平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする

ゆなな

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強面騎士団長は宿敵だったはずなのに4章

二人の時間3

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「なるほど。これなら指先から離れないな。だが遠くまで攻撃を飛ばそうと考えると、どうしても細い鞭になってしまう」
「そうだね。威力はあまり大きくない攻撃魔法になってしまいそう。太い鞭にすると魔力の喪失もだけど高温が手元にずっとあるから火傷しちゃいそうだし」
 二人は『炎の攻撃魔法全集』を前に時が経つのも忘れて考え込んだ。
 いつの間にか侍従がお代わりの紅茶をテーブルに差し入れてくれていたが、それも少し冷めた頃に気が付いた。
「指先に熱に耐性のあるアレル山の火山灰から作った軟膏を塗って、さらにフェニックスの羽根で作った包帯でテーピングすれば火傷の面はクリアできるかも」
 サランは自身の『治癒魔法の補助』という本をアンドレアに見せて言った。
「それで耐熱の面はクリアできても十分に戦場で戦える魔法となると、魔力の面が難しいな……」
 羽根ペンを握りしめ、本を前に真剣に話し合っていた時だった。
 突然部屋の扉が開いた。
「サラン様、昨日は貴重なホリデーパーティの夜なのに、そそっかしい弟の手当てをしてくださり、ありがとうございました。騎士団の治癒師でも診断にミスが出るような怪我でしたのに、一晩ですっかり回復させてくださるなんてサラン様は優秀な治癒師でいらっしゃるのね」
 先日のデザインとはまた違う、マーメイドラインの美しい真紅のワンピースを着たジュリエッタが妹のルーナを伴ってアンドレアの部屋に現れたのだ。
「サランさま……ありがとうございます」
「そんな……大したことはしていないので、ジュリエッタ様とルーナ様にそのように言っていただくと恐縮します……」
「お、サランの珍しいまともな言葉遣い」
「うるさい、アンドレア」
 ジュリエッタとルーナが丁寧にお礼を言ってくれたのでサランは返答したが、アンドレアがまた憎たらしいことを言うので小さく肘で小突いた。
「サラン様、両親が昨日のお礼とホリデーパーティの日に働かせてしまったお詫びに細やかですが、夕食の席を用意してございますの。お礼の品は何も受け取らなかったとのことですので、せめてお食事だけでも召し上がっていただけませんか?」
「え……えぇ……そんな……いいのかな……」
「食っていけよ。うちの親がお礼にって食事会を開くならかなりいいもんが食えるぞ。遠慮なんてらしくねぇだろ。いつもの食い意地発揮すれば」
 アンドレアが揶揄うように言うと、ジュリエッタが眉を顰めた。
「まぁ、アンドレア。あなたがいくら幼い性格だからって、そんな失礼な言い方してはいけませんわ」
「あ、大丈夫です。事実なところもあるので。それでは遠慮なくご馳走になります」
「ふふふ。やっぱりサラン様はとっても面白い方ね。楽しいお夕食の時間になりそうで嬉しいわ。それでは一階の広間でお待ちしておりますわね」
 そう言ってジュリエッタと彼女のスカートを掴んだルーナは先に階下へと降りて行った。
「……とは言ったものの、本当に僕みたいな平民がビスコンティ家の夕食会にお邪魔していいの?」
「全く問題ないな。父親は俺とそっくりで好き嫌いがはっきりしている。サランのことが気に入らなかったら、俺を助けてくれたとか関係なく夕食会には呼ばないだろうな。何か礼がしたくて呼んだということはサランのことを気に入ったってことだ」
「ええ……昨夜帰るときに正面玄関で少し話しただけだよ? 遅かったから僕もすぐに失礼したし」
「サランの良さはすぐにわかるよ。俺も仮面舞踏会のときはもちろんだけど、実は食堂のときも本当は分かっていた。あの状況で声を上げられる勇気のあるやつなんて滅多にいるもんじゃない」
「あ……そ……それはありがと……?」
「何で疑問文なんだよ……そこは素直にありがとうでいいんじゃねぇの」
 大きな掌が頭をポンと叩くと、サランの心臓もなぜか同時にポンと跳ねた。
「サラン?」
 なんだか最近アンドレアといると調子が狂う。何をされても言い返せていたのに、心臓の鼓動が大きくなってなんと返したらいいかわからない時があるのだ。
 言葉を失って困ったようにアンドレアを見ると、アンドレアもそんなサランを見て固まった。
「サラン……」
 普段のアンドレアからは想像もできないほどの甘い声に、サランはびくりと肩を揺らした。
 彼の手が、揺れた肩を宥めるように撫でた。
 ユノといるときの穏やかで優しい時間とは違って、心臓がバクバクと激しく鳴り響いて、苦しい。どうしたらいいかわからない。
 火の精と侍従の計らいによってちょうどいい温度に管理されている室内なのに、妙に体が熱くなり全身からじわりと汗が噴き出す。
「いつもより匂いが甘い……」
 アンドレアの鼻先が耳の辺りに当たる。
「や……病み上がりの人のところへはコロンを付けてないよ……に……匂いかがないでくんない?」
 今日はアンドレアの体調が回復していなかったらいけないと思い、いつも付けているお気に入りの桃のコロンは控えたのに。
 アンドレアを見ると彼も頬が上気していて、なんだかまた二人の間の温度が上昇したようだ。先ほど寝室で接していた時もそうだったが、気づくと二人の間に流れる温度は自然と上昇してしまうので、意識して距離を取らなければならないと思うのに、体は動かない。
 アンドレアの男らしい喉のラインが何かを耐えるように動いたのがスローモーションのように見えた時、扉がノックされた。
「アンドレア様、サラン様。夕食の支度が整いましたので、どうぞ広間までお越しください」
 彼の侍従の声がして、二人ははっとして扉を見つめた。
「行くぞ。これ以上二人っきりでいると、おかしくなりそうだ……」
「……っ」
 狂おしい彼の声にサランは何と返事をしていいかわからず押し黙ってしまったが、そんなサランを見て、アンドレは少し困ったような、でもとても優しい笑みを浮かべたのでサランはさらに自分の鼓動がめちゃくちゃになり、頬が赤くなるのを感じた。
 アンドレアはそんなサランの手をそっと取って立たせた。
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