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第45章 バグだらけの侵入と、運命の管理者
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東京の中心、かつて皇居があった場所にそびえ立つ「黒い塔」。 周囲には見えない壁(結界)があり、自衛隊や警察も近づけない異常事態になっていたが、一般市民にはその塔が見えていないようだった。認知阻害フィルタが働いているのだ。
私たちは堂島さんの軽トラで、結界のギリギリまで接近した。
「……ここからは徒歩だ。結界をどう抜ける?」
一ノ瀬が計算結果を示す。 「正規のルートはありません。ですが……一点だけ、データの密度が極端に低い『穴』があります」
彼女が指差したのは、塔の基部にある、マンホールのような排気口。
「あそこは廃棄データの排出口。……シルヴィア様の『不運』を使えば、システムエラーを起こしてゲートを誤作動させられるはずです」
「私ですか!?」 シルヴィアが自分を指差す。
「ああ。君の出番だ。思いっきりドジを踏んでくれ」
私たちは排気口へ向かった。 シルヴィアは緊張のあまり、何もないところで足をもつれさせ、転倒。その拍子に、彼女が履いていた靴が脱げ、排気口のセンサー部に激突した。
バチッ! 『SYSTEM ERROR』の赤い光が明滅し、堅牢なゲートがガガガ……と音を立てて半開きになった。
「……開いた」 我妻監督が呆れる。「セキュリティがザルすぎるだろ」
「いや、彼女の不運が強すぎるんだ。行こう!」
塔の内部は、光のラインが走るサイバー空間のような場所だった。 重力が曖昧で、壁や天井にも通路がある。
「侵入者検知。排除シマス」
無数の幾何学立体(ポリゴン)のようなドローンが現れ、レーザーを照射してきた。
「伏せろ!」
私たちは走った。 六郷社長が即席で作った「ジャミング装置(強力な磁石をモーターで回すだけの荒っぽい機械)」を作動させると、ドローンたちがふらふらと墜落していく。 カレンは落ちていた鉄パイプ(データ上のゴミ?)を拾い、舞うようにドローンを叩き落とす。
「ここは私のステージよ!」
最上階。 そこには、巨大な光る球体――『運命の原簿』が鎮座していた。 その前に、一人の老人が浮遊していた。 長い白髭に、真っ白なローブ。いかにも「神様」といった風貌だが、その手にはタブレット端末が握られている。
「……やれやれ。バグごときが、ここまで上がってくるとは」
老人がため息をついた。 彼こそが、運命監査局長。この世界のシナリオライターだ。
「柏木誠。おとなしく消えていれば、来世で少しはマシな人生を用意してやったものを」
「余計なお世話だ。俺は今の人生が気に入ってるんだ」
私は一歩前に出た。
「返してもらおうか。俺たちが汗と涙と、たまに豪運で手に入れた『歴史』を」
「却下する。貴様の存在は、予定調和を乱すノイズだ。……ここで完全に消去(デリート)する」
局長がタブレットを操作した。 空間が歪み、私の体が足元から透け始めた。 存在の消滅。痛みはない。ただ、自分が「いなくなる」という感覚だけがある。
「柏木さん!」 「オーナー!」
仲間たちが駆け寄ろうとするが、見えない壁に阻まれる。
「終わりだ。……さらばだ、特異点」
私の視界が白く染まっていく。 ああ、これが最後か。 金も、名誉も、仲間も、記憶も。すべて消えるのか。
……いいや。 まだだ。 私には、まだ「切り札」がある。
私は消えゆく手で、ポケットの中を探った。 そこには、シルヴィアが最初に出会った日に落とした、あの壊れたスーツケースの「車輪(キャスター)」が入っていた。 不運の象徴。 だが、今の私にとっては、世界で唯一の「計算外の物体」だ。
「……神様。あんた、ギャンブルは好きか?」
「何?」
「俺の存在が消える確率と……あんたのタブレットが『故障』する確率。どっちが高いか、賭けようぜ!」
私は全力で、その車輪を投げつけた。 ターゲットは、局長のタブレット端末。 私の体はもう半分消えている。力が入らない。 軌道は大きく逸れ、明後日の方向へ飛んでいく。
「ハハハ! 狙いも定まらんか! 愚かな!」 局長が嘲笑う。
だが。 その車輪は、壁に当たり、天井に跳ね返り、床を転がり――。 シルヴィアが転んだ拍子に蹴っ飛ばした小石に当たり、奇跡的な角度で跳ね上がった。
そして。 まるで吸い込まれるように、局長のタブレットの充電ポートに突き刺さった。
バチッ!!
「……あ」
局長の手元で、タブレットが激しく発光した。 ショート。 直後、大爆発。
ドカァァァァン!!
「ぬわぁぁぁぁぁ! データがぁぁぁ! バックアップ取ってないぃぃぃ!」
神様の絶叫が響き渡る。 光る球体『運命の原簿』が制御を失い、暴走を始めた。
「……勝った」
私の体が、実体を取り戻していく。 世界が、再構築されていく音が聞こえた。 それは、誰かが決めた運命ではなく、私たちがこれから作る「白紙の未来」の音だった。
私たちは堂島さんの軽トラで、結界のギリギリまで接近した。
「……ここからは徒歩だ。結界をどう抜ける?」
一ノ瀬が計算結果を示す。 「正規のルートはありません。ですが……一点だけ、データの密度が極端に低い『穴』があります」
彼女が指差したのは、塔の基部にある、マンホールのような排気口。
「あそこは廃棄データの排出口。……シルヴィア様の『不運』を使えば、システムエラーを起こしてゲートを誤作動させられるはずです」
「私ですか!?」 シルヴィアが自分を指差す。
「ああ。君の出番だ。思いっきりドジを踏んでくれ」
私たちは排気口へ向かった。 シルヴィアは緊張のあまり、何もないところで足をもつれさせ、転倒。その拍子に、彼女が履いていた靴が脱げ、排気口のセンサー部に激突した。
バチッ! 『SYSTEM ERROR』の赤い光が明滅し、堅牢なゲートがガガガ……と音を立てて半開きになった。
「……開いた」 我妻監督が呆れる。「セキュリティがザルすぎるだろ」
「いや、彼女の不運が強すぎるんだ。行こう!」
塔の内部は、光のラインが走るサイバー空間のような場所だった。 重力が曖昧で、壁や天井にも通路がある。
「侵入者検知。排除シマス」
無数の幾何学立体(ポリゴン)のようなドローンが現れ、レーザーを照射してきた。
「伏せろ!」
私たちは走った。 六郷社長が即席で作った「ジャミング装置(強力な磁石をモーターで回すだけの荒っぽい機械)」を作動させると、ドローンたちがふらふらと墜落していく。 カレンは落ちていた鉄パイプ(データ上のゴミ?)を拾い、舞うようにドローンを叩き落とす。
「ここは私のステージよ!」
最上階。 そこには、巨大な光る球体――『運命の原簿』が鎮座していた。 その前に、一人の老人が浮遊していた。 長い白髭に、真っ白なローブ。いかにも「神様」といった風貌だが、その手にはタブレット端末が握られている。
「……やれやれ。バグごときが、ここまで上がってくるとは」
老人がため息をついた。 彼こそが、運命監査局長。この世界のシナリオライターだ。
「柏木誠。おとなしく消えていれば、来世で少しはマシな人生を用意してやったものを」
「余計なお世話だ。俺は今の人生が気に入ってるんだ」
私は一歩前に出た。
「返してもらおうか。俺たちが汗と涙と、たまに豪運で手に入れた『歴史』を」
「却下する。貴様の存在は、予定調和を乱すノイズだ。……ここで完全に消去(デリート)する」
局長がタブレットを操作した。 空間が歪み、私の体が足元から透け始めた。 存在の消滅。痛みはない。ただ、自分が「いなくなる」という感覚だけがある。
「柏木さん!」 「オーナー!」
仲間たちが駆け寄ろうとするが、見えない壁に阻まれる。
「終わりだ。……さらばだ、特異点」
私の視界が白く染まっていく。 ああ、これが最後か。 金も、名誉も、仲間も、記憶も。すべて消えるのか。
……いいや。 まだだ。 私には、まだ「切り札」がある。
私は消えゆく手で、ポケットの中を探った。 そこには、シルヴィアが最初に出会った日に落とした、あの壊れたスーツケースの「車輪(キャスター)」が入っていた。 不運の象徴。 だが、今の私にとっては、世界で唯一の「計算外の物体」だ。
「……神様。あんた、ギャンブルは好きか?」
「何?」
「俺の存在が消える確率と……あんたのタブレットが『故障』する確率。どっちが高いか、賭けようぜ!」
私は全力で、その車輪を投げつけた。 ターゲットは、局長のタブレット端末。 私の体はもう半分消えている。力が入らない。 軌道は大きく逸れ、明後日の方向へ飛んでいく。
「ハハハ! 狙いも定まらんか! 愚かな!」 局長が嘲笑う。
だが。 その車輪は、壁に当たり、天井に跳ね返り、床を転がり――。 シルヴィアが転んだ拍子に蹴っ飛ばした小石に当たり、奇跡的な角度で跳ね上がった。
そして。 まるで吸い込まれるように、局長のタブレットの充電ポートに突き刺さった。
バチッ!!
「……あ」
局長の手元で、タブレットが激しく発光した。 ショート。 直後、大爆発。
ドカァァァァン!!
「ぬわぁぁぁぁぁ! データがぁぁぁ! バックアップ取ってないぃぃぃ!」
神様の絶叫が響き渡る。 光る球体『運命の原簿』が制御を失い、暴走を始めた。
「……勝った」
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