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第一章 2代目時の神子 ユーリ
メイリラルド歴521年 (5)
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「私はお城から…いいえ陛下から城に来るよう命令がきたの」
そう言ってリーフェは語りだした。
* * *
何も変わらない王宮の廊下を歩く私の頭の中には朝届いた手紙のこと。
『話したいこ事と会わせたい者がいる。リドにはもう話を通しておいた。』
リドとは私の父の名前、父と陛下は共に過ごしたご学友だというのは聞いたことがある…ただ私が興味がないから聞かなかっただけ。そのおかげで私は幼い頃から王宮へ行っていたし同じくご学友であるレイダリア様の息子のルドレイク様とも幼馴染という関係になっている。…一体陛下は何を私に話すのかしら?
「何を話すのかしらね?」
「さあ…私には分かりかねます」
そう言って首をかしげる侍女のメル。
そんなことを考えていると陛下のいる執務室の前に来た。ノックをし、陛下の返事を聞いて私はドアノブを回し扉を開けた。
「失礼いたします陛下、わたくしにお話とはいかがなさりましたか?」
「あぁ、まずは座ってその口調を直してくれ…お前には似合わん」
「失礼な…レイフィア様に怒られてしまえばいいのに」
私がソファーに座って陛下を睨みつける。
「なんでそうなるんだ…」
「レイフィア様は私の味方だもの」
絶対にレイフィア様に言ってやる。
「…話というのはな、昨日召喚の儀を行った」
「は?」
ショウカンノギ?
「召喚ということは…遥か彼方の世界からここへ召喚された者がいるということですね…私に何をさせる気ですか?」
面倒事は嫌よ。
「リーフェ、お前には召喚された者の事を頼みたいのだ」
「嫌です」
面倒な!
「即答…そう言わないでくれ、彼女はお前と同じ年なのだ」
彼女?私と同じ年?
「女の子で…同じ年?」
「そうだ、ルドレイクとはもう顔を合わせている…だが」
「…女の子だからこそ私ですか」
まあ確かに女子1人じゃ気持ちも分からなくもないわね。
「だからこそお前に頼みたいのだ」
「…分かりました。でもその子の方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だろう」
一方的に決めたわね。
「彼女については向こうの方では大変だったと言うし…優しい子だ」
「分かりました。できる限りの事はせいいっぱいやらせていただきます」
「あぁ、まかせた。彼女の名前は…」
まったくもって面倒な…。
「…すごいことになってしまったわね」
「陛下はリーフェ様を信じておられます」
「わかってるわよ」
わかっているけど…面倒なのよ。
あまりにも面倒だと思っていたからその時の私は周りをよく見ていなかったのよ。
「きゃっ」
「貴様か、私にぶつかったのは」
始まりは男とメルがぶつかったことだった…いや、男がメルにぶつかったのよ。
「は、はい」
「貴様がぶつかってきたせいで服が汚れたではないか」
ぶつかってきたせい?ぶつかってきたのはそっちよ?
「す、すいませんっ」
「すいません?それだけで済まされると思っているのではないぞ!」
あの男は確かロアリス侯爵か…また面倒な人に会ってしまったわね。
「すいません!」
「貴様!私を誰だと思っている!!」
「いいかげんにしてください」
これは止めるしかないわね、メルを守らないと…ここは王宮だし、何かあれば陛下に話を通すことができるしね…こういうときに信頼は大切なのよ。
「貴様!そこの下女の知り合いか!」
下女?バカじゃないの?この男は能無しね!
「下女ではないわっ!私の元で働いている立派な侍女よ!!それに、貴方が最初に彼女にぶつかったのでしょう!?」
「はっ!そんな訳ないだろう、こんな汚らわしい女なんかに誰が触るか!」
その言葉に野次馬達が、主に女があの能無し侯爵に冷たい視線を送っていた。本当にあの男は能無しね!イラつく男ね…
「貴方が一番汚らわしいわよ!」
朝から晩まで贅沢している能無しと日々仕事をこなしている輝かしい侍女とは格が違うのよ!…蹴散らしていいかしら?もう限界なのだけど…でもここは王宮、陛下はともかくお父様にご迷惑をかけるのはダメだし…どうしたらいいかしらね。
「汚らわしいだと…?この私が…?」
当たり前でしょう?何を言っているのかしらね。
「汚らわしいのは…貴様だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
能無しの手が振り落とされる。怖くはないわ、むしろ能無しがこれをきっかけに王宮内出入り禁止になればいいのだもの。
「この世界にも馬鹿な男がいるものね」
女の声がした。
男の手は振り落とされなかった、そして私の目の前には能無しが女に倒されていた。
「ぐっ…貴様もあの汚らわしい女の仲間か」
「いいえ?私はただ貴方たちの話を聞いていただけ、ただの口争いなら良かったのだけど殴ろうとしていたからつい手を出してしまったわ」
ついって…そう言う彼女の姿を見るとこの世界では珍しい黒髪…あれ?もしかして彼女が?
「なんだと…?貴様は私を誰だと思っているのだ!」
「さあ?私は貴方の事を知らないし知る気もないわ、ただ貴方には陛下のお膝元であるこの王宮で騒ぎを起こしていいのかしら?私以外は全員貴方の事を知っているようですし」
…これは、とんでもない子を召喚したかもしれないわね。
「き、貴様!」
「ロアリス侯爵」
…まて、なんでいるのよ。いるなら助けなさいよ!
「!…ル、ルドレイク様っ!」
「彼女の言うとおりです。私も先程から見ておりましたがやりすぎだとは思いませんか?」
「こ、これには!」
「言い訳は結構です、このことは陛下に報告するので」
ご臨終ね。あの陛下のことだもの素晴らしいお仕置きが待っているのではないかしら。私がそう思っているとレイダリアがこっちを見た。
「お話をお聞かせください」
…絶対呆れているわね、じゃじゃ馬令嬢でごめんなさいね!まったく。
* * *
「…ということなのよ」
そう言ってため息をつくリーフェ。その姿は美しい可憐の花、だけどなかは令嬢どころではなくやんちゃな町娘ね。
「…リーフェ」
ずっと黙っていたルドがそう呼ぶとリーフェがルドを睨んだ。2人はどういう関係なのかしら。
「ルドレイク…いたのだったら助けてくれないかしら?」
「リーフェだったら僕がでなくてもなんとかなりそうだと思ったし、実際にあれぐらいで泣くようなお前ではないだろう」
「当たり前よ!当たり前だけど…ねえ?ユーリ」
苦笑いしながら私を見たけど…なんとなくリーフェの気持ちも分かるわね。
「ところで2人はどういう関係?」
私が一番知りたかったのはこれよ!
「リーフェと僕は幼馴染なんだよ」
「成長するにつれ性格が曲がっていく姿を私はずっと見ているのよ」
「そういう君こそ成長するにつれじゃじゃ馬心がすごくなっているじゃないか」
「じゃじゃ馬とは失礼ね!やんちゃと言いなさい」
「ふふ、あはは!」
2人の口喧嘩に笑いがこみ上げってきた…この世界で笑うのは初めてね。
「あら、笑うとは失礼ね」
そう言いながらもリーフェだって笑っているじゃない。
「ごめんごめん…いいなぁ幼馴染」
私には幼馴染なんて一人もいない…小学校に行くまでは屋敷に隔離されていたから、そう考えると小学校からいきなり来た私と友達になってくれて今でも心配してくれているみんなには感謝ね。…わたしはそんなことを考えていた。
「…まだ間に合うわ」
「え?」
「私は今日、陛下に貴方のことを頼まれたわ。それはユーリと私は友人…それ以上の関係になるということ。それにね…ユーリとこうして話していると、なんだか昔から知っている気がするの。この世界では転生が信じられているからもしかしたら前世では私とユーリは幼馴染だったのかもしれないわね」
「…君は何を言いたいの?」
「つまりは…今日から私たちは幼馴染よ!」
『出会った今日から私たちは親友よ!』
ここで同じような言葉が出てくるとは思わなかった…私を親友と言ってくれたあの子は今でも共に歩んできた…リーフェはまるであの子のよう。
あちらの世界でもあの一言で私は受け入れられたと感じた…ここでも…私を受け入れてくれる…この世界で異界の者が一人だけでどこか自分に限界が来ると思っていた。
「そこは親友の方がいいと思うな」
「ルドレイク、男のくせに細かいことは気にしたダメなのよ!」
「えー」
「えーって…仕方ないわね、親友にするわ…あら、ユーリ?」
「…ありがとうリーフェ、ルド。今日からよろしくお願いします」
私がそう言うとリーフェが手を握ってきた。
「こちらこそ、よろしくねユーリ!貴方がこの世界に来てくれてうれしいわ」
「よろしくユーリ…神子となる決意をしてくれてありがとう。僕たちも全力でサポートするよ」
この世界に来てよかった…そう私は思えた。
そう言ってリーフェは語りだした。
* * *
何も変わらない王宮の廊下を歩く私の頭の中には朝届いた手紙のこと。
『話したいこ事と会わせたい者がいる。リドにはもう話を通しておいた。』
リドとは私の父の名前、父と陛下は共に過ごしたご学友だというのは聞いたことがある…ただ私が興味がないから聞かなかっただけ。そのおかげで私は幼い頃から王宮へ行っていたし同じくご学友であるレイダリア様の息子のルドレイク様とも幼馴染という関係になっている。…一体陛下は何を私に話すのかしら?
「何を話すのかしらね?」
「さあ…私には分かりかねます」
そう言って首をかしげる侍女のメル。
そんなことを考えていると陛下のいる執務室の前に来た。ノックをし、陛下の返事を聞いて私はドアノブを回し扉を開けた。
「失礼いたします陛下、わたくしにお話とはいかがなさりましたか?」
「あぁ、まずは座ってその口調を直してくれ…お前には似合わん」
「失礼な…レイフィア様に怒られてしまえばいいのに」
私がソファーに座って陛下を睨みつける。
「なんでそうなるんだ…」
「レイフィア様は私の味方だもの」
絶対にレイフィア様に言ってやる。
「…話というのはな、昨日召喚の儀を行った」
「は?」
ショウカンノギ?
「召喚ということは…遥か彼方の世界からここへ召喚された者がいるということですね…私に何をさせる気ですか?」
面倒事は嫌よ。
「リーフェ、お前には召喚された者の事を頼みたいのだ」
「嫌です」
面倒な!
「即答…そう言わないでくれ、彼女はお前と同じ年なのだ」
彼女?私と同じ年?
「女の子で…同じ年?」
「そうだ、ルドレイクとはもう顔を合わせている…だが」
「…女の子だからこそ私ですか」
まあ確かに女子1人じゃ気持ちも分からなくもないわね。
「だからこそお前に頼みたいのだ」
「…分かりました。でもその子の方は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だろう」
一方的に決めたわね。
「彼女については向こうの方では大変だったと言うし…優しい子だ」
「分かりました。できる限りの事はせいいっぱいやらせていただきます」
「あぁ、まかせた。彼女の名前は…」
まったくもって面倒な…。
「…すごいことになってしまったわね」
「陛下はリーフェ様を信じておられます」
「わかってるわよ」
わかっているけど…面倒なのよ。
あまりにも面倒だと思っていたからその時の私は周りをよく見ていなかったのよ。
「きゃっ」
「貴様か、私にぶつかったのは」
始まりは男とメルがぶつかったことだった…いや、男がメルにぶつかったのよ。
「は、はい」
「貴様がぶつかってきたせいで服が汚れたではないか」
ぶつかってきたせい?ぶつかってきたのはそっちよ?
「す、すいませんっ」
「すいません?それだけで済まされると思っているのではないぞ!」
あの男は確かロアリス侯爵か…また面倒な人に会ってしまったわね。
「すいません!」
「貴様!私を誰だと思っている!!」
「いいかげんにしてください」
これは止めるしかないわね、メルを守らないと…ここは王宮だし、何かあれば陛下に話を通すことができるしね…こういうときに信頼は大切なのよ。
「貴様!そこの下女の知り合いか!」
下女?バカじゃないの?この男は能無しね!
「下女ではないわっ!私の元で働いている立派な侍女よ!!それに、貴方が最初に彼女にぶつかったのでしょう!?」
「はっ!そんな訳ないだろう、こんな汚らわしい女なんかに誰が触るか!」
その言葉に野次馬達が、主に女があの能無し侯爵に冷たい視線を送っていた。本当にあの男は能無しね!イラつく男ね…
「貴方が一番汚らわしいわよ!」
朝から晩まで贅沢している能無しと日々仕事をこなしている輝かしい侍女とは格が違うのよ!…蹴散らしていいかしら?もう限界なのだけど…でもここは王宮、陛下はともかくお父様にご迷惑をかけるのはダメだし…どうしたらいいかしらね。
「汚らわしいだと…?この私が…?」
当たり前でしょう?何を言っているのかしらね。
「汚らわしいのは…貴様だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
能無しの手が振り落とされる。怖くはないわ、むしろ能無しがこれをきっかけに王宮内出入り禁止になればいいのだもの。
「この世界にも馬鹿な男がいるものね」
女の声がした。
男の手は振り落とされなかった、そして私の目の前には能無しが女に倒されていた。
「ぐっ…貴様もあの汚らわしい女の仲間か」
「いいえ?私はただ貴方たちの話を聞いていただけ、ただの口争いなら良かったのだけど殴ろうとしていたからつい手を出してしまったわ」
ついって…そう言う彼女の姿を見るとこの世界では珍しい黒髪…あれ?もしかして彼女が?
「なんだと…?貴様は私を誰だと思っているのだ!」
「さあ?私は貴方の事を知らないし知る気もないわ、ただ貴方には陛下のお膝元であるこの王宮で騒ぎを起こしていいのかしら?私以外は全員貴方の事を知っているようですし」
…これは、とんでもない子を召喚したかもしれないわね。
「き、貴様!」
「ロアリス侯爵」
…まて、なんでいるのよ。いるなら助けなさいよ!
「!…ル、ルドレイク様っ!」
「彼女の言うとおりです。私も先程から見ておりましたがやりすぎだとは思いませんか?」
「こ、これには!」
「言い訳は結構です、このことは陛下に報告するので」
ご臨終ね。あの陛下のことだもの素晴らしいお仕置きが待っているのではないかしら。私がそう思っているとレイダリアがこっちを見た。
「お話をお聞かせください」
…絶対呆れているわね、じゃじゃ馬令嬢でごめんなさいね!まったく。
* * *
「…ということなのよ」
そう言ってため息をつくリーフェ。その姿は美しい可憐の花、だけどなかは令嬢どころではなくやんちゃな町娘ね。
「…リーフェ」
ずっと黙っていたルドがそう呼ぶとリーフェがルドを睨んだ。2人はどういう関係なのかしら。
「ルドレイク…いたのだったら助けてくれないかしら?」
「リーフェだったら僕がでなくてもなんとかなりそうだと思ったし、実際にあれぐらいで泣くようなお前ではないだろう」
「当たり前よ!当たり前だけど…ねえ?ユーリ」
苦笑いしながら私を見たけど…なんとなくリーフェの気持ちも分かるわね。
「ところで2人はどういう関係?」
私が一番知りたかったのはこれよ!
「リーフェと僕は幼馴染なんだよ」
「成長するにつれ性格が曲がっていく姿を私はずっと見ているのよ」
「そういう君こそ成長するにつれじゃじゃ馬心がすごくなっているじゃないか」
「じゃじゃ馬とは失礼ね!やんちゃと言いなさい」
「ふふ、あはは!」
2人の口喧嘩に笑いがこみ上げってきた…この世界で笑うのは初めてね。
「あら、笑うとは失礼ね」
そう言いながらもリーフェだって笑っているじゃない。
「ごめんごめん…いいなぁ幼馴染」
私には幼馴染なんて一人もいない…小学校に行くまでは屋敷に隔離されていたから、そう考えると小学校からいきなり来た私と友達になってくれて今でも心配してくれているみんなには感謝ね。…わたしはそんなことを考えていた。
「…まだ間に合うわ」
「え?」
「私は今日、陛下に貴方のことを頼まれたわ。それはユーリと私は友人…それ以上の関係になるということ。それにね…ユーリとこうして話していると、なんだか昔から知っている気がするの。この世界では転生が信じられているからもしかしたら前世では私とユーリは幼馴染だったのかもしれないわね」
「…君は何を言いたいの?」
「つまりは…今日から私たちは幼馴染よ!」
『出会った今日から私たちは親友よ!』
ここで同じような言葉が出てくるとは思わなかった…私を親友と言ってくれたあの子は今でも共に歩んできた…リーフェはまるであの子のよう。
あちらの世界でもあの一言で私は受け入れられたと感じた…ここでも…私を受け入れてくれる…この世界で異界の者が一人だけでどこか自分に限界が来ると思っていた。
「そこは親友の方がいいと思うな」
「ルドレイク、男のくせに細かいことは気にしたダメなのよ!」
「えー」
「えーって…仕方ないわね、親友にするわ…あら、ユーリ?」
「…ありがとうリーフェ、ルド。今日からよろしくお願いします」
私がそう言うとリーフェが手を握ってきた。
「こちらこそ、よろしくねユーリ!貴方がこの世界に来てくれてうれしいわ」
「よろしくユーリ…神子となる決意をしてくれてありがとう。僕たちも全力でサポートするよ」
この世界に来てよかった…そう私は思えた。
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