4 / 31
第一章 2代目時の神子 ユーリ
メイリラルド歴521年 (4)
しおりを挟む
「私の家は向こうの世界では数少ない旧家と言われる古から栄えた家系で、昔から当主争いが激しい…そんな家に私は生まれました」
今この部屋にいるのは王様、レイダリアさん、ルド、そしてお茶を足しているメリアと私だけ。王様によるとメリアさんは私のお世話をする半面、私の護衛もしているのだとか…メリアさんって何者?そんな人が副侍女長とか…侍女長はとても素晴らしい人なのでしょうね。四人とも静かに私の話を聞いている。
「私の家族は父と母…そして双子の妹がいるの」
「双子?」
ルドの質問に私は頷いた。
「妹の名前は優希。現当主は父方の祖父で、父は長男だったから当主争いに私たちは巻き込まれた。」
そこで私は失礼だと思っていてもお茶の入ったカップに口をつけた。
「祖父の子は私の父とすぐ下の妹である私たちの叔母だけで叔母には子供ができなかったの…ぜんぜん子供が生まれなくて…結局私たち双子のどちらかが次期当主になることになったの」
…大人たちはなぜあんなに勝手なのだろうか。
「優希も私も次期当主なんて嫌だった…でも親戚の人たちは勝手に私たちを引き離した…私は叔母さんの養子に出されて、私と優希は本格的に争いをしなければならなくなったの」
ここからだ…ここからすべてが狂い始めた。
「でも、ある日叔母さんの家が火災にあって…全員が死んだ…私を除いて」
「それは…」
王様が驚いてる…無理もないわね、私以外が皆死んだのだから
「その後、ほとんどの親戚の家に連れて行かれたわ…でも…皆事故にあったりして死んでいった…私を除いて」
誰かの息を呑む音が聞こえた。
「残った親戚の人たちは皆私のことを悪魔と呼ぶようになった…別に気にもしなかったわ…むしろ滑稽だったわ…もう私たちは滅ぶべきなのよ…滅ぶことができないのなら…私が滅べばいい…それであの子が楽になれば私は何もいらない…何も…」
静まり返った部屋で、私は深呼吸をした。
「でも…そんな日々の中で心が休めたのは学校だった。学校の友人たちは違った…こんな私を悪魔では無いと言ってくれた…私は私だと言ってくれた…今まで生きてこれたのは彼女たちのおかげ…でも…でも…家に帰れば悪魔と呼ばれる…もう…地獄でしかない…」
なぜ普通の家庭に生まれなかったのだろう…神様は…最低…ずっとそう思っていた。
「それが嫌で一人暮らしをしていたの…。最初は不慣れで大変なこともあったけど、友人たちがたくさん助けてくれて…そしてある日、この世界に召喚された」
「ユーリ…大丈夫?」
「…大丈夫、ありがとうルド」
「だが顔色が悪いぞ…すまない無理やり話させてしまって」
「いえ…私が決めたことですから」
この世界にこ来れて良かったと思う。
「ユーリ殿、本当に顔色が悪いです。部屋に戻ってゆっくり休んでください」
「そうだな…ユーリ、夕食の時間までゆっくり休んでくれ」
「はい…ありがとうございます」
私はそう言って立った。
* * *
「大丈夫ですか?」
「皆心配しすぎよ…」
メリアと2人で自分の部屋に入り私はソファーに座った。
「ですが、本当に顔色が悪いですよ?」
「大丈夫大丈夫…もうここには彼らはいないもの」
そう言ってメリアさんを見ると本当に心配そうな顔をしていた。
「…私、本当にメリア達の元に召喚されてよかった」
「…ありがとうございます」
小説みたいに、召喚されて勇者になって捨て駒にされたら私だったら世界を滅ぼしかねないわね…。
「部屋に、戻ってきたとはいえ…何をすればいいの?」
「陛下からは何も聞いていないので…あとは自由かと」
自由、か…何しよう?
コンコン
ノックが聞こえ、メリアが扉に向かった…誰かしら?
「ユーリ様、ルドレイク様がいらっしゃいましたが…どうなさいましょう」
「ルドが?…入ってもらって」
「かしこまりました。ルドレイク様、どうぞお入りください」
「失礼するよ」
そう言ってルドが入ってきた。
「どうしたの?ルド」
「様子見と大丈夫なら王宮内の案内役を父上たちに頼まれてね…大丈夫?ユーリ」
なるほどね…確かに城の中は気になるわね
「…案内お願い」
「了解」
そう言って笑うその笑顔は…輝かしいわね。
「いってらっしゃいませ」
「いってきます」
言い返してしまうのは日本人だからなのかしら…それはいいとして、いつみても広い廊下ね。
「ここは王宮内の奥のほうで、許された者しか行けないところなんだ」
「王様やレイフィアさんの部屋とかがあるものね」
「でも、希に頭の固い者が来たりするから気をつけて」
はっきり言っちゃうのね…。
「…気をつける」
それから色々なところを案内してもらい、私たちは様々な花が咲いている大きな庭に来た。
「わぁ…綺麗!」
「そう言ってくれるとうれしいわ」
声がする方を見ると2人の侍女を連れたレイフィアさんがいた。
「こんにちは2人とも、ユーリは昨日ぶりでルドとはいつぶりかしら?」
「3ヶ月ぶりです、レイフィア様」
「最近こちらに顔を見せなくて…寂しかったのよ?」
「忙しかったので」
綺麗な姿のレイフィアさんとルドが話していると…すごいわね…。忙しそうに働いている人たちがさっきから見ているし、見ているこっちが幸せになってくるわ~…そんな感じで2人を見ていたら、レイフィアさんの侍女の一人と目があった。紫色の瞳…綺麗な人ね。
小さくお辞儀をしたので私も小さくお辞儀を…もう一人の侍女さんも私に気づいてお辞儀をしてくれました。レイフィアさんとルドは相変わらず話しているし…三ヶ月も会っていないのだから、積もる話もあるわよね。私は静かに二人から離れて綺麗な花たちを見つめていた。
「こちらの花はすべてレイフィア様が育てているのです」
いきなり隣から声をかけられた。
「そうなんですか…綺麗ですね。あ、はじめまして…ユーリとといいます」
「私はレイフィア様専属侍女を努めております、エリナと申します」
「同じく専属侍女のフィナと申します」
さっき目が合った人がエリナさん、もう一人がフィナさんね。
「庭ごと管理している、ということですか?」
「はい、レイフィア様は園芸がお好きでいらっしゃいますから」
「お部屋の方もたくさん花が飾ってありますよ」
本当に花が好きなのね。
「お二人はレイフィアさんの元にいなくていいのですか?」
「ルドレイク様が付いていらっしゃいますから」
「なるほど…にしても、綺麗だなぁ」
「レイフィア様もお喜びになりますわ」
そう言って私たち三人は2人の会話が終わるまで話をしていた。
「お話が終わったようですよ?」
「あ、そうみたいですね」
見れば2人がこっちへ歩いてきた。
「ごめんなさいねユーリ、ルドから王宮内を案内してもらっていたのでしょう?」
「いえ、エリナさんとフィナさんからこの庭を案内してもらいましたから」
「そう、ならよかったわ。私は部屋に戻るけど気をつけて見学をしていらっしゃいな」
「はい、エリナさんとフィナさんもありがとうございました」
「本当にごめんね?ユーリ」
「大丈夫よ、レイフィアさんにとってルドは息子のようなものでしょう?」
「そうだけど…」
国にとって後継ができないのは痛いことよね…でも、もうすぐだろうから心配はしなくても良さそうね。
「案内の続きを頼める?」
「そうだね…ここからはいろんな人たちが出入りするから気を付けて」
「…わかった」
性格の悪そうな貴族たちがたくさんいそうね
「ここらへんはこんな感じかな」
「へえ~ありがとう」
それは一通り案内が終わり部屋に戻ろうとした時だった。
「これはこれはルドレイク様、お久しぶりでございます」
一瞬ルドが驚いた顔に…気のせい?
「アシュレイ殿、お久しぶりですね」
親しげに話しかけてきた人…アシュレイさんがこっちを見た。運動系なイケメンさ…サッカー部って感じね。
「また美しいお嬢さんを連れていらっしゃるのですね」
私を見る目がなんか…こっちを見ないでいただきたいわね。
私の気持ちが伝わったのか、ルドが自然的に私を見えないように隠した。
「アシュレイ殿は見回りの最中では?」
「おぉ、そうでした」
わざとらしい…。
「では私はこのへんで」
「頑張ってください」
「お嬢さんもごゆっくりと、今日は気をつけてください」
「はい、ありがとうございます」
イケメンさん…アシュレイさんがルドを通り過ぎる時
「今日は奴も来ている、気をつけろ」
「分かった」
という小声の会話が聞こえた。奴?今日は気をつけろという言葉に関係ありそうね、というか2人は親しいみたいね、敬語が抜けていたし。
「さて、そろっとかえ「貴様!私を誰だと思っている!!」…騒がしいな」
イケメン顔がもったいない…にしても本当に騒がしいわね。
「あ、あそこ」
私の視界には男女が争っていた。
「貴様!そこの下女の知り合いか!」
「下女ではないわっ!私の元で働いている立派な侍女よ!!それに、貴方が最初に彼女にぶつかったのでしょう!?」
「はっ!そんな訳ないだろう、こんな汚らわしい女なんかに誰が触るか!」
「貴方が一番汚らわしいわよ!」
…えーと、これはどういうことなのかしら。隣にいるルドを見るとルドが苦笑いをしてこっちを見た。
「どうするの?」
「どうしようか」
「汚らわしいだと…?この私が…?」
あら、まずいのではないかしら。
「汚らわしいのは…貴様だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
その言葉に男の手が振り落とされた。
きゃぁぁ!!という見ている人たちの悲鳴の中、私が危ないと思っているなか体が勝手に動いていた。
「この世界も、馬鹿な男がいるものね」
そう呟いた時には男は私に倒されていた。
「ぐっ…貴様もあの汚らわしい女の仲間か」
「いいえ?私はただ貴方たちの話を聞いていただけ、ただの口争いなら良かったのだけど殴ろうとしていたからつい手を出してしまったわ」
口争いだけなら干渉するつもりも無かったのだけれども…殴ろうとするのはさすがに手を出すわよ…ここは王宮だしね。
「なんだと…?貴様は私を誰だと思っているのだ!」
「さあ?私は貴方の事を知らないし知る気もないわ、ただ貴方は陛下のお膝元であるこの王宮で騒ぎを起こしていいのかしら?私以外は全員貴方の事を知っているようですし」
私の言葉に顔を真っ青にする男…馬鹿な男ねえ。
「き、貴様!」
「ロアリス侯爵」
「!…ル、ルドレイク様っ!」
ルド…満面な笑みだけど何か…こう…背後に恐ろしい雰囲気が…
「彼女の言う通りです。私も先程から見ておりましたがやりすぎだとは思いませんか?」
「こ、これには!」
「言い訳は結構です、このことは陛下に報告しますので…」
そう言い切ったルドはさっきの女の人と侍女さんを見た。
「お話をお聞かせください」
さっきの馬鹿…ロアリス侯爵を王宮騎士に託して私たち四人は応接室に行った。私の隣はルド、そして向かい側に女の人と侍女さんが座った。侍女さんは座ることを断ったけどルドが説得させた。
「お怪我はありませんか?」
私の質問に女の人は優しく微笑んだ。
「貴方のおかげで私も彼女も怪我なく済みましたわ、貴方こそお怪我はないかしら?」
「はい、この通り無事です。」
これが本当のお嬢様。
「それは良かったわ…私はリーフェ・ベル・モルジアナよ家は代々伯爵を賜っているわ、隣は侍女のメル」
「私はユーリ・ナナセです。すいません、本来ならば私から名乗らなければならないのに」
「私はそんなの気にしないわ、ユーリは私の命の恩人だもの」
「恩人…というのは言い過ぎではないかと」
リーフェ様…貴族令嬢というのはきつそうな人たちがたくさんいると思っていたのだけどこういう人もいるのね。
「リーフェ様「リーフェと呼んで」…リーフェさん、先程はど「敬語もなしで」…どういう経線で争いが起こったの?」
…貴族令嬢らしくない令嬢ね。
「あれは本当にメルのせいではないのよ」
そう言ってリーフェは語りだした。
今この部屋にいるのは王様、レイダリアさん、ルド、そしてお茶を足しているメリアと私だけ。王様によるとメリアさんは私のお世話をする半面、私の護衛もしているのだとか…メリアさんって何者?そんな人が副侍女長とか…侍女長はとても素晴らしい人なのでしょうね。四人とも静かに私の話を聞いている。
「私の家族は父と母…そして双子の妹がいるの」
「双子?」
ルドの質問に私は頷いた。
「妹の名前は優希。現当主は父方の祖父で、父は長男だったから当主争いに私たちは巻き込まれた。」
そこで私は失礼だと思っていてもお茶の入ったカップに口をつけた。
「祖父の子は私の父とすぐ下の妹である私たちの叔母だけで叔母には子供ができなかったの…ぜんぜん子供が生まれなくて…結局私たち双子のどちらかが次期当主になることになったの」
…大人たちはなぜあんなに勝手なのだろうか。
「優希も私も次期当主なんて嫌だった…でも親戚の人たちは勝手に私たちを引き離した…私は叔母さんの養子に出されて、私と優希は本格的に争いをしなければならなくなったの」
ここからだ…ここからすべてが狂い始めた。
「でも、ある日叔母さんの家が火災にあって…全員が死んだ…私を除いて」
「それは…」
王様が驚いてる…無理もないわね、私以外が皆死んだのだから
「その後、ほとんどの親戚の家に連れて行かれたわ…でも…皆事故にあったりして死んでいった…私を除いて」
誰かの息を呑む音が聞こえた。
「残った親戚の人たちは皆私のことを悪魔と呼ぶようになった…別に気にもしなかったわ…むしろ滑稽だったわ…もう私たちは滅ぶべきなのよ…滅ぶことができないのなら…私が滅べばいい…それであの子が楽になれば私は何もいらない…何も…」
静まり返った部屋で、私は深呼吸をした。
「でも…そんな日々の中で心が休めたのは学校だった。学校の友人たちは違った…こんな私を悪魔では無いと言ってくれた…私は私だと言ってくれた…今まで生きてこれたのは彼女たちのおかげ…でも…でも…家に帰れば悪魔と呼ばれる…もう…地獄でしかない…」
なぜ普通の家庭に生まれなかったのだろう…神様は…最低…ずっとそう思っていた。
「それが嫌で一人暮らしをしていたの…。最初は不慣れで大変なこともあったけど、友人たちがたくさん助けてくれて…そしてある日、この世界に召喚された」
「ユーリ…大丈夫?」
「…大丈夫、ありがとうルド」
「だが顔色が悪いぞ…すまない無理やり話させてしまって」
「いえ…私が決めたことですから」
この世界にこ来れて良かったと思う。
「ユーリ殿、本当に顔色が悪いです。部屋に戻ってゆっくり休んでください」
「そうだな…ユーリ、夕食の時間までゆっくり休んでくれ」
「はい…ありがとうございます」
私はそう言って立った。
* * *
「大丈夫ですか?」
「皆心配しすぎよ…」
メリアと2人で自分の部屋に入り私はソファーに座った。
「ですが、本当に顔色が悪いですよ?」
「大丈夫大丈夫…もうここには彼らはいないもの」
そう言ってメリアさんを見ると本当に心配そうな顔をしていた。
「…私、本当にメリア達の元に召喚されてよかった」
「…ありがとうございます」
小説みたいに、召喚されて勇者になって捨て駒にされたら私だったら世界を滅ぼしかねないわね…。
「部屋に、戻ってきたとはいえ…何をすればいいの?」
「陛下からは何も聞いていないので…あとは自由かと」
自由、か…何しよう?
コンコン
ノックが聞こえ、メリアが扉に向かった…誰かしら?
「ユーリ様、ルドレイク様がいらっしゃいましたが…どうなさいましょう」
「ルドが?…入ってもらって」
「かしこまりました。ルドレイク様、どうぞお入りください」
「失礼するよ」
そう言ってルドが入ってきた。
「どうしたの?ルド」
「様子見と大丈夫なら王宮内の案内役を父上たちに頼まれてね…大丈夫?ユーリ」
なるほどね…確かに城の中は気になるわね
「…案内お願い」
「了解」
そう言って笑うその笑顔は…輝かしいわね。
「いってらっしゃいませ」
「いってきます」
言い返してしまうのは日本人だからなのかしら…それはいいとして、いつみても広い廊下ね。
「ここは王宮内の奥のほうで、許された者しか行けないところなんだ」
「王様やレイフィアさんの部屋とかがあるものね」
「でも、希に頭の固い者が来たりするから気をつけて」
はっきり言っちゃうのね…。
「…気をつける」
それから色々なところを案内してもらい、私たちは様々な花が咲いている大きな庭に来た。
「わぁ…綺麗!」
「そう言ってくれるとうれしいわ」
声がする方を見ると2人の侍女を連れたレイフィアさんがいた。
「こんにちは2人とも、ユーリは昨日ぶりでルドとはいつぶりかしら?」
「3ヶ月ぶりです、レイフィア様」
「最近こちらに顔を見せなくて…寂しかったのよ?」
「忙しかったので」
綺麗な姿のレイフィアさんとルドが話していると…すごいわね…。忙しそうに働いている人たちがさっきから見ているし、見ているこっちが幸せになってくるわ~…そんな感じで2人を見ていたら、レイフィアさんの侍女の一人と目があった。紫色の瞳…綺麗な人ね。
小さくお辞儀をしたので私も小さくお辞儀を…もう一人の侍女さんも私に気づいてお辞儀をしてくれました。レイフィアさんとルドは相変わらず話しているし…三ヶ月も会っていないのだから、積もる話もあるわよね。私は静かに二人から離れて綺麗な花たちを見つめていた。
「こちらの花はすべてレイフィア様が育てているのです」
いきなり隣から声をかけられた。
「そうなんですか…綺麗ですね。あ、はじめまして…ユーリとといいます」
「私はレイフィア様専属侍女を努めております、エリナと申します」
「同じく専属侍女のフィナと申します」
さっき目が合った人がエリナさん、もう一人がフィナさんね。
「庭ごと管理している、ということですか?」
「はい、レイフィア様は園芸がお好きでいらっしゃいますから」
「お部屋の方もたくさん花が飾ってありますよ」
本当に花が好きなのね。
「お二人はレイフィアさんの元にいなくていいのですか?」
「ルドレイク様が付いていらっしゃいますから」
「なるほど…にしても、綺麗だなぁ」
「レイフィア様もお喜びになりますわ」
そう言って私たち三人は2人の会話が終わるまで話をしていた。
「お話が終わったようですよ?」
「あ、そうみたいですね」
見れば2人がこっちへ歩いてきた。
「ごめんなさいねユーリ、ルドから王宮内を案内してもらっていたのでしょう?」
「いえ、エリナさんとフィナさんからこの庭を案内してもらいましたから」
「そう、ならよかったわ。私は部屋に戻るけど気をつけて見学をしていらっしゃいな」
「はい、エリナさんとフィナさんもありがとうございました」
「本当にごめんね?ユーリ」
「大丈夫よ、レイフィアさんにとってルドは息子のようなものでしょう?」
「そうだけど…」
国にとって後継ができないのは痛いことよね…でも、もうすぐだろうから心配はしなくても良さそうね。
「案内の続きを頼める?」
「そうだね…ここからはいろんな人たちが出入りするから気を付けて」
「…わかった」
性格の悪そうな貴族たちがたくさんいそうね
「ここらへんはこんな感じかな」
「へえ~ありがとう」
それは一通り案内が終わり部屋に戻ろうとした時だった。
「これはこれはルドレイク様、お久しぶりでございます」
一瞬ルドが驚いた顔に…気のせい?
「アシュレイ殿、お久しぶりですね」
親しげに話しかけてきた人…アシュレイさんがこっちを見た。運動系なイケメンさ…サッカー部って感じね。
「また美しいお嬢さんを連れていらっしゃるのですね」
私を見る目がなんか…こっちを見ないでいただきたいわね。
私の気持ちが伝わったのか、ルドが自然的に私を見えないように隠した。
「アシュレイ殿は見回りの最中では?」
「おぉ、そうでした」
わざとらしい…。
「では私はこのへんで」
「頑張ってください」
「お嬢さんもごゆっくりと、今日は気をつけてください」
「はい、ありがとうございます」
イケメンさん…アシュレイさんがルドを通り過ぎる時
「今日は奴も来ている、気をつけろ」
「分かった」
という小声の会話が聞こえた。奴?今日は気をつけろという言葉に関係ありそうね、というか2人は親しいみたいね、敬語が抜けていたし。
「さて、そろっとかえ「貴様!私を誰だと思っている!!」…騒がしいな」
イケメン顔がもったいない…にしても本当に騒がしいわね。
「あ、あそこ」
私の視界には男女が争っていた。
「貴様!そこの下女の知り合いか!」
「下女ではないわっ!私の元で働いている立派な侍女よ!!それに、貴方が最初に彼女にぶつかったのでしょう!?」
「はっ!そんな訳ないだろう、こんな汚らわしい女なんかに誰が触るか!」
「貴方が一番汚らわしいわよ!」
…えーと、これはどういうことなのかしら。隣にいるルドを見るとルドが苦笑いをしてこっちを見た。
「どうするの?」
「どうしようか」
「汚らわしいだと…?この私が…?」
あら、まずいのではないかしら。
「汚らわしいのは…貴様だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
その言葉に男の手が振り落とされた。
きゃぁぁ!!という見ている人たちの悲鳴の中、私が危ないと思っているなか体が勝手に動いていた。
「この世界も、馬鹿な男がいるものね」
そう呟いた時には男は私に倒されていた。
「ぐっ…貴様もあの汚らわしい女の仲間か」
「いいえ?私はただ貴方たちの話を聞いていただけ、ただの口争いなら良かったのだけど殴ろうとしていたからつい手を出してしまったわ」
口争いだけなら干渉するつもりも無かったのだけれども…殴ろうとするのはさすがに手を出すわよ…ここは王宮だしね。
「なんだと…?貴様は私を誰だと思っているのだ!」
「さあ?私は貴方の事を知らないし知る気もないわ、ただ貴方は陛下のお膝元であるこの王宮で騒ぎを起こしていいのかしら?私以外は全員貴方の事を知っているようですし」
私の言葉に顔を真っ青にする男…馬鹿な男ねえ。
「き、貴様!」
「ロアリス侯爵」
「!…ル、ルドレイク様っ!」
ルド…満面な笑みだけど何か…こう…背後に恐ろしい雰囲気が…
「彼女の言う通りです。私も先程から見ておりましたがやりすぎだとは思いませんか?」
「こ、これには!」
「言い訳は結構です、このことは陛下に報告しますので…」
そう言い切ったルドはさっきの女の人と侍女さんを見た。
「お話をお聞かせください」
さっきの馬鹿…ロアリス侯爵を王宮騎士に託して私たち四人は応接室に行った。私の隣はルド、そして向かい側に女の人と侍女さんが座った。侍女さんは座ることを断ったけどルドが説得させた。
「お怪我はありませんか?」
私の質問に女の人は優しく微笑んだ。
「貴方のおかげで私も彼女も怪我なく済みましたわ、貴方こそお怪我はないかしら?」
「はい、この通り無事です。」
これが本当のお嬢様。
「それは良かったわ…私はリーフェ・ベル・モルジアナよ家は代々伯爵を賜っているわ、隣は侍女のメル」
「私はユーリ・ナナセです。すいません、本来ならば私から名乗らなければならないのに」
「私はそんなの気にしないわ、ユーリは私の命の恩人だもの」
「恩人…というのは言い過ぎではないかと」
リーフェ様…貴族令嬢というのはきつそうな人たちがたくさんいると思っていたのだけどこういう人もいるのね。
「リーフェ様「リーフェと呼んで」…リーフェさん、先程はど「敬語もなしで」…どういう経線で争いが起こったの?」
…貴族令嬢らしくない令嬢ね。
「あれは本当にメルのせいではないのよ」
そう言ってリーフェは語りだした。
0
あなたにおすすめの小説
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる