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前編
前編ー2
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それから数日後。軽井沢。
「園田さんって、とても四十歳には見えないわ」
「ほー、そうかい。そりゃ役者だしな。若作りはお手の物だろうよ」
半分寝ぼけた秀人さんの声が聞こえる。朝の空気がひんやりと気持ちいい、新緑の北軽井沢。
浅間山が間近に迫るキャンプ場で、今からCMの撮影が始まるところだった。
まだ暗いうちに東京を発ったわたしは、わずかの時間を見つけて、彼にモーニン グコールをしていた。すぐ近くではアウトドアブランドの通販カタログから抜け出たようなチノパン姿の園田さんが、親しげにディレクターと話しこんでいる。
その周りを小学生くらいの男の子と女の子が、きゃっきゃっと声をあげながら走り回っていた。共演予定の子役たちだ。この子たちも早朝に東京を出たはずなのに、なんて元気なの? 眠くないのかしら。
「CMの中でわたしの旦那サマになる人よ。気にならない?」
「俺は現実に君の旦那になる男だよ。何を気にする必要がある」
予想に反して素っ気無い答え。ちょっとがっくり。
「そうじゃなくって、ええと……」
「そうじゃないよな。これはモーニングコールだよな。でもあと十分寝かしてくれ。ゆうべも帰ったのが遅かったんだ」
怒ってはいないけど疲れた声で彼が言う。
四月に入ってから彼は仕事が忙しくなり、もう三週間も顔を見ていない。すでにマリンホテルの支援は終わり、東京のオフィスに引き上げている。それでも仕事は多忙を極め、全国各地を飛び回っていた。
たまに東京に帰っても小石川の自宅には帰らずに、彼のお父さんが仕事用に使っている、会社近くのマンションに寝泊りしてる有様だ。
きっとこれが神崎リゾート副社長としての、彼本来のスケジュールなんだろう。
去年、週末ごとにわたしのマンションに泊まりに来てくれていたのは、相当無理をしていたのかもしれない。そう思うと嬉しくもあったけど、近頃はあの頃の情熱も冷めてしまったのかと、寂しいような気がしなくもない。
「美緒さん、お願いしまーす」
若い男性ADの歯切れのいい声が聞こえた。わたしは慌てて彼に別れを告げる。
「ごめん。出番が来たわ。またあとでね」
「ああ。帰ってきたら連絡をくれ。迎えに行くから。それと美緒……」
「なあに?」
「愛してるよ」
彼の愛の囁きは、高原のそよ風のようにわたしの耳元をかすめていった。
嬉しいけど、なおさら彼に会いたくて切なくなる。でもりん子さんに電話を預け、わたしは大きく深呼吸して、頭のスイッチを切り替えた。
その後いくつかNGも出したけど、撮影は順調に進んだ。
若い夫婦と子どもふたりという家族が、ハイウェイをドライブしたり、キャンプ場でバーベキューをしながら楽しい休日を過ごす――。出来上がるのはそんなCM。
とにかく園田さんは優しくて、ピンチヒッターのわたしを上手くリードしてくれる。色々とアドバイスもしてくれるけど、それがまたさり気なくて、恩着せがましくもない。わたしはすっかり彼に好感を持ってしまった。
どうみても三十代の半ばにしか見えないし、子役の男の子と魚釣りをするシーンでは、頼りになるお父さん振りを発揮していた。もうひとりの子役の女の子も可愛くて。
自分と秀人さんもこんな家庭を築けたらいいなと、つい自分達の未来に思いを馳せてしまった。
昼過ぎには撮影が終わり、ジュースで乾杯したあと、スタッフが撤収作業を開始する。すると園田さんが近づいてきた。
「僕は今夜、スタッフの何人かとこっちの別荘に泊まるんだ。良かったら美緒さんもどうかな。泊まるのは無理だとしても、夕食だけでも食べに来ない?」
「あら、そうなんですか」
何も考えずにそんな返事をしていた。彼の顔に笑みが浮かぶ。目じりに刻まれたしわが何となくチャーミング。うーん。園田さんって、ほんとに素敵な人。だけど待って、このお誘いは……。
「申し訳ありません。この子は今日、早めに東京に戻らないといけないんです」
突然りん子さんの声がして、わたしは腕を引っ張られた。そのまま事務所が手配したワゴン車に連れて行かれる。
「いや、仕事なら仕方ない。またそのうちお誘いしますよ」
挨拶もそこそこに背を向けたわたしの耳に、園田さんのさわやかな声が届いていた。
*** *** ***
りん子さんと共にまっすぐ東京に帰ったものの、結局わたしは秀人さんに会えなかった。
東京に着く時間をメールで知らせておいたけど、返信がない。携帯にかけても出ない。仕方ないから事務所で解散したあと、タクシーで綾瀬の家に帰った。
翌朝彼から、平身低頭のお詫びメールが届き、お昼に銀座に新しくオープンしたホテルのレストランで会う約束をした。
「本当に悪い。死んだように夕方まで寝てた」
開口一番にそう言って、彼はテーブルすれすれまで頭を下げる。
「別にいいわよ。疲れてたんなら仕方ないわ」
「怒ってないか?」
「うーん、少し……。でも元気な顔を見せてくれたから、ちゃらにしてあげる」
最近かまってもらっていなことへの不満があったかもしれないけど、それは水に流した。だって彼、本当に疲れてるように見えたし。
「サンキュ」
にっこりと笑った彼が、テーブルの上でわたしの手を握ってくれた。
「撮影はどうだった?」
「うん……。上手くできと思うけど。子どもたちが可愛くて。それに……」
「それに?」
「園田さんがすごく親切にしてくれて、やりやすかった」
「ほう」
ぴくっと彼の眉が釣りあがる。隠そうとしてるけど、内心面白くないと感じているのが伝わってきた。でも、それを表に出そうとしない。
「園田広之はT自動車の広報とコネがある。だから離婚歴があるのに、あんなファミリー向けのCMに起用されてるんだ。せっかく知り合ったんだし、人脈を築いておけよ」
「へえー、詳しいのね」
「まあな」
「わたしのことが心配で調べてくれたの?」
「いや」
さらりと言うと彼は、アートのように綺麗に盛り付けされた、甘エビとフルーツトマトの前菜を食べ始めた。なるほど、俺や親父に気兼ねせず好きな仕事をしろってことね。
嬉しいんだけど、それも何だか寂しい気がする。
「ねえ、今夜マンションで待ってていい?」
「かまわないが、いつ帰れるかわからないぞ」
「いいわ。眠くなったら勝手に寝るから。でもご飯の用意はしておくわね」
*** *** ***
夕方、お泊り道具を持参して、神崎リゾート本社ビルからそう遠くない立地にある、神崎家所有のマンションに向かった。掃除して買い物して、食事の用意をしてからふと、飲み物が足りないことに気づいて、夜の八時ごろ外に出た。すぐ近くに遅くまで営業しているリカーショップがあったから。
大通りの喧騒から離れたマンションの裏通りを歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「美緒さん」
振り返ると、園田さんが立っていた。
昨日のカジュアルな服装から一転して、今は黒のパンツにイタリアっぽい柄物のシャツ。肩にかけた赤いセーターが、夜目にも鮮やかに人目を引いていた。
「園田さん。どうしたんですか?」
驚いてたずねた。園田さんは胸のポケットからサングラスを取り出して、さっとかける。そして、いきなりわたしの肩に手をかけた。
「そこのマンションに住んでる友人を訪ねて来たんだけど、君を見かけたから思わず声をかけたんだ。一体どうしたの、こんな時間に。君、一人かい?」
「ええ。実はわたしも、知り合いがそこのマンションに住んでるんです。それで……」
肩に触れられたのと、園田さんがつけている香水の香りでくらくらしそうだった。咄嗟のことに、彼への警戒心など忘れてしまう。
「じゃあ、目的地まで送るよ。向こうでいいの?」
親しげに言うと、わたしの肩に手をかけたまま園田さんは歩き出した。
「園田さんって、とても四十歳には見えないわ」
「ほー、そうかい。そりゃ役者だしな。若作りはお手の物だろうよ」
半分寝ぼけた秀人さんの声が聞こえる。朝の空気がひんやりと気持ちいい、新緑の北軽井沢。
浅間山が間近に迫るキャンプ場で、今からCMの撮影が始まるところだった。
まだ暗いうちに東京を発ったわたしは、わずかの時間を見つけて、彼にモーニン グコールをしていた。すぐ近くではアウトドアブランドの通販カタログから抜け出たようなチノパン姿の園田さんが、親しげにディレクターと話しこんでいる。
その周りを小学生くらいの男の子と女の子が、きゃっきゃっと声をあげながら走り回っていた。共演予定の子役たちだ。この子たちも早朝に東京を出たはずなのに、なんて元気なの? 眠くないのかしら。
「CMの中でわたしの旦那サマになる人よ。気にならない?」
「俺は現実に君の旦那になる男だよ。何を気にする必要がある」
予想に反して素っ気無い答え。ちょっとがっくり。
「そうじゃなくって、ええと……」
「そうじゃないよな。これはモーニングコールだよな。でもあと十分寝かしてくれ。ゆうべも帰ったのが遅かったんだ」
怒ってはいないけど疲れた声で彼が言う。
四月に入ってから彼は仕事が忙しくなり、もう三週間も顔を見ていない。すでにマリンホテルの支援は終わり、東京のオフィスに引き上げている。それでも仕事は多忙を極め、全国各地を飛び回っていた。
たまに東京に帰っても小石川の自宅には帰らずに、彼のお父さんが仕事用に使っている、会社近くのマンションに寝泊りしてる有様だ。
きっとこれが神崎リゾート副社長としての、彼本来のスケジュールなんだろう。
去年、週末ごとにわたしのマンションに泊まりに来てくれていたのは、相当無理をしていたのかもしれない。そう思うと嬉しくもあったけど、近頃はあの頃の情熱も冷めてしまったのかと、寂しいような気がしなくもない。
「美緒さん、お願いしまーす」
若い男性ADの歯切れのいい声が聞こえた。わたしは慌てて彼に別れを告げる。
「ごめん。出番が来たわ。またあとでね」
「ああ。帰ってきたら連絡をくれ。迎えに行くから。それと美緒……」
「なあに?」
「愛してるよ」
彼の愛の囁きは、高原のそよ風のようにわたしの耳元をかすめていった。
嬉しいけど、なおさら彼に会いたくて切なくなる。でもりん子さんに電話を預け、わたしは大きく深呼吸して、頭のスイッチを切り替えた。
その後いくつかNGも出したけど、撮影は順調に進んだ。
若い夫婦と子どもふたりという家族が、ハイウェイをドライブしたり、キャンプ場でバーベキューをしながら楽しい休日を過ごす――。出来上がるのはそんなCM。
とにかく園田さんは優しくて、ピンチヒッターのわたしを上手くリードしてくれる。色々とアドバイスもしてくれるけど、それがまたさり気なくて、恩着せがましくもない。わたしはすっかり彼に好感を持ってしまった。
どうみても三十代の半ばにしか見えないし、子役の男の子と魚釣りをするシーンでは、頼りになるお父さん振りを発揮していた。もうひとりの子役の女の子も可愛くて。
自分と秀人さんもこんな家庭を築けたらいいなと、つい自分達の未来に思いを馳せてしまった。
昼過ぎには撮影が終わり、ジュースで乾杯したあと、スタッフが撤収作業を開始する。すると園田さんが近づいてきた。
「僕は今夜、スタッフの何人かとこっちの別荘に泊まるんだ。良かったら美緒さんもどうかな。泊まるのは無理だとしても、夕食だけでも食べに来ない?」
「あら、そうなんですか」
何も考えずにそんな返事をしていた。彼の顔に笑みが浮かぶ。目じりに刻まれたしわが何となくチャーミング。うーん。園田さんって、ほんとに素敵な人。だけど待って、このお誘いは……。
「申し訳ありません。この子は今日、早めに東京に戻らないといけないんです」
突然りん子さんの声がして、わたしは腕を引っ張られた。そのまま事務所が手配したワゴン車に連れて行かれる。
「いや、仕事なら仕方ない。またそのうちお誘いしますよ」
挨拶もそこそこに背を向けたわたしの耳に、園田さんのさわやかな声が届いていた。
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りん子さんと共にまっすぐ東京に帰ったものの、結局わたしは秀人さんに会えなかった。
東京に着く時間をメールで知らせておいたけど、返信がない。携帯にかけても出ない。仕方ないから事務所で解散したあと、タクシーで綾瀬の家に帰った。
翌朝彼から、平身低頭のお詫びメールが届き、お昼に銀座に新しくオープンしたホテルのレストランで会う約束をした。
「本当に悪い。死んだように夕方まで寝てた」
開口一番にそう言って、彼はテーブルすれすれまで頭を下げる。
「別にいいわよ。疲れてたんなら仕方ないわ」
「怒ってないか?」
「うーん、少し……。でも元気な顔を見せてくれたから、ちゃらにしてあげる」
最近かまってもらっていなことへの不満があったかもしれないけど、それは水に流した。だって彼、本当に疲れてるように見えたし。
「サンキュ」
にっこりと笑った彼が、テーブルの上でわたしの手を握ってくれた。
「撮影はどうだった?」
「うん……。上手くできと思うけど。子どもたちが可愛くて。それに……」
「それに?」
「園田さんがすごく親切にしてくれて、やりやすかった」
「ほう」
ぴくっと彼の眉が釣りあがる。隠そうとしてるけど、内心面白くないと感じているのが伝わってきた。でも、それを表に出そうとしない。
「園田広之はT自動車の広報とコネがある。だから離婚歴があるのに、あんなファミリー向けのCMに起用されてるんだ。せっかく知り合ったんだし、人脈を築いておけよ」
「へえー、詳しいのね」
「まあな」
「わたしのことが心配で調べてくれたの?」
「いや」
さらりと言うと彼は、アートのように綺麗に盛り付けされた、甘エビとフルーツトマトの前菜を食べ始めた。なるほど、俺や親父に気兼ねせず好きな仕事をしろってことね。
嬉しいんだけど、それも何だか寂しい気がする。
「ねえ、今夜マンションで待ってていい?」
「かまわないが、いつ帰れるかわからないぞ」
「いいわ。眠くなったら勝手に寝るから。でもご飯の用意はしておくわね」
*** *** ***
夕方、お泊り道具を持参して、神崎リゾート本社ビルからそう遠くない立地にある、神崎家所有のマンションに向かった。掃除して買い物して、食事の用意をしてからふと、飲み物が足りないことに気づいて、夜の八時ごろ外に出た。すぐ近くに遅くまで営業しているリカーショップがあったから。
大通りの喧騒から離れたマンションの裏通りを歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「美緒さん」
振り返ると、園田さんが立っていた。
昨日のカジュアルな服装から一転して、今は黒のパンツにイタリアっぽい柄物のシャツ。肩にかけた赤いセーターが、夜目にも鮮やかに人目を引いていた。
「園田さん。どうしたんですか?」
驚いてたずねた。園田さんは胸のポケットからサングラスを取り出して、さっとかける。そして、いきなりわたしの肩に手をかけた。
「そこのマンションに住んでる友人を訪ねて来たんだけど、君を見かけたから思わず声をかけたんだ。一体どうしたの、こんな時間に。君、一人かい?」
「ええ。実はわたしも、知り合いがそこのマンションに住んでるんです。それで……」
肩に触れられたのと、園田さんがつけている香水の香りでくらくらしそうだった。咄嗟のことに、彼への警戒心など忘れてしまう。
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