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第1章 ウィムンド王国編 2
再びの指名依頼
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会議室での報告会が本日は解散となってすぐ。
ボルガーは、アーウィンとミューニャを伴って1階の受付カウンターへと足を運んでいた。
解散したはしたものの、会議室の面々は即座に冒険者ギルドを後にすることなく、銘々に小さな塊を作っては自分達に関係する事柄を話し合っているようだった。
「カルドランスの連中は、国を離れて個人単品になるとそんなに嫌なヤツぁいねぇんだが、何故か国単位に纏まってると言論統制と国政違反への罰則が厳しい所為なのか、ろくでもねぇヤツしか居なくなる。そこら辺、十分に注意してくれよ? 殿下」
「問題ない。下手人の追尾旗は外れておらぬゆえ、地図魔法と転移魔法を用いれば、潜伏場所の地理も此奴の居場所自体も誰かに訊ねなければ分からぬような状況にはない。隣国の民へ接触する機会は、国境でしか発生せぬだろう」
己の尋ねたことへ、そう返答するアーウィンを眺めながらボルガーは思う。
それを前提とするならば寧ろ、1番厄介なのは国境を出入りする時だろう、と。
「殿下。カルドランスのアホな国境審査官は、入る時も出る時も当たり前みたいに賄賂要求してくるのニャ。特に王侯貴族からは大金貰って当然とか思ってるから気をつけた方がいいのニャ」
「ふむ。私が持っているこの大陸の通貨は先日、街を火消しした折の依頼金と魔物大暴走の対応依頼金としてギルドカードに登録されている分だけなのだが……幾らか現物を持っていった方がいいかね?」
「そうだな。あった方がアレコレ言われずに通過出来るとは思うぞ?」
「あ! 炭から作るっていう宝石作って、明日になったら元に戻ってたら面白いのニャ!」
「ミューニャ。殿下に詐欺行為を勧めるなっ!」
「ウニャウ!」
冗談だと分かっては居るのだろう。
ボルガーが、ミューニャの頭を軽く拳骨で叩いて嗜め、彼女もまた、小さく舌を出しながら笑顔でそれを享受していた。
「では、手数をかけるが手渡すのに十分だと思われる金子を私のカードから引き出して貰って構わぬか?」
アーウィンもまた笑顔でそれを眺めながら右手を翻して収納の魔法陣を展開すると透明なカードをミューニャへと手渡した。
「はいニャ! お預かりいたしますのニャ!」
それを受け取ったミューニャが、手元の読み取り機にカードを差し込み、現れた金額に一瞬、目を丸くしてから諦念を含んだ表情を浮かべて魔導具を操作する。
「殿下。先にカードを返しとくのニャー」
「うむ」
手続きの済んだ冒険者カードをニコヤカにアーウィンへと差し出して、ミューニャはギルドの奥へと姿を消した。
「……なぁ、殿下。そのカード、もしかしてお国で稼いだ分と纏めて金額表示されてるかもしれないぜ? この大陸以外の大陸なんぞ、存在すら確認されてねぇから俺も失念してたんだがよ? お国とはレートが存在しねぇだろ? 混ざっちまって大丈夫か?」
「問題ない。私は竜種の討伐で他大陸にも出入りがある。実績は纏めて表示されるだろうが、各地で得た依頼金はそれぞれ別計上となるようカードの術式が整えられている筈だ」
アーウィンの答えにボルガーは、ミューニャの浮かべた表情の意味が「纏った金額の大きさを見たから」ではなく「知らん大陸のあっちこっちに計上金が存在していた」方だったのだと悟って苦笑いを浮かべた。
「お待たせ致しましたニャン。これを行きに1枚、帰りに1枚出してやれば、国境審査のアホも秒で通してくれるのニャ!」
金子の用意が出来たらしいミューニャが、小さな浅いトレイに乗せて持って来たのは、カルドランス帝国で使われている大金貨だった。
大陸共通硬貨に換算すれば然程、価値の高い通貨ではなかったが、カルドランス国内であるならばこれ1枚で3年はゆうに遊んで暮らせると言われる金額の代物だ。
「おい、ミューニャ。いくら王族が出す賄賂ったって高額すぎやしねぇか?」
「だからこそニャ。王族でも賄賂程度じゃ中々出さないような金額をポンと出されて頭の中が金金金金金金で一杯になってる真っ最中に通らせろって言えば、使い道考える方に頭使いたいから面倒臭がってすぐに通してくれるのニャ」
「だからっつって、殿下の懐だぞ?」
嬉々として大金貨4枚をトレイごと差し出したミューニャにボルガーが呆れた目を向けて、突っ込みじみた言葉を口にした。
「ニャア……あの金額見たらマスターだってミューニャと同じ意見になるニャ。正直、端金もいいとこなのニャ」
「まぁ、金には困っておらぬゆえ、私が稼いだ分から出されるならば、さして問題はない」
「ほらぁ?」
どうやらアーウィンの金銭感覚は、ボルガーよりもミューニャに近いようで、街の火消しに関する報告書に記載のあった「魔力回復ポーション大量供給にかかった費用は自国の税が源泉ではないので無償提供とする申し出有り」の文字列を事実であると証明するような結論となった。
「殿下がいいならいいけどよ……」
やや釈然としない物を感じながらアーウィンに依頼書を差し出したボルガーは、彼が出かけて行った後でカード残高をミューニャから教えられ、数秒、意識を失って虚な目をしていたと言う。
ボルガーは、アーウィンとミューニャを伴って1階の受付カウンターへと足を運んでいた。
解散したはしたものの、会議室の面々は即座に冒険者ギルドを後にすることなく、銘々に小さな塊を作っては自分達に関係する事柄を話し合っているようだった。
「カルドランスの連中は、国を離れて個人単品になるとそんなに嫌なヤツぁいねぇんだが、何故か国単位に纏まってると言論統制と国政違反への罰則が厳しい所為なのか、ろくでもねぇヤツしか居なくなる。そこら辺、十分に注意してくれよ? 殿下」
「問題ない。下手人の追尾旗は外れておらぬゆえ、地図魔法と転移魔法を用いれば、潜伏場所の地理も此奴の居場所自体も誰かに訊ねなければ分からぬような状況にはない。隣国の民へ接触する機会は、国境でしか発生せぬだろう」
己の尋ねたことへ、そう返答するアーウィンを眺めながらボルガーは思う。
それを前提とするならば寧ろ、1番厄介なのは国境を出入りする時だろう、と。
「殿下。カルドランスのアホな国境審査官は、入る時も出る時も当たり前みたいに賄賂要求してくるのニャ。特に王侯貴族からは大金貰って当然とか思ってるから気をつけた方がいいのニャ」
「ふむ。私が持っているこの大陸の通貨は先日、街を火消しした折の依頼金と魔物大暴走の対応依頼金としてギルドカードに登録されている分だけなのだが……幾らか現物を持っていった方がいいかね?」
「そうだな。あった方がアレコレ言われずに通過出来るとは思うぞ?」
「あ! 炭から作るっていう宝石作って、明日になったら元に戻ってたら面白いのニャ!」
「ミューニャ。殿下に詐欺行為を勧めるなっ!」
「ウニャウ!」
冗談だと分かっては居るのだろう。
ボルガーが、ミューニャの頭を軽く拳骨で叩いて嗜め、彼女もまた、小さく舌を出しながら笑顔でそれを享受していた。
「では、手数をかけるが手渡すのに十分だと思われる金子を私のカードから引き出して貰って構わぬか?」
アーウィンもまた笑顔でそれを眺めながら右手を翻して収納の魔法陣を展開すると透明なカードをミューニャへと手渡した。
「はいニャ! お預かりいたしますのニャ!」
それを受け取ったミューニャが、手元の読み取り機にカードを差し込み、現れた金額に一瞬、目を丸くしてから諦念を含んだ表情を浮かべて魔導具を操作する。
「殿下。先にカードを返しとくのニャー」
「うむ」
手続きの済んだ冒険者カードをニコヤカにアーウィンへと差し出して、ミューニャはギルドの奥へと姿を消した。
「……なぁ、殿下。そのカード、もしかしてお国で稼いだ分と纏めて金額表示されてるかもしれないぜ? この大陸以外の大陸なんぞ、存在すら確認されてねぇから俺も失念してたんだがよ? お国とはレートが存在しねぇだろ? 混ざっちまって大丈夫か?」
「問題ない。私は竜種の討伐で他大陸にも出入りがある。実績は纏めて表示されるだろうが、各地で得た依頼金はそれぞれ別計上となるようカードの術式が整えられている筈だ」
アーウィンの答えにボルガーは、ミューニャの浮かべた表情の意味が「纏った金額の大きさを見たから」ではなく「知らん大陸のあっちこっちに計上金が存在していた」方だったのだと悟って苦笑いを浮かべた。
「お待たせ致しましたニャン。これを行きに1枚、帰りに1枚出してやれば、国境審査のアホも秒で通してくれるのニャ!」
金子の用意が出来たらしいミューニャが、小さな浅いトレイに乗せて持って来たのは、カルドランス帝国で使われている大金貨だった。
大陸共通硬貨に換算すれば然程、価値の高い通貨ではなかったが、カルドランス国内であるならばこれ1枚で3年はゆうに遊んで暮らせると言われる金額の代物だ。
「おい、ミューニャ。いくら王族が出す賄賂ったって高額すぎやしねぇか?」
「だからこそニャ。王族でも賄賂程度じゃ中々出さないような金額をポンと出されて頭の中が金金金金金金で一杯になってる真っ最中に通らせろって言えば、使い道考える方に頭使いたいから面倒臭がってすぐに通してくれるのニャ」
「だからっつって、殿下の懐だぞ?」
嬉々として大金貨4枚をトレイごと差し出したミューニャにボルガーが呆れた目を向けて、突っ込みじみた言葉を口にした。
「ニャア……あの金額見たらマスターだってミューニャと同じ意見になるニャ。正直、端金もいいとこなのニャ」
「まぁ、金には困っておらぬゆえ、私が稼いだ分から出されるならば、さして問題はない」
「ほらぁ?」
どうやらアーウィンの金銭感覚は、ボルガーよりもミューニャに近いようで、街の火消しに関する報告書に記載のあった「魔力回復ポーション大量供給にかかった費用は自国の税が源泉ではないので無償提供とする申し出有り」の文字列を事実であると証明するような結論となった。
「殿下がいいならいいけどよ……」
やや釈然としない物を感じながらアーウィンに依頼書を差し出したボルガーは、彼が出かけて行った後でカード残高をミューニャから教えられ、数秒、意識を失って虚な目をしていたと言う。
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