凡人高校生

ゆるだら公

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凡人高校生

19話

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__部活終わり

「タッイルのもあるしっ♪ふわとろっもあるけどっ♪やっぱり俺は包むやつー!!」

「…何?その独創的な曲と歌詞は」

部活が終わり、大を抜いた満、蓮見は、2人並んで帰っていた。そして今、蓮見は、作詞作曲満の、よくわからない歌を聞かされていた。

「これは、俺流オムライスの歌だ!」

歌を歌っている満の機嫌はよく、足取りも軽い。あと一歩でスキップしそうな勢いだった。

「タイル、…ふわとろ、包む……。あぁ…!なるほど、オムライスの種類的な?」

「そうそう!よくわかってんじゃん蓮見!」

ニッと、数歩前に出ていた満が振り返って笑う。それをもらって、蓮見も自然と微笑んだ。

「好きなの?オムライス」

「大ッッ好きだぜ!」

「……包むのが?」

「あぁ!大好きだ!!」

「……そう」

蓮見は何か考えた素振りで、「オムライスか…」と呟いた。そして何故か心臓の鼓動が早くなっているのを感知した。

満は、まだ「オムライス~」と口ずさんでいる。どうやら今日の夕飯がオムライスだかららしい。

「というか、大はどうしたの?」

「あー、なんか部活なくなったっぽい」

満の独特なうたで、大のことを忘れていた。満も歌うのをやめ、つまんなそうに空を見上げた。

「やっぱ急に誰かいなくなると、違和感というか、喪失感がすげぇな…」

「確かにそうだね」

「あ~、ダメだな俺。大ちゃんのことばっか頭に残ってる。頭爆発しそうだ…」

その言葉に蓮見は、ピクリと体が動いたが、気にせず満の顔を見た。

「でも、それはいい事なんじゃないかな」

「?なんでだよ…」

反省している満を肯定せず、ましてや否定しているわけでもないが、蓮見は自分が考えたことを素直に話した。

「満はそれだけ、大のことを想ってるって事だよ」

「ん~そうなのかー?」

立ち止まった満は、うーんと唸って、ぱっと蓮見に顔を合わせた。
その視線に、蓮見の鼓動はまた高まった。

「まっ、蓮見が言うんならそうなんだろうな。ありがと」

「っ!いや、こちらこそだよ」

鼓動の高まりのせいで、段々と胸が気持ち悪くなってくるのを感じた。心臓は何を思っているんだろうか。

小股で走り出した満は思い出したように「あ、そうだ」と呟き、勢いを緩めて体を翻した。その時の満は、満面の笑みだった。

「俺は大ちゃんも、蓮見もちゃんと想ってるからな!」

「っ!!?」

ぶわっと、顔銃が熱くなるのを感じた。唇も震えており、汗も流れてきた。今の蓮見は、爽やかイケメンとは程遠い存在だった。

満は、蓮見が何を考えているのかわからないので、そのまま前を向いて歩き始めた。もうすぐ夏というのに、満は何故か涼しい顔をしていた。

「……あ、…ありがとう……」

草がなびく音より小さな声で、蓮見は呟いた。そんな声は、夕方の太陽と共に霞んで消えていった。



_____✻✻_____



__蓮見家

「はぁぁぁ………、クッソ……」

マンションの部屋から、大きなため息が聞こえてくる。その声の主の蓮見は、机に向かって課題に手をつけていた。

「…なんだよこの問題…。文字と数字と記号ばッか。……足し算してぇ」

どうやら、数学の課題が難しいようで、頭を抱えていたようだ。いつもテストで上位を維持している蓮見が、問題でこんなに悩む姿は、きっと誰も想像できないだろう。
蓮見は、初めから全てが簡単に解けるわけではなく、ちゃんと悩んで、ちゃんと理解してテストに臨んでいるようだ。

すると、いつものように窓から声が聞こえてきた。

「この我が教えてやろうか?秀才の蓮見くんっ」

「……うるせぇ、邪魔すんなバカ」

最近は毎日のように現れる、蓮見の上の階の住民燈籠は、今回もロープを使って降りてきて、蓮見の部屋に侵入した。
蓮見は段々慣れてきたようで、ビクリと驚くことも無くなった。だがそれでも、早く帰って欲しいと思う気持ちは変わらなかった。

「解らないなら訊くのが1番だぞ?…え~どれどれ~?」

「ちょッ!勝手に見んな犯罪者!!」

蓮見の言葉を無視し、燈籠はまじまじと問題を見た。

「なんだ、こんなものか。これはなぁ、ここがこうなって、こうして、…こうだぞ」

「……は?…は、え?……」

見事にスラスラと問題を解いていった燈籠に、蓮見は動揺を隠しきれなかった。
確かに、正確な年齢はわからないが、燈籠は蓮見よりも年上なので、知っていてもおかしくは無い。しかし蓮見のイメージでは、燈籠は勉強ができないヘラヘラ不法侵入者になってしまっているので、想像と違う彼を見て更に蓮見は驚いた。

「…?そなた、どうしたのだ?」

「…お前って、結構勉強できるんだな」

蓮見の発言に呆然とした燈籠は、クスッと微笑んだ。微笑んだ際に、燈籠の尖った綺麗八重歯が姿を見せた。

「何を言っている。我はそなたより歳が上だ。わかって当然だよ」

平然とした綻びに、どこか大人な雰囲気を感じた。行動は変人そのものなのだが、こうして自然に笑うと、やはり大人なのだなと痛感した。

「…うぜぇ…。でも頭いいなら、やっぱいい仕事とかしてんの?」

頭のよさは認めた蓮見は、彼の仕事について訊いてみた。実際、不法侵入する人がどんな仕事をしているのか、少し興味が湧いたのだ。
しかし燈籠は、頭に?を浮かべて首を傾げた。

「仕事?我はやってないぞ」

「?…じゃあ大学生とか?」

「それも違うぞ」

「…え、まさか……」

蓮見の頭に唐突に嫌な予感が過った。そして、この質問はするべきじゃないと悟った。

「我、ニートだぞ」

蓮見はこの瞬間からさらに、燈籠に近づかないようにしようと思った。そして軽蔑した目で蓮見は彼を見つめた。

「おや?そなたニートがそんなに嫌か」

「働けクズが」

「わお急に辛辣。…いやいつものことか」

今まで蓮見は、勉強を教えてもらったから悪口を抑えていたらしく、これからも少なくしていこうと1%くらい考えていた。
しかし、燈籠が働かないニートだと知ってその気も失せたらしい。0%に元通りだ。

「つーか仕事しろよ。何呑気に俺の部屋入ってきてんだ」

もっともな考えであり、気になる疑問だった。燈籠は頭がいいのだがら、頑張ればすぐにOK出してくれる会社もあるだろうに。

「…働かないというか、働けないんだけどね」

「…どういう…?」

小さく答えた時、燈籠は窓を開けていてベランダに出ていた。そろそろ帰るのだろう。
燈籠は最後に、蓮見に告げた。

「その理由が知りたかったら、我の家まで来るといいぞ」

「………」

そうしてそのまま、燈籠はロープを使って自分の部屋へと戻っていった。
蓮見も気が抜けて体が軽くなり、ベッドの上に勢いよく飛び込んだ。

「……意味わかんねぇ…」

蓮見はそれだけ呟き、気づいた時にはもう目を瞑って夢の中だった。
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