かきまぜないで

ゆなな

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番外編SS

これが証拠です2

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 戦いの火蓋が切って落とされてから3日ほど経った夜更けのこと。

「おっと、やべ。止め忘れてた」
 そう言って沢村はベッドのすぐ傍のローテーブルに置いておいたスマホをタップして動画の録画を止めた。
 疲れ果てて、すやすや眠る高弥にTシャツを被せてやるのを優先して、止めるのをすっかり忘れてしまった。
「すぐ腹冷やして風邪引くかんなーったく」
 そう言って柔らかい毛布を掛けてやってから、自らのスマホを見て沢村はにやりと笑った。
「コレみたらもう生意気なこと言えなくなんだろ」
  3日前、少し疲れた顔をしていたので、翌日の早番が大変かと思って1回で終わらせてやろうと思ったのに。
『抜いちゃやだぁ』と沢村を誘惑したのは高弥なのだ。
 すっかり忘れて人のせいにした上に証拠を出せときたもんだ。
「出してやろーじゃん、証拠」
 これを見てどんな顔を高弥がするかと思うと楽しみで堪らない。
 真っ赤に染まった可愛い顔であたふたし始めたら、無理やり腕のナカに閉じ込めて最後までしっかり感じまくってる動画を見させてやろう、と人の悪い笑みを沢村は浮かべる。
 1回戦を終えてとろっとろのどろっどろにしたあと。 ベッド横に置いたスマホの動画撮影モードを起動した。
 行為の最初から動画を撮りたかったが、幾らなんでも撮影していることがバレそうだったので、高弥がとろとろになってから撮ろうと決めていた。予めベストポジションにスマホを置いておいてセッティングしておいた。高さを調節するため、スマホを分厚い医学書の上に置いたのが不自然といえば不自然であったが、高弥に突っ込まれることはなかった。
 沢村の企みを知らず、天使のような寝顔を晒す高弥の頬におやすみのキスを落としたあと、沢村はワイヤレスのイヤホンを自身の耳に射し込んで録画したばかりの動画を再生した。

 部屋の電気を消したがる高弥だが、1回でも達してしまえば部屋の電気を煌々と点けても気が付かない。ちょろい。ちょろすぎて心配だが、明るいところで感じている顔を具に晒してしまっていることを知るものは沢村しかいないので、まぁいいとする。
 なので、部屋は明るく出来たため、想像以上に表情がクリアに映っていて、沢村の笑みは深まる。
 ベッドで大きく脚を開かされている高弥。達した直後の上気した頬、焦点が定まらない潤んだ瞳。
『明日早番だから、もう寝るんだろ?』
  ぐちゅ、と濡れた音がして、沢村が陰茎を入り口付近まで抜きかけたとき。
 高弥の綺麗な形の脚がゆっくりと沢村の逞しい腰に絡み付いた。
『抜いちゃやだぁ……』
 今日も3日前と同じように言って腕も沢村の首に巻き付けて、必死な様子で沢村のくちびるを寄せる。
 沢村は意地悪に、ぺろり、と高弥の唇を舐めて
『明日眠いから、1回だけなんじゃなかったのかよ』
 そう言うと、 頑是無い子供のように、それでいて誘惑が巧い小悪魔のようにいやいや、と高弥は頭を振って腰を押し付けてくる。
 ぐぷ……と濡れた音がして、沢村の陰茎が再び奥に吸い込まれていくのが画面から見てとれて思わず沢村は息を飲んだ。
 あの温かで柔らかくて、ぬるぬるとぬめっているのに、ぎゅっと絡んで吸い付くような感覚。それを沢村は一人思い出して腰が震えた。
 一度出したせいで、交じり合った体液が二人の繋がっているところから流れていく様子はたまらなく淫靡で。
『沢村、先生っ……まだお腹のなか熱い……たすけて……ぇ』
 高弥が甘えるような声でそう言ったとき、画面を見詰める沢村も画面の中の沢村もごくり、と生唾を飲んだ。
 たまらなくなった画面の中の沢村が奥をぐちゅりと突く。
『あぁ……ん』
 イヤホン越しに流れてくる高弥の喘ぎ声はまるで、脳内に直接流し込まれているようで酩酊したときのように頭がくらりとする。
 ほんの少し前の行為で、たっぷりと高弥の奥に注ぎ込んだばかりなのに、沢村の欲望が再び頭をもたげてくる。そのとき
『はぁ…………っぅ』
 高弥の甘い蜜のナカを奥まで存分に味わっている画面の中の沢村が、感じて吐息を漏らしたのが聞こえて、動画を見ている沢村は凍りついた。
 自分はこんな甘ったるい声を漏らしていたのか……
『あっ……奥きもちい……っ』
 高弥の可愛い声が沢村の鼓膜に触れる。
 そして
『あっ……バカっ……ナカびくびくさせんなって……っく……すぐ出ちまうだろぉ……』
 それこそバカみたいに甘く感じ入った情けない沢村自身の声が後に続いて、思わず沢村は自分の顔を手で覆った。
(こんなんだったか……俺……?くそ、さっきのことなのに気持ちよすぎたことしか思い出せねぇ)
『だって……ぇ……気持ちくて、 びくびくなっちゃう……あぁっ……沢村せんせ……っ気持ちいいよぉ……』
 高弥の甘い声に、はぁはぁと興奮しきった獣のような沢村の荒い息が混じる。
『っ……くそ……可愛いすぎんだろ……っ』
 恍惚とした顔で必死で腰を揺らす動画の中の沢村が思わず漏らした一言に、沢村は更に凍りついた。
『あっ……あっ………止めてぇ……も、イってるからぁ………っ』
 とろりと高弥の小さなピンク色のペニスから薄い体液が溢れたが
『わり……っ腰止まんねぇ……… あぁ……っ可愛い……っ』
 絶頂しているというのに、容赦なく腰を打ち付けるぱちゅぱちゅという音が辺りに響く。そして、高弥のくちびるを貪り、その後は頬に、瞼に、おでこに、鼻先に……顔中に狂ったようにひたすらキスを落とす己の姿が映っていた。
 それも譫言のように、可愛い、可愛い……とバカみたいに呟きながら。
 幸いなことに、達したばかりの敏感な躯の奥をぐちゃぐちゃと擦られている高弥の耳には届いていないらしく、高弥のくちびるからは意味を成さない甘い音色だけがこぼれ落ちていた。
 そんな高弥の様子に画面の中の沢村は更に情欲が掻き立てられたのか、
『喰っちまいたいくらい、可愛い……っ』
 一際奥に入り込んで、
『ぅ………っ』
 自身が欲望を放ったのが、画面から見て取れた。
 そして、音にはならなかったが、沢村のくちびるはそのとき誰が見てもわかるほど、はっきりこう、 動いていた。

『タカヤ、アイシテル』


「うわぁぁぁ」
 思わず叫んで沢村は自分のスマホを投げ出した。
「ん…… 沢村先生……?まだ起きて……?」
 沢村の声に目を覚ました高弥。
「なななな何でもねぇよ!すぐ寝るから!気にすんな!さっさと寝ろ! な?明日も早いんだぞ!」
「……?はい」
 焦りきった沢村の声に高弥は少し首を傾けたものの、睡魔には勝てないらしく再び目を瞑った。
「っまじ焦った……ぁ」
 思わず呟いて、それから放り出した自身のスマホを恐る恐る見るとまだ動画は続いていて……
 すっかり意識を失っている高弥の躯を温かなタオルで愛しそうに拭ってる己の姿が映っていた。


 沢村は己の敗訴を認めざるを得なかった。


 

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