幽くんは噛み合わない

柚木

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幽くんと告白

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 私、柳下 桜やなぎした さくらには恋人がいます。
 彼の名前は結城 幽ゆうき かすか同い年で同じクラス、その上私の隣の席に彼が座っています。身長が高くイケメン、そして何より大人っぽい所が最高!
 そんな最高の男子だけど彼には少し変わった所がある。

 彼は霊感がある。

 霊感があるとわかったのは、私が告白をするために校舎に呼び出した時でした。



 人生で初めての告白にドキドキしながら幽くんを待っていると話し声が聞こえてきます。

「告白とは限らないだろ。それに俺柳下さんと接点がほとんどないぞ?」

 幽くんが来てくれたことに喜ぶと同時に、一人じゃないことに驚いて私は植木の影に隠れてしまいました。

「ほら見ろ、ただの嫌がらせだって」

 現れたのは幽くん一人です。
 あれ、誰かと話してたと思ったけど。誰かと通話してるのかな? でも通話してる風じゃないよね?

「嫌がらせだからってお前と付き合いはしないからな」

 ん? 告白された人に相談してるの? 幽くんって『お前とはそういう関係にはなれないが、側にいることくらいなら許してやるぜ』みたいなこと顎クイしながら言う俺様系なの? でもそれはそれでいい!

「そもそもお前は死んでるだろ。いい加減に成仏しろよ」

 …………ん?

「いや、愛に生死は関係あるだろ。そんなセリフは生きてる時に恋人同士がいうものだろ」

 あれ? もしかして私が隠れてることバレてるの? それで勝手にこんな芝居始めちゃったの? 私からかわれてる?

「そのセリフは幽霊のお前が言うと冗談に聞こえないからな」

 その幽霊さんに何を言われてるの? 幽霊の冗談ってどんななの?
 私の目には未だに幽くんしか映ってないけど、幽くんの会話の感じからして目の前に誰かが居るのは確かだよね?
 私はどうしたらいいの? 出て行った方がいいの? それとも何もなかったことにした方がいいの?

「とりあえず誰もいないみたいだし、俺は帰るからお前も早く帰れよ」

「ま、待って! あぶっ!」

 その時私は盛大にこけました突然立ち上がり植木に足を取られ、そのまま植木に顔から飛び込んでしまいました。

「えっと、大丈夫?」

「はい、大好きです!」

 私は何を思ったのか盛大に大丈夫と大好きを言い間違えました。いえ間違えてはいないのですがここでいうつもりは当然ありませんでした。何一つ思い通りにいかない日はあるものです。

「ふっ、あはは! 柳下さん最高だよ。本当に面白いよ!」

 この時に傷ついたとは思いませんでした。今となっては恥ずかしくて転げまわりたいですけど……。この時はそんな自分の恥よりも幽くんの笑顔が見れて嬉しかったのです。しかも幽くんは私の手を握ってくれています。恥を上回るほどの嬉しさでした。

「笑いすぎたね、ごめん。それで呼び出しておいてそんな所に隠れていたのはなんで? 俺をだましたの?」

 私を立ち上がらせてくれた上にこんな微笑みは反則だと思いました。
 一瞬で真っ赤に染まる私はしどろもどろになりながら伝えようと思ったことを言いました。

「初めて見た時から大好きです。私と付き合ってください!」

「いいよ。俺も柳下さん好きだか――」

 不意に言葉が途切れたと思ったら何やら幽くんの目線が隣を向いており、一度強く頷くと私の手を引いて壁際に連れて行きました。

「え、何?」

 次の瞬間、幽くんは私の顔の横に手を突きます。そして私の顎を軽く持ち上げました。

「いいぜ、俺様の恋人にしてやるよ」

 そんな俺様系の言葉をものすごく下手な棒読みで言われてしまいました。
 私がどう反応していいか考えていると幽くんの顔が徐々に赤くなっていきます。

「ってダメじゃん! 完全に引いてるよ、ダメじゃんか!」

「ずっと聞きたかったんだけどさっきから誰と話してるの?」

「えっ、あっ、その、んーと……、幽霊。俺幽霊が見えるんだ」

 こうして私は告白と同時に幽くんが霊感がある人だと知りました。

 見えている世界が違う私と幽くんの噛み合わない日常はこの日から始まりました。
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