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「アリエッタ様、朝です。起きてください。」

「ん。……ハンナ…?」

「はい。ハンナです。貴方の専属メイドにして宮廷内におけるメイドヒエラルキーのトップ。つまりはメイドリーダー。メイドの中のメイドこと、ハンナ・ハンジーですが、何か?」

「………それ、疲れない?ちなみに私は聞いてて疲れるよ。」

「いえ、王妃様であるアリエッタ様に身の上を尋ねられれば、正式に回答しなくては。」

ハンナ・ハンジー。
彼女は、………まぁ、要するにメイドなのです。
年齢で言えば、詳しくは言いませんが私よりもいくらか年上くらいです。
特に彼女は、最も私と時間を共にしてきたこともあって、結構仲がよかったりします。

「………ところで、アリエッタ様。サリュエラ様は、昨夜もお戻りには……なられなかったみたいですね。」

「…………えぇ。いえ、仕方のないことだから。なんせ一国の王様なんだから。………………でも、でもやっぱりねハンナ。少し不安になってしまうの。失礼なことを考えてしまっていることはわかっているの。……でも、でもね。」

「……………アリエッタ様。いえ、アリエッタ。大丈夫。大丈夫だから。心配しないで。それに、今日は婚約から5年目の記念日。そして今夜は、夫婦として大事な、初夜、でしょ?だからほら、ね?いつもみたいに笑って?笑ってる貴方が一番素敵よ?」

彼女は、たまに私が落ち込んでたり、弱みを見せたりすると、こうして私を包んでくれます。
ありがたい存在であることに、かけがえのない存在であることに、間違い無いのです。

「……ありがとう。ハンナ。うん。私はもう大丈夫。そう、笑わなきゃ。……せめて、サリュエラ様の前では。」

「うん。はい。じゃあ、ほら、アリエッタ様。早く起きて、支度を済ませてください。」




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