姫ちゃんは、漫画みたいな恋がしたい!

柚木

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四話

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 五人に引っ越しの連絡を入れると、それぞれが引き止めの言葉をくれた。
 もちろん引っ越すことを決めている私は、全てに家庭の事情だからと返信すると、送別会をすることが決まった。

 場所は夏休み明けの土曜日。
 私はそこで陸くんに告白をする。
 合宿の状況から見て、陸くんはまだ誰か一人と決めていない。
 それなのに、全員に好意を抱いている。
 そこで私が他の四人よりも先に告白を済ませれば、遠くに行く喪失感、そこに気になっている女子からの告白となれば、頷かざるを得ない。

 大事なのは告白のセリフだ。
 色々な漫画やゲームから別れ際の告白を抜粋し、男受けしそうな表情を作れば間違いない!

 そして運命の日がやって来た。
 料理が得意な人達がお菓子を作って来てくれたり、飲み物を準備してくれたりと、至れり尽くせりの状況で、それぞれと会話をした。
 少しだけ分かれ惜しい気持ちはあるけど、友情より恋愛だ。
 陸くんと二人で話す時に「送別会が終わったら話があるの」と伝えておいた。
 若干の恥ずかしさをにじませ、上目遣いで伝えた。
 これで残りの時間、もしかして告白される? そう思わせるためだ。

 そして楽しかった送別会が終わり、約束の公園に向かうと陸くんはベンチで待っていてくれた。

「お待たせ」

「それで、話しって何だよ」

「少し陸くんに話があって――、最初に会った時は、こんなに仲良くなれると思ってなかったんだ」

 少し間を開けて昔の話をする。
 漫画でよく見る、告白したいけど、上手くできないから無難なところから話を持って行く作戦だ。

「あの時は悪かった、その、わざとじゃないんだよ」

「ううん、別に怒ってるわけじゃないから」

 そもそも自分で見せに行ったんだし。
 あれが結構マジだったら、本気で距離を取って二度と口きかないけど。

「その後に一緒に被服部立て直したり色々したじゃん」

「結構大変だったな」

「それでね、今までこの半年一緒にいてね、その……、陸くんの事好きになりました! 一緒にいて楽しいし、趣味も合うし、誰にでも優しい所が大好きです!」

 主人公なら告白イベントには「はい」か「イエス」以外の選択肢はないはずだ。
 たった半年で、大きなイベントも一回くらいしかないけど、これに答えてこそ男だろ!

「えっと、俺も姫は可愛いと思うよ。一緒にいて趣味も合うしさ、でもごめんな、俺、夏希と付き合ってるんだ、合宿の時に」

「えっ……」

「合宿の夜、告白されて付き合い始めた。みんなに言わなきゃって思ってたけど、結局言えなかった。だからごめん」

「へえ、そうなんだ……」

 そこから先は記憶がない、気がつくと窓の外は暗く、部屋のベッドに座っていた。

 そんなことあるんだなぁ……。
 どこが悪かったんだろぉ……、出会いも完璧だったし、何も間違ってないと思うんだけどな。
 のそのそと一番好きな漫画に目を通す。
 出会いも完璧、イベントもこなした、なのになんでなのか、答えは漫画にあった。
 それに気がついた時、私は全ての漫画に手を伸ばし、検索もした。
 ヒロインの大半は余分な装飾品を付けていない……。
 しかも清楚系の黒髪が多い。
 地毛が茶髪で馬鹿みたいにデカいリボンをつけるメインヒロインはほぼいないかった。
 それどころか完全にかませ犬で、負け確ヒロインの方が私と一致していた。
 どこが間違っているかって、最初からでした。
 キャラデザの時点で失敗でした。

 翌日から引っ越しまで、何となく惰性で過ごし、引っ越しの当日にはこんな私のためにみんなが来てくれた。
 連絡するね。とか、また遊ぼうね。とかそんな優しい言葉に普通の言葉で返し、車に乗り込んだ。
 最後に追い打ちの様に陸くんから「姫だったら俺よりも素敵な彼氏ができるよ」と死体蹴りをされた。

「悪かったな、あんなにいい友達がいるならお前だけ残ってもいいんだぞ」

「いいから早く行って」

「もしかして怒ってる?」

「怒ってないから、早く次の所に行こう。そんで近くの美容院予約して。もう茶髪はやめて黒髪にするから」

 高校二年生の秋、私は失恋した。
 次の学校がこんなことをできる最後のチャンスだ。
 最後くらい、私が夢見た漫画の様に終われたらいいな。
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