18 / 24
凡人高校生
18話
しおりを挟む
「…俺だって話したかったんだ。でも、昔の俺は弱い野郎で、そこそこ人気だった大に話しかけることなんて出来なかった。
それでも、アイツに親友と呼べる存在はいなかったから俺もまだ安心できたんだ。
……でも…」
「でも?」
かなり羽橋の過去に足を踏み込んでいるが、もう戻れないと、最後まで話を聞くことにした。すると羽橋は、次はイライラした様子である人物の名前を述べた。
「それなのに、高校に上がってから、大は急に1人の奴に執着し始めた。…あの、……あの満って奴に!!」
名前すら言うのも不快なようで、歯をギシギシと鳴らしていた。
凛音はようやく納得したように羽橋の話に頷いた。
「つまり、俺の方が一緒にいた時間長いのに、なんでアイツなんだよー。…てことか」
「大に親友がいないから、俺は安心して生活することが出来たのに…。アイツが…アイツが……!!」
余程ショックだったらしく、生活にも支障が出たらしい。それほど大は羽橋にとって偉大な存在だったのだろう。
「だから俺はグレた」
「性格にも支障がッ!?」
過去と今で相当性格が変わったようで、昔はちゃんと勉強していたみたいだ。でもまだ変わりきれていなくて、今のように半泣きになってしまうのだろう。
「でも、最近は頑張って話すように努力してるんだ。…無理な時もあるけど。
あっ、聞いてくれよ凛音!俺昼休みアイツと喋ったんだ!!」
さっきまでの悲しい顔や怒った顔が嘘のように、今度は生き生きとした元気な表情に変わった。どうやら羽橋は、表情のバリエーションが豊富らしい。
「今までの話を聞く限り、それはすごい事だと言えるな。それで、どんなことをしたんだ?」
「それはな!……それはな……っ……」
またまた顔を紅潮させ、小っ恥ずかしそうに下を向いた。
目を泳がせ、指で頬を擦りながら答えた。
「…べ、弁当食わしてもらった………」
「へぇ…」
✻✻
「俺も楽しませてもらうぜ。…ハハッ」
「お前……毎回1人になった時を狙って」
「アイツが居ると俺が不愉快だからな」
屋上近くの階段で、男2人が何やら近寄り難い雰囲気の会話を交わしている。それは羽橋と大だった。
羽橋は大の隣にどかっと座ると、薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「何しに来たの?」
訝しんでいる大が彼の顔を覗く。羽橋は平然としており、言葉を紡いだ。
「俺は今腹が減っている。けど弁当もないし購買へ行く気力も残ってない。時間が有り余っているから、しょうがなくお前のところに来たまでだ」
「…素直に弁当分けてくださいって言えばいいのに」
「なッッ!!?」
グレにもグレきれていなかったようで、羽橋はすぐバレて敗北してしまった。それほどまでに、大の目には、今の羽橋はただの凡人に見えた。
「ちゃんと伝えたいことは伝えといた方がいいよ。はい卵焼き」
「…は?」
箸で取った卵焼きを、羽橋の前に差し出した。羽橋は頭が真っ白になり、言葉が詰まった。
「ん?どうした。ほらあーん」
「あ、あわ、…あ、あーんっ!」
「はは、力みすぎ」
自然に笑みが零れた大に、羽橋は目を奪われてしまう。卵焼きは最高に美味しかったそう。
あまりの美味しさに、羽橋はほかの具材も気になると、興味津々だった。
その視線に気づいた大は、ふっと静かに笑い、今度はハンバーグを箸で取って羽橋に差し出した。
「しょうがないなぁ。一緒に食べよ」
「!?……あ…お、お前がそう言うなら、…いい、けどさ……」
沈黙の中、満が戻ってくるまでの短い間、羽橋は大と2人きりの時間を過ごした。
✻✻
「…とまぁ、こんな感じだ」
「うんうんなるほどね。…じゃねぇッ!!」
羽橋の長い回想が終わると、凛音は我慢できずに思わず大声で突っ込んだ。
どうやら、回想直後から色々言いたい点はあったらしい。
「?どうした。そんな変人でも見たような顔して」
「多分それ正解。…はぁ、言いたいことは山ほどあるけど、最初に1つだけ」
小さく息を吸って心を落ち着かせた凛音は、真剣な眼差しで羽橋を直視した。
「…お前、今と話しかけた時との態度の差激しすぎ。天と地くらい違うぞ」
これだけ言ってしまえば、凛音はもうどうだっていいと考えるほどに、羽橋の性格の変わりように驚愕していた。
「や、だって……。大にこんな弱い姿、見せらんねぇだろ…」
そこは羽橋も男を見せたいと思ったらしく、素の自分を隠しているようだ。ただ、隠しきれていない点もいくつか見つかるが。
「でも、大さんと仲良くしたいんなら、素の自分を出した方がいいと思うぞ」
「でも……っ」
ウジウジしている羽橋を凛音はそっと自分に寄せて、羽橋の顔を、また自分の胸に優しく押し当てた。
「!?」
(…今まで先生してきて、こんな感じの女の子とか数え切れないほど見てきたけど、羽橋も同じだ。青春してるって感じの)
元教え子たちの顔を思い浮かべて、羽橋と重ねた。本当にそっくりで、凛音は少し微笑ましく、そして羨ましく思った。
「チャンスはまだいくらでもある。焦るな。本当のお前を見せるのかはお前次第だが、ゆっくりでいいんだぞ、ゆっくりで。辛かったら、いつでも俺のところに来い」
「……凛音センセー……」
そっと抱きしめられた羽橋は、大人しくじっと、凛音の胸の中でうずくまっていた。とても温かく、気持ちが良かったからだろう。
「おっ!今先生って言ってくれた」
「!?う、ウルセー!!今のは違う!勝手に口から出ただけだからノーカンだ!!」
「っははは…!どういうことだよ笑」
どうやら、いつもの羽橋に戻ったようで、彼に対する違和感がすっと消えたような気がした。
本音を曝け出せて、羽橋は憑き物が落ちたみたいで、また表情は、強気な男らしい顔となった。
「…はぁ。サンキュな凛音。なんか軽くなった気がするぜ。やる気も出てきたところだし、さっさと補習の続きを…」
「あー、…あのさ、羽橋」
「ん?」
凛音の膝の上から降りようとした羽橋を、彼は一旦ストップさせた。
そして、自分でもわからなかったが、羽橋に今の気持ちを告げた。
「……もう少しだけ、このままでいてくれ」
それでも、アイツに親友と呼べる存在はいなかったから俺もまだ安心できたんだ。
……でも…」
「でも?」
かなり羽橋の過去に足を踏み込んでいるが、もう戻れないと、最後まで話を聞くことにした。すると羽橋は、次はイライラした様子である人物の名前を述べた。
「それなのに、高校に上がってから、大は急に1人の奴に執着し始めた。…あの、……あの満って奴に!!」
名前すら言うのも不快なようで、歯をギシギシと鳴らしていた。
凛音はようやく納得したように羽橋の話に頷いた。
「つまり、俺の方が一緒にいた時間長いのに、なんでアイツなんだよー。…てことか」
「大に親友がいないから、俺は安心して生活することが出来たのに…。アイツが…アイツが……!!」
余程ショックだったらしく、生活にも支障が出たらしい。それほど大は羽橋にとって偉大な存在だったのだろう。
「だから俺はグレた」
「性格にも支障がッ!?」
過去と今で相当性格が変わったようで、昔はちゃんと勉強していたみたいだ。でもまだ変わりきれていなくて、今のように半泣きになってしまうのだろう。
「でも、最近は頑張って話すように努力してるんだ。…無理な時もあるけど。
あっ、聞いてくれよ凛音!俺昼休みアイツと喋ったんだ!!」
さっきまでの悲しい顔や怒った顔が嘘のように、今度は生き生きとした元気な表情に変わった。どうやら羽橋は、表情のバリエーションが豊富らしい。
「今までの話を聞く限り、それはすごい事だと言えるな。それで、どんなことをしたんだ?」
「それはな!……それはな……っ……」
またまた顔を紅潮させ、小っ恥ずかしそうに下を向いた。
目を泳がせ、指で頬を擦りながら答えた。
「…べ、弁当食わしてもらった………」
「へぇ…」
✻✻
「俺も楽しませてもらうぜ。…ハハッ」
「お前……毎回1人になった時を狙って」
「アイツが居ると俺が不愉快だからな」
屋上近くの階段で、男2人が何やら近寄り難い雰囲気の会話を交わしている。それは羽橋と大だった。
羽橋は大の隣にどかっと座ると、薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「何しに来たの?」
訝しんでいる大が彼の顔を覗く。羽橋は平然としており、言葉を紡いだ。
「俺は今腹が減っている。けど弁当もないし購買へ行く気力も残ってない。時間が有り余っているから、しょうがなくお前のところに来たまでだ」
「…素直に弁当分けてくださいって言えばいいのに」
「なッッ!!?」
グレにもグレきれていなかったようで、羽橋はすぐバレて敗北してしまった。それほどまでに、大の目には、今の羽橋はただの凡人に見えた。
「ちゃんと伝えたいことは伝えといた方がいいよ。はい卵焼き」
「…は?」
箸で取った卵焼きを、羽橋の前に差し出した。羽橋は頭が真っ白になり、言葉が詰まった。
「ん?どうした。ほらあーん」
「あ、あわ、…あ、あーんっ!」
「はは、力みすぎ」
自然に笑みが零れた大に、羽橋は目を奪われてしまう。卵焼きは最高に美味しかったそう。
あまりの美味しさに、羽橋はほかの具材も気になると、興味津々だった。
その視線に気づいた大は、ふっと静かに笑い、今度はハンバーグを箸で取って羽橋に差し出した。
「しょうがないなぁ。一緒に食べよ」
「!?……あ…お、お前がそう言うなら、…いい、けどさ……」
沈黙の中、満が戻ってくるまでの短い間、羽橋は大と2人きりの時間を過ごした。
✻✻
「…とまぁ、こんな感じだ」
「うんうんなるほどね。…じゃねぇッ!!」
羽橋の長い回想が終わると、凛音は我慢できずに思わず大声で突っ込んだ。
どうやら、回想直後から色々言いたい点はあったらしい。
「?どうした。そんな変人でも見たような顔して」
「多分それ正解。…はぁ、言いたいことは山ほどあるけど、最初に1つだけ」
小さく息を吸って心を落ち着かせた凛音は、真剣な眼差しで羽橋を直視した。
「…お前、今と話しかけた時との態度の差激しすぎ。天と地くらい違うぞ」
これだけ言ってしまえば、凛音はもうどうだっていいと考えるほどに、羽橋の性格の変わりように驚愕していた。
「や、だって……。大にこんな弱い姿、見せらんねぇだろ…」
そこは羽橋も男を見せたいと思ったらしく、素の自分を隠しているようだ。ただ、隠しきれていない点もいくつか見つかるが。
「でも、大さんと仲良くしたいんなら、素の自分を出した方がいいと思うぞ」
「でも……っ」
ウジウジしている羽橋を凛音はそっと自分に寄せて、羽橋の顔を、また自分の胸に優しく押し当てた。
「!?」
(…今まで先生してきて、こんな感じの女の子とか数え切れないほど見てきたけど、羽橋も同じだ。青春してるって感じの)
元教え子たちの顔を思い浮かべて、羽橋と重ねた。本当にそっくりで、凛音は少し微笑ましく、そして羨ましく思った。
「チャンスはまだいくらでもある。焦るな。本当のお前を見せるのかはお前次第だが、ゆっくりでいいんだぞ、ゆっくりで。辛かったら、いつでも俺のところに来い」
「……凛音センセー……」
そっと抱きしめられた羽橋は、大人しくじっと、凛音の胸の中でうずくまっていた。とても温かく、気持ちが良かったからだろう。
「おっ!今先生って言ってくれた」
「!?う、ウルセー!!今のは違う!勝手に口から出ただけだからノーカンだ!!」
「っははは…!どういうことだよ笑」
どうやら、いつもの羽橋に戻ったようで、彼に対する違和感がすっと消えたような気がした。
本音を曝け出せて、羽橋は憑き物が落ちたみたいで、また表情は、強気な男らしい顔となった。
「…はぁ。サンキュな凛音。なんか軽くなった気がするぜ。やる気も出てきたところだし、さっさと補習の続きを…」
「あー、…あのさ、羽橋」
「ん?」
凛音の膝の上から降りようとした羽橋を、彼は一旦ストップさせた。
そして、自分でもわからなかったが、羽橋に今の気持ちを告げた。
「……もう少しだけ、このままでいてくれ」
0
あなたにおすすめの小説
目が合っちゃった!!
瀬名
BL
楽観的で悩みなんてない俺の世界には好きなもので溢れている。
そんな俺の新しい好きは同じ学校の先輩!
顔が良すぎる先輩は眼福で毎日先輩をこっそり眺める日々。
しかし眺めるだけで幸せだったのに目が合っちゃった!!
顔が良すぎる先輩と楽観的で小動物系な後輩の高校生二人の溺愛物語です
※高校の授業の内容を覚えていないので適当です
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
【BL】ビジネスカップルなのに溺愛だなんて聞いてない
深爪夏目
BL
男性アイドルユニット「Vinbeat」(ヴィンビート)に所属 している四人組。
イケメンでダンスも上手いが刺激が欲しいとの提案で【真剣交際BLユニット】として活動するよう言われ、ビジネ スカップルを演じることとなる。
最初は恋愛対象でもないメンバーとの恋愛に嫌気が刺していたが次第にお互いの意外な一面や優しさに触れ、溺愛が止まらない…!
・BL兼コメディ小説です。
暴言などの表現がありますので苦手な方はご注意を。
話は続いておりますが、短編形式で進めていきます。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる