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第1章 ウィムンド王国編 2
報告その7 - 古龍種 操重竜グランドサンスピア 通常種 2 -
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「でででででででで、殿、下ぁっ‼︎」
農業ギルドのマスターが、ガタブルと震えながら真面に回らぬ舌と口で心中の恐慌を訴えるように呼びかける。
「落ち着け。これはただの記録映像であって、今現在そなた達の命を脅かすレベルの危害を加えられることはない」
第1王子のバカルダサーレがそうであったのと同じくこの国の者達は一様に竜の咆哮に対する耐性が低いようで、国王アドルフィルト、冒険者ギルドのマスターであるボルガーと傭兵ギルドのマスター、クォート。
魔術師ギルドのマスターであるアヴィエートしかマスタークラスで耐え切った者はおらず、またこれまでの慣れと蓄積からフリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵、そしてレンリアードを始めとした初期会議室メンバー達が平気な顔をしているだけなのもあって、今1つこの場での説得力には欠けていた。
「前の5体だって信じられないようなドラゴンばっかりだったのに! 更にこんなのが南から来るとか冗談じゃありませんよ!」
「ねェー、オジサぁン。この竜ってばさー? まだちみっこい石っコロ落ちるの止めたのとー、1回鳴いただけくさいんだけどさー? これまでみたいな能力の説明とかー、食らったらヤバい攻撃方法とかー、全然聞いてない今の段階でギャーギャー騒ぐの超早過ぎね?」
「ぐっ……」
薬師ギルドのマスターが恐慌の勢いに乗ったまま言い募ったことに的確なツッコミを入れたのは、魔術師ギルドのマスター、アヴィエートだった。
「そうね。金融ギルドとしてもこれまでの5体とは一線を画す扱いになっているこのドラゴンの脅威は正確に知っておきたいわ。最悪、アーウィン殿下がいらっしゃることで守られている形になるこの国が、1番資産を保有しておくのにも安全な場所になるかもしれないのだし」
アヴィエートの言葉に即座の是意を示したのは、金融ギルドのマスターであるリーゼラルダだった。
2人はこの国でお互いだけが女性マスターであることから比較的長い友人関係だった。
「それはもうガチっしょ。正直、記録魔導具使ってこの映像込みで各国へ書面通達してもプライドゼロで初っからアーウィン殿下にお願いしますが出来る国、幾つあんのさー?」
「私が、そうするだろうとすぐに判断出来る賢明な国は多くて3つくらいかしら?」
「いや。恐らく満場一致で頼ってくる国は1つだろう」
リーゼラルダの口にした国数にすぐ訂正を入れたのは、サンタナ侯爵だ。
流石に会議室で行われていた話しの内容がこんなにヤバい案件だったとは貴族院で算段をつけていた時には思いもしなかったのだろう。
先程の咆哮を聞いて更に顔色が悪くなってしまった彼は、逆にそれが功を奏したのか至極、真面目で真摯な様子を見せながら付け加える。
「他の国は1回、目の前で本物のドラゴンが齎す脅威を見んと動かん筈だ。自国の騎士団や防衛団の意地だの、貴族連中の反対なぞも当然のようにあるだろうからな。つい先日ワイバーンに蹂躙されたばかりで下位互換とはいえ、比較できる危機感が身近にある我らとは認識のレベルが違うだろうて」
「確かに危機に対する楽観バイアスという物は、 “これよりも危険である” 若しくは “これがどのくらい危険なのか分からなさ過ぎて恐ろしい” と感じることの出来る者の方が働き難い傾向がある。サンタナ侯爵の言うことにも一理あるだろう」
「確かにな。各ギルドの情報伝達で信憑性をある程度格上げすることは可能かもしれんが、己が死ぬような目に遭わねば臆病者と謗る輩すら出よう故、中々動き出せぬ国の方が多かろうな」
彼の言葉をアーウィンが肯定し、国王アドルフィルトが2人の発言を支持したことでギルドマスター達は視線を交わし合い、互いに頷き合った。
リーゼラルダとアヴィエートの分析を聞いた後だけに各国ギルドの資産が灰塵に帰すことを可能な限り防ぎたい、との思いが強くなる。
「そんじゃアーウィン殿下ぁ。そのドラゴン、何してくんのか教えてくんなーい? ウチら魔術師ギルドに出来ることあったら協力したげっからさー?」
「それは有り難い。では、続きの映像を見て貰うこととしよう」
一応、この場での意見が統一されたことを全員の頷きから感じたアーウィンは、そう前置きをして紫色の半透明をしたコンソールキーへと指先を伸ばした。
農業ギルドのマスターが、ガタブルと震えながら真面に回らぬ舌と口で心中の恐慌を訴えるように呼びかける。
「落ち着け。これはただの記録映像であって、今現在そなた達の命を脅かすレベルの危害を加えられることはない」
第1王子のバカルダサーレがそうであったのと同じくこの国の者達は一様に竜の咆哮に対する耐性が低いようで、国王アドルフィルト、冒険者ギルドのマスターであるボルガーと傭兵ギルドのマスター、クォート。
魔術師ギルドのマスターであるアヴィエートしかマスタークラスで耐え切った者はおらず、またこれまでの慣れと蓄積からフリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵、そしてレンリアードを始めとした初期会議室メンバー達が平気な顔をしているだけなのもあって、今1つこの場での説得力には欠けていた。
「前の5体だって信じられないようなドラゴンばっかりだったのに! 更にこんなのが南から来るとか冗談じゃありませんよ!」
「ねェー、オジサぁン。この竜ってばさー? まだちみっこい石っコロ落ちるの止めたのとー、1回鳴いただけくさいんだけどさー? これまでみたいな能力の説明とかー、食らったらヤバい攻撃方法とかー、全然聞いてない今の段階でギャーギャー騒ぐの超早過ぎね?」
「ぐっ……」
薬師ギルドのマスターが恐慌の勢いに乗ったまま言い募ったことに的確なツッコミを入れたのは、魔術師ギルドのマスター、アヴィエートだった。
「そうね。金融ギルドとしてもこれまでの5体とは一線を画す扱いになっているこのドラゴンの脅威は正確に知っておきたいわ。最悪、アーウィン殿下がいらっしゃることで守られている形になるこの国が、1番資産を保有しておくのにも安全な場所になるかもしれないのだし」
アヴィエートの言葉に即座の是意を示したのは、金融ギルドのマスターであるリーゼラルダだった。
2人はこの国でお互いだけが女性マスターであることから比較的長い友人関係だった。
「それはもうガチっしょ。正直、記録魔導具使ってこの映像込みで各国へ書面通達してもプライドゼロで初っからアーウィン殿下にお願いしますが出来る国、幾つあんのさー?」
「私が、そうするだろうとすぐに判断出来る賢明な国は多くて3つくらいかしら?」
「いや。恐らく満場一致で頼ってくる国は1つだろう」
リーゼラルダの口にした国数にすぐ訂正を入れたのは、サンタナ侯爵だ。
流石に会議室で行われていた話しの内容がこんなにヤバい案件だったとは貴族院で算段をつけていた時には思いもしなかったのだろう。
先程の咆哮を聞いて更に顔色が悪くなってしまった彼は、逆にそれが功を奏したのか至極、真面目で真摯な様子を見せながら付け加える。
「他の国は1回、目の前で本物のドラゴンが齎す脅威を見んと動かん筈だ。自国の騎士団や防衛団の意地だの、貴族連中の反対なぞも当然のようにあるだろうからな。つい先日ワイバーンに蹂躙されたばかりで下位互換とはいえ、比較できる危機感が身近にある我らとは認識のレベルが違うだろうて」
「確かに危機に対する楽観バイアスという物は、 “これよりも危険である” 若しくは “これがどのくらい危険なのか分からなさ過ぎて恐ろしい” と感じることの出来る者の方が働き難い傾向がある。サンタナ侯爵の言うことにも一理あるだろう」
「確かにな。各ギルドの情報伝達で信憑性をある程度格上げすることは可能かもしれんが、己が死ぬような目に遭わねば臆病者と謗る輩すら出よう故、中々動き出せぬ国の方が多かろうな」
彼の言葉をアーウィンが肯定し、国王アドルフィルトが2人の発言を支持したことでギルドマスター達は視線を交わし合い、互いに頷き合った。
リーゼラルダとアヴィエートの分析を聞いた後だけに各国ギルドの資産が灰塵に帰すことを可能な限り防ぎたい、との思いが強くなる。
「そんじゃアーウィン殿下ぁ。そのドラゴン、何してくんのか教えてくんなーい? ウチら魔術師ギルドに出来ることあったら協力したげっからさー?」
「それは有り難い。では、続きの映像を見て貰うこととしよう」
一応、この場での意見が統一されたことを全員の頷きから感じたアーウィンは、そう前置きをして紫色の半透明をしたコンソールキーへと指先を伸ばした。
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