マンネリは切られた

織賀光希

文字の大きさ
7 / 10

⑦酸味という世界

しおりを挟む
  口がオレンジジュースの味のまま、自宅に戻った。
 オジサンが頭にいる。今は、そのふたつがメインで、私を作っている。
 オレンジジュースと、オジサンしかいない。彼氏はもう、私のなかにいなかった。

 誰もいなかった。自宅の前にも、どこにも。ほっとしたまま、照明を灯した。
 彼氏が家の前から、いなくなっていたことで、ため息が出た。もう、会いたくなくなっていた。

 オジサンとのデートは、明日ではない。あと何回か、ベッドで夜を越さないといけない。
 その間には、彼氏と会ってしまうだろう。どこかで、必ず会ってしまうだろう。会って話をしないと、オジサンとの幸せはない。

 洗面所で手を洗う。彼氏に関するすべてが、キレイに落ちることを願いながら。
 顔に水を当てていた。バシャリバシャリと。冷たさで、シャキッとした。
 彼氏との別れに、ここで完全に決心がついた。何があっても、別れる。

 ベッドに飛び込んだ。オジサンからのメールを待ちながら。
 期待と悩み。そのなかで、ゆらゆらしていた。
 今が、一番疲れているだろう。でも、ここを乗り越えたら、素晴らしい景色が見られるだろう。
 そう思う。富士山の頂上のような。

 ピコン。

 期待を持ちながら、開く。オジサンからの、メールだった。

『もしかしたら。もしかしなくても。彼氏いませんか?』
『かかかか、彼氏いる顔していたので』

 オジサンは、察しがいい。私の彼氏のことも、当ててみせた。
 メールでも、落ち着きがない。オジサンの色が出すぎている。どれだけ、個性が強いんだよ。

 ピコン。

 また、メールが来た。彼氏からではなかった。オジサンからで、安心した。

『お友達という、カタチではありますけど苺王、角煮んしたいのです』
『彼氏がいたら、普通は誘ってきませんからね』

 いちおう、と打とうとしてイチゴオウになっていた。ふふふと笑った。
 それに、確認が角煮になってる。微笑ましい出来事だった。
 でも、それはすぐに、ため息に変わった。熱湯に入れた、氷の如く。

 彼氏と別れないとイケない。そこからオジサンとのすべてが、ようやくスタートする。
 絶対に別れたい。でも、簡単には別れられない。

 オジサンのメールは、既読しただけで、返さなかった。オジサンが、ずっと頭にいる。でも、彼氏とのことを、先に片付けたい。

 彼氏に電話することにした。するとそこに、玄関チャイムが響いた。
 彼氏だ。ものすごいドアを叩いている。私は出るのが怖くなった。話すのも怖くなった。
 だから、彼氏にメールを送った。

『別れよう』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...