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ベオウルフ
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竜が攻めてくる。そんな知らせを聞いてやってきたのは老いた狂戦士
竜の咆哮で兵士は皆逃げさった。それでいい、化け物は俺が引き受ける。だから逃げとけと後を押した。竜と男の一騎打ち
「いっちょ気張れやァ!我が名は狂戦士、此処に死なんッ!ハッハッハッハッハ!」
天に掲げろその宣誓を
燃え滾る熔鉄の闘志、その男は生存を願わない覚悟をキメたイカレ野郎。民の平和を守るため、眼前の狂える竜をぶち殺せ
老いた?だから何だ、我が心は永劫不滅の狂戦士
鋼の躯体を軋ませて、彼方に往かんと轟き吠えろ。さぁ、今こそ示せ狂戦士
「人間如きがァ!」
放たれるは地獄の業火も温いと感じるほどの赫怒の焔。老王が構えた鋼の盾など簡単に溶かし尽くしてしまうのは自明の理というものだ
「温い……温いぜクソトカゲ。なぁ、おい。俺の守るべき愛しき民が丹精込めて作ってくれたんだぜ?その想いが、その熱が……チンケな炎程度で溶かされるとでも?オルァ!」
竜は瞠目する。何故なら鋼鉄の盾程度ならば簡単に溶かせるし、今までも溶かしてきた。一体なんだ、魔法の盾とでもいうのか
その一瞬が仇となり、腕部に強烈な斬撃を貰う。だがしかし、竜の鱗は切り裂けない。少なからず動揺していた竜はその光景を見て安堵する
「貴様の剣では我が鱗を切り裂けん、貴様が我を殺す手段は無いのだ。大人しく死ねいッ!」
もう一度、もう一度。今回はもっと熱を上げて焔を吐き出す。地面がマグマの如く赤熱し、生の気配など無くなるのだ……無くなるのだが。何故だ、何故こんなにも煌々と命の熱を感じるのだ
「クソトカゲ……いい事を教えてやる。男にはな、生まれた時から便利な無敵能力が備わってるんだ。気合いッ!根性ッ!我慢ッ!男の子って奴ァコレだけで無敵のヒーローになれるんだよッ!」
いや、おかしいだろその理屈。巫山戯るなよ。何故、世界を焼き払う炎を浴びて鉄の盾が使い物にならなくなっただけという結果なのだ。常識に従ってくれ
高速で突っ込んでくる狂戦士を世界を抉りとる剛腕で薙ぎ払う。直撃すれば城さえ砕くのだ、吹き飛ばされ─────
「おう、やるじゃねぇかクソトカゲ……だがァ!ふんぬぅッ!」
何故、こちらの腕が吹き飛ばれるのだ。めちゃくちゃ過ぎるだろう、気合いや根性でどうにかなる次元を凌駕している。魔神か何かかこの男、世界の英傑と言えども対抗出来るのは一握りだぞ。それも半神のような生まれからして隔絶した者が大半だ。この男もそうだと言うのか?だが、あまりにもそうは感じない
胸部に走る痛烈な斬撃。衝撃までは殺しきれてないのだろう。痛みが体内を駆け巡る
こんな連打を貰い続ければ万が一が起こりえない。ならば、飛んで上から一方的に焼き尽くすのみ。飛ばなければ
「逃がさんぞ」
羽根の根元を掴む。大方、飛んで焼き払おうなどと考えているのだろう。ならば、取るべき策は一つ。羽根をへし折って、引き裂いて飛べなくしてやればいい。不可能なんて存在しない、足りない部分は気合いと根性で補えばいい
此処で俺が倒れたら、国の民はどうなる。蹂躙され、死が蔓延るのは火を見るより明らかだろう。ならば、生かしておけん
民の明日と希望を守るため、老いたこの身を炉に焚べよ。魂を燃やせベオウルフ!貴様は民の希望なのだから!
いやいやいやいや、そんな馬鹿な。鋼鉄の柱よりも硬いのだぞ。そんな理不尽がまかり通るなんて許せはせん
身動ぎ、暴れ、跳ね回る。しかし、がっしりと羽根を掴んだ狂戦士は振り落とされる事無く無情にも竜の内側から軋むような音が湧き上がる。そして遂に、歪な音を立てて片羽根は無惨にも折れてしまう
「ギャァァァァァアアアアアア」
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
不条理も大概にしろ。何故だ、何故こんな男にこんな力があるのだ。殺してバラして蹂躙して踏み躙って……ぐちゃぐちゃにしてやらなければ気が済まない
「考え事か?悠長なこったなァ!」
腹部に更に強力な一撃。血が口から零れ落ちる。鱗は切り裂かれていない、しかし凄まじい衝撃が体内を痛め付ける。早く、これ以上手をつけられなくなる前に殺さなくては
油断も傲慢も捨てた。何度も何度も……大地を抉る巨爪で、山をも砕く剛尾で、天をも喰らう竜の牙で殺さんとする
その尽くを退けられる。だが、押している。攻撃の隙を与えるな。速く、鋭く、力強く……効率的に殺さなければッ!
そして、次の瞬間戦況は大きく変わった
狂戦士の剣が折れたのだ
武器無しではどんな戦士でも戦えぬ。いや、このベオウルフならば勝てぬと分かっても戦うだろう
だから……だから。ベオウルフは奮起する
ここからが本番だと
刹那、竜の腹部に入る痛烈な一撃
「は?」
な、何が起こった。武器は破壊した、もう抗う手段など……
竜は戦慄した。だってそうだろう、予想が正しければこれ程恐ろしいものは無い。嫌だ、頼む、間違っててくれ。魔剣や聖剣、神器を隠し持っていたと言ってくれ。土壇場で覚醒でもしたと言ってくれ……だって、そうじゃなければ……
恐る恐る敵対する男を見る。最悪の予想は的中した
「男はよ……生まれた時から最強の武器を持ってんだ。磨き抜けば、それこそ天下を取れるほどのな」
拳を構えた男が不敵に笑って佇んでいる。それはそうだろう、叙事詩『ベオウルフ』を知っている諸君ならば彼が王位を得るきっかけになったグレンデル討伐の逸話を知っているはずだ
しかし、哀しいかなそんな事など竜は知るはずもない。故に、こう叫ぶ
「何故、何故剣を構えているよりその方が堂に入っているのだ!?巫山戯るなよ貴様、何故、拳の方が強いのだ!?」
有り得ない、巫山戯るな。普通に考えれば剣の方が強いだろう。何故貴様は拳で殴る方が威力が高いのだ
化け物か貴様
「そりゃあ、俺が男だからさ。みんなの明日を守る天下無敵の大英雄、ベオウルフ様がステゴロで負けるわけねぇんだよッ!」
やはり硬い。ビリビリと体の芯が痺れてやがる
いくら気張った所でかつて程の力はない。今は誤魔化しているが身体が微かに悲鳴を上げているのを俺は聞き漏らさない
しかし、しかし殺さねば。我が名はベオウルフ
民の安寧を守りし護国の王。皆の明日を担う英雄
ここで負ければあとは無い
死に場所は此処だ。そう決めた
命を燃やし尽くしてこの竜を必ず殺す。だから、だからもう少しだけ持ってくれ
老いた我が身体よ……もう少しだけ力を……
「死ねぇい!死ねぇい!死ねぇい!」
半狂乱で繰り出される無数の連撃、軌道は読みやすいが身体が鈍ってきた。最適解を選び抜き、ギリギリの生を勝ち取る
裂傷が増え、打撲が増え、身体が砕けそうになる一撃を受け止める
まだだ、まだだ。まだ死ねない
守るべき者の顔を思い浮かべるだけで死にかけの身体に活力が湧いてくる
やるじゃねぇか、それでこそ俺の身体だ
「ぐふっ……へへっ、鈍ってねぇか?クソトカゲさんよぉ!」
意識が飛かける一撃を貰い、それでも今回も生を繋ぎ止めた
そして虚勢を精一杯張る。不敵に笑い続ける
死神の嘲笑が耳元で聴こえてきやがった
うるせぇ、口が臭ぇぞクソ野郎
俺は此奴をぶち殺すんだ、後で地獄でも何処でも行くから黙っとけ
死闘と表現するのも生温い戦いが繰り広げられる。もう、互いの命の灯火は僅か
圧倒的強者たる竜に歯向かう為に、男は幾度となく奇跡を引き起こして生存してきた。しかし、奇跡は奇跡、必然ではないのだ
「取ったァ!」
竜は勝ちを確信した。腹部を抉り、臓腑を露見させた。これまでの疲労を鑑みるに即死だろう
やっとだ、やっと終わる
「ぁ……くっ……」
消えていく命。死神が俺を迎えにやってきた
最悪だ、俺は……俺は……
「お、王様!」
その頼りなく、か細い声が俺の意識を急速に覚醒させる。なんで、なんで残ってる
サッサと帰れと言っただろう
頼りない若い家臣を見て狂戦士は逃げろと叫ぼうとする
もう俺はダメだ、せめて、せめて……
走馬灯が脳裏に走る。国民の笑顔、幸せ、優しさ
あぁ……
蘇れ───────ベオウルフ
「こんなの立ち上がるしかねぇだろぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」
死?知ったことか、これが最後だ。欲張ってやるよ。あと一撃、それでぶち殺す
魂を燃やせ、心を燃やせ、高らかに叫ぶんだ
「我が名は狂戦士ッ!此処に死なんッ!」
鋼の躯体はもはやズタボロ
しかし、燃え滾る闘志は微かに残ってる
だが、だがそれだけじゃないんだ。守るべき民が、仲間が居るから俺はッ!
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお」
竜の心臓を素手で穿つ
馬鹿げた偉業を死に際に成し遂げた。全く、コレだから人生面白い
崩れ落ちる竜と共に、狂戦士であった王は倒れる
「王様!!」
バカ、うるせぇ、叫ぶな
俺はもう助からねぇ
だけどよ……
「おい……感謝するぜ……テメェのお陰で立ち上がれた……後は……頼んだぜ」
頭の悪い王様だったが、それでも……国のことは大好きだったんだ
だから……頼んだぜ
臣下に後を任せ、老いた狂戦士は眠りについた
竜の咆哮で兵士は皆逃げさった。それでいい、化け物は俺が引き受ける。だから逃げとけと後を押した。竜と男の一騎打ち
「いっちょ気張れやァ!我が名は狂戦士、此処に死なんッ!ハッハッハッハッハ!」
天に掲げろその宣誓を
燃え滾る熔鉄の闘志、その男は生存を願わない覚悟をキメたイカレ野郎。民の平和を守るため、眼前の狂える竜をぶち殺せ
老いた?だから何だ、我が心は永劫不滅の狂戦士
鋼の躯体を軋ませて、彼方に往かんと轟き吠えろ。さぁ、今こそ示せ狂戦士
「人間如きがァ!」
放たれるは地獄の業火も温いと感じるほどの赫怒の焔。老王が構えた鋼の盾など簡単に溶かし尽くしてしまうのは自明の理というものだ
「温い……温いぜクソトカゲ。なぁ、おい。俺の守るべき愛しき民が丹精込めて作ってくれたんだぜ?その想いが、その熱が……チンケな炎程度で溶かされるとでも?オルァ!」
竜は瞠目する。何故なら鋼鉄の盾程度ならば簡単に溶かせるし、今までも溶かしてきた。一体なんだ、魔法の盾とでもいうのか
その一瞬が仇となり、腕部に強烈な斬撃を貰う。だがしかし、竜の鱗は切り裂けない。少なからず動揺していた竜はその光景を見て安堵する
「貴様の剣では我が鱗を切り裂けん、貴様が我を殺す手段は無いのだ。大人しく死ねいッ!」
もう一度、もう一度。今回はもっと熱を上げて焔を吐き出す。地面がマグマの如く赤熱し、生の気配など無くなるのだ……無くなるのだが。何故だ、何故こんなにも煌々と命の熱を感じるのだ
「クソトカゲ……いい事を教えてやる。男にはな、生まれた時から便利な無敵能力が備わってるんだ。気合いッ!根性ッ!我慢ッ!男の子って奴ァコレだけで無敵のヒーローになれるんだよッ!」
いや、おかしいだろその理屈。巫山戯るなよ。何故、世界を焼き払う炎を浴びて鉄の盾が使い物にならなくなっただけという結果なのだ。常識に従ってくれ
高速で突っ込んでくる狂戦士を世界を抉りとる剛腕で薙ぎ払う。直撃すれば城さえ砕くのだ、吹き飛ばされ─────
「おう、やるじゃねぇかクソトカゲ……だがァ!ふんぬぅッ!」
何故、こちらの腕が吹き飛ばれるのだ。めちゃくちゃ過ぎるだろう、気合いや根性でどうにかなる次元を凌駕している。魔神か何かかこの男、世界の英傑と言えども対抗出来るのは一握りだぞ。それも半神のような生まれからして隔絶した者が大半だ。この男もそうだと言うのか?だが、あまりにもそうは感じない
胸部に走る痛烈な斬撃。衝撃までは殺しきれてないのだろう。痛みが体内を駆け巡る
こんな連打を貰い続ければ万が一が起こりえない。ならば、飛んで上から一方的に焼き尽くすのみ。飛ばなければ
「逃がさんぞ」
羽根の根元を掴む。大方、飛んで焼き払おうなどと考えているのだろう。ならば、取るべき策は一つ。羽根をへし折って、引き裂いて飛べなくしてやればいい。不可能なんて存在しない、足りない部分は気合いと根性で補えばいい
此処で俺が倒れたら、国の民はどうなる。蹂躙され、死が蔓延るのは火を見るより明らかだろう。ならば、生かしておけん
民の明日と希望を守るため、老いたこの身を炉に焚べよ。魂を燃やせベオウルフ!貴様は民の希望なのだから!
いやいやいやいや、そんな馬鹿な。鋼鉄の柱よりも硬いのだぞ。そんな理不尽がまかり通るなんて許せはせん
身動ぎ、暴れ、跳ね回る。しかし、がっしりと羽根を掴んだ狂戦士は振り落とされる事無く無情にも竜の内側から軋むような音が湧き上がる。そして遂に、歪な音を立てて片羽根は無惨にも折れてしまう
「ギャァァァァァアアアアアア」
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
不条理も大概にしろ。何故だ、何故こんな男にこんな力があるのだ。殺してバラして蹂躙して踏み躙って……ぐちゃぐちゃにしてやらなければ気が済まない
「考え事か?悠長なこったなァ!」
腹部に更に強力な一撃。血が口から零れ落ちる。鱗は切り裂かれていない、しかし凄まじい衝撃が体内を痛め付ける。早く、これ以上手をつけられなくなる前に殺さなくては
油断も傲慢も捨てた。何度も何度も……大地を抉る巨爪で、山をも砕く剛尾で、天をも喰らう竜の牙で殺さんとする
その尽くを退けられる。だが、押している。攻撃の隙を与えるな。速く、鋭く、力強く……効率的に殺さなければッ!
そして、次の瞬間戦況は大きく変わった
狂戦士の剣が折れたのだ
武器無しではどんな戦士でも戦えぬ。いや、このベオウルフならば勝てぬと分かっても戦うだろう
だから……だから。ベオウルフは奮起する
ここからが本番だと
刹那、竜の腹部に入る痛烈な一撃
「は?」
な、何が起こった。武器は破壊した、もう抗う手段など……
竜は戦慄した。だってそうだろう、予想が正しければこれ程恐ろしいものは無い。嫌だ、頼む、間違っててくれ。魔剣や聖剣、神器を隠し持っていたと言ってくれ。土壇場で覚醒でもしたと言ってくれ……だって、そうじゃなければ……
恐る恐る敵対する男を見る。最悪の予想は的中した
「男はよ……生まれた時から最強の武器を持ってんだ。磨き抜けば、それこそ天下を取れるほどのな」
拳を構えた男が不敵に笑って佇んでいる。それはそうだろう、叙事詩『ベオウルフ』を知っている諸君ならば彼が王位を得るきっかけになったグレンデル討伐の逸話を知っているはずだ
しかし、哀しいかなそんな事など竜は知るはずもない。故に、こう叫ぶ
「何故、何故剣を構えているよりその方が堂に入っているのだ!?巫山戯るなよ貴様、何故、拳の方が強いのだ!?」
有り得ない、巫山戯るな。普通に考えれば剣の方が強いだろう。何故貴様は拳で殴る方が威力が高いのだ
化け物か貴様
「そりゃあ、俺が男だからさ。みんなの明日を守る天下無敵の大英雄、ベオウルフ様がステゴロで負けるわけねぇんだよッ!」
やはり硬い。ビリビリと体の芯が痺れてやがる
いくら気張った所でかつて程の力はない。今は誤魔化しているが身体が微かに悲鳴を上げているのを俺は聞き漏らさない
しかし、しかし殺さねば。我が名はベオウルフ
民の安寧を守りし護国の王。皆の明日を担う英雄
ここで負ければあとは無い
死に場所は此処だ。そう決めた
命を燃やし尽くしてこの竜を必ず殺す。だから、だからもう少しだけ持ってくれ
老いた我が身体よ……もう少しだけ力を……
「死ねぇい!死ねぇい!死ねぇい!」
半狂乱で繰り出される無数の連撃、軌道は読みやすいが身体が鈍ってきた。最適解を選び抜き、ギリギリの生を勝ち取る
裂傷が増え、打撲が増え、身体が砕けそうになる一撃を受け止める
まだだ、まだだ。まだ死ねない
守るべき者の顔を思い浮かべるだけで死にかけの身体に活力が湧いてくる
やるじゃねぇか、それでこそ俺の身体だ
「ぐふっ……へへっ、鈍ってねぇか?クソトカゲさんよぉ!」
意識が飛かける一撃を貰い、それでも今回も生を繋ぎ止めた
そして虚勢を精一杯張る。不敵に笑い続ける
死神の嘲笑が耳元で聴こえてきやがった
うるせぇ、口が臭ぇぞクソ野郎
俺は此奴をぶち殺すんだ、後で地獄でも何処でも行くから黙っとけ
死闘と表現するのも生温い戦いが繰り広げられる。もう、互いの命の灯火は僅か
圧倒的強者たる竜に歯向かう為に、男は幾度となく奇跡を引き起こして生存してきた。しかし、奇跡は奇跡、必然ではないのだ
「取ったァ!」
竜は勝ちを確信した。腹部を抉り、臓腑を露見させた。これまでの疲労を鑑みるに即死だろう
やっとだ、やっと終わる
「ぁ……くっ……」
消えていく命。死神が俺を迎えにやってきた
最悪だ、俺は……俺は……
「お、王様!」
その頼りなく、か細い声が俺の意識を急速に覚醒させる。なんで、なんで残ってる
サッサと帰れと言っただろう
頼りない若い家臣を見て狂戦士は逃げろと叫ぼうとする
もう俺はダメだ、せめて、せめて……
走馬灯が脳裏に走る。国民の笑顔、幸せ、優しさ
あぁ……
蘇れ───────ベオウルフ
「こんなの立ち上がるしかねぇだろぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」
死?知ったことか、これが最後だ。欲張ってやるよ。あと一撃、それでぶち殺す
魂を燃やせ、心を燃やせ、高らかに叫ぶんだ
「我が名は狂戦士ッ!此処に死なんッ!」
鋼の躯体はもはやズタボロ
しかし、燃え滾る闘志は微かに残ってる
だが、だがそれだけじゃないんだ。守るべき民が、仲間が居るから俺はッ!
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお」
竜の心臓を素手で穿つ
馬鹿げた偉業を死に際に成し遂げた。全く、コレだから人生面白い
崩れ落ちる竜と共に、狂戦士であった王は倒れる
「王様!!」
バカ、うるせぇ、叫ぶな
俺はもう助からねぇ
だけどよ……
「おい……感謝するぜ……テメェのお陰で立ち上がれた……後は……頼んだぜ」
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