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第1章 ウィムンド王国編 2
招集
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それから1時間も立たぬ内に国王アドルフィルトを含めた関係各員、とばかりのメンバーがギルドの1番大きな会議室へと集合した。
「あれこれと口上を聞かせるよりも先ずは正しく現状を把握してもらった方がよかろう」
名乗りや挨拶もそこそこにそう前置きしたアーウィンが、これまで説明してきたことのお浚いをするように語り出すと当初こそ疑いと不信だけでそれを聞いていた者達だったが。
「ふむ。改めて1から聞かされると大陸全土に逃げ場なぞないことがよく分かるな。本当にカルドランスの連中は、この事態を予見せぬまま計画に踏み切ったのか?」
「それに関しては、この間者を捕らえれば多少の情報が入るやもしれぬが、正直、それが分かった所で竜種大行進が防げる訳でもない。今は余計なことに貴国の人員を割くべき時ではないように思う」
「確かにな」
国王であるアドルフィルトとほぼ同等の立場扱いで会話を交わしているアーウィンに場の空気が、説明の内容は本当の本当に真実なのではないだろうか、という方向性へ次第に移り変わって行く。
「アーウィン殿下。貴族院の院員とギルドマスター達を集められたと言うことは、殿下は竜種大行進をもう現段階で公表するべきだとお考えなのですか?」
「混乱するならまだマシで、誰も信じない気がするんですがな?」
緊急招集並みの勢いで城から呼び出されたフリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵は、これ幸いとばかりに書類仕事をしこたま持参して、アドルフィルトの従者に押し付け返すことでこの場に参加しているからだろうか。
どこか晴れ晴れとした声色を隠すこともなくアーウィンへと問いを投げた。
「そこは私ではなく、国王アドルフィルト陛下の判断を仰ぐべきだろう。我が国ならばともかく、この国の者達が、有事の際にどのような行動機序によって動くのか私には分からぬし、何より国民の気性によっては隠蔽したことで革命騒ぎが勃発することも有り得るからな」
「まぁ、ワイバーンであの騒ぎだ。ドラゴンがやって来て革命起こすような気概のある民なぞ、貴族や騎士連中にすら存在するか怪しいわい」
判断を委任されたアドルフィルトが、質問にも答える形で自身の考えを口にするとボルガーばかりでなく、傭兵ギルドや魔術師ギルドのマスターですら俯いて口を閉ざしてしまった。
「……逃げれる所まで逃げるという選択肢も選ぼうと思えば可能ではあるかと?」
「それこそ悪手であろうよ。1体目が来るまで既に5日切っているというのならば、陸路で国外へ脱出するのは不可能。加えて海路はやってくる1体目に立ち塞がられているも同然。おまけに現状では唯一、ドラゴンとやりあえるそなたが居る我が国から出てしまえば、2体目3体目でくたばる危険が増すだけだろうて……違うか?」
「……ご理解いただくのがお早くて助かります」
「うむ」
2人の会話からその選択肢を脳裏に過らせていた商業ギルドと薬師ギルドのマスターは諦めたように深々と溜息をついた。
「で、あるならば……だ。そなたとしては、我が国はどう立ち回るべきだと考える?」
「まず、アドルフィルト陛下からいただいた御免状を以って私が南の国境を越え、此奴を引っ捕らえて来ます。物的証拠も既に押さえてありますので、責任の所在を明らかにした上でこの事実を諸国に書面で通達すべきかと」
「国として人員は割かんが、そなたは捕縛に動くということか?」
「私が単独で動くのであれば、行って帰ってくるまで1tim(約1時間)もかかりません。捕らえて来た実行犯の身柄を騎士団に引き渡せば、国としての体面も保てましょう。後は極力、竜種が複数やって来ることをこの国の所為であるかのような流れを作られる前に立場を明確にすべきかと」
「そんなことをしたら! また、カルドランスと戦争になるかもしれないじゃないですか⁈」
「折角、大人しくしてるあの国の連中を刺激するのはやめてくれ!」
アーウィンとアドルフィルトの話しに思わず、と言った風情で口を挟んだのは農業ギルドと畜産ギルドのマスターだった。
「……大人しくなんざしちゃいやしねぇから、8体もドラゴン呼ばれるような事態になってんだろうが。アホか」
「……っ」
彼等の悲嘆に満ちた訴えを根本から否定したのは傭兵ギルドのマスターだった。
前者は自身で戦う術を持たない者達の、ある意味本音の部分であり、後者は現状を正しく把握出来ているからこその指摘に他ならなかった。
「加えて言うのであれば、何日かおきに竜種がやってくるような状況で、国同士、異種族同士で戦をしている暇なぞ、存在せぬだろう。この国は私が滞在して居る故、即座の対応が可能だが、現状で他国に竜種を退けることの出来る勢力が存在しているという話しは、私の耳に聞こえては来ぬのでな」
「そんなモンないない」
「おお。ある訳ねぇやな、旦那。この国だけじゃなく他の国だって、ワイバーン1匹出ただけで戦闘職総出で命懸けの大騒ぎだ。ドラゴンなんざ出られた日には、下手すりゃ見上げた瞬間に全員死んでらぁな」
ボルガーの端的な否定とその通りなのだけれどあまりにも明け透けな傭兵ギルドのマスターが吐いた台詞は、既にやってくる竜種を5体目まで見せられ、その脅威を知ってしまった一同にとっては、否定要素が1つも見つからぬ事実として、彼等の肩へと重くのしかかっていた。
「あれこれと口上を聞かせるよりも先ずは正しく現状を把握してもらった方がよかろう」
名乗りや挨拶もそこそこにそう前置きしたアーウィンが、これまで説明してきたことのお浚いをするように語り出すと当初こそ疑いと不信だけでそれを聞いていた者達だったが。
「ふむ。改めて1から聞かされると大陸全土に逃げ場なぞないことがよく分かるな。本当にカルドランスの連中は、この事態を予見せぬまま計画に踏み切ったのか?」
「それに関しては、この間者を捕らえれば多少の情報が入るやもしれぬが、正直、それが分かった所で竜種大行進が防げる訳でもない。今は余計なことに貴国の人員を割くべき時ではないように思う」
「確かにな」
国王であるアドルフィルトとほぼ同等の立場扱いで会話を交わしているアーウィンに場の空気が、説明の内容は本当の本当に真実なのではないだろうか、という方向性へ次第に移り変わって行く。
「アーウィン殿下。貴族院の院員とギルドマスター達を集められたと言うことは、殿下は竜種大行進をもう現段階で公表するべきだとお考えなのですか?」
「混乱するならまだマシで、誰も信じない気がするんですがな?」
緊急招集並みの勢いで城から呼び出されたフリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵は、これ幸いとばかりに書類仕事をしこたま持参して、アドルフィルトの従者に押し付け返すことでこの場に参加しているからだろうか。
どこか晴れ晴れとした声色を隠すこともなくアーウィンへと問いを投げた。
「そこは私ではなく、国王アドルフィルト陛下の判断を仰ぐべきだろう。我が国ならばともかく、この国の者達が、有事の際にどのような行動機序によって動くのか私には分からぬし、何より国民の気性によっては隠蔽したことで革命騒ぎが勃発することも有り得るからな」
「まぁ、ワイバーンであの騒ぎだ。ドラゴンがやって来て革命起こすような気概のある民なぞ、貴族や騎士連中にすら存在するか怪しいわい」
判断を委任されたアドルフィルトが、質問にも答える形で自身の考えを口にするとボルガーばかりでなく、傭兵ギルドや魔術師ギルドのマスターですら俯いて口を閉ざしてしまった。
「……逃げれる所まで逃げるという選択肢も選ぼうと思えば可能ではあるかと?」
「それこそ悪手であろうよ。1体目が来るまで既に5日切っているというのならば、陸路で国外へ脱出するのは不可能。加えて海路はやってくる1体目に立ち塞がられているも同然。おまけに現状では唯一、ドラゴンとやりあえるそなたが居る我が国から出てしまえば、2体目3体目でくたばる危険が増すだけだろうて……違うか?」
「……ご理解いただくのがお早くて助かります」
「うむ」
2人の会話からその選択肢を脳裏に過らせていた商業ギルドと薬師ギルドのマスターは諦めたように深々と溜息をついた。
「で、あるならば……だ。そなたとしては、我が国はどう立ち回るべきだと考える?」
「まず、アドルフィルト陛下からいただいた御免状を以って私が南の国境を越え、此奴を引っ捕らえて来ます。物的証拠も既に押さえてありますので、責任の所在を明らかにした上でこの事実を諸国に書面で通達すべきかと」
「国として人員は割かんが、そなたは捕縛に動くということか?」
「私が単独で動くのであれば、行って帰ってくるまで1tim(約1時間)もかかりません。捕らえて来た実行犯の身柄を騎士団に引き渡せば、国としての体面も保てましょう。後は極力、竜種が複数やって来ることをこの国の所為であるかのような流れを作られる前に立場を明確にすべきかと」
「そんなことをしたら! また、カルドランスと戦争になるかもしれないじゃないですか⁈」
「折角、大人しくしてるあの国の連中を刺激するのはやめてくれ!」
アーウィンとアドルフィルトの話しに思わず、と言った風情で口を挟んだのは農業ギルドと畜産ギルドのマスターだった。
「……大人しくなんざしちゃいやしねぇから、8体もドラゴン呼ばれるような事態になってんだろうが。アホか」
「……っ」
彼等の悲嘆に満ちた訴えを根本から否定したのは傭兵ギルドのマスターだった。
前者は自身で戦う術を持たない者達の、ある意味本音の部分であり、後者は現状を正しく把握出来ているからこその指摘に他ならなかった。
「加えて言うのであれば、何日かおきに竜種がやってくるような状況で、国同士、異種族同士で戦をしている暇なぞ、存在せぬだろう。この国は私が滞在して居る故、即座の対応が可能だが、現状で他国に竜種を退けることの出来る勢力が存在しているという話しは、私の耳に聞こえては来ぬのでな」
「そんなモンないない」
「おお。ある訳ねぇやな、旦那。この国だけじゃなく他の国だって、ワイバーン1匹出ただけで戦闘職総出で命懸けの大騒ぎだ。ドラゴンなんざ出られた日には、下手すりゃ見上げた瞬間に全員死んでらぁな」
ボルガーの端的な否定とその通りなのだけれどあまりにも明け透けな傭兵ギルドのマスターが吐いた台詞は、既にやってくる竜種を5体目まで見せられ、その脅威を知ってしまった一同にとっては、否定要素が1つも見つからぬ事実として、彼等の肩へと重くのしかかっていた。
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