餅太郎の恐怖箱【一話完結 短編集】

坂本餅太郎

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011.ママ友

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 これは私が実際に体験した奇妙な話。
 
 同じような体験をしたという方がいたら、ぜひお話を伺いたいと思っています。
 
 未だにあれがなんだったのか、私には分からないのです。

 ある日の買い物中、息子と同じ幼稚園に通うお友達のママと会いました。そのママの事は以下A子と呼びます。
 
 お互いの家が近く、息子同士が同じクラスだったということもあり比較的早く仲良くなりました。
 
 ただA子には少々問題があり、誰かの家にA子を招待すると必ずと言っていいほど高い確率で物がなくなるというのです。
 
 ただ、それを除けば普通のママ友です。

 ある日A子と日頃の疲れを癒すということで、温泉旅行に行こうという話になりました。

 お互いの子供はお互いの旦那に任せるということで1泊2日の旅行です。
 
 電車を乗り継ぎ、無事時間通りに旅館に着くことができました。

 日々の疲れも温泉で癒されいよいよ帰る日、私たちは行きと同じ電車に乗ったつもりでした。
 
 私は早々に寝てしまったのですが、ふと目を覚ますと電車はトンネルの中を走っていたのか暗かったです。
 
 それから十分ほど経ったのですが、いつまで経ってもトンネルを抜ける様子が無かったのでA子に話しかけると、「あなたが寝てからずっとこんな感じだよ」と言いました。

 いくら何でも私が寝てからずっとトンネルの中に居るのは可笑しいと思いました。

 何が起きているのかと考えていると、突然電車が止まり扉が開きました。

 少し怖くなっていた私はA子の腕を引っ張り、転がるように電車から降りました。
 
 駅名のアナウンスもよく聞かないまま降りてしまったので駅名が書いてある看板を見ましたが、そこに書かれている駅名は聞いたことがありません。
 
 A子は疲れたのか、駅のホームに設置されている椅子に座ろうとしました。
 
 その時A子が大きな声で「見てよ! 財布とかいっぱい忘れ物があるよ!」と言いました。

 よく見れば財布だけではなく、見たことの無いお菓子や飲み物、他にも色々なものが無造作に椅子の上に置かれていました。
 
 A子は、「ラッキー! お腹すいてたんだよね!」といいながら躊躇う様子もなく置かれているお菓子を食べ始めました。
 
 いくら何でも忘れ物だし、食べるのは駄目ではないかと私が言っても、B子は「大丈夫、大丈夫! お菓子ぐらいなら平気でしょ~」といいながら引き続き食べ進めていました。
 
 私にも勧めてきましたが、忘れ物か人為的に置いていったものであると考えると食べる気にはなりませんでした。
 
 そして私がキョロキョロと辺りを見回している間にA子はあろうことか、置かれていた財布にも手を出しました。

 財布は流石にマズイと思い、私はA子を必死で止めると諦めたように不貞腐れた様子で財布を元の位置に戻していました。

 駅に設置されている時計をみると23時を指していました。私達が旅館をでたのは15時くらいでしたので、かなりの時間電車に揺られていたことになります。
 
 体感では気づきませんでしたが、行きよりも倍以上の時間がかかっているのです。
 
 流石にA子もおかしいと思ったのか、すこし焦った様子でした。

 やっとマズイ状況に置かれていると悟った私達は出口を探すために歩き始めたのですが、進んでも進んでも出口らしきものは見当たりません。
 
 歩き疲れてしゃがんでいると、降りた時とは逆の側に電車がやってきました。私達はその電車に急いで乗り込みました。
 
 やっと意味のわからない空間から出られると安心した私ですが、何故か先に電車に乗ったはずのA子がいないことに気づきました。

 確実に私の先に乗ったはずなのでいないはずがありません。
 
 車内を歩き回ってA子を探しましたが一向に見つかりませんでした。
 
 そうこうしているうちに、A子が降りる駅に到着したというアナウンスが流れました。

 既にA子は降りてるかもしれないと思い、A子を探すことを諦め、自宅の最寄り駅で降りました。
 
 その日はもう遅かったので翌日A子のスマホにメッセージを送りました。しかし、送ってから一週間ほどが過ぎても反応どころか既読もつきません。
 
 既読がつかないどころか、姿すらも見ていません。比較的近くに住んでいることから何日かに1度は顔を合わせていたので不自然に思いました。
 
 そして二週間が経とうとしている時に、他のママ友にA子の事を話したのですが誰もが「A子って誰?」と口を揃えて言います。
 
 私は事前に温泉旅行に行くことを他のママ友に伝えていたので、私と一緒に旅行行った人だと言うと「だからA子って誰? 温泉旅行は家族で行ったんじゃないの?」と言います。
 
 いよいよ可笑しいと思った私はA子の旦那さんに連絡をしました。ところがA子の旦那さんもA子を知らないと言います。
 
 A子の子供にも聞いてみましたが、旦那さんが私を頭の可笑しな人だと思ったらしく、帰らないと警察を呼ぶと言われてしまったので私は家に帰りました。

 それから一ヶ月以上経っていますがA子のことは誰も知らない様子です。
 
 一体何がどうなっているのか、今でも謎に包まれたままです。
 
 このような話に心当たりのある方は、是非一度ご連絡いただけますと幸いです。
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