凡人高校生

ゆるだら公

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凡人高校生

11話

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「おっはよー!大ちゃん」

「おはよ」

いつもの公園で待ち合わせした2人が、今日も元気に登校する。

「今日暑っついな~」

「もうすぐ夏だからね。暑がりの満には、もう限界か?」

「こんな暑さじゃ、俺溶けちゃうってー」

シャツをパタパタさせて、体に風を送る。
今日は日差しもよく、日光が2人を照らしていた。

「あれ?あそこにいるのって、蓮見じゃね?」

満は、遠くの方で歩いている青年を指さす。
無駄にでかい身長をしていて、爽やかオーラが醸し出ているのを大も察知した。最近はよく、3人で行動することが多いらしい。

「ほんとだ。いつもはこっちの道じゃないのにね」

「おーーい!蓮見ーーー!!」

大声で名前を呼んだ。その声に気づいて、蓮見は振り向く。

「あ、満に大。おはよー!」

蓮見も、遠くにいる2人に聞こえるようにと、芯の通った声で返事をした。昨日の口調が嘘みたいに消え去っていた。

「やっぱ蓮見じゃん!おーい!今行くから、待ってろよーー!」

そう宣言すると、満は大の腕を掴んだ。

「え?まさか、…嘘だよね…?」

嫌な予感が脳に過り、満を追い払おうとする。

「行くぞ、大ちゃん」

案の定、満は大を掴んだまま、全速力で走り出した。

「朝から走るの気持ちーー!」

「ぜぇ、ぜぇ、……し、しぬぅ゛………」

「え、なんか向かってきたんだけど、逃げた方がいいのかな」

満たちとの衝突を防ぐため、蓮見も走ろうとした。

「待てよーー!逃がさねぇかんな!!」

さらにスピードを上げた満は、蓮見の元へ走り出していった。



「はぁっ、…はぁッ…、お前は俺を殺す気か!!」

朝っぱらから走らされた大は、怒りに溢れていた。

「…俺も被害にあったんだけど」

2人とも、じっと満の方を見る。

「まっ、朝からいい運動になったことだし、元気に学校に行こう!」

「「無視するな」」

大と蓮見がハモった。それだけ2人が怒っていると予想出来る。

「悪かったって。ごめんな」

さすがに申し訳ないと感じた満が、ちゃんと謝る。

「もう、…まぁいいけどね。今回だけだから」

「次やったら殴る」

「重いぞ大ちゃん!」

1悶着あったが、3人は並んで、今度はゆっくりと歩き出した。

「てか、なんで蓮見こっちにいるんだ?いつも違う道だろ」

疑問に思っていたことを思い出し、蓮見に問いかける。

「あぁ。今日俺、早く起きたから違う道から行こうかなって思って。2人はこっち側なんだね」

「そそ、俺ら家近くてさ。てかよく家早く出れるな、尊敬するわ…」

「はは、ありがと」

純粋に褒められて恥ずかしくなったのか、蓮見は満から目を逸らした。
すると「あっ」と、なにか思い出したように声が漏れ、満に向き直った。

「…実は今日、校門で生徒会が服装チェックしてるんだ。早いうちにネクタイと襟直しておいた方がいいよ」

「えっ、そうなのか!?」

小声で語りかけるように、満に助言した。
耳元で囁かれたので、肩が跳ねてしまった満だが、気を取り直して会話を続けた。

「こっちは何も聞いてないんだけど…」

「抜き打ちなんだ。だからみんな知らない」

「いいのか…?俺たちだけ教えて貰って」

満が申し訳無いという目で蓮見の服の袖を掴んだ。
そんな満にも、蓮見は笑顔で対応した。

「全然大丈夫。満にはさっき褒めてもらったし、大は、疲れるの苦手でしょ」

「…?それってどういう…」

なぜ疲れるという理由で教えて貰えるのか、大は疑問だった。しかし次の蓮見の言葉で納得がいった。

「1つでも注意された人は、放課後残って校庭の草むしりなんだ」

「「えぇっ!?」」

清々しい顔で重労働なことを口にする蓮見。
それを聞いて満は、急いでネクタイと襟を直し始めた。
大は、流石にあの生徒会がそんなことする訳と、聞き間違いと信じ、もう一度確認する。

「…マジですか?」

「マジですね」

「……」

大も、解かれかけていた靴紐をしゃがんで結び直した。

「…生徒会って、意外とスパルタ~」

「ね~」

裏で陰口を言う女子のような真似をしている2人に、蓮見は少しイタズラしてみた。

「……あ、生徒会長」

「「はいすいませんでしたーッ!!」」

2人、息ぴったり。しかも考えていることも同じで、蓮見は腹を抱えて笑ってしまった。

「……はすみ~~っ!」

「騙したね、俺らを」

この後、2人は同時に蓮見にくすぐりにかかってくるということを、今の彼には予想出来なかった。
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