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幽くんと紫陽花
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幽くんは雨の日になると少し辛そうな顔をします。
小さいころに何かあったらしいのですが、何も話してくれたりはしてくれません。
霊感のある幽くんですから、幽霊に関することで何かあったんだと思います。
「今日も雨か……」
雨が続いてもう四日目。何もない私でさえ憂鬱な気分になってしまいます。
梅雨前線とか高気圧低気圧なんて言葉が。テレビからひっきりなしに聞こえる時期になってしまいました。
「いつも雨になるとそうなるけど何かあったの?」
私は思い切って幽くんに聞いてみました。
恋人になってからもう二か月です。少しくらい踏み込んだ質問をしてもいいんじゃないでしょうか。
「ああ、別に雨がってわけじゃないんだけど、少し嫌な思い出があるんだよ」
とても言い辛そうです。
これは本格的に幽霊さんと何かあったのだと思います。
もしくは甘酸っぱい失恋話でしょうか? 彼女として少し複雑ですが、今カノとしてそこは寛大な心で聞いてみようと思います。
「へえ、どんな思いで? 良かったら聞かせて欲しいな。話をすることで楽になることもあるし」
決して野次馬感覚で聞いているわけではありません。
彼女として彼氏の過去を知るのは当然で当たり前です。
「いや、これを聞いたら桜に嫌われるかもしれないな」
一体何をしでかしたのでしょうか? 幽霊だと思って人を殺めたのでしょうか? それとも小学生で誰かを妊娠させてしまったのでしょうか?
「大丈夫だよ。私はいつまでも幽くんの事大好きだから!」
「桜、嬉しいけど恥ずかしいから」
言われて未だ学校の近くだと思い出しました。
他の生徒が温かい目でこちらを見ています。それどころか近所のおばちゃんにも聞かれていました。恥ずかしくて死んでしまいそうです……。
二人で急いでその場を離れ、近くの喫茶店に入ります。
適当にコーヒーと紅茶を注文して席に着きます。
「それで、話してくれるの?」
「わかったよ。話すけど引くなよ」
そう前置きして幽くんは話を始めました。
「あれは小学三年の時だった。その日もこんな感じの雨で、普通に傘を差して歩いていたんだ。そうしたら目の前に真っ赤な見慣れた傘を見つけた。それは近所のお姉さんで、俺は声をかけた」
これはもしかして幽くんの恋愛観を聞くことができるんじゃないでしょうか?
私は水を差さずに続きを聞きます。
「『ヤエさん小学校の近くで何してるの?』そう声をかけたら『紫陽花を見てるの』そう答えたんだ。そこには綺麗な紫陽花が咲いていた」
これは本当に結構いい話になるんじゃないかな?
嫉妬とかの前に恋愛漫画を見ている様な気分になってきました。
イケメンの幽くんと、きっと美人な近所のお姉さん。そして雨の日なんてもうベタなシチュエーションです。
「それまであんまりじっと見たことのない紫陽花が綺麗で俺も見てたんだが、突然ヤエさんが言ったんだ――」
ワクワクの展開です。ヤエさんは死んでしまうのでしょうか? それとも引っ越しでしょうか?
「『紫陽花ってカラフルで美味しそうだよね』って言われた」
台無しです……。楽しみにしていたのに超展開です……。
「小学生の俺も確かにマーブルなチョコと同じかもって思ったから、ヤエさんの言葉に頷いたら二人で食べてみようかってことになったんだ」
「なんでそんな話になってるのさ。好奇心が旺盛過ぎるよ……」
「今となっては反省している。それで二人で食べたんだ、俺が青っぽい紫陽花を、ヤエさんが赤紫っぽいのを食べた」
「食べたんだ……。確か紫陽花って毒じゃなかった?」
紫陽花には毒があるって読んだことがある気がする。
「そう、毒があるんだよ。その上めっちゃ苦い。食った瞬間二人で顔をしかめた。更に不味いだけじゃなくて毒もあるから腹を下して三日寝込んだ……」
もう踏んだり蹴ったりだよ。と幽くんは最後に付け加えました。
「ヤエさんは毒があるって知らなかったの?」
知らなかったとしても普通は食べようなんて思いませんが……。
「知ってたらしい。腹が痛くなることも知ってたけど、食べてみたかったんだってさ……、それでどうしようか悩んでいた時に俺が来たらしいよ……」
どうやらヤエさんは道連れを探していたらしいです。
一人は嫌だという悪霊のような考えです。
「つまりそれがトラウマになって雨が嫌いになったと」
「そう。雨の日はたまに腹が痛くなるんだよね」
遠い目とはこういう目を言うんだと思います。
そしてそれで全て話し終わったらしく、幽くんは温くなったコーヒーを飲みました。
「これよりも苦かったな」
雨が嫌いなのはどうやらそのヤエさんという人の影響らしいです。
「そのヤエさんって今何をしてるの? そんなことがあったからもう関わりはないの?」
「あるよ。というか桜も会ったことあると思う」
少しだけ考えてみますが、年上の女の人で私と幽くんの共通の知り合いって言うと誰でしょうか?
「本名は篠崎ヤエって言うんだけど聞いたことない?」
篠崎? しのさき、シノサキ……。
「もしかして篠崎医院の篠崎先生?」
「正解。寝込んでから突然医者を目指したらしい。そのせいで病院に行っても腹痛は収まらなくなっちゃんだよね」
毒は無くなっても記憶はなくならないらしいです。
小さいころに何かあったらしいのですが、何も話してくれたりはしてくれません。
霊感のある幽くんですから、幽霊に関することで何かあったんだと思います。
「今日も雨か……」
雨が続いてもう四日目。何もない私でさえ憂鬱な気分になってしまいます。
梅雨前線とか高気圧低気圧なんて言葉が。テレビからひっきりなしに聞こえる時期になってしまいました。
「いつも雨になるとそうなるけど何かあったの?」
私は思い切って幽くんに聞いてみました。
恋人になってからもう二か月です。少しくらい踏み込んだ質問をしてもいいんじゃないでしょうか。
「ああ、別に雨がってわけじゃないんだけど、少し嫌な思い出があるんだよ」
とても言い辛そうです。
これは本格的に幽霊さんと何かあったのだと思います。
もしくは甘酸っぱい失恋話でしょうか? 彼女として少し複雑ですが、今カノとしてそこは寛大な心で聞いてみようと思います。
「へえ、どんな思いで? 良かったら聞かせて欲しいな。話をすることで楽になることもあるし」
決して野次馬感覚で聞いているわけではありません。
彼女として彼氏の過去を知るのは当然で当たり前です。
「いや、これを聞いたら桜に嫌われるかもしれないな」
一体何をしでかしたのでしょうか? 幽霊だと思って人を殺めたのでしょうか? それとも小学生で誰かを妊娠させてしまったのでしょうか?
「大丈夫だよ。私はいつまでも幽くんの事大好きだから!」
「桜、嬉しいけど恥ずかしいから」
言われて未だ学校の近くだと思い出しました。
他の生徒が温かい目でこちらを見ています。それどころか近所のおばちゃんにも聞かれていました。恥ずかしくて死んでしまいそうです……。
二人で急いでその場を離れ、近くの喫茶店に入ります。
適当にコーヒーと紅茶を注文して席に着きます。
「それで、話してくれるの?」
「わかったよ。話すけど引くなよ」
そう前置きして幽くんは話を始めました。
「あれは小学三年の時だった。その日もこんな感じの雨で、普通に傘を差して歩いていたんだ。そうしたら目の前に真っ赤な見慣れた傘を見つけた。それは近所のお姉さんで、俺は声をかけた」
これはもしかして幽くんの恋愛観を聞くことができるんじゃないでしょうか?
私は水を差さずに続きを聞きます。
「『ヤエさん小学校の近くで何してるの?』そう声をかけたら『紫陽花を見てるの』そう答えたんだ。そこには綺麗な紫陽花が咲いていた」
これは本当に結構いい話になるんじゃないかな?
嫉妬とかの前に恋愛漫画を見ている様な気分になってきました。
イケメンの幽くんと、きっと美人な近所のお姉さん。そして雨の日なんてもうベタなシチュエーションです。
「それまであんまりじっと見たことのない紫陽花が綺麗で俺も見てたんだが、突然ヤエさんが言ったんだ――」
ワクワクの展開です。ヤエさんは死んでしまうのでしょうか? それとも引っ越しでしょうか?
「『紫陽花ってカラフルで美味しそうだよね』って言われた」
台無しです……。楽しみにしていたのに超展開です……。
「小学生の俺も確かにマーブルなチョコと同じかもって思ったから、ヤエさんの言葉に頷いたら二人で食べてみようかってことになったんだ」
「なんでそんな話になってるのさ。好奇心が旺盛過ぎるよ……」
「今となっては反省している。それで二人で食べたんだ、俺が青っぽい紫陽花を、ヤエさんが赤紫っぽいのを食べた」
「食べたんだ……。確か紫陽花って毒じゃなかった?」
紫陽花には毒があるって読んだことがある気がする。
「そう、毒があるんだよ。その上めっちゃ苦い。食った瞬間二人で顔をしかめた。更に不味いだけじゃなくて毒もあるから腹を下して三日寝込んだ……」
もう踏んだり蹴ったりだよ。と幽くんは最後に付け加えました。
「ヤエさんは毒があるって知らなかったの?」
知らなかったとしても普通は食べようなんて思いませんが……。
「知ってたらしい。腹が痛くなることも知ってたけど、食べてみたかったんだってさ……、それでどうしようか悩んでいた時に俺が来たらしいよ……」
どうやらヤエさんは道連れを探していたらしいです。
一人は嫌だという悪霊のような考えです。
「つまりそれがトラウマになって雨が嫌いになったと」
「そう。雨の日はたまに腹が痛くなるんだよね」
遠い目とはこういう目を言うんだと思います。
そしてそれで全て話し終わったらしく、幽くんは温くなったコーヒーを飲みました。
「これよりも苦かったな」
雨が嫌いなのはどうやらそのヤエさんという人の影響らしいです。
「そのヤエさんって今何をしてるの? そんなことがあったからもう関わりはないの?」
「あるよ。というか桜も会ったことあると思う」
少しだけ考えてみますが、年上の女の人で私と幽くんの共通の知り合いって言うと誰でしょうか?
「本名は篠崎ヤエって言うんだけど聞いたことない?」
篠崎? しのさき、シノサキ……。
「もしかして篠崎医院の篠崎先生?」
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毒は無くなっても記憶はなくならないらしいです。
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