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第2章 調教
10.詰所に届く悲鳴(1)
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その日、佐々木は宿直番だった。
暗くなると、常御殿の中奥にある馬廻の詰所に向かった。
馬廻の詰所は城の要所要所に設けられているが、この詰所は城主の私的空間のもっとも内側、厳重な警護線上にあり、虎長の寝所へ通じる唯一の通路に面している。
藩主の寝所は、不寝番の小姓と馬廻衆によって、何重にも守られていた。
馬廻にも序列があり、この詰所に属するのは、馬廻衆の中でも上級の、虎長との距離が近い者であり、それゆえに忠誠心が高く、主の秘事にかかわる機会も多い。
かつて、実千代が虎長の閨に仕えていた頃、この詰所にまで、悲鳴のような声が届いた。
当初、馬廻たちは動揺した顔を見合わせ、中には見るからに青ざめて狼狽える者もいた。
しかし、慣れとは恐ろしいもので、少年の尋常ではない叫びが響いても、「今宵も激しいな」「お盛んなこった」などと軽口を叩き合うようになり、やがては無関心に肩をすくめるだけになった。
実千代が、虎長の性的な玩具であったことは、近習衆の誰もが知る、公然の秘密だった。
この時代、主君の夜伽相手に選ばれるのは名誉なこととされ、この山坂藩では、藩主の「御手付き小姓」は、敬意をもって御部屋殿と呼ばれている。
実千代は十一歳から七年間、御部屋殿の地位にあったが、虎長が実千代を専属的に抱いたのは、最初の二年にも満たない期間だけ。
その後、虎長は馬廻たちと実千代を共有するのを厭わなくなり、その範囲は年月と共に拡大した。
数十名に及ぶ男たちが実千代を凌辱し、直接関与しなくとも、百名単位の者が、彼がどのような虐待を受けているのかを知っていた。
佐々木もまた、関与した者の一人であった。
実千代がいなくなったことに、内心、安堵している馬廻は少なくない。
あの悲鳴とも泣き声ともつかぬ叫びを聞かずに済むからだ。
詰所に落ちる夜の静寂は、ある種の安寧に他ならなかった。
その夜、突然、甲高い悲鳴が空気を切り裂いた。
佐々木と同僚たちは、反射的に太刀を手に詰所を飛び出した。
暗くなると、常御殿の中奥にある馬廻の詰所に向かった。
馬廻の詰所は城の要所要所に設けられているが、この詰所は城主の私的空間のもっとも内側、厳重な警護線上にあり、虎長の寝所へ通じる唯一の通路に面している。
藩主の寝所は、不寝番の小姓と馬廻衆によって、何重にも守られていた。
馬廻にも序列があり、この詰所に属するのは、馬廻衆の中でも上級の、虎長との距離が近い者であり、それゆえに忠誠心が高く、主の秘事にかかわる機会も多い。
かつて、実千代が虎長の閨に仕えていた頃、この詰所にまで、悲鳴のような声が届いた。
当初、馬廻たちは動揺した顔を見合わせ、中には見るからに青ざめて狼狽える者もいた。
しかし、慣れとは恐ろしいもので、少年の尋常ではない叫びが響いても、「今宵も激しいな」「お盛んなこった」などと軽口を叩き合うようになり、やがては無関心に肩をすくめるだけになった。
実千代が、虎長の性的な玩具であったことは、近習衆の誰もが知る、公然の秘密だった。
この時代、主君の夜伽相手に選ばれるのは名誉なこととされ、この山坂藩では、藩主の「御手付き小姓」は、敬意をもって御部屋殿と呼ばれている。
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その後、虎長は馬廻たちと実千代を共有するのを厭わなくなり、その範囲は年月と共に拡大した。
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佐々木もまた、関与した者の一人であった。
実千代がいなくなったことに、内心、安堵している馬廻は少なくない。
あの悲鳴とも泣き声ともつかぬ叫びを聞かずに済むからだ。
詰所に落ちる夜の静寂は、ある種の安寧に他ならなかった。
その夜、突然、甲高い悲鳴が空気を切り裂いた。
佐々木と同僚たちは、反射的に太刀を手に詰所を飛び出した。
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