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第一章 2代目時の神子 ユーリ
メイリラルド歴657年
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メイリラルド歴657年。メルゼルク王国が建国して256年経ち私がこの世界に来て136年にもなったある日、いつもの様にレポートの束を陛下の元に届けたら唐突に陛下が言った言葉。
「そろっとアランに交代だな」
「何を?」
「国王を」
この言葉には部屋にいた私とルド、お義父様も固まった。
「どうしたのですいきなり」
「最近、各国で次々と世代交代をしている。俺ももういい年だしアランも王になる器が十分ある」
「いきなり過ぎですよ」
「そうでもないさ、レイダリアも分かるだろう?それに、前回の会議で大臣たちとも話したじゃないか…そろっと俺たち古株は隠居する時だってな」
「まぁ…それはそうですが」
…いきなり過ぎる。
「という訳で決めた!次の会議で正式にする」
「となると次の王はアランシス様でいいですが宰相はケイルになりますかね、本来ならばラトルクがいいのですが」
「本人は当分帰ってきませんよ」
最近届いた報告によると海を渡って遥か先にいるらしいのよね…遠すぎるわ。
私の言葉に苦笑いしたお義父様は会議の日程やらケイル義兄様への手紙などを書きに執務から出た。
「唐突すぎですよ陛下、流行に乗るような人じゃないでしょうに」
「まぁな…でも引退を考えたのは魔王を倒したと報告を聞いた時さ」
「それ…かなり前ですね」
45年前のことね。
「魔王の件はアランに任せた、そして奴は期待以上の結果を出してくれた。その時点で王の器なんて分かってたんだ」
そうだったのね…へぇー
「で、本音は?」
「早く隠居して楽になりたい!」
…やっぱりね、この言葉にルドも私も苦笑いするしかなかった。
* * *
あれから2ヶ月、会議も無事に終わりアランシスが国王になることを決定した…宰相は勿論ケイル義兄様。
そして今日、新国王の戴冠式が行われる。
「これより、戴冠式を行う!」
お義父様の声が響く、そして盛大な音楽と共にアランシスが登場した。
そして王冠が陛下からアランシスへと伝わり、国王アランシスが誕生した。
「今、我アランシスはメルゼルク王国の国王となった。しかし、今まで通りに接して欲しい…共に、この国の未来を創りあげてゆこう」
あんなに小さかったアランシスがこんなにも成長したなんて…時の流れは本当に早い。
会場は拍手喝采、私も拍手をしながらこの世界の未来を想った。
* * *
「緊張したな」
「緊張しているようには見えなかったわよ、これからがんばってねアランシス陛下」
「ユーリ殿に陛下と言われるのはなにか違和感を感じるな」
「大丈夫よ、私は陛下なんて呼ばないから」
ホッとするアランシスに私もルドも笑った。
「後は大臣たちが王妃選びに奮闘するだけね」
「…それはやめて欲しい」
「彼らのことだからね、アランシスは好きな人はいないのかい?」
「…いない」
「まぁがんばることね」
私にはどうでもいいこと。
「兄上もがんばってくださいね」
「ありがとうルド。陛下は私の3人目の弟のようなものだからね、気軽にやるさ」
「ケイルお義兄様、あんなアランシスをよろしくお願いしますね」
「おい、どういうことだ」
「アランシスはライド様とレイフィアとの子だもの、いつか絶対にやらかすわ」
レイフィアなんて色々やらかしてたものね。
「リリアさんの言った通りになった訳だし、がんばりなさい」
「…分かりました」
呆れながらもしっかりした顔になったことだし、仕事に戻りましょうかね。
「あ、そういえば…ラトルクから貴方に」
「ラトが?」
「お祝いじゃないかしら」
今日の朝ラトルクから二通の手紙が来た、一通は私宛でもう一通はアランシス宛だった。ラトルク達は今海を挟んだ隣の大陸にいるとのこと、小さい歪みが数多くあること、エリンとライトは無事に親の許可も得て結婚式を挙げ現在もチームの戦力になっていると書いてあった。そして最後、エリン達の応援の末、アイルは無事ラトルクのハートを掴んだようで恋人になったと書いてあった…ようやくね、安心したわ。
「これは…時計か」
懐中時計ね、ガジルスという鉱石がはめられていて中々の高級感。カジルスというのは地球でいうルビーみたいなもので今ラトルク達がいる大陸しか採掘できない鉱石なのよね。
「……」
手紙を読んでいたアランシスが無言で手紙を封筒へと入れた。
「本当に貴方の子ですね、ラトルクは」
「?」
「最初は近況報告でおめでとうと書いてあったのだが最後に…”アイルと恋人同士になった、アランも王妃選びがんばってね。変なのは選ばないように”って…」
私達は呆気にとられてたけど次の瞬間に大爆笑した。
「さすがねっ!」
「笑い事じゃない…」
「まぁ、焦らずゆっくりと決めていくといいわ」
時間はたっぷりあるのだからね。
”アランへ
アランが国王になったと聞いて驚いて…なかった、当たり前だろうしね。
とりあえず何か贈り物をと思って今いる町の店で見つけた懐中時計を少しいじってプレゼントしたから、いじったと言っても強化と無くしてもアランの元に帰ってくるようにしただけだから…もちろん壊れないようにしたからたくさん使って。
そういえばお祝い言ってなかった…おめでとう。
追伸、アイルと恋人同士になった、アランも王妃選びがんばってね。変なのは選ばないように。
ラトルクより”
「そろっとアランに交代だな」
「何を?」
「国王を」
この言葉には部屋にいた私とルド、お義父様も固まった。
「どうしたのですいきなり」
「最近、各国で次々と世代交代をしている。俺ももういい年だしアランも王になる器が十分ある」
「いきなり過ぎですよ」
「そうでもないさ、レイダリアも分かるだろう?それに、前回の会議で大臣たちとも話したじゃないか…そろっと俺たち古株は隠居する時だってな」
「まぁ…それはそうですが」
…いきなり過ぎる。
「という訳で決めた!次の会議で正式にする」
「となると次の王はアランシス様でいいですが宰相はケイルになりますかね、本来ならばラトルクがいいのですが」
「本人は当分帰ってきませんよ」
最近届いた報告によると海を渡って遥か先にいるらしいのよね…遠すぎるわ。
私の言葉に苦笑いしたお義父様は会議の日程やらケイル義兄様への手紙などを書きに執務から出た。
「唐突すぎですよ陛下、流行に乗るような人じゃないでしょうに」
「まぁな…でも引退を考えたのは魔王を倒したと報告を聞いた時さ」
「それ…かなり前ですね」
45年前のことね。
「魔王の件はアランに任せた、そして奴は期待以上の結果を出してくれた。その時点で王の器なんて分かってたんだ」
そうだったのね…へぇー
「で、本音は?」
「早く隠居して楽になりたい!」
…やっぱりね、この言葉にルドも私も苦笑いするしかなかった。
* * *
あれから2ヶ月、会議も無事に終わりアランシスが国王になることを決定した…宰相は勿論ケイル義兄様。
そして今日、新国王の戴冠式が行われる。
「これより、戴冠式を行う!」
お義父様の声が響く、そして盛大な音楽と共にアランシスが登場した。
そして王冠が陛下からアランシスへと伝わり、国王アランシスが誕生した。
「今、我アランシスはメルゼルク王国の国王となった。しかし、今まで通りに接して欲しい…共に、この国の未来を創りあげてゆこう」
あんなに小さかったアランシスがこんなにも成長したなんて…時の流れは本当に早い。
会場は拍手喝采、私も拍手をしながらこの世界の未来を想った。
* * *
「緊張したな」
「緊張しているようには見えなかったわよ、これからがんばってねアランシス陛下」
「ユーリ殿に陛下と言われるのはなにか違和感を感じるな」
「大丈夫よ、私は陛下なんて呼ばないから」
ホッとするアランシスに私もルドも笑った。
「後は大臣たちが王妃選びに奮闘するだけね」
「…それはやめて欲しい」
「彼らのことだからね、アランシスは好きな人はいないのかい?」
「…いない」
「まぁがんばることね」
私にはどうでもいいこと。
「兄上もがんばってくださいね」
「ありがとうルド。陛下は私の3人目の弟のようなものだからね、気軽にやるさ」
「ケイルお義兄様、あんなアランシスをよろしくお願いしますね」
「おい、どういうことだ」
「アランシスはライド様とレイフィアとの子だもの、いつか絶対にやらかすわ」
レイフィアなんて色々やらかしてたものね。
「リリアさんの言った通りになった訳だし、がんばりなさい」
「…分かりました」
呆れながらもしっかりした顔になったことだし、仕事に戻りましょうかね。
「あ、そういえば…ラトルクから貴方に」
「ラトが?」
「お祝いじゃないかしら」
今日の朝ラトルクから二通の手紙が来た、一通は私宛でもう一通はアランシス宛だった。ラトルク達は今海を挟んだ隣の大陸にいるとのこと、小さい歪みが数多くあること、エリンとライトは無事に親の許可も得て結婚式を挙げ現在もチームの戦力になっていると書いてあった。そして最後、エリン達の応援の末、アイルは無事ラトルクのハートを掴んだようで恋人になったと書いてあった…ようやくね、安心したわ。
「これは…時計か」
懐中時計ね、ガジルスという鉱石がはめられていて中々の高級感。カジルスというのは地球でいうルビーみたいなもので今ラトルク達がいる大陸しか採掘できない鉱石なのよね。
「……」
手紙を読んでいたアランシスが無言で手紙を封筒へと入れた。
「本当に貴方の子ですね、ラトルクは」
「?」
「最初は近況報告でおめでとうと書いてあったのだが最後に…”アイルと恋人同士になった、アランも王妃選びがんばってね。変なのは選ばないように”って…」
私達は呆気にとられてたけど次の瞬間に大爆笑した。
「さすがねっ!」
「笑い事じゃない…」
「まぁ、焦らずゆっくりと決めていくといいわ」
時間はたっぷりあるのだからね。
”アランへ
アランが国王になったと聞いて驚いて…なかった、当たり前だろうしね。
とりあえず何か贈り物をと思って今いる町の店で見つけた懐中時計を少しいじってプレゼントしたから、いじったと言っても強化と無くしてもアランの元に帰ってくるようにしただけだから…もちろん壊れないようにしたからたくさん使って。
そういえばお祝い言ってなかった…おめでとう。
追伸、アイルと恋人同士になった、アランも王妃選びがんばってね。変なのは選ばないように。
ラトルクより”
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