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第1章 ウィムンド王国編 2
報告その7 - 古龍種 操重竜グランドサンスピア 通常種 5 -
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「まぁ、教えること自体は私も吝かではないゆえ、それは一旦、置いておく。続きだ。見てもらったように周辺の物から重引力を奪ったグランドサンスピアが、次にどうするかなのだが……」
言いながら再び映像を進めたアーウィンによって、四角の中に映し出された竜が動き出す。
咆哮を上げた時のように上下左右の4方向へ十字型に大きく開いた口で、1番近くに浮いていた大きな樹木を吸気で口元へと寄せ、たまたまそこへ触れたのだろう。
右側へ開いた顎先で巻き取るようにして樹木を捕らえ、口の中央へと巻き寄せたと思ったら、バリンバリン音をを立てながら右顎と口の中央部分のみを動かして咀嚼していく。
「殿下。コイツの食事風景、端的に言ってキモいんですけど?」
「食欲は旺盛でな。4つある顎に別々の物を巻き込み、ああやって咀嚼する風景は “凶暴化” していない時にも見られる」
バリナが物凄く嫌そうに発した一言に、小さく肩を竦めたアーウィンがそう答えたことで、一同の脳裏に過ったのは、この竜がどんな竜なのかを彼が冒頭で説明していた一節だった。
“食い物でも差し出さない限り、自分から此方に関わって来ることはほぼ皆無” つまり、ヴェルザリスでは、この竜に餌付けしようとする、ある意味、猛者な人物が存在するということだ。
「お散歩ドラゴン」や「お天気ドラゴン」という別名で民に親しまれている、との話しもあったことから、きっと彼の国では “凶暴化” していないこの竜に食べ物を与える者が複数人存在しているのだろう、という憶測にも繋がる発言と受け取れる。
目の前で展開される、自国にとっては脅威でしかない特性を発揮している竜を餌付けしようと考え、剰えそれを実行する者が居るくらいには、竜が身近な存在である国、ということなのだろうけれど。
「食性としてはスライムレベルの雑食だと考えてもらって間違いない。状態異常全無効のスキルも常時展開スキルとして持っている為、毒、麻痺、腐食、即死にも最高クラスの耐性がある。ゆえに、それらを使って仕留めようとした所で効きはせぬと覚えておいてくれ」
「……このドラゴン、どうやって勝つんですか?」
今は光量を落として見せてくれているからいいものの、本来であれば直視することすら難しい竜であるのは流石に最初の映像から理解出来たようで、農業ギルドのマスターが、恐々といった声音でそう尋ねて来た。
「闇属性の防御魔法を展開して、飛翔魔法または転移魔法で接敵、物理一撃で始末出来るならよし。ダメならば、物理にせよ魔法にせよ、一撃与えて即離脱を繰り返すしかあるまいな。光・風・地の属性は殆どダメージを与えられぬゆえ、闇属性をメインに火と水、後は雷系くらいしか魔法の選択肢はなくなるがな」
「ちょっと意外なんですけど、物理攻撃なんて効くんですね?」
「クラス的に最低でも伝説級はないと刃自体が通らぬがな。それ以下の武具でも暫定処置として先程上げた対抗属性の付与を剣先や穂先などに与えれば、少しずつではあるが、削れることは削れる」
これはダメなヤツだ。
この場に於いて、アーウィンを除く全ての者が一瞬で心を1つにした瞬間だった。
誰1人として声にこそ出さなかったけれど、この竜とその前に説明された5体の竜は、もう根本的に違う生き物なのだというのが、彼の言葉尻からも理解出来る。
「流石は、古龍と呼ばれるだけの個体よの」
「伝説級とか……それ以上の代物を含めたって、この大陸には両手の指で足りる数しかありませんよ?」
「それは作って供給すればよいだけなので、大した問題ではない」
「大した問題ですよ⁈」
妖精族であるローガン、レンリアードの両者とアーウィンの会話にそう勢い込んで入って来たのは、鍛治ギルドのマスターだ。
「伝説級は、伝説になるくらいの希少な材料と熟練の地妖精職人が生涯かけて、それでも1本も作り出せないような代物だから伝説級なのであって!」
「いや。その程度クラスでよいのなら精霊達の助けがあれば割と簡単に作り出せる」
その程度。
割と簡単に作り出せる。
アーウィンが発したその言葉が本来持っている意味は、この話しのキモとなっている武具レベルに対して使われることなどない代物の筈なのだが、会議室初期メンバー以外には、その表現を使われる理由が全く以って理解出来なかったようだ。
静寂に包まれてしまった場に四角の中からグランドサンスピアのお食事音だけが奏でられて、暫し。
「ふむ。ならばお聞かせいただきたい。アーウィン殿下に於かれましては、その武具の作成方法なども各種対抗魔法と合わせ、我が国に知識として伝えてくださると理解してよろしゅうございますかな?」
「構わぬが?」
「⁈」
サンタナ侯爵が、恐らくは何ぞかの交渉を始める端緒として持ち出したのだろう言葉を受けて尚、アーウィンがした即答に、これまた会議室初期メンバーが、そっと視線を他所に向け、その他の者達は揃って目を見開いた。
「アーウィン王子。本当によいのか? 如何にドラゴンどもへ対抗する為とは言え、本来ならば他国には秘匿するような技術であろうに」
国王アドルフィルトも面食らったようで、その表情や声音には、驚愕やら疑念と言った様々な感情が乗ってしまっていた。
「我が国では身分や性別を問わず、3歳か5歳の時点で誰でも習得可能な技術や魔法なのですよ。教えた所で本人の努力なしには得られぬものもありますゆえ、特に問題はないかと?」
いっそ朗らかさすら感じる返答に感心していいのか、呆れていいのか分からないといった吐息が場を占めた。
(……儂なんぞ、ついさっき座っとるだけで魔力量上げて貰うておるからのう。殿下の言に偽りがないのは分かっておるが……果てさて、この国の者達が何人、殿下基準について行けるかのぅ……)
思わず遠い目をしてそんなことを考えたローガンは、グランドサンスピアが人や動物を含めた実に様々な物をもっしゃもっしゃバリンボリン食べていく音を聞きながら、あれらのように美味しくいただかれたくなければ、やるしかないのだろうけれどな……と己が既に片足を突っ込んでしまった道を思って息をついた。
言いながら再び映像を進めたアーウィンによって、四角の中に映し出された竜が動き出す。
咆哮を上げた時のように上下左右の4方向へ十字型に大きく開いた口で、1番近くに浮いていた大きな樹木を吸気で口元へと寄せ、たまたまそこへ触れたのだろう。
右側へ開いた顎先で巻き取るようにして樹木を捕らえ、口の中央へと巻き寄せたと思ったら、バリンバリン音をを立てながら右顎と口の中央部分のみを動かして咀嚼していく。
「殿下。コイツの食事風景、端的に言ってキモいんですけど?」
「食欲は旺盛でな。4つある顎に別々の物を巻き込み、ああやって咀嚼する風景は “凶暴化” していない時にも見られる」
バリナが物凄く嫌そうに発した一言に、小さく肩を竦めたアーウィンがそう答えたことで、一同の脳裏に過ったのは、この竜がどんな竜なのかを彼が冒頭で説明していた一節だった。
“食い物でも差し出さない限り、自分から此方に関わって来ることはほぼ皆無” つまり、ヴェルザリスでは、この竜に餌付けしようとする、ある意味、猛者な人物が存在するということだ。
「お散歩ドラゴン」や「お天気ドラゴン」という別名で民に親しまれている、との話しもあったことから、きっと彼の国では “凶暴化” していないこの竜に食べ物を与える者が複数人存在しているのだろう、という憶測にも繋がる発言と受け取れる。
目の前で展開される、自国にとっては脅威でしかない特性を発揮している竜を餌付けしようと考え、剰えそれを実行する者が居るくらいには、竜が身近な存在である国、ということなのだろうけれど。
「食性としてはスライムレベルの雑食だと考えてもらって間違いない。状態異常全無効のスキルも常時展開スキルとして持っている為、毒、麻痺、腐食、即死にも最高クラスの耐性がある。ゆえに、それらを使って仕留めようとした所で効きはせぬと覚えておいてくれ」
「……このドラゴン、どうやって勝つんですか?」
今は光量を落として見せてくれているからいいものの、本来であれば直視することすら難しい竜であるのは流石に最初の映像から理解出来たようで、農業ギルドのマスターが、恐々といった声音でそう尋ねて来た。
「闇属性の防御魔法を展開して、飛翔魔法または転移魔法で接敵、物理一撃で始末出来るならよし。ダメならば、物理にせよ魔法にせよ、一撃与えて即離脱を繰り返すしかあるまいな。光・風・地の属性は殆どダメージを与えられぬゆえ、闇属性をメインに火と水、後は雷系くらいしか魔法の選択肢はなくなるがな」
「ちょっと意外なんですけど、物理攻撃なんて効くんですね?」
「クラス的に最低でも伝説級はないと刃自体が通らぬがな。それ以下の武具でも暫定処置として先程上げた対抗属性の付与を剣先や穂先などに与えれば、少しずつではあるが、削れることは削れる」
これはダメなヤツだ。
この場に於いて、アーウィンを除く全ての者が一瞬で心を1つにした瞬間だった。
誰1人として声にこそ出さなかったけれど、この竜とその前に説明された5体の竜は、もう根本的に違う生き物なのだというのが、彼の言葉尻からも理解出来る。
「流石は、古龍と呼ばれるだけの個体よの」
「伝説級とか……それ以上の代物を含めたって、この大陸には両手の指で足りる数しかありませんよ?」
「それは作って供給すればよいだけなので、大した問題ではない」
「大した問題ですよ⁈」
妖精族であるローガン、レンリアードの両者とアーウィンの会話にそう勢い込んで入って来たのは、鍛治ギルドのマスターだ。
「伝説級は、伝説になるくらいの希少な材料と熟練の地妖精職人が生涯かけて、それでも1本も作り出せないような代物だから伝説級なのであって!」
「いや。その程度クラスでよいのなら精霊達の助けがあれば割と簡単に作り出せる」
その程度。
割と簡単に作り出せる。
アーウィンが発したその言葉が本来持っている意味は、この話しのキモとなっている武具レベルに対して使われることなどない代物の筈なのだが、会議室初期メンバー以外には、その表現を使われる理由が全く以って理解出来なかったようだ。
静寂に包まれてしまった場に四角の中からグランドサンスピアのお食事音だけが奏でられて、暫し。
「ふむ。ならばお聞かせいただきたい。アーウィン殿下に於かれましては、その武具の作成方法なども各種対抗魔法と合わせ、我が国に知識として伝えてくださると理解してよろしゅうございますかな?」
「構わぬが?」
「⁈」
サンタナ侯爵が、恐らくは何ぞかの交渉を始める端緒として持ち出したのだろう言葉を受けて尚、アーウィンがした即答に、これまた会議室初期メンバーが、そっと視線を他所に向け、その他の者達は揃って目を見開いた。
「アーウィン王子。本当によいのか? 如何にドラゴンどもへ対抗する為とは言え、本来ならば他国には秘匿するような技術であろうに」
国王アドルフィルトも面食らったようで、その表情や声音には、驚愕やら疑念と言った様々な感情が乗ってしまっていた。
「我が国では身分や性別を問わず、3歳か5歳の時点で誰でも習得可能な技術や魔法なのですよ。教えた所で本人の努力なしには得られぬものもありますゆえ、特に問題はないかと?」
いっそ朗らかさすら感じる返答に感心していいのか、呆れていいのか分からないといった吐息が場を占めた。
(……儂なんぞ、ついさっき座っとるだけで魔力量上げて貰うておるからのう。殿下の言に偽りがないのは分かっておるが……果てさて、この国の者達が何人、殿下基準について行けるかのぅ……)
思わず遠い目をしてそんなことを考えたローガンは、グランドサンスピアが人や動物を含めた実に様々な物をもっしゃもっしゃバリンボリン食べていく音を聞きながら、あれらのように美味しくいただかれたくなければ、やるしかないのだろうけれどな……と己が既に片足を突っ込んでしまった道を思って息をついた。
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