平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする

ゆなな

文字の大きさ
76 / 90
強面騎士団長は宿敵だったはずなのに4章

二人の時間2

しおりを挟む
 寝室から出ると先日一緒に朝食を摂った部屋だ。その部屋には大きな暖炉があった。
 アンドレアと共に暖炉の前に座り込んでユノのノートを開く。
「じゃあ僕から話してみるね。えーと『こんにちは。いつもへやをあたためてくれて ありがとうございます』」
『サランだね こんにちは さいきんよく このへやにきているね』
『はい。このいえの アンドレアと ともだちになったので』
「会話してる……!」
 アンドレアがサランと火の精のやり取りを見て目を見開いた。
「僕はユノの真似をして火の精とは今までに結構話したことあるからね」
「俺は返事をしてもらえなかった……少しゆらゆら揺れたかな?ってくらいで」
「火の精の人見知りかもしれないけど、確かに火の精の言葉を使ったのに無視はめずらしいから理由を聞いてみようか。えーと疑問文は……あった、このページだ。なになに……うんうん……さすがユノ。わかりやすいな……『アンドレアと おはなししてくださらなかったのは なぜですか』」
「おい……直球だな……」
 サランが火の精に尋ねると、アンドレアが肘で小突いた。
「うるさいな。だって回りくどい言い回しは難しいし、通じるように話せないよ。僕だって初心者なんだから……あ、火の精が揺れた……静かにして」
『アンドレアのことしってる こうげきまほうで ひのせいを けすから おこっている』
「……怒ってるって……」
「それは俺も聞き取れた……」
 火の精の言葉に、二人は呆然とした。
「……謝っておこうか?」
 少し沈黙の後、なんだか可哀想になってサランが言った。
「いや……炎を司る家に生まれたのに、火の精とはコミュニケーションできないものとして道具のように扱った俺が悪かったんだ……自分で謝る」
 アンドレアはしばらく無言でユノの革張りのノートを捲った。
 それから静かに息を吐いて暖炉の中の火の精をじっと見つめた。
『ほんとうに もうしわけなかった ひのせいを けすようなことは にどとしないと やくそくする』
 アンドレアはそれだけ絞り出すように言った。
「……アンドレア、新しい攻撃魔法についてアドバイスが欲しいことは言わなくてもいいの?」
「あぁ。酷いことをしておきながら、アドバイスが欲しいなんて言えねぇよ。今日はとにかく謝っておく。許してもらえないだろうから、ちゃんと火の精の言葉を勉強して、もっときちんとした謝罪が出来るようになったら、また話そうと思う」
 サランが尋ねると、アンドレアは真摯な声で言った。
「そっか……え……⁉ アンドレア! 待って! 火の精が何か言ってる!」
『……ひのせいとこうげきするときは ゆびからはなさないほうが いい』
 火の精が言った言葉は難しかったが、二人は急いでメモを取ってユノのノートを捲った。
『ありがとうございます……‼』
 ユノのノートを見て解読した後、アンドレアは火の精に感極まったように言った。
『ひかりのまほうつかい まもるために つかって ぼくたちもくらいせかいは きらい』
『かならず そうします!』
 アンドレアがそう言うと、火の精の揺らめきは止まった。
『ありがとう』
 揺らめきは止まったが、声は届くと思いサランも心を込めて言った。
「よかったね。アドバイスもらえて」
「あぁ。しかし、指から離さないように、とはどういうことなんだろうか……」
「確かに。ブーメランみたいにすると、手元に戻るときに難しいから手から離すなってことだよね。でも手から離さないで遠くにいる敵に攻撃を当てるってどういうことなんだろうね……アンドレア、攻撃魔法の種類とか歴史とか載ってる本ある?」 
「確か本棚の中にあったと思う」
 アンドレアはそう言うと暖炉の前から立ち上がって、部屋の片側の壁沿いにぎっしりと本が詰まっている本棚の前に立った。
「前から思ってたけどこの本棚すごくない? めっちゃ勉強熱心じゃん」
「親が跡取りとしてこのくらい勉強しろって勝手に作った本棚だ」
「ふはっそういうことか」
 サランも立ち上がり本棚の前に一緒に立って探しながら笑った。
「あ!! これは? 『炎の攻撃魔法全集』だって。それっぽくない? うわっ」
 サランはそう言って背伸びして上段の本に手を伸ばすと、体がぐらりと傾いた。
「おっと。高いのは俺が取るから言えよ」
 そう言って、アンドレアは難なくサランの体を受け止めた。先日馬の上から降ろされた時も思ったけれど、大きな掌で肩や腰を掴まれて簡単に支えられてしまうことは、サランは男としてなんだか面白くない。湯浴みの後の彼からは、爽やかにいつものシトラスがふんわり香る。
「僕、女の子じゃないからね」
「わかってる。サランがちゃんと女性をエスコートして踊っていたのも嫌ってほど見た。他の人と踊っているのを見るのは嫌だったけど、そんなサランもかっこよくて好きだと思った」
「あ……そう……」
 頬を膨らませて文句を言ったら、思っても見なかった方向から口説かれてサランは毒気を抜かれたように返事をした。アンドレアといると、調子が狂う。頬が赤くなっているのを見られたくなくて、サランは思わず俯いた。
「うわっ……ゴホっ……すごい埃だ……っ」
 アンドレアが『炎の攻撃魔法全集』という分厚い本を棚から取り出すと、埃が舞ってアンドレアがむせた。
 サランは顔を上げると、軽く指を振った。すると宙に舞った埃が一か所にまとまって部屋の隅のゴミ箱の中に落ちた。
「上手いもんだな……どうやったんだ?」
「簡単な清掃魔法だよ。指先に力を込めて、埃の方向にくるっと回すんだ。それでそのまま塊にしたら集中して移動させて、ゴミ箱のちょうど上のところで力を抜くと、ゴミ箱に落ちる。まだちょっと埃が舞ってるからやってみる?」
 サランがそう言うと、アンドレアは神妙な顔で頷いて、指を振った。
「っ難しいな……」
「大丈夫、初めてなのに上手だよ。そう、埃の塊が崩れないように集中して、そのままゴミ箱の上まで移動させて、落として」
「……外した……」
 アンドレアのまとめた埃はゴミ箱の少し横で爆発した。
「僕も初めてやった時こんなもんだったよ」
「幾つの時?」
「五歳になる前かな」
「そんなチビんときか……」
 そんなやり取りをしながらサランはさっとアンドレアが零してしまった埃を魔法でまとめてゴミ箱に落とした。
「練習すればすぐにできるようになるよ。さ、その本見てみよう」
 綺麗に埃を取り払った古い本を持って二人はソファに座った。
 途中部屋にサラン二号が入ってきたので、サランの膝に乗せて二人は額を寄せ合うようにして本を捲った。
「ねぇ……もしかして……」
「あぁ、これっぽいな」
 古い本には、魔法使いの指先から細い鞭のような細い炎が放たれている絵とその攻撃魔法の使い方の説明が掲載されていた。
しおりを挟む
感想 428

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。