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「なに…封筒?…」
その封筒には事業者名のようなものは書かれていなかった。
送り主は個人ということだろうか。
そう不思議に思って確認すると、
「…!?」
絢文烏合
絢文。
そう、記されていた。
名の方に聴き憶えなど無かったが、姓の方に聴き憶えがあった。
聴いたのは人生で1度だけ。
けれど、憶えていた。
焼き付いていた。
その姓はまさにあの女の、私の幸福を破滅させた女の姓。
実際に私に関わる絢文である確証など無い。事実、名の方は聴いた事も無い。
ただ偶然の一致、そう考えることは簡単だし、自然なのかもしれない。
けれど、不自然なほどにその偶然性を肯定することは、私には難しかった。
「…どういう事…」
私は封筒を部屋に持ち帰り、中身を確認した。
「USBメモリ…?」
USBメモリが一つ入っただけの封筒が、私と縁ある、不本意ながら理不尽に縁ある姓名で送られてくるなど、偶然性を否定するには十分すぎるほどの運命性である。
「少し気味が悪いけど…何だろう…」
不安だが確かめずにはいられない。
だってきっとこれは私の宿命だ。
私に宿った運命だ。
私はパソコンを起動し、USBメモリを差し込み、表示されたファイルを開く。
「……これ、画像と動画…?」
そこに表示されていたのは五つほどの画像データと一つの動画データだった。
私はポインターを一つ目の画像ファイルに持っていき、クリックする。
「っ、は?嫌がらせのつもりかよ…」
語調を荒くして誤魔化そうとしたが、少し、いや、正直かなり後悔した。
塞ぎきっていない傷跡を抉られた気分だ。
気分というか、実際に抉られた。
ただ外傷を伴わないというだけで。
そのデータは、あるネット記事のスクリーンショットだった。
そのネット記事はある男の輝かしい成功を綴っていた。
超大手広告企業に入社し、入社して3年と少しで次期社長候補にまで上り詰めた超新星。
お気づきだろう。彼である。
例の、彼。
この成功を隣で祝福し喜びを分かち合っているのは私ではない、彼。
流石に全文読む気は湧いてこない。
「何なのよ、本当に…」
同じ傷口を抉るのに1度も2度も関係ないだろうと、若干自棄になって、2枚目の画像を開いた。
そこに写っていたのは、
「は?」
裸身で首輪を首に巻き、鎖につながれ、涎を垂らしながら満面の笑顔で四つん這いになっている超大手広告企業の次期社長候補、期待の超新星のあられもない姿だった。
その封筒には事業者名のようなものは書かれていなかった。
送り主は個人ということだろうか。
そう不思議に思って確認すると、
「…!?」
絢文烏合
絢文。
そう、記されていた。
名の方に聴き憶えなど無かったが、姓の方に聴き憶えがあった。
聴いたのは人生で1度だけ。
けれど、憶えていた。
焼き付いていた。
その姓はまさにあの女の、私の幸福を破滅させた女の姓。
実際に私に関わる絢文である確証など無い。事実、名の方は聴いた事も無い。
ただ偶然の一致、そう考えることは簡単だし、自然なのかもしれない。
けれど、不自然なほどにその偶然性を肯定することは、私には難しかった。
「…どういう事…」
私は封筒を部屋に持ち帰り、中身を確認した。
「USBメモリ…?」
USBメモリが一つ入っただけの封筒が、私と縁ある、不本意ながら理不尽に縁ある姓名で送られてくるなど、偶然性を否定するには十分すぎるほどの運命性である。
「少し気味が悪いけど…何だろう…」
不安だが確かめずにはいられない。
だってきっとこれは私の宿命だ。
私に宿った運命だ。
私はパソコンを起動し、USBメモリを差し込み、表示されたファイルを開く。
「……これ、画像と動画…?」
そこに表示されていたのは五つほどの画像データと一つの動画データだった。
私はポインターを一つ目の画像ファイルに持っていき、クリックする。
「っ、は?嫌がらせのつもりかよ…」
語調を荒くして誤魔化そうとしたが、少し、いや、正直かなり後悔した。
塞ぎきっていない傷跡を抉られた気分だ。
気分というか、実際に抉られた。
ただ外傷を伴わないというだけで。
そのデータは、あるネット記事のスクリーンショットだった。
そのネット記事はある男の輝かしい成功を綴っていた。
超大手広告企業に入社し、入社して3年と少しで次期社長候補にまで上り詰めた超新星。
お気づきだろう。彼である。
例の、彼。
この成功を隣で祝福し喜びを分かち合っているのは私ではない、彼。
流石に全文読む気は湧いてこない。
「何なのよ、本当に…」
同じ傷口を抉るのに1度も2度も関係ないだろうと、若干自棄になって、2枚目の画像を開いた。
そこに写っていたのは、
「は?」
裸身で首輪を首に巻き、鎖につながれ、涎を垂らしながら満面の笑顔で四つん這いになっている超大手広告企業の次期社長候補、期待の超新星のあられもない姿だった。
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