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第46章 新しい名刺と、変わらない笑顔
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あれから、一年が経った。
東京・丸の内。 かつて私がリストラされた会社のビルがあった場所には、今は新しい複合施設が建っている。 その最上階にあるオフィス。 真新しいデスクで、私は一枚の名刺を眺めていた。
『株式会社 オリオン・リンクス 代表取締役社長 柏木 誠』
以前のような「数兆円規模の投資会社」ではない。 規模はずっと小さい。けれど、地に足のついた、人と人を繋ぐための新しい会社だ。
「……柏木様。午後のスケジュールの確認です」
コーヒーの香りとともに、一ノ瀬玲奈が入ってきた。 彼女は相変わらず完璧なスーツ姿だが、その表情は以前のような氷の仮面ではなく、どこか柔らかな雰囲気を纏っている。
「13時から、如月カレン様主演の映画『リベリオン・ガール2』の制作発表会見。15時からは、六郷社長と共同開発した新型医療ロボットのプレゼン。そして夜は……」
「夜は?」
「『さくら亭』にて、チーム全員での定例食事会です」 一ノ瀬が少し嬉しそうに微笑んだ。
*
あの「黒い塔」での決戦の後、世界は再構築された。 だが、完全に元通りになったわけではない。 私の「異常な豪運」は消え去った。今の私は、宝くじを買っても当たらないし、雨が降れば濡れるし、トーストはバターの面を下にして落ちることもある。
けれど、私たちが積み上げた「絆」と「実績」の一部は、新たな歴史として定着していた。 カレンは実力派女優として世界で活躍し、ミナの店は予約の取れない名店となり、六郷社長や我妻監督もそれぞれの分野で輝いている。
何より、運命監査局の連中――ルシフェルや局長は、二度と現れなかった。 どうやら、私たちが作った「予測不能なカオスな世界」に愛想を尽かしたか、あるいは「観測する価値あり」と認めて放置してくれているらしい。
「……社長。お客様がお見えです」
ドアが開く。 入ってきたのは、黒いドレスではなく、パステルカラーのワンピースを着た少女。 シルヴィアだ。
「お疲れ様です、柏木さん! ……あ、わっ!」
彼女は入り口で何もないのにつまずき、持っていた書類をばら撒いた。 「あうう……ごめんなさい……」
「大丈夫か、シルヴィア」 私は苦笑して、書類を拾うのを手伝った。
彼女の「不運」も、完全には消えなかった。 だが、今はそれを「リスク管理コンサルタント」として活かしている。彼女が「嫌な予感がする」と言ったプロジェクトは必ず炎上するので、回避するための羅針盤として大活躍しているのだ。
「今日は転ぶのが一回だけでした! 今日の私はツイてます!」 シルヴィアが満面の笑みで言う。
「それはよかった。……さて、行こうか。みんなが待ってる」
*
夕暮れの銀座。 『小料理 さくら亭』の暖簾をくぐると、懐かしく、温かい出汁の香りが迎えてくれた。
「いらっしゃいませ! お待ちしてました!」 ミナが割烹着姿で飛び出してくる。
「おう、遅いぞ柏木! 俺の酒がなくなっちまう!」 堂島さんが既に顔を赤くして盃を掲げている。
「まったく、主役が遅刻とはいい度胸だ。……ほら、ここ座れよ」 我妻監督が、私の席を空けてくれる。
「オーナー! 見てください、新作のポスター!」 カレンが駆け寄ってきて、キラキラした瞳で私を見上げる。
そこには、私のかけがえのない「家族」たちがいた。
私は席に着き、突き出しの小鉢を一口食べた。 ああ、美味い。 三十億円の器で食べた時よりも、ずっと。
「……柏木様」 一ノ瀬が隣で、静かに尋ねてきた。
「今の貴方は……幸せですか?」 「ん?」 「以前のように、何もしなくてもお金が入ってくる『豪運』はありません。トラブルも多いですし、苦労も絶えません。それでも……」
私は日本酒を一口飲み、皆の笑顔を見渡した。 そして、ポケットの中にある、あの日カレンからもらった500円のお守りを握りしめた。
「ああ。……俺は今、世界で一番『運がいい』男だよ」
豪運とは、棚からぼたもちが落ちてくることじゃない。 どんな困難が起きても、一緒に笑い飛ばせる仲間に出会えたこと。 そして、自分の足で、自分の意志で、明日を選べること。
それが、本当の幸運だ。
「さあ、乾杯しよう! 俺たちの最高に予測不能な未来に!」
「「「乾杯!!」」」
グラスが触れ合う音が、店内に響き渡る。 私の直感が告げている。 これからの人生も、きっと波乱万丈で、最高に面白いことになるだろう、と。
リストラから始まった、私の中年逆転劇。 これにて、閉幕。
東京・丸の内。 かつて私がリストラされた会社のビルがあった場所には、今は新しい複合施設が建っている。 その最上階にあるオフィス。 真新しいデスクで、私は一枚の名刺を眺めていた。
『株式会社 オリオン・リンクス 代表取締役社長 柏木 誠』
以前のような「数兆円規模の投資会社」ではない。 規模はずっと小さい。けれど、地に足のついた、人と人を繋ぐための新しい会社だ。
「……柏木様。午後のスケジュールの確認です」
コーヒーの香りとともに、一ノ瀬玲奈が入ってきた。 彼女は相変わらず完璧なスーツ姿だが、その表情は以前のような氷の仮面ではなく、どこか柔らかな雰囲気を纏っている。
「13時から、如月カレン様主演の映画『リベリオン・ガール2』の制作発表会見。15時からは、六郷社長と共同開発した新型医療ロボットのプレゼン。そして夜は……」
「夜は?」
「『さくら亭』にて、チーム全員での定例食事会です」 一ノ瀬が少し嬉しそうに微笑んだ。
*
あの「黒い塔」での決戦の後、世界は再構築された。 だが、完全に元通りになったわけではない。 私の「異常な豪運」は消え去った。今の私は、宝くじを買っても当たらないし、雨が降れば濡れるし、トーストはバターの面を下にして落ちることもある。
けれど、私たちが積み上げた「絆」と「実績」の一部は、新たな歴史として定着していた。 カレンは実力派女優として世界で活躍し、ミナの店は予約の取れない名店となり、六郷社長や我妻監督もそれぞれの分野で輝いている。
何より、運命監査局の連中――ルシフェルや局長は、二度と現れなかった。 どうやら、私たちが作った「予測不能なカオスな世界」に愛想を尽かしたか、あるいは「観測する価値あり」と認めて放置してくれているらしい。
「……社長。お客様がお見えです」
ドアが開く。 入ってきたのは、黒いドレスではなく、パステルカラーのワンピースを着た少女。 シルヴィアだ。
「お疲れ様です、柏木さん! ……あ、わっ!」
彼女は入り口で何もないのにつまずき、持っていた書類をばら撒いた。 「あうう……ごめんなさい……」
「大丈夫か、シルヴィア」 私は苦笑して、書類を拾うのを手伝った。
彼女の「不運」も、完全には消えなかった。 だが、今はそれを「リスク管理コンサルタント」として活かしている。彼女が「嫌な予感がする」と言ったプロジェクトは必ず炎上するので、回避するための羅針盤として大活躍しているのだ。
「今日は転ぶのが一回だけでした! 今日の私はツイてます!」 シルヴィアが満面の笑みで言う。
「それはよかった。……さて、行こうか。みんなが待ってる」
*
夕暮れの銀座。 『小料理 さくら亭』の暖簾をくぐると、懐かしく、温かい出汁の香りが迎えてくれた。
「いらっしゃいませ! お待ちしてました!」 ミナが割烹着姿で飛び出してくる。
「おう、遅いぞ柏木! 俺の酒がなくなっちまう!」 堂島さんが既に顔を赤くして盃を掲げている。
「まったく、主役が遅刻とはいい度胸だ。……ほら、ここ座れよ」 我妻監督が、私の席を空けてくれる。
「オーナー! 見てください、新作のポスター!」 カレンが駆け寄ってきて、キラキラした瞳で私を見上げる。
そこには、私のかけがえのない「家族」たちがいた。
私は席に着き、突き出しの小鉢を一口食べた。 ああ、美味い。 三十億円の器で食べた時よりも、ずっと。
「……柏木様」 一ノ瀬が隣で、静かに尋ねてきた。
「今の貴方は……幸せですか?」 「ん?」 「以前のように、何もしなくてもお金が入ってくる『豪運』はありません。トラブルも多いですし、苦労も絶えません。それでも……」
私は日本酒を一口飲み、皆の笑顔を見渡した。 そして、ポケットの中にある、あの日カレンからもらった500円のお守りを握りしめた。
「ああ。……俺は今、世界で一番『運がいい』男だよ」
豪運とは、棚からぼたもちが落ちてくることじゃない。 どんな困難が起きても、一緒に笑い飛ばせる仲間に出会えたこと。 そして、自分の足で、自分の意志で、明日を選べること。
それが、本当の幸運だ。
「さあ、乾杯しよう! 俺たちの最高に予測不能な未来に!」
「「「乾杯!!」」」
グラスが触れ合う音が、店内に響き渡る。 私の直感が告げている。 これからの人生も、きっと波乱万丈で、最高に面白いことになるだろう、と。
リストラから始まった、私の中年逆転劇。 これにて、閉幕。
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そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
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それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
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