生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。

柚木

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酪農の国 ギアロ

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「兵が少ないな、ここは神以外には落とせない城塞の国であろう?」

 カルラギークに戻ってきた俺達に水の神はそう告げる。
 城の周囲には水の神が言った通り衛兵が圧倒的に少ない。
 確かに今は日も天高くに昇り飯時なのはわかるが、それにしても少ない。

「そうですね、数日前はそれこそありえないほどに多かったですよ」

 だからこそ逃げながら城門を超えるのに苦戦した。

「ふむ、気になるところではあるが我は戻るぞ。誰にも言わずに出てきたのでな」

 水の神は申し訳なさそうにそう言う。

「はい、ありがとうございます」

「何かあればこれに魔力を流せ、それでお前の居所はわかる」

 そう言って手の平サイズの一つの玉を俺に授けてくれた。透き通るような青い透明な玉。
 地の神に似たものを渡されたが、それとも少し違う気がする。
 神が違えば神器も違うのかもしれない。

「流すだけでいいんですか?」

「それだけで我にそれの場所が伝わる」

 どういう仕組みなのかまるでわからないが、神からの授かりものなので深くは考えないことにした。

「それでは、元気でな」

「ありがとうございました」

 一言挨拶を交わすと水の神の姿は一瞬で消える。

「ロックスさん、お戻りになられたんですね」

「ああ、妙に人が少ないきがするのは気のせいか?」

 水の神が帰り、俺達も宿に戻ろうかと思った矢先のことだった。
 警邏中の衛兵に声をかけられ、現状を尋ねると予想外の言葉が返ってくる。

「気のせいではありません。昨日、フリューにて魔獣の姿を見たと連絡があり、カルラギーク軍と従妹のミールさん達は出立しました」

「は?」

 一瞬、俺の頭はその言葉を理解するのを拒んだ。

「ですから皆さんは我らの軍と魔獣の退治に向かいました」

「昨日、だな?」

 もしフリューへの道はそんなに険しくはないならセルクに運んでもらうか? いやそれは不味い、神だとバレてしまうかもしれない。なら歩いていくしかないか。

「合流したい、地図を見せてくれ」

「詰め所にあります」

 言われ、俺達は詰め所に向かう。
 木造の詰め所の中では数人の衛兵が待機しており、軽く挨拶を交わす。

「ご主人、情報が魔獣かもしれない。っていうなら、魔獣じゃないかもしれないよ。なんでそんなに焦ってるの?」

「十中八九魔獣だ。それも人造のな」

 他の衛兵に聞こえないように俺が言うとフィルの顔が強張る。

「なんでわかるの?」

「タイミングと場所だ、俺達がいないのを見計らったようなタイミング。それにヴォール様がいないと断言したにも関わらずに出現した」

「スパイがいたの?」

「どうだろうな遠視の可能性もある。だがそこはどうでもいいんだ、問題は向こうに、何か俺達がいないうちに動かないといけない理由があったってことだ」

「ヴォール様に連絡は?」

「しない。ヴォール様が来るなら作戦は中止になるだろう。そして別のどこかに行くだろう」

 少なくとも俺ならそうする。
 そして水の国にも魔獣を放つ。それだけで水の神の足止めができる。自国と他国天秤にかけるまでもなく自国をとるだろう。

「魔獣の存在を確定させるためにも、俺達は合流しておかないといけない」

「変に焦りすぎないでね、ご主人は要なんだから」

「今は大丈夫だ」

 頭は正常に働いている。
 現状で考えれるのはここまでだが、先を考えるにあたっては不確定要素が多すぎる。
 魔獣を作っているのは何者か、神が関与しているはずで、関与しているならどこの神か。考えれば考えるほどにわからなくなってくる。

「すぐに地図を出しますから。座っていてください」

 衛兵はすぐに地図を持ってきてテーブルに広げる

「カルラギーク軍一行はこのルートで進んでいます」

 地図上にコップが乗り、カルラギークから弓なりにフリューに進む。

「なんで遠回りしてるんだ?」

 直線ではなく大回りで進行しているらしいルートに疑問を持つ。

「ここにはギアロがありますから。酪農の国ギアロです。家畜や作物があるので、軍の行進を嫌っているので仕方なくですね」

「魔獣が出た。と言っても無理なのか?」

「はい、向こうは風の神を信仰している者が多く」

 神同士の敵対に呼応して信者も険悪になっているってことか。

「理由はわかった、それなら俺達くらいならいいんだよな」

「そうなりますね、少数なら問題は無いと思います。斥候もそこを通る場合が多いので」

「これなら一日の遅れは取り戻せる」

 ルートの確認を終え俺達は一度宿に戻る。
 必要な装備を持ちセルクの脚力で城壁を超えギアロを目指す。
 道中は普段見ることのない景色が広がっていた。

 辺り一面の酪農地帯。
 草原の中を満足気に闊歩する草食動物。
 馬や牛、鶏も思うままに草を食べたり走り回っている。
 そうかと思えば柵を挟んで作物や果実が実る。

「パパ、これがらくのう?」

 セルクは珍しそうに家畜や作物を見て、意味の分かっていない言葉を使う。

「そうだ。育ててミルクや卵を貰ったり、移動の時に力を借りたりしてるんだ」

「食べたりもするけどね」

 あえて濁した部分をフィルはあっさりと伝えてしまった。

「お肉だ!」

「間違ってはいないけど、そう呼ぶのはやめような」

 考えなしに食肉について告げたフィルを睨むと、わかりやすく目を反らした。
 今度から馬車を見て「お肉が走ってる!」なんて言ったらどうするつもりだ。

 それからしばらく酪農地帯を移動していると、目の前には馬車が倒れていた。
 不穏な空気に俺達は慎重に近づく。
 斥候の一団が誰かにやられたのか? いや、この馬車はカルラギークの馬車じゃない。

「大丈夫か?」

 馬車の影に人がいないかと声をかける。しかしそこには誰もいない。

「逃げ――」

 俺は意識を失った。

 俺が意識を取り戻した時には俺の手は自由を奪われていた。
 目を開ける前から俺の腕は上に上がっている。
 吊るされている。
 そう認識しうっすらと目を開けると目の前には鉄の棒が規則正しく並んでいる。
 牢屋に入れられている?
 その奥にはテーブルらしき物と棚らしき物があるように見える。

「いいのよ、起きていることを隠さなくても。どうせ逃げられないのだから。ね、クォルテ・ロックスさん」

 女性の声に改めて目を開ける。
 檻の奥では白衣の女性が立っていた。
 茶色い髪は伸ばしっぱなしで手入れをされている様子もない。化粧とは無縁そうだが、決して若くはなさそうな女性。

「名のある学者ではなさそうだけど、何を研究しているんだ?」

 テーブルに散乱している紙類に棚に並ぶノート、床に散らかる道具類。それに合わせてこの白衣の女性が居るということは、間違いなく実験施設。
 ロックスの家で散々見た光景にどこの国でも同じ様な設備なのかと意味のない感想が浮かぶ。
 気になるのは何の実験をしているのかその一点だけ。
 あんな手で拉致をするんだから真っ当な実験ではないだろう。

「表向きは品種改良。より収穫ができるように、より美味しくなるように改良しているの」

「それは凄いな」

 この流れは不味いだろ……、掛け合わせて新しい物を作る学者が人間を捕まえる理由は一つしかない。

「そうなると裏も同じかもね、こっちの方は人間の品種改良だけどね」

 そうなるよな。そうなるしかないよな。

「より強靭な人間への改良。ひいては人間の魔獣化」

 そう言って笑う科学者に背筋がゾワリとした。
 最悪の狂気が俺の目の前に居た。

「最初は魔獣化を主題にして実験してたんだけどね、異端扱いされちゃったからこんな地下でやってるんだけどね」

 ここは地下なのか、出口はあそこに一つ。
 あそこに地上へ繋がる道があるのか?

「クォルテ・ロックス私の話聞いてる?」

「聞く耳を持ちたくないな」

「私は聞いてるのよ? どうしたら人間を魔獣にできるかを、君達がミスクワルテで神の造った魔獣に出会った君達にさ」

「っ!?」

 どこまで知ってるんだ? いや、何を知っているんだ? 何が目的なんだ?

「やっと、余裕の仮面が取れたね。じゃあ、あちらのお二人を見てみようか」

 視線の先には同じように吊るされたフィルとセルクが居た。

「フィルはもうすぐ起きると思うけど、隣の神もどきは起きれないくらいの薬を入れたよ。今日中には起きないかもね」

 そう言って女の科学者はくつくつと笑う。
 その姿は悪魔の様に俺には見えた。

「ふざけるのもいい加減にしろよ」

 平和なはずの酪農の国で俺達三人は狂気の科学者に掴まってしまった。



 現在の状況は三人共身動き不能、目を覚ましているのは俺だけ……フィルもセルクも起きない。
 手にはめられている枷は魔法なら即破壊できるが、そんなことできるはずもない。
 フィルなら壊せるだろうけど、それも今はあんまり現実的じゃないな。

「逃げられないことは理解できたかな?」

「いや、逃げる手立てくらいあるさ」

「神もどきのことかい? それとも隣のフィレール・シュガーのことか? それとも君に何かあるのかい、道具も何もかも取られている状況で」

「それは教えられ……今フィルの事をフィレール・シュガーって言ったか?」

 あまりにも当然の様に紡がれた言葉に俺は驚く。
 フィレール・シュガーが本当の名前なのか?

「言ったよ、フィレール・シュガー。風の神の眷属には有名だよ。黒い魔法使い、黒髪なのに自由に魔法を使い敵を殲滅する。有名人」

 黒い魔法使いという二つ名は記憶にある。だが、その異名はいつしか消えた。俺には関係ないからと調べることもなかった。
 それがフィルの事だったのか。

「なんだ知らなかったのか。それなら教えてあげるよ、黒い魔法使いの簡単な昔話」

 名前も知らない狂気の科学者は愉快そうに口元を緩める。

「勝手に人の過去を教えないでくれるかな、ハベル・クロア」

 話を遮りフィルの声が聞こえた。
 枷に繋がれながらもハベル・クロアというらしい科学者をにらみつける。

「おはよう、フィレール・シュガー」

「その名前で呼ぶな! あたしはただの奴隷フィルだ」

 どこか間の抜けた言葉のはずなのに、フィルの声は強く怒っている様に見えた。
 名前を無くし奴隷になった経緯が何かあったのは確かなのだろう。

「そう自分の名前を卑下するなよ、大事な名前でしょ。ご両親が付けたね」

「捨てた名前だから」

 フィルとの会話中クロアはこちらを向く。

「そうだった。そんな話じゃなかった」

 急にクロアの手に魔力が溜まりその魔力はフィルに向けて吐き出される。

「ぐっ!」

 ぶつけられた魔法は茶髪にしては強力で、フィルの体は壁に押し付けられ背後の壁は深く凹む。
 こいつ茶髪じゃないのか?

「あはは、お察しの通りだよ。ほら」

 クロアは髪を外す。
 茶色の髪の下には純白の髪があった。くせ毛なのか純白の髪は不規則な方向に跳ねている。

「それは……、反則だろ」

 髪は他人の実力を量るうえで重要な要素だ、それを偽ることは神が禁じており、バレれば神に罰せられてもおかしくはない。それなのに平然と俺の前で髪を外した。

「それで聞きたいんだけど、この状況で何か君にできるの? 逃げてみなよ自信があるんだろ? まあ、魔法を使えるなんて当然無理だけどね」

「なら試そうか」

 俺は指に嵌め隠していた指輪から水の剣を発動する。

「なんだ隠しているのは君もじゃないか、クォルテ・ロックス」

 発動した水の剣で枷を切断し両手の自由を取り戻す。

「逃がさないよ」

 フィルに向いていた魔法が今度は俺の方に向く。
 一直線にこちらに向かう風の魔法を下に回避し、足に繋がれている鎖も切断する。

「これで俺は自由だぞ」

 剣を構え改めてクロアに向き合う。
 こちらに気が向いたらしくフィルへの攻撃は止んだがフィルはダメージから気を失ったようだ。

「流石だよ、死線を潜っただけの事はある。そうだな気が変わった、私の実験に手を貸してくれる気はないかい?」

「実験? 悪趣味な品種改良って奴か? 断るに決まってるだろ」

「そう言葉だけで判断するなよ、気になるだろ人間の限界と可能性。他種族との融合でそれが叶うんだぞ、人は空を飛べる、海で呼吸ができる、馬よりも早く走れる、極めればベルタが魔法を使え、プリズマが腕力で岩を割れるかもしれないんだぞ。夢の様な実験だ」

 そう自慢げにクロアは熱弁する。
 自分の考えがどれほど素晴らしいかを伝えてくる。

「論外だろ」

 だが、俺はその言葉を一蹴する。
 ありえない妄言、現実不可能な戯言だと否定する。

「理由を聞いてもいいかな?」

「いいぜ、地上でさえ未だ領地を争っている人間が、今度は海や空でも同じように争うつもりか?」

「逆さ、地上で争うから空と海に出るのさ、足りないなら更に広くする」

 俺の反論にさえ嬉しそうに不気味な笑みを浮かべる。

「無限な土地なんてない、すぐに海でも空でも足りなくなる」

「平らに見るなよ、立体で見ろ、上にも下にもあるじゃないか」

「平行線みたいだから言わせてもらうぞ、俺は人体実験が大嫌いなんだよ、ハベル・クロア」

「最初からそう言いなよ、クォルテ・ロックス」

 俺が水の剣を握り一歩踏み出す。
 クロアの魔法が俺に向けられ、加減のない魔法は牢の鉄をへし折りながら俺に向かう。
 それを躱し開いた穴からクロアの元に向かう。

「風を避けるなんて、凄いじゃないか」

 俺の攻撃をあっさりと避けクロアは机を踏み台に後ろに跳ぶ。

「とっととここから帰らせてもらうぞ」

 俺はクロアの後を追い水の剣を振り下ろす。
 それも当然の様に避けられるが二撃三撃と攻撃をするが簡単に避けられる。
 こいつ、まさか白い髪を被っているってことはないよな、さっきの魔法の威力を考えるとありえない。単純に身体強化に魔力を回しているのか。

「強いね、今度はこっちの番かな」

 そう言った直後、テーブルに置いてあるペン立てからペンを無造作に抜きこちらに放つ。あまり早くはないが数が多く一歩後ろに下がる。
 こちらの動きに合わせ、クロアが突進してくる。
 白の戦い方じゃないだろ。
 足払いから始まりテーブルと棚を使い、徐々に上に攻撃が上がってくる。
 膝、腹、胸、首、頭と的確に狙い続けてくる。

「本当は黒髪でした。なんて言わないよな」

 頭まで攻撃で上るとそのままテーブルに着地する。

「当たり前だろ、こんなこともあろうかと練習しているんだよ。白髪は近接で楽勝なんて思っている連中を叩き潰すために」

「その気持ちだけはわかる」

 裏をかいてやりたいというのは十分に理解できる。そのために研鑽を続けているところは好感が持てる。

「相手の想像を超えてこそだと、君も思うよね」

 そのまま二発三発と攻撃を加えてくるのを俺は必死に防ぐ。
 当たらないのを見て再び筆記用具をこちらに向けて投擲する。
 たまらず後ろに跳ぶがクロアとの距離が変わることはない。
 俺は一度距離を取るために書類の束を投げつける。

「目隠しか、無駄だよ」

 クロアは風の魔法を放つ。
 魔法によって束は散るが、俺はすでに天井を蹴っている。
 そのままクロアに向かい水の剣を振り下ろす。
 全てを身体強化に当てる動きは、この一瞬に限り無くなる。
 その一瞬を狙った攻撃のはずだった。

「一対一じゃ勝てないよね」

 その言葉の直後、上下逆さまになっている俺の背中に激痛が走る。
 骨が軋む音、内臓にまで響く衝撃に俺は体勢を崩し無様に床を転がる。

「よくやってくれたねパルプ」

「そいつには借りがあるからな」

 少年の声に俺は辛うじて立ち上がる。
 何とか受け身を取れたらしく、ギリギリだけど骨は折れていない。

「見覚えがあるな、少年」

 闇色の髪でこの顔は闇の神の眷属だった少年。俺にやられた奴か。
 あの時とは違う雰囲気。笑顔が消えて殺意だけがその顔からはうかがえる。

「この前はどうも、今度は負けない」

「彼はパルプ。力が欲しいと嘆いていたから私が品種改良してあげたんだ。パルプ任せてもいいかな?」

「任せろ、寧ろお前は手を出すなよ」

「そういうことだよクォルテ・ロックスここからはパルプが代わる。私は彼のデータを取るのに忙しくなってしまった」

 そう言うとクロアは後ろに下がる。
 不愛想なベルタの少年はこちらを睨む。

「俺が回復するのを待っているのか? 来てみろよ、またあしらってやるよ」

「そうさせてもらう」

 パルプはそう言うと壁に設置されている棚をはぎ取り、無造作にこちらに投げつける。
 それを俺は真っ二つに切断する。

「これで終わりじゃないよな」

 俺は出鱈目さに冷や汗をかきながらも、不敵に笑ってやることにした。



 最初に動いたのはパルプだった。
 瞬きをした瞬間を狙っていたのかパルプの姿が目の前から消える。
 蹴られたおかげで壁際に居るのは運がいい、背後を取られるなんてことはない。そのまま死角を潰す様に壁際に動こうとした瞬間、パルプを視界に捉えた。
 振りかぶる拳で俺を狙っていた。

「ふっ!」

 パルプの拳が見えた俺はその手を捌きかけるが、違和感を覚える。
 完全に避けないと。
 そう思い寸前で避けるが腕は俺の服と皮膚をわずかに削る。

「よく避けたな」

 そう言うと反対の腕でなぜか俺を掴む。

「くそっ!」

 パルプは力任せに俺を引き寄せると、あろうことか口を開く。
 人間離れした鋭い歯が無数に並ぶ口内に驚く。
 咄嗟の判断だった。
 俺はパルプの口に全力で頭突きを噛ます。

「ぐぼっ!」

 俺の頭骨がパルプの歯を砕き、そのまま蹴りつけて距離を取る。

「流石クォルテ・ロックス。てっきり今の攻撃で死ぬかと思っていたけどよく耐えきったね」

 そう言いながらクロアは紙に何かを書き込む。

「このくらいは当然だよな」

 割れた歯を吐き出しながらパルプはそう言った。

「強くて聡明なクォルテ・ロックスはもしかして気が付いたんじゃないか?」

「そこのガキに他の生物を混ぜ込んだことか?」

 早い動きだけじゃない、パルプの体の異変に気がついていないはずがない。
 遠目でわかるほどにざらついた肌にさっきの牙は人ではありえない。

「パルプ、次は本気で殺しに行っていいよ」

 その言葉にパルプの顔つきが獰猛に変わる。
 そして動こうとした瞬間にパルプは一瞬足を取られる。

「足元は気をつけろよ」

 俺はパルプの腹部に蹴りを入れる。
 大したダメージは無いだろうが、体がわずかに揺らぐ。

「水……」

「抜け目ないよね、私が話している間にこんな仕掛けを仕掛けているなんてさ」

 クロアにそう言われ、パルプは自分がされたことに気付いた。
 床に水が流れている。ただの魔力から変換されただけの水。その水が俺からパルプの方に流れを作っている。

「ハンデだと思えよ、改造人間。こちとら真っ当な人間なんでな、小細工を使わないと怖くてまともに戦えないんだ」

「いいさ、それでも関係ないほどの力の差を見せてやるよ」

「来てみろよ、同じ相手に二回負ける悔しさを教えてやる」

 虚勢を張るが、正直分が悪い。
 触れると体を削られる可能性がある肌を持っている。それだけで十分に凶器だ、歯を折ったとはいえ当然全部ではない。次に捕まったら果たして避けられうか。

「行くぞ」

 パルプはそう宣言するとふわりと浮いた。そしてそのまま机を破壊するとまた俺の視界から抜け出す。
 カンと鳴る金属音でパルプの居場所を察知する。
 俺はなりふり構わず前方に跳ぶ。

「水よ、剣よ、我が敵を断罪せよ、ウォーターソード」

 避けながら水の剣を呼び出すと、背後からドンと壁が壊れる音がした。
 今いる場所から更に横に跳ぶ。

「パルプ、クォルテ・ロックスの狙いは空中戦らしいよ。それでお前の動きを呼んで避けている」

 クロアにたった二度の俺の動きであっさりと看破されてしまう。
 本当にやりにくいったらないな。

「そうなのか、それならこれはどうだ?」

 パルプは少し悩んだと思ったら唐突に壁を蹴り机ごと俺に突進を試みる。
 ガリガリと床を抉りながら迫るテーブルに俺は咄嗟に横に跳ぶ。
 机は檻にぶつかり四方に飛散する。

「これなら逃げられないよな」

 パルプは空中で方向転換した。
 それはベルタだからできる芸当、動く物体を足場に行う方向転換。
 今のが空中で足場を作るためと今気づいた。俺を空中に移動させ、自分は壊れた床や木片を使っての空中移動。
 パルプの拳が俺に向かって伸びてくる。それはパルプの中では勝利を確信するには十分な状況だった。

「パルプ、気をつけた方がいいよ」

 クロアの声が聞こえた時にはフィルの足はパルプの背中を蹴りぬいていた。

「なっ……!?」

「フィルが起きている。言うのが遅かったか」

「お待たせご主人」

「今ので起きなかったらどうしようかと思ったぞ」

 フィルの参戦で勝ち目は出てきた。
 それはもちろんクロアが参戦しなければの話だが。

「よくもやりやがったな」

 起き上がるパルプの顔は怒りに染まる。
 目が血走り額には青筋が浮かぶ。

「お前が起こしてくれたんだぞ、そうじゃなかったら俺は危なかったからな」

「ああ!?」

「お前がフィルの牢をテーブルで壊してくれなかったら俺の負けだったって言っているんだよ」

 そう言われ、自分が動かしたテーブルに目を向ける。
 檻はテーブルによって折れ曲がりフィルが抜ける道を作っていた。
 そしてパルプは自分が良いように使われたことに気が付くと、より怒りの色を濃くする。

「二人でも関係ない、ぶっ殺せばいいんだろ?」

「できるもんならやってみろよ」

 水の抵抗すらも無視する突進に俺は反応もできなかった。
 フィルに蹴られ、自分の意思とは関係なく動かされ事なきを得た。
 俺の意思で体が動くようになった時にはパルプは壁を壊し部屋を広くした後だった。

「ご主人、煽りすぎだよ。これ結構不味いよ」

「流石に反省してる」

 まさかこちらの反応速度を超えてくるとは思ってもみなかった。
 魔力での身体強化をし次の出方を見る。

「ありがとう二人とも、これでパルプに足りない部分がわかってきたよ。よければさらに改善点があるなら教えてくれないか?」

 クロアの言葉とほぼ同時に壁に亀裂が生まれ、弾け飛び俺達を襲う。
 大きな破片を捌くが、小さな無数の破片は俺の体を打ち付ける。

「いってぇ、こいつの出鱈目っぷりも大概だよな」

 神々には及ばないまでもこいつ自身十分に出鱈目だ。
 ベルタってだけでも十分に厄介なのに、その上他の生物を混ぜ合わせそれを全て使いこなしている。

「流石にこんなじゃ致命傷にはならないよな」

 壁だった個所を超えパルプが近づいてくる。

「フィル二人で一気に……」

 取り押さえるぞ。そう言おうとした瞬間、不意に鼻に刺さる異臭がする。
 それは薬品の臭いで、腐った臭いで、鉄の臭いで、汚物の臭い。
 過去に嗅いだことのある最悪の臭い。
 俺はパルプに背を向けクロアに飛びかかる。

「ビックリするじゃないか」

 俺の攻撃を軽く避けたクロアはそう軽く言った。

「ふざけるな! こんな強烈な臭い、お前ここで何人殺した!?」

 その臭いは死の臭い、それもただの死ではない。
 実験され失敗して放置されて死んだ最低の臭い。
 見なくてもわかる。奥の暗がりには人でなくなったものが無惨に捨てられているはずだ。
 俺はその光景を見たことがある。

「臭いでわかるなんて流石ロックスだ」

 俺の怒りは止まらない。
 ありったけの殺意、侮蔑、嫌悪。全てを込めてクロアに再度攻撃をする。

「そう、怒るなよ。なんなら君が片づけてくれよ、私もこの臭いは鼻が曲がりそうで嫌いなんだ」

 俺の攻撃を軽々と避けながら飄々とした様子で語り掛けてくる。
 その様子がさらに俺の怒りを加速させる。

「水よ、鎖よ、罪人を捕らえろ、ウォーターチェーン」

「この鎖でゴミを纏めたらいいんだね。親切にも程があるね」

 そう言いながら水の鎖をあっさりと避けるクロアに、俺は水の剣を真っすぐに薙ぎ払う。
 クロアは避けた勢いをそのままに足で俺の顔を蹴りつける。
 自分の撒いた水に落下し俺は全身を濡らす。

「そう言えば水って臭いを蓋してくれるんだっけか、今度から捨てるのは面倒だけど捨てる様の溜め池でも作ろうか」

 クロアはそう言うと改めてテーブルに腰を掛ける。
 俺はすぐに立ち上がり余裕を見せるクロアに殴りかかる。
 俺の拳はクロアの手に止められる。

「その目は凄く好きだよ。血走っていて恨みを全て私に向けている。そう言えば実験に使った連中もそんな顔していたな」

 開いている拳で殴るがあっさりと捕まり、すぐ蹴りに移行しようとするが、俺の行動よりもクロアの方が早かった。
 クロアの足先は俺の鳩尾に的確に突き刺さる。
 俺は再び床に落ちる。

「君がカルラギークに来ていると聞いて、警戒していたんだけど必要なかったね。わざわざここに連れてくる必要はなかったな」

 クロアは俺に近づき踵で俺を踏みつける。

「君は何と混ざりたい? 水だから水棲生物がいいかな、それとも這いつくばるのが好きなら虫にする?」

「ご主人から離れろ!」

 何度も踏みつけられ意識を失いかけていた時、その声と共にフィルがクロアを蹴り飛ばした。

「大丈夫? 意識はある?」

「ああ、大丈夫、起きてる」

 フィルの顔は汚れていた、埃と無数の傷が見えた。
 所々、服は裂けその部分から出血もしている。

「じゃあ、立てるよね」

 そう言うとフィルはすぐに背中を向く。
 それと同時に鈍い音がした。

「よそ見とはいい度胸だな」

 パルプがフィルとぶつかっている。
 パルプが触れた部分が削られフィルの体に擦過傷をつける、そのフィルの姿に俺は落ち着きを取り戻す。
 その触れることを中心に戦うパルプの動きに、遅まきながらパルプに混ざっている生物がわかった。

「フィル、速攻そいつを潰すぞ」

「私は無視するのかい? 折角見ていたのに喧嘩を売られたら買うよ」

 俺はその言葉を無視して打ち合うパルプへ攻撃する。

「疲れただろ、あっちの相手を頼む。このサメ小僧は俺が引き受けた」

「どっちも難しくない?」

 そう言いながらもフィルはクロアに向かって行った。

「ボロボロのお前に負けるとは思えないけどな」

「いや、さっきよりよっぽど調子がいいから気にするな」

「そうかよっ!」

 パルプは一直線に向かっては来ない。
 それは攻撃のタイミングがわかれば対応されることをミスクワルテで知ったから。
 こちらの間合いに入る直前に体がわずかに右に傾く。
 そしてこちらの視界から消える。
 それなら俺がやることはただ一つ、避けた方に足を出すだけだ。

「ぐはっ!」

 タイミングを合わせて出した俺の足は、パルプの腹部に深く突きささる。

「さっきよりは、強いだろ」

「ふざけんな!」

 即座にまた視界から消える。
 背後には檻、左にはフィル達が戦っている。
 それなら意表を突くために上に跳ぶ。

 俺は右に避けるとさっきいた場所にパルプが降りてくる。
 俺に噛みつこうとしたのか、わざわざ頭を下にしている。
 そうなれば俺のすることは一つだった、パルプの顔を全力で蹴りつける。
 ベルタの強靭な骨は折れることなく、限界まで曲がったまま檻にぶつかる。
 受け身もないままにパルプはそのまま崩れ落ちた。



「驚いたよ、本当にパルプを瞬殺とは」

 俺とパルプの戦いが終わるとクロアはフィルから距離を取る。

「そうなると、私では君たち二人の相手は荷が重いな」

 そう言いながらもクロアは俺達が襲い掛かるのを誘っている様に見える。
 そのせいで俺達は動けない。

「だから私は逃げようと思うけど、いいかな?」

「逃がさないと言ったらどうする?」

「残念ながら私は死ぬだろうね。君としてはそっちの方がいいのかな?」

 あくまで余裕がある素振りで俺達との会話を続ける。
 この余裕が嘘に見える、その見えるのが嘘か真実かわからない。

「逃がしてくれるなら有益な情報を教えてあげるよ。私を見逃したくなるような情報だ」

「ほう、そんな情報があるなら教えてくれよ」

 少しでもヒントが欲しい。
 この有益な情報とやらが余裕の正体なら即捕まえて水の神に差し出そう。

「フリューに私が作った人型の魔獣もどきが放たれているよ。特級まではいかなくても十分な強さをもった実験動物だ」

 その言葉に思考が止まってしまう。
 私が作った? それはないだろう。無いはずだ……。

「嘘だ、それはできないだろう」

 そう無理なはずだ、継続に魔力を注がれるか瞬間的に致死量を超える魔力を体内に入れないといけない。
 そんなのは恒久的に魔力がある海と神の様な魔力が無いと起こりえない。

「あるだろ、魔力の塊」

「精霊結晶……、まさか」

「大きいのは取り付けるのが大変だったよ」

 人間に精霊結晶を埋め込んだ。
 もちろん、埋め込む人もいる。例えばオレイカの様にするのは可能だし、欠片を手に埋め込んだ話も聞いた。
 だが、魔獣になるほどの魔力を持った精霊結晶は人体に移植するのは不可能だ。サイズが違う、人間の倍以上の精霊結晶が必要だと言われているが正確にはいくら必要かはわからない。

「殺さずに人を伸ばすのは本当に大変だった」

 嘘だ。と断言はできなかった。
 こいつならやりかねないし、現に魔獣の目撃証言も出ている。
 壊れているこの科学者ならやりかねないのだ。

「実験段階の試験動物、その危うさは科学者のクォルテ・ロックスにはわかるよね」

 暴走、暴発、その可能性があると俺に伝えている。

「ほら、神もどきの手錠の鍵だ。さっさと急げば助けに行けるかもしれないぞ。いくら神でもカルラギークの兵士と君の仲間を全て移動させられないだろう?」

「くそっ! フィル急ぐぞ、急いでフリューに向かう」

「わかった」

「君たちの荷物はこの部屋を出て左隣の部屋にある」

 可能性が低いとは言え、俺達は急がないといけない。万が一間に合わなかった場合に、俺は自分を一生許せないだろう。

「覚えておけよハベル・クロア」

 俺達はセルクを抱え隣の部屋から荷物を取り廊下に出る。
 そして自分の迂闊さに呆れてしまう。
 俺は道を知らない。すぐにさっきの部屋に戻ってが、すでにクロアとパルプの姿はなかった。

「やられた」

 完全にクロアの手で踊らされ俺達は地下で出口もわからなくなってしまった。

 俺達はしばらく地下をさまよっていた。

「セルクは起きないか?」

「全然起きる気配はないね」

 一時間ほどさまよっているが、フィルに背負われているセルクが起きる気配はない。

「結構広いね。それに同じ景色だしどこに行けばいいのかわからないよ」

 結構逼迫しているのだが、フィルの間延びした話し方のおかげで少しだけ落ち着く。

「研究所はこういう造りが多いぞ、侵入者を迷わせるようにな。ここを見てみろ」

「変なマークがあるね」

 指さす先にあるのはバツ印が書いており、フィルもそれをのぞき込む。

「これも迷わせる仕掛けだ、ここ以外にも何か所かあった」

「侵入者が付けた印とわからなくさせるため?」

「そうだろうな」

 俺はその場に腰を下ろすと、フィルも隣に座る。
 流石に一時間か、クロアはもう脱出しているだろう。そうなると、出口を聞きだすのは難しいな。

「天井を壊すのは?」

「無理だろうな、まず硬い。それに深くて上にあるのが何かわからない。俺達だけで壊すのは難しい、セルクが起きてくれればまた違うけどな」

 神の攻撃なら上がなんでも関係ない。どれだけの重さが降ってきても軽く防げる。

「セルク起きて」

 何度かフィルがセルクの頬を叩いているが、弱く身じろぎする程度で目を覚まさない。
 神の力が戻ればとアクセサリーを外してみても起きる気配はない。

「早く行かないと不味いんだけどな」

「特級じゃないなら大丈夫じゃない?」

「普通ならな、問題は元人間ってことだ」

「知能があるかもってこと?」

「そういうことだ」

 俺はため息を吐く。
 魔獣との単純な力比べなら人間に勝ち目はない。その差をひっくり返せるのは数と知恵。
 囮も有効だし、罠にも簡単にはまる。
 魔獣に知恵があるとそれが全てが無駄だ。その可能性は十分にある。なにせ姿は見せるのに発見はされていない。

「焦ってもしょうがないけどね」

「心配はするだろうよ。仲間だぞ」

「サーチはできないの?」

「無理だ、広すぎる」

 お手上げの状況に俺は目を瞑り考える。

「ここが地上ってことはない?」

「可能性は低いかな、でも試してみるか? 確かに地下って言うのを目で確認してないしな。じゃあこのまま直進して突き当りを破壊するってことで」

 わずかな希望を胸に俺達は歩みを進める。
 そして数分で突き当りについた。

「じゃあ、やってみてくれ」

 身体強化の魔法をフィルに使いフィルはそのまま全力で壁を殴る。
 重い音を響かせ壁は崩れるが、穴が開くほどではない。

「アリルド位じゃないと歯が立たないか」

「厚さは測れないの?」

 言われてやってみるがあまりの厚さに断念することに決まった。

「出口を探すほかないのか」

「ヒントは無いのかな?」

 そう言われ改めて思考を開始する。
 あいつらの歩いた形跡をたどれれば一番だけど、そんなのはどこにもなかったしな。
 そういえばなかったんだよな。足跡も足音も痕跡は何一つなかった。
 そうか、なんでこんな簡単なことに気が付けないのか。

「ご主人何かわかったの?」

「今回は俺の完全に負けだ。こんなトラップに気付かないなんて間抜けにも程がある」

「何がわかったのか教えてくれないの?」

「よし戻るぞ」

「まさかの無視だよ」

 俺達は戦っていた部屋に戻る。

「いい加減教えてくれないの?」

「俺達は最初に痕跡を探して部屋を出て歩いたよな、それがまず間違い。最初からここに出口があったんだ」

「なんでわかったの?」

「痕跡は一切なかったのはこの部屋から出ていない。だから足音なんかも聞こえるはずはないんだよ」

 そして、おそらく出口は死体が散乱する部屋にあるはずだ。
 全部気づけたはずだ。
 痕跡が無いことも、処理のために死体を出口付近に置いておく、そこの出入り口から連れられて来た連中はその光景に怒るだろう。
 利便性を考えればここ以外に出口はありえない。
 そして俺がここの部屋に入りたがらないのは、クロアにもわかっていたはずだ。
 結果としてまんまとクロアを逃がし、俺達が駆けつけるのは遅れる。

「それで出口は?」

「そっちの部屋だ」

 俺達は最悪の臭いがする中を進む。
 わずかな湿り気と臭い、視界に入る汚れた白と変色した赤。
 吐きそうになるのを抑え出口を探す。
 部屋の最奥に階段があった。
 長く上に昇る階段を見つけ、俺達は階段を上り扉を開けた。

 そこにあったのは食糧庫のようだった。
 麻の袋には穀物が満杯に詰められているだろう、野菜が種類ごとに並べられ、金属の樽にはミルクが詰まっているはずだ。
 俺はその光景に唖然とし、ここに研究所を作った理由を察する。
 奴隷をここで働かせる名目で連れてきて実験に使った。
 最悪だが賢い手段に歯噛みしてしまう。

「急ごう。ここなら出口はすぐにあるはずだ」

「うん、ご主人大丈夫?」

「悔しい」

 俺はそう言い走り出すとフィルも後をついてきた。
 完全敗北を味わいながら俺達は泉の国フリューへ向け走り出した。
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