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「あ……っああっ……っあっ、待っ……んんっ、ああっ……んんっ」
柔らかくて温かくて大きなベッドの上。
数年ぶりの行為に壊れたおもちゃみたいに大きな声を出してしまって、俺は咄嗟に自分の指を噛んで声を押し殺した。
「指噛まないで……アオイさんの声、聞きたい……」
彼はそっと俺の唇から噛んでいた指を外させて囁いた。
「や……だって……声、変だから……っあっ……」
久しぶりに体に含んだ彼のものが、お腹の中で熱く膨らんで、少し動かれるだけで、どうしようもなく気持ちいい。
「変じゃないよ……可愛い……ずっとアオイさんの声いっぱい聞きたかった……っ」
彼の大きな手が体のあちこちを撫でるし、中を味わうように腰を揺らされて、濡れた唇がひっきりなしに顔中に降ってくる中、思考がまとまらない。
「で……でもっ……や、じゃないの……んんっ……俺の、声……」
まとまらない中、必死に彼に告げる。
そう、彼は俺の声が嫌だったはずだ。
確かに行為の間、熱いものが萎えることは一度もなかったから、俺の体に嫌悪はなかったと思いたいが、いつも俺の声が漏れないように唇やタオルや枕で塞いでいた思い出がある。
彼が俺のことを好きでいてくれても、行為中の声や体が嫌なのは仕方ない。だって俺は男だから。
すると、彼の美しい宝石みたいな瞳が泣きそうに潤んだ。
「もしかして、俺がアオイさんの口をいつも塞いでいたから……?」
泣きそうな彼の瞳。
俺、怒ってないよ。
男の喘ぎ声なんて気持ち悪いじゃんか。
わかるから、無理して俺の変な声まで好きにならなくてもいいよ。
お腹の中のものが気持ちよくてうまく言葉が紡げなかったけれど、必死で思いを告げた。
「ちが……っもう……っ何でアオイさんはそうなのっ……」
彼は俺の両手首を抑えつけると、ずくずくと、俺の腹の奥を熱いもので掻き回した。
「あっ……んんああっ……やめて……っ声出ちゃう、からぁ……っ」
「俺は聞きたいんだよっ……アオイさんの声!」
いつも綺麗な声を紡ぐ彼の、珍しく乱れた音階。
「え……っでも……っああっ……」
「アオイさんの、あの部屋っ……壁が薄かったでしょ……っ……アイツに声聞かせたく、なかった……っ」
言いながら、いちばん奥まで、彼のものがねじこまれた。
「うぁぁっ……」
久しぶりの強烈な快感に、瞳の裏が白くなる。
「隣の部屋の……っ、オトコがいっつもアオイさんのこと……っジロジロ見てたしっ……」
隣のオトコ?
快感に揺られながら記憶の中を探ると、当時の貧しいアパートの隣に住んでいた中年のオトコの容姿が、頭の中にぼんやりと浮かび出できた。
特に何ていうこともない、単なる隣人で、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもない人であったけれども。
「へ……っあのおじさん……っ? なんで、あのおじさん……? んんっ」
突然出てきた俺と彼以外の登場人物に、俺の頭の中はハテナでいっぱいに埋め尽くされた。
「ああ……ほら、やっぱり自覚ない……とにかくっ……アオイさんのことイヤらしい目で見てたあのオトコにアオイさんの声聞かせたくなかったの!」
「あっ……ぅ」
言いながら奥の奥の粘膜にぺニスを擦り付けられる。
ちゅう、と首すじに彼は吸い付いて、ふぅ、キモチイイと彼は額に汗を滲ませて、うっとりと吐息混じりに呟いた。
「電気もね、いつも消してたのは、気持ちよくなってるアオイさんの顔が可愛い過ぎて、歯止めが効かなくなっちゃいそうだったから……っ……そうしたら、アオイさん……いっぱい声でちゃうもんね? こんなふうに……っ」
「ひっ……ぁあっ……」
「ここね、防音完璧だから、いっぱい可愛い声、出して大丈夫だから、もう遠慮しないね……ずっと我慢してた分、聞かせてよ……っ」
奥の奥でめちゃめちゃに動かれて、喉の奥から甘ったるいものがこみ上げてくる。
「俺、全部好きなんだよ……アオイさんのこと……っ綺麗で、優しくて……大好き……っずっとずっと……忘れられなかった……」
あの頃より、男らしくなって逞しくなった体に汗が伝うのが見えて気が狂ってしまいそうだった。
逞しくなった背に腕を回すとぎゅっとしがみついた。
そうしていると、これはいつも見ている夢じゃなくて現実なんだと実感できて、鼻の奥がつん、として涙が溢れた。
「ずっと……ずっと……会いたかった……っ」
「俺も……っ俺もずっとアオイさんに会いたかった……っアオイさんが傍にいてくれるのが、俺の一番の幸せなんだよ……っ……だから、もう離れないで」
彼はそう言って俺の唇を吸いながら、彼の甘ったるい体液を俺の体の中に出してしまうから、俺も耐えられなくなって甘い濁流に逆らわず飲み込まれた。
*****
「ようやく、見つけた……」
眠っているアオイの、泣いて少し赤くなった目元を愛おしそうに撫でながら男は呟いた。
自由にならない身で、アオイを探すのは本当に大変だった。
過去の恋のせいで自分に自信が持てないアオイは、自分なんかが愛されるわけがないという自信だけは驚くほどに強かった。
そんなアオイは姿を晦ますのは非常に上手で、まるで怯えた小動物のようであった。
事務所に属したばかりの頃は制限も多く、探し出すことは困難を極めた。何年も耐えて、努力し、ようやく自由を勝ち得た。
事務所にとって、無くてはならない存在にまで成長出来たのは、偏にアオイを探し出すための力が欲しかったからだ。
ようやく見つけ出したアオイはあの頃のように慎ましやかであったが、美しい山間に湧き出る清流のような透明感は変わっていなかった。
眠っているアオイの汗で濡れた前髪をそっと指で分けてやると、あの頃と変わらないあどけない様子に思わず笑みがこぼれた。
「自信無くすなんてことが絶対にないように、いっぱいいっぱい愛するからね……それでもアオイさんはまた俺の未来のために、なんて言って逃げちゃうかな? でも今度は逃さないし、万一逃げられてもすぐに捕まえるから」
もう、絶対にアオイさんを離さないよ。
覚悟してね。
美しい男は静かに笑って、傍らで無防備に眠る体を抱きしめた。
end
柔らかくて温かくて大きなベッドの上。
数年ぶりの行為に壊れたおもちゃみたいに大きな声を出してしまって、俺は咄嗟に自分の指を噛んで声を押し殺した。
「指噛まないで……アオイさんの声、聞きたい……」
彼はそっと俺の唇から噛んでいた指を外させて囁いた。
「や……だって……声、変だから……っあっ……」
久しぶりに体に含んだ彼のものが、お腹の中で熱く膨らんで、少し動かれるだけで、どうしようもなく気持ちいい。
「変じゃないよ……可愛い……ずっとアオイさんの声いっぱい聞きたかった……っ」
彼の大きな手が体のあちこちを撫でるし、中を味わうように腰を揺らされて、濡れた唇がひっきりなしに顔中に降ってくる中、思考がまとまらない。
「で……でもっ……や、じゃないの……んんっ……俺の、声……」
まとまらない中、必死に彼に告げる。
そう、彼は俺の声が嫌だったはずだ。
確かに行為の間、熱いものが萎えることは一度もなかったから、俺の体に嫌悪はなかったと思いたいが、いつも俺の声が漏れないように唇やタオルや枕で塞いでいた思い出がある。
彼が俺のことを好きでいてくれても、行為中の声や体が嫌なのは仕方ない。だって俺は男だから。
すると、彼の美しい宝石みたいな瞳が泣きそうに潤んだ。
「もしかして、俺がアオイさんの口をいつも塞いでいたから……?」
泣きそうな彼の瞳。
俺、怒ってないよ。
男の喘ぎ声なんて気持ち悪いじゃんか。
わかるから、無理して俺の変な声まで好きにならなくてもいいよ。
お腹の中のものが気持ちよくてうまく言葉が紡げなかったけれど、必死で思いを告げた。
「ちが……っもう……っ何でアオイさんはそうなのっ……」
彼は俺の両手首を抑えつけると、ずくずくと、俺の腹の奥を熱いもので掻き回した。
「あっ……んんああっ……やめて……っ声出ちゃう、からぁ……っ」
「俺は聞きたいんだよっ……アオイさんの声!」
いつも綺麗な声を紡ぐ彼の、珍しく乱れた音階。
「え……っでも……っああっ……」
「アオイさんの、あの部屋っ……壁が薄かったでしょ……っ……アイツに声聞かせたく、なかった……っ」
言いながら、いちばん奥まで、彼のものがねじこまれた。
「うぁぁっ……」
久しぶりの強烈な快感に、瞳の裏が白くなる。
「隣の部屋の……っ、オトコがいっつもアオイさんのこと……っジロジロ見てたしっ……」
隣のオトコ?
快感に揺られながら記憶の中を探ると、当時の貧しいアパートの隣に住んでいた中年のオトコの容姿が、頭の中にぼんやりと浮かび出できた。
特に何ていうこともない、単なる隣人で、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもない人であったけれども。
「へ……っあのおじさん……っ? なんで、あのおじさん……? んんっ」
突然出てきた俺と彼以外の登場人物に、俺の頭の中はハテナでいっぱいに埋め尽くされた。
「ああ……ほら、やっぱり自覚ない……とにかくっ……アオイさんのことイヤらしい目で見てたあのオトコにアオイさんの声聞かせたくなかったの!」
「あっ……ぅ」
言いながら奥の奥の粘膜にぺニスを擦り付けられる。
ちゅう、と首すじに彼は吸い付いて、ふぅ、キモチイイと彼は額に汗を滲ませて、うっとりと吐息混じりに呟いた。
「電気もね、いつも消してたのは、気持ちよくなってるアオイさんの顔が可愛い過ぎて、歯止めが効かなくなっちゃいそうだったから……っ……そうしたら、アオイさん……いっぱい声でちゃうもんね? こんなふうに……っ」
「ひっ……ぁあっ……」
「ここね、防音完璧だから、いっぱい可愛い声、出して大丈夫だから、もう遠慮しないね……ずっと我慢してた分、聞かせてよ……っ」
奥の奥でめちゃめちゃに動かれて、喉の奥から甘ったるいものがこみ上げてくる。
「俺、全部好きなんだよ……アオイさんのこと……っ綺麗で、優しくて……大好き……っずっとずっと……忘れられなかった……」
あの頃より、男らしくなって逞しくなった体に汗が伝うのが見えて気が狂ってしまいそうだった。
逞しくなった背に腕を回すとぎゅっとしがみついた。
そうしていると、これはいつも見ている夢じゃなくて現実なんだと実感できて、鼻の奥がつん、として涙が溢れた。
「ずっと……ずっと……会いたかった……っ」
「俺も……っ俺もずっとアオイさんに会いたかった……っアオイさんが傍にいてくれるのが、俺の一番の幸せなんだよ……っ……だから、もう離れないで」
彼はそう言って俺の唇を吸いながら、彼の甘ったるい体液を俺の体の中に出してしまうから、俺も耐えられなくなって甘い濁流に逆らわず飲み込まれた。
*****
「ようやく、見つけた……」
眠っているアオイの、泣いて少し赤くなった目元を愛おしそうに撫でながら男は呟いた。
自由にならない身で、アオイを探すのは本当に大変だった。
過去の恋のせいで自分に自信が持てないアオイは、自分なんかが愛されるわけがないという自信だけは驚くほどに強かった。
そんなアオイは姿を晦ますのは非常に上手で、まるで怯えた小動物のようであった。
事務所に属したばかりの頃は制限も多く、探し出すことは困難を極めた。何年も耐えて、努力し、ようやく自由を勝ち得た。
事務所にとって、無くてはならない存在にまで成長出来たのは、偏にアオイを探し出すための力が欲しかったからだ。
ようやく見つけ出したアオイはあの頃のように慎ましやかであったが、美しい山間に湧き出る清流のような透明感は変わっていなかった。
眠っているアオイの汗で濡れた前髪をそっと指で分けてやると、あの頃と変わらないあどけない様子に思わず笑みがこぼれた。
「自信無くすなんてことが絶対にないように、いっぱいいっぱい愛するからね……それでもアオイさんはまた俺の未来のために、なんて言って逃げちゃうかな? でも今度は逃さないし、万一逃げられてもすぐに捕まえるから」
もう、絶対にアオイさんを離さないよ。
覚悟してね。
美しい男は静かに笑って、傍らで無防備に眠る体を抱きしめた。
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