かきまぜないで

ゆなな

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3章

9話

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「高弥、着いたぞ」
 声が掛かって、 高弥は自分が助手席ではなく平らなところに寝かされていることに気が付いた。
「起きれないなら抱っこで連れてってやろうか」
 運転席から沢村が笑って後部座席を振り返った。
 どうやらシートを倒して簡易ベッド状になった後部座席に寝かされていたらしい。
「え、やだ。それは勘弁……って俺いつ後ろに……」
「行きは電車だったんだろ。  ずっと座ってんのもあんま良くねぇんだよ。だからサービスエリアで後ろ移したんだけど、お前全然起きねぇのな」
 恐らくサービスエリアで抱き抱えられて助手席から移動させられたのだと思うと恥ずかしくて頬が熱くなった。
 運転席から降りた沢村が、後部座席のドアを開けておかしそうにくつくつ笑って立っていた。
 起き上がると体にブランケットが掛けられていたことに気が付いた。どんな顔して沢村がブランケットなんかを車の中に用意したのかと思うと高弥の方こそ笑いそうだ。
「それ、 車用にするから置いといて。お前車ですぐ寝そうだし」
 ブランケットを持って降りようとしたらそう言われたので、高弥は車の中置いて降りる。
 すると、其処は見慣れない何処かの地下駐車場だった。
 いつの間に買い物したコンビニの袋を手に持ち、高弥が背負ってたリュックを肩に掛けた沢村。
「あれ?白衣脱いだんですか?」 
 迎えに来ていたときはまだ着ていた白衣を脱いだことを茶化すとうるせぇよと額を軽く小突かれた。斜め右上にある沢村の照れた横顔にときめいてしまうなんて少女漫画じゃあるまいしと思ったけど、その表情は高弥をくすぐって仕方ない。
「ほら、行くぞ」
 そう言われて手を引かれて車から降りた。繋いだ手がどちらの熱とも分からない熱さで火照る。
 地下駐車場と建物を繋ぐ自動ドア。オートロックシステムのパネルに沢村が軽く触れただけでドアが空いた。
「これ、財布にカードキー入れておけばボタン一つで開くやつ。便利じゃね?」
 そう言って得意気に高弥を見た。
「へぇ。鍵出さなくていいの便利っすね……ってココどこなんですか?ホテルかと思ったけど違うような……」
 地下駐車場から建物の中に入ると洒落た雰囲気になった。派手さはないけれどダークブラウンでシックに纏まっている。
 エレベーターが3基並ぶホールで高弥がきょろきょろすると
「俺がマンション買ったって聞いたんじゃねぇの?」 
とぼそりと沢村が言う。
「え?ここ先生が買ったマンションなの?」
 高弥が驚いている間にエレベーターのドアが開き、乗り込んだ。
「今までが今までだったから、信じらんねぇかもしれないけど、お前が妊娠したり、出ていったりしなかったとしても、そろそろ 二人で住む家買って、 ちゃんと好きだって言おうと思って準備してたっつーか……いい加減ちゃんとしようと思ってたっつーか……でもさ、家って買って住めるようになるまで結構時間かかんのな。こんなに遅くなるつもりじゃなかったんだけどな……」
 沢村はエレベーター内のパネルの方を見て言うから、どんな顔をしているのか高弥にはわからない。
「二人って……」
 高弥が思わず問う。
「あーもう、この流れなんだからわかんだろ!……ってわかんねぇから拗れんだっけか……二人っつーのは俺と高弥のことで、俺が一緒に暮らしたいのは高弥だけだ」
 沢村が言うと繋いだてのひらがもっと熱くなった。

 エレベーターが一番上の階に着く。 ホテルみたいな内廊下を歩くと部屋に到着した。
 地下駐車場から中に入ったときと同様、沢村がパネルに触れただけで簡単に部屋のドアは開いた。
 3LDKの部屋は新築の最新設備を備えていた。
「……ほんとは家具とか全部揃った完璧な状態で連れてきたかったんだけどさぁ」
「うそだろ……給料は殆んど競馬とパチンコと酒で溶かしてんじゃなかったっけ?」
 高弥の言葉を聞いて、
「おい、俺のこと何だと思ってんだよ。まぁお前とこうなる前はマジで貯金なかったから強ち間違いでもねぇんだけど」
と言った。
 幾つかの家具家電を荷解きしている途中らしくダンボールがいくつも並ぶ。
 まだ引っ越し途中の部屋といった様だが、ドレープラインの深いセンスの良いカーテンが掛かっていたし、キッチンには使い勝手の良さそうなオーブンレンジやキッチンツールが並んであった。
「これ全部沢村先生が準備したんですか?」
 生活力が殆んど欠如していると言ってもいい沢村が用意できたようには見えず、尋ねると
「あー……いや、なんつーか協力してもらったつーか」
 妙に歯切れが悪い回答が返ってくる。
 その時だった。
 インターフォンが鳴った。沢村が急いでインターフォンのパネルでロックの解除をして、小さなモニターに移ったカメラの画像を素早く消したが、長い髪が美しくスタイルの良い女性が写っているのが見えた気がした。
 
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