、アーウィンから同じ話しを聞いたレンリアード隊とほぼ同種の驚愕が、騒めきとなって寝台上から幾つも湧き上がった。
「 “その主な理由は、国土に出没する約8割の魔物が竜種であり、ワイバーン程度は自力で単独討伐出来るようにならないと農業すらもままならぬ状況であるからのようだ” 」
「………」
続いて記載事項されている事柄を読み上げたスライに向けられる目は、一様に信じ難い物を見るような目だった。
出没する魔物の8割が竜種なんて、そんな土地柄で人が生きて行けるとは、彼等の常識では到底考えられなかったのだ。
「 “それゆえに彼の国では、全国民が階級、男女を問わず、3歳になると武器の扱いを教わる為の専門課程を。5歳になると魔法の扱いを教わる為の専門課程を修める場である初級学校というものに通うことが義務づけられているそうで、不所持属性すらも後天的に獲得し、全ての国民を全属性にすることが出来る教育レベルがあるようだ” 」
「……嘘だろ……」
全国民が後天的に全属性になる。
魔法属性が4属性しか知られていないこの国ですら稀な存在である全属性を、それも後から獲得することが可能だなんて、俄には信じ難く、また、器用貧乏と呼ばれる全属性などにわざわざ全員がなる意味も理解出来なかった。
「 “また、全ての国民が普段の生活から魔法を使うことで、総魔力量の増加と属性値の伸び不足を解消している模様。例として料理で4属性魔法を使用、洗濯で5属性魔法を使用出来ると説明されたが” 」
「は⁈」
「何だと⁈」
「魔法で料理に洗濯?????」
「いや待て! それより5属性ってどういうことだ⁈」
読み上げられた事柄に寝台上から次々と疑問と驚愕の声が上がるが、スライはそれに頓着することなく続きを口にした。
「 “魔法属性が4属性しか知られていない上に貴族以外の国民が殆ど魔法を使えぬ我が国では、それを実践するどころか、学習も説明すらも困難なものと思われる。尚、天空国家ヴェルザリスに於ける魔法属性は12属性であると語っておられた” ……だ、そうだ」
「貴様は、その魔法とやらを実際に見たのか⁈」
信じ難い。
心の中で唱えているのだろうその言葉が、声色と表情へ如実に現れている彼等を見回したスライは、それでも隠し立てすることなく、その問いに頷いた。
「ああ。俺が見たのは、水魔法と治癒魔法をぶつけるだけで勝手にそれが必要な場所へ魔法を振り分けてくれる、空に描かれたデッカイ魔法陣」
「?」
コイツは何を言ってるんだろう? 空に魔法陣を描く? そんなことが出来る訳がない。
そもそも魔法陣というのは、それ自体が魔法を構築している記号と文字列を図化したもので、他の魔法の影響なぞ受けない筈のものなのに。
「それと、1本飲むだけで枯渇した魔力が全回復する魔力ポーションの箱詰めが山積みで出て来た収納魔法」
「………」
1本で全回復。
その有り得ないと思える効能も勿論だが、箱詰めされて山積みとなった状態のまま収納魔法からそれを出すことの出来る魔力量は、彼等の誰も持ち得ないものだった。
「軽症重症を問わず、あっと言う間に火傷や怪我を治癒した治癒魔法。それと……火事で亡くなった3人の人間を俺だけじゃなく、沢山の民の目の前で蘇らせた死者蘇生の魔法」
「‼︎」
今以って寝台の上の住人である彼等は、あっという間に身体が癒える魔法の存在を知って目を見開き、次いで蘇生魔法を実際に目撃した人間が多数に及んでいる事実に文字通り、言葉を失った。
「火事現場の炭と灰だけになっちまった焼け跡の残骸を使って、見たことないくらいキラキラ輝いてる金剛透石を作り出すのも見たし、移動するのに空を飛んでく魔法を使ってるのも見た」
「…………」
失伝魔法。
貴族魔法士達ですら、どのような魔法でそれが可能となるのか丸で分からない話しの数々に文献でだけその存在を知る単語が脳裏に浮かんだ。
「何が1番信じられねぇってな? 他国の、それも王族であるあの方が、自ら火事場の各所へ足を向け、市井の者達へ、全て、無償で。これらのことを行ってくださったことだよ」
「そんな馬鹿なことがあってたま……!」
「今回の件が終わって、あの方がこの街を出る時、俺はあの方について行くことにした。騎士の職は辞す。俺は、仕えるのならば、あの方に仕えたい」
キッパリと言い切ったスライに嘘の臭いはしなかった。
彼が平民だから何かの詐欺にかかっているだけだと断じることは簡単だが。
「言っとくが、俺達が平民で騙されてるだけだとか考えてるなら不敬罪を覚悟しろよ? 何たって、あの方は、我が国の第1王女殿下が、直々にお茶会へ誘う書状を出された程の方だからな?」
ダメ押しとばかりにその情報を暴露すると貴族騎士や貴族魔法士の面々は、今迄で1番信じられないといった表情を全員が浮かべていた。
スライが書類の束を片手にそこへ辿り着いてすぐ、寝台の上から放たれた怒鳴り声は、奇しくもフェリシティアが予想したスライの訪問理由と合致していた。
「………」
バリナがフェリシティアにした返答同様、そこまで暇じゃねぇよ、と思いながら黙したスライは、どうしてくれよう……なんて、ほんのちょっと考えてから怒鳴ってきた貴族魔法士を見据えると。
「ぎゃははははははははっ! 普段あんだけ自分は優秀だ、凄いんだ、偉いんだ、敬って諂え! とか言ってる分際で、たいして活躍もしねぇで神殿に担ぎ込まれてやんの! 超ダセェ! クッソ笑えるぅ!」
「くっ……!」
ビシッと指差しながらワザとらしさすら漂うレベルでゲラゲラ笑ってやると言われていることが事実な自覚はあるのだろう、寝台の上から悔しそうに喉を詰まらせる音が聞こえて、スライは溜息と共に、すん、と態度を鎮静化させた。
「お望み通り嘲笑ってやったぞ。これで満足か?」
「何っ⁈」
「くだらないことで時間取らせんじゃねぇよ。俺が、お前らのトコに書類持って訪ねて来る理由とか、報告用の聴取以外に何があるってんだ。冒険者ギルドと傭兵ギルドの協力で、市井の報告書はもう団長のトコに上がってるんだ。お前らも、とっとと協力しな」
「馬鹿なことを! ワイバーン戦はまだ続いているのだろう⁈ 報告などしている暇がある訳……!」
「もう終わった」
「は⁈」
「何を言ってるんだ、貴様は! そんな筈なかろう!」
「まさか……負けたなどと言わぬだろうな⁈ もしそうなら貴様とて無事な筈がないのだから、すぐ露見するような嘘を口にするなよっ⁈」
これまでの彼等の常識では、その日の内に味方が全滅するか、対抗出来ても3日は消耗戦を余儀なくされる相手だ。
スライが終戦を告げても信じられないと感じて当然だったろう。
「神殿に居るから静かに感じてるんじゃねぇ。兵以外に死人も出ねぇで、ほぼ無事に終わってるから静かなんだよ」
ここに収容されて外の状況が何一つ分からない身空でも戦闘音の有無や戦闘時の緊迫感の有り無し、敗戦時に漂う何とも言えない悲壮感くらいは分かるだろう、とばかりに告げて出入口付近に置いてある椅子を寝台側へと少し寄せたスライは、その上へと腰を下ろした。
「ワイバーンが、何某かの理由で王都を去ったのか⁈」
「いいや。キッチリ討伐されたぜ?」
「討ったのは騎士団か? 魔法士か? よもや冒険者や傭兵じゃあるまいな⁈」
「そのどれでもねぇよ」
木炭と黒鉛に黒粘土を混ぜて棒状に固め、布を巻いた持ち歩き用の筆記具を取り出したスライは、右の足首を左膝の上に乗せ、自身の脛上で報告用紙に必要事項の記入を始めながら次々と投げかけられる質問へ端的に答えていた。
「ではどこの組織が討伐したと言うのだ⁈」
「どこの組織でもねぇ。たまたまここへ来た他国の王族が、通りすがりに一撃でワイバーンの首刈って終わった」
「はあぁ⁈」
(うん。まぁ、最初に聞いた時は “はあぁっ⁈” ってなるよな。そこだけは分かるわ、お前らの気持ち)
それまで黙って話しを聞いていたらしい他の寝台上に居る者達からも同音の疑問を表す声が合唱みたいに上がったことで、スライは思わず心の中でだけ彼等に共感を示していた。
「ど、どの国の王族なのだ? よもや、カルドランスなどでは……?」
休戦協定を結んでいるとは言え、150年前の大戦時から何かと因縁のある南の隣国。
今でこそ互いの行き来が多少制限されているとは言え復活こそしているものの、お世辞にも友好国とは言い難い彼の国に自分達よりも優れた戦力を保持されるのは驚異でしかない。
そんな危惧より発せられたのだろう質問にスライは、ハッキリと首を横に振った。
「安心しろ。カルドランスどころか、この大陸のどの国の王族でもないから」
「何だと⁈」
「貴様っ! 敗戦の責任を負うのが嫌で、出任せを言ってるんじゃなかろうな⁈」
「その方の国は、天空国家ヴェルザリス。あっちこっちに古代文明っつって遺跡が残ってる、あの国だ。報告書に記された入街時の身分証にもキッチリそれが記録されてた。俺もあの方の国の話しは直接、聞いた訳じゃないが、為人と魔法力、技術力はこの目で見たぜ?」
「魔法力? 通常、あれだけ高い技術力を誇る文明ならば、魔法力は反対に落ちてゆく筈だが?」
未だ謎ばかりで解析や使用が出来る物の方が少ない古代文明の遺跡や遺物。
それを考えれば技術力が高いのは察することが出来たものの、魔法力までも高い、というのが理解出来ずに魔法士の1人が疑義を示した。
「それに関しては……ええと……」
問われたことにスライは煤んだ金茶の髪を少し掻き分けるようにして、手にした筆記具の布巻きされた端側を使い、側頭部を擦り掻きながら記憶を漁った。
思い出した内容を確かめるべく、記入用紙の下敷きにしていた資料を横から引き出すと覚えのある所まで紙を捲る。
「ああ、ここだ。読むぞ。 “天空国家ヴェルザリスは、絶対王政の政治体制を敷いていながら国民皆兵を実現せねばならぬ国柄で” 」
「⁈」
スライがそこまで記載事項を読み上げた時、アーウィンから同じ話しを聞いたレンリアード隊とほぼ同種の驚愕が、騒めきとなって寝台上から幾つも湧き上がった。
「 “その主な理由は、国土に出没する約8割の魔物が竜種であり、ワイバーン程度は自力で単独討伐出来るようにならないと農業すらもままならぬ状況であるからのようだ” 」
「………」
続いて記載事項されている事柄を読み上げたスライに向けられる目は、一様に信じ難い物を見るような目だった。
出没する魔物の8割が竜種なんて、そんな土地柄で人が生きて行けるとは、彼等の常識では到底考えられなかったのだ。
「 “それゆえに彼の国では、全国民が階級、男女を問わず、3歳になると武器の扱いを教わる為の専門課程を。5歳になると魔法の扱いを教わる為の専門課程を修める場である初級学校というものに通うことが義務づけられているそうで、不所持属性すらも後天的に獲得し、全ての国民を全属性にすることが出来る教育レベルがあるようだ” 」
「……嘘だろ……」
全国民が後天的に全属性になる。
魔法属性が4属性しか知られていないこの国ですら稀な存在である全属性を、それも後から獲得することが可能だなんて、俄には信じ難く、また、器用貧乏と呼ばれる全属性などにわざわざ全員がなる意味も理解出来なかった。
「 “また、全ての国民が普段の生活から魔法を使うことで、総魔力量の増加と属性値の伸び不足を解消している模様。例として料理で4属性魔法を使用、洗濯で5属性魔法を使用出来ると説明されたが” 」
「は⁈」
「何だと⁈」
「魔法で料理に洗濯?????」
「いや待て! それより5属性ってどういうことだ⁈」
読み上げられた事柄に寝台上から次々と疑問と驚愕の声が上がるが、スライはそれに頓着することなく続きを口にした。
「 “魔法属性が4属性しか知られていない上に貴族以外の国民が殆ど魔法を使えぬ我が国では、それを実践するどころか、学習も説明すらも困難なものと思われる。尚、天空国家ヴェルザリスに於ける魔法属性は12属性であると語っておられた” ……だ、そうだ」
「貴様は、その魔法とやらを実際に見たのか⁈」
信じ難い。
心の中で唱えているのだろうその言葉が、声色と表情へ如実に現れている彼等を見回したスライは、それでも隠し立てすることなく、その問いに頷いた。
「ああ。俺が見たのは、水魔法と治癒魔法をぶつけるだけで勝手にそれが必要な場所へ魔法を振り分けてくれる、空に描かれたデッカイ魔法陣」
「?」
コイツは何を言ってるんだろう? 空に魔法陣を描く? そんなことが出来る訳がない。
そもそも魔法陣というのは、それ自体が魔法を構築している記号と文字列を図化したもので、他の魔法の影響なぞ受けない筈のものなのに。
「それと、1本飲むだけで枯渇した魔力が全回復する魔力ポーションの箱詰めが山積みで出て来た収納魔法」
「………」
1本で全回復。
その有り得ないと思える効能も勿論だが、箱詰めされて山積みとなった状態のまま収納魔法からそれを出すことの出来る魔力量は、彼等の誰も持ち得ないものだった。
「軽症重症を問わず、あっと言う間に火傷や怪我を治癒した治癒魔法。それと……火事で亡くなった3人の人間を俺だけじゃなく、沢山の民の目の前で蘇らせた死者蘇生の魔法」
「‼︎」
今以って寝台の上の住人である彼等は、あっという間に身体が癒える魔法の存在を知って目を見開き、次いで蘇生魔法を実際に目撃した人間が多数に及んでいる事実に文字通り、言葉を失った。
「火事現場の炭と灰だけになっちまった焼け跡の残骸を使って、見たことないくらいキラキラ輝いてる金剛透石を作り出すのも見たし、移動するのに空を飛んでく魔法を使ってるのも見た」
「…………」
失伝魔法。
貴族魔法士達ですら、どのような魔法でそれが可能となるのか丸で分からない話しの数々に文献でだけその存在を知る単語が脳裏に浮かんだ。
「何が1番信じられねぇってな? 他国の、それも王族であるあの方が、自ら火事場の各所へ足を向け、市井の者達へ、全て、無償で。これらのことを行ってくださったことだよ」
「そんな馬鹿なことがあってたま……!」
「今回の件が終わって、あの方がこの街を出る時、俺はあの方について行くことにした。騎士の職は辞す。俺は、仕えるのならば、あの方に仕えたい」
キッパリと言い切ったスライに嘘の臭いはしなかった。
彼が平民だから何かの詐欺にかかっているだけだと断じることは簡単だが。
「言っとくが、俺達が平民で騙されてるだけだとか考えてるなら不敬罪を覚悟しろよ? 何たって、あの方は、我が国の第1王女殿下が、直々にお茶会へ誘う書状を出された程の方だからな?」
ダメ押しとばかりにその情報を暴露すると貴族騎士や貴族魔法士の面々は、今迄で1番信じられないといった表情を全員が浮かべていた。
0
あなたにおすすめの小説
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる