103 / 113
第1章 ウィムンド王国編 2
報告その7 - 古龍種 操重竜グランドサンスピア 通常種 6 -
しおりを挟む
「図らずも此奴に関する質問には、随時答えるような形となってしまったが、この古龍種について他に聞いておきたいことはあるだろうか?」
締めのようにそう問いかけたアーウィンの言葉に即座で手を上げたのはクォートだった。
「何だね?」
「倒すのに伝説級の武器が必要ってことは、当然解体に使う道具にもそれクラスが求められると思うんだが、コイツからの素材採取とかどうすんだ?」
「これは他の竜種にも言える事だが、死した肉体は総じて筋肉の硬直により生きていた時よりも硬くなる。此奴を倒す時は伝説級あれば十分だが、解体をするとなれば幻想級は欲しい所だな」
「………幻想級? 解体する為だけにか?」
「うむ。まぁ、それも私が持っている物を貸与するか、素材と作り方を提供しよう。それならば、さして問題ではあるまい」
「是非!」
「頼んますよ、旦那っ!」
倒したドラゴンを解体するとなったら高確率で冒険者ギルドか傭兵ギルドの解体担当者が城へ出向いてやらされることになるのは、今現在、ワイバーンの解体で同様のことが起こっていることからほぼ間違いないと判断したボルガーとクォートの声は、限りない切実さに溢れていた。
「承知した。他にないようであれば、此奴の話しは以上となるが?」
「ああ、いや……アーウィン王子。すまぬが今日はここまでとしよう。可能であるならば、今夜の夕餉で合間見える神殿の大司祭にも事態の理解と共有を図りたいのでな」
此奴の話し、と前置きしたアーウィンに残る2体の古龍種に関する情報を続けて提供されそうな気配を察知して、国王アドルフィルトが制止をかけた。
「そうですな。これまでその存在を知りもせなんだ生き物の脅威的な生態をこうも続け様に見せつけられると必要以上の危機感だけが募ってしまうことですしな」
サンタナ侯爵も疲れ切った吐息を溢しながらその言葉に同意する。
各ギルドのマスター達も銘々に何度も頷いている所を見るに、あまり無理強いするのも良くないか、と判断したアーウィンも理解を示して頷いて見せた。
「では、続きはまた明日にでも。私は夕餉までの時間を使って例の下手人を捕らえて参りますので、後はご随意にお過ごしいただいて……」
「ああ、そうだ! それがあった! ボルガー。アーウィン王子に冒険者ギルドから下手人捕縛の指名依頼を出してくれ。依頼者は俺。依頼金は国から出す」
「……はい。承知しました」
言われて思い出したらしいアドルフィルトが、国王である自分の名を使って、国から依頼する形を取って賊を捕らえると公言したことに僅か、驚いた顔を見せてからボルガーが是を紡いだ。
「国境を越えるまでは俺の出した免状でどうにかなるが、それより先の地となるカルドランスでは、1冒険者の指名依頼とした方が色々と動きやすかろうて」
「ご配慮痛み入ります」
国を越えて存在する組織である冒険者ギルドが、依頼という形で逃亡犯罪者の捕縛を受理し、冒険者に指示すれば、その逃亡犯罪者が捕縛された当該国では該当者に対する保護・処罰権限が一旦、凍結される。
勿論、捕縛対象者がその当該国の貴族でればまた話しが違ってくるが、今回の場合は依頼完遂後にならないと当該国はその権利を行使出来なくなるのが、この大陸での通例だった。
つまり、アーウィンが捕縛依頼されて捕らえた犯罪者をカルドランスが横から引っ攫って匿い、知らぬ存ぜぬを通して隠蔽することは、その者が貴族でもない限り事実上、不可能となる。
アドルフィルトはそれを狙って冒険者ギルドへの依頼という形を取ったのだろう。
「旦那。相手がカルドランスの貴族籍に居たら捕縛がバレた時点で止めらて、そいつを寄越せって要求されるかもしれないぜ? そうしたら、どう動く気なんだい?」
「この街を出たら国境までは転移魔法で移動する。南の国境を通過した後、下手人が居る場所まではまた転移で移動して、身柄を確保出来たと同時に行きとは逆の工程で転移魔法を使い、それぞれ国の国境だけを通過して、直接この街へ戻る。彼方がどんなに素早く対応しようとしても正式な抗議と権限移譲を依頼する為の使者が、この街へやって来るまでには私に等しい手段を持たぬ限り7日から10日はかかることだろう。その頃には、1体目の竜が既に討伐されている。ならば集めた証拠とこれからの事実を抱えさせて、使者を国許へ送り返せばよい。手ぶらで帰すのではない上、急を要する話しが多いゆえ、下手人の身柄を引き渡さなくとも、さぞ帰り易いことだろう」
クォートのした質問に、つらつらと答えを返したアーウィンが口にした内容は、アドルフィルトの指示した対応を越える辛辣さに溢れていた。
厚顔にもクォートが問うてきたようなことを本当にしてくるのならば、国としてもそれなりの対応して構わないだろう、という意志を王侯貴族でなくとも感じることが出来る言い様だ。
「アホなあの国の上層部が判断を誤って、アーウィン殿下を敵に回したら、ドラゴンとの相乗効果もあるし、冗談抜きで滅亡待ったなしになりそうなのニャー」
呆れたように言ったミューニャの言葉を聞きながら、いっそ早々に滅んでくれた方が、このドラゴンが来るまでに対応出来ることが増えそうな気がする……などと会議室の面々は考えてしまったのだった。
締めのようにそう問いかけたアーウィンの言葉に即座で手を上げたのはクォートだった。
「何だね?」
「倒すのに伝説級の武器が必要ってことは、当然解体に使う道具にもそれクラスが求められると思うんだが、コイツからの素材採取とかどうすんだ?」
「これは他の竜種にも言える事だが、死した肉体は総じて筋肉の硬直により生きていた時よりも硬くなる。此奴を倒す時は伝説級あれば十分だが、解体をするとなれば幻想級は欲しい所だな」
「………幻想級? 解体する為だけにか?」
「うむ。まぁ、それも私が持っている物を貸与するか、素材と作り方を提供しよう。それならば、さして問題ではあるまい」
「是非!」
「頼んますよ、旦那っ!」
倒したドラゴンを解体するとなったら高確率で冒険者ギルドか傭兵ギルドの解体担当者が城へ出向いてやらされることになるのは、今現在、ワイバーンの解体で同様のことが起こっていることからほぼ間違いないと判断したボルガーとクォートの声は、限りない切実さに溢れていた。
「承知した。他にないようであれば、此奴の話しは以上となるが?」
「ああ、いや……アーウィン王子。すまぬが今日はここまでとしよう。可能であるならば、今夜の夕餉で合間見える神殿の大司祭にも事態の理解と共有を図りたいのでな」
此奴の話し、と前置きしたアーウィンに残る2体の古龍種に関する情報を続けて提供されそうな気配を察知して、国王アドルフィルトが制止をかけた。
「そうですな。これまでその存在を知りもせなんだ生き物の脅威的な生態をこうも続け様に見せつけられると必要以上の危機感だけが募ってしまうことですしな」
サンタナ侯爵も疲れ切った吐息を溢しながらその言葉に同意する。
各ギルドのマスター達も銘々に何度も頷いている所を見るに、あまり無理強いするのも良くないか、と判断したアーウィンも理解を示して頷いて見せた。
「では、続きはまた明日にでも。私は夕餉までの時間を使って例の下手人を捕らえて参りますので、後はご随意にお過ごしいただいて……」
「ああ、そうだ! それがあった! ボルガー。アーウィン王子に冒険者ギルドから下手人捕縛の指名依頼を出してくれ。依頼者は俺。依頼金は国から出す」
「……はい。承知しました」
言われて思い出したらしいアドルフィルトが、国王である自分の名を使って、国から依頼する形を取って賊を捕らえると公言したことに僅か、驚いた顔を見せてからボルガーが是を紡いだ。
「国境を越えるまでは俺の出した免状でどうにかなるが、それより先の地となるカルドランスでは、1冒険者の指名依頼とした方が色々と動きやすかろうて」
「ご配慮痛み入ります」
国を越えて存在する組織である冒険者ギルドが、依頼という形で逃亡犯罪者の捕縛を受理し、冒険者に指示すれば、その逃亡犯罪者が捕縛された当該国では該当者に対する保護・処罰権限が一旦、凍結される。
勿論、捕縛対象者がその当該国の貴族でればまた話しが違ってくるが、今回の場合は依頼完遂後にならないと当該国はその権利を行使出来なくなるのが、この大陸での通例だった。
つまり、アーウィンが捕縛依頼されて捕らえた犯罪者をカルドランスが横から引っ攫って匿い、知らぬ存ぜぬを通して隠蔽することは、その者が貴族でもない限り事実上、不可能となる。
アドルフィルトはそれを狙って冒険者ギルドへの依頼という形を取ったのだろう。
「旦那。相手がカルドランスの貴族籍に居たら捕縛がバレた時点で止めらて、そいつを寄越せって要求されるかもしれないぜ? そうしたら、どう動く気なんだい?」
「この街を出たら国境までは転移魔法で移動する。南の国境を通過した後、下手人が居る場所まではまた転移で移動して、身柄を確保出来たと同時に行きとは逆の工程で転移魔法を使い、それぞれ国の国境だけを通過して、直接この街へ戻る。彼方がどんなに素早く対応しようとしても正式な抗議と権限移譲を依頼する為の使者が、この街へやって来るまでには私に等しい手段を持たぬ限り7日から10日はかかることだろう。その頃には、1体目の竜が既に討伐されている。ならば集めた証拠とこれからの事実を抱えさせて、使者を国許へ送り返せばよい。手ぶらで帰すのではない上、急を要する話しが多いゆえ、下手人の身柄を引き渡さなくとも、さぞ帰り易いことだろう」
クォートのした質問に、つらつらと答えを返したアーウィンが口にした内容は、アドルフィルトの指示した対応を越える辛辣さに溢れていた。
厚顔にもクォートが問うてきたようなことを本当にしてくるのならば、国としてもそれなりの対応して構わないだろう、という意志を王侯貴族でなくとも感じることが出来る言い様だ。
「アホなあの国の上層部が判断を誤って、アーウィン殿下を敵に回したら、ドラゴンとの相乗効果もあるし、冗談抜きで滅亡待ったなしになりそうなのニャー」
呆れたように言ったミューニャの言葉を聞きながら、いっそ早々に滅んでくれた方が、このドラゴンが来るまでに対応出来ることが増えそうな気がする……などと会議室の面々は考えてしまったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる