親友に婚約者を寝取られ、挙句身に覚えのないよくわからん罪で地下送りになったし、もうテロ起こすわ

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朝。
目が覚めたと思ったら、両の腕は鎖に繋がれ、2本ある足は一本化されるように鎖で纏められ、在るべき自由は私の下にはいなかった。

「あの、これは、この状況は、一体全体どういうことなんでしょう。演出でしょうか。演出なんでしょうが、だとしても少々冗談が過ぎてらしてよ。全くこんなサプライズを企画したのは王子、いえ、皇帝陛下ですの?だとしたなら私は笑って、笑い飛ばして許しましょう。しかし、そうでないなら、怒ります。ええ、とても怒りますとも」

少し冷静さを欠いていたかもしれない。
けれども私はこの現状が、私を縛る鎖が、私を縛るためにあるものだと考えることはしなかった。
なぜならこの場は、彼の皇位継承の場であり、なにより彼と私の婚姻の表明の場であるのだから。
しかし、教会にしては雰囲気が少々重く暗かったり、いるべき神父は見当たらず、代わりに目に入るのは黒いローブのようなものを纏い、フードから覗く白い髭が厭に貫禄を感じさせる男性だったり、最早これは教会ではなく審判の場を思わせるもので、サプライズにしては少し、いや、必要以上に手が込んでいるように感じずにはいられなかった。
彼の言う準備とはこのことだったのだろうか。まったく、悪戯好きな人である。これなら、少しくらいは私との蜜月の時に充ててくれてもよかったのでは、と思わずにはいられないが。

「おい、おいおいおい、少し喋らせすぎではないか?この新、真皇帝アグラヴェイル・アルフレッドの面前で、その醜く喚く汚らしい裏切者の忌々しい口を一度でも、一瞬でも開かせてみせろ。その時、私は怒るぞ。あぁ、怒る。怒るとも。怒った私は何をしでかすかわかった物ではないぞ」

はは、流石の私も、私こそ怒ってしまいますよ。今のお言葉は少々私も傷付きましたわ。まったく悪戯も度が過ぎれば戯れでなくなってしまうものでしてよ。戯れでなく、純粋な悪行になってしまいますわ。
と、そんなことを言おうとした私の口から発せられたのは、

「っっっっっ…!!」

声にもならない、吐息と呼ぶのすら、不適当なくらいに窮屈に擦り切れる呼気だった。
窮屈といえば、なんだか本当に息が苦しい。いや、なんだかというか明確に、息が苦しいどころか息ができない。
苦しい。死んでしまう。
何が起きているのかと、およそ唯一動かせる眼球を、彼曰く真紅のルビーのような眼球を、左右に動かして確認すると、そこにも黒いローブの人影が二人、私の首を鎖で縛りつけていた。
本当に死んでしまう。
と、私が瞳で訴えたのが通じたのか、少し首の拘束が緩まった。

「っっあ…はぁ…はぁ…あ…あの…本当に…これ…何…」

瞬間、私の右に立つローブの人影が倒れた。
轟く号砲とほぼ同時に。

「なぁ。いったであろう。次その裏切者の口を開かせたら私は怒ると。今ので減点、いや得点1点だ。次は無いと思えよ」

拘束が強まった。といっても片側の操作主が失われたため、先ほどのように強い拘束ではないが。
私も次第に理解…はできないが、把握くらいはし始めていた。

どうやら私は本当に現実に審判の対象としてこの場に存在しているということを。
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