平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする

ゆなな

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強面騎士団長は宿敵だったはずなのに4章

君が来ないホリデーパーティ

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 今まで約束なんかしなくても、勝手にアンドレアはいつだって待っていてくれた。
 だが約束をしたホリデーパーティの日は、いつまで経ってもサランの家の前にアンドレアの赤い馬は現れなかった。
 サランはお洒落をしていた。大人っぽい服装をする彼と合わせてもどうにも似合わないから、サランらしいお洒落にはなったが、リストランテでアンドレアに恥をかかせないようにと気は使った。綺麗なラインを描くコートと仕立屋で体に合うように作ってもらったシャツ。明らかにお洒落をして誰かを待ち続けるサランを、両親は可哀そうなものを見るような目で見てくる。
「こんなに可愛いサランを振るなんて、見る目がない人だ。気にしないでパパとママと一緒にディナーを食べよう? お腹が空いただろう?」
 サランの父親が慰めるように背を撫でた。一人息子にとことん甘い父親なので心配でたまらないのだろう。キッチンではサランの分のディナーを急いで用意すべく調理魔法を使っている母親の気配がする。
 こんなとき自分は両親がいてくれて幸せなんだと実感するが、正直今は放っておいてほしい。ただ、それを言うのも我儘だと思ったサランは父親の問いに答えた。
「……僕、そんなに残念そうな顔してる?」
「あぁ、この世の終わりみたいな顔をしている。だが、心配するな。今は辛いかもしれないが、失恋をいくつも超えて運命の人と出会うものさ」
 父親の芝居がかったようなセリフに、サランは溜息を吐いた。
 約束の時間にアンドレアが現れないことで、サランは結構落ち込んでいる。
 いや、結構どころか、かなり落ち込んでいる。その事実にまた落ち込んでいるのだから、少しややこしい。
「僕より素敵な貴族の人が現れたのかもしれないしね」
「そうだとしたら、その人はサランの運命じゃなかったというだけさ」
 父の言葉にサランはあいまいに笑った。
 何かあったのかもしれないと思い、サランはとっくに言の葉送りで尋ねているが、返事が早いはずの彼から一向に返事は来ない。
 休暇に入ったその日にサランはアンドレアの家に行ったわけだが、あれから一週間過ぎた。
 男子ばかりの学校から解き放たれて、綺麗な貴族の女性とでも出会ってしまって、サランなんかに告白したことを今頃後悔しているのかもしれない。
「……貴族のお坊ちゃまの気まぐれかな……そんな奴じゃないと思ってたんだけど……まぁ僕も見る目がなかった……ってかそもそも僕はユノが好きだって伝えていたんだから、告白を撤回したところで文句言うのはおかしいよな」
 なんだか、胸の奥が痛い。胸を直接きゅうっと掴まれたみたいで息をするのも苦しい。
「え……? 貴族のお坊ちゃま? どういうこと? 」
 父親がサランの言葉に狼狽えていた気がしたけれども、サランには構っている気持ちの余裕はなかった。時計を見ると、もう夜の九時を回っていた。
 この時間ではもうリストランテに行ったところで何も食べることはできないだろう。
 言の葉送りを送ったサランにできることと言えば、家の門扉がよく見える窓のところで座って彼を待つことだけだった。
 そのうちにちらちらと雪が降り始めた。
 ユノが住んでいる地域には珍しくないことだが、王都ではたまにしかないことだ。
「綺麗だなぁ……え?」
 濃紺の空から舞い落ちる白い雪の結晶は、サランの心の中など構いはしないといわんばかりに美しかった。
 サランがぼんやりと外を眺めていると、サランの家の門扉の前にいつもの赤い馬車が滑り込んできたのでサランは思わず驚きの声を上げた。
「パパ!ママ! やっぱり出かけてくる! ママ!! ディナーは帰ってから食べるから冷凍魔法掛けて取っておいて!! ごめんね!!」
 そう言うとサランは二階にある自室に走り込んだ。
 少しばかり悪い予感がして、サランは治癒院で使う薬草や道具が入っている収納バッグを掴むと、そのまま転がるような勢いで家を出た。
 家を出ると、彼の侍従が走ってサランの家の扉に向かって来ていた。
 嫌な予感は当たっていたのだ――……



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