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5章 激闘、二回戦!
030話 経験と、弱点と ②
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***
SIDE:YUKI
「よし、まず一ゲーム。よく取った」
「はい!」
スポドリを飲むアリスに話し掛ける。
「戦術はもう言う事なし。自分の好きにやりな」
「はい」
今更私がこの局面でアドバイスすることなどアリス相手には何も無い。ただ、妙高静香にとっての絵東雪は相手を徹底的に分析する戦術家。そのイメージを利用してアリスに色々と戦術を伝えているふりをする。
「静香、もう一段階ギア上げてくるよ。アリスもまだまだいけるね?」
「はい!」
「ダブルスへの疲れなんて考えなくていいよ。アリスが疲れたら静香だって疲れる。そしたら私がダブルス全部点取ってやるから」
「はいっ!」
「よし、行って来い!」
次は第四ゲーム。私もそろそろ身体も精神もダブルスの準備だ。
***
SIDE:SHIZUKA
第四ゲーム。こちらのサーブで開始。
最大限に集中して、何の変哲もないバックへのミドルレンジのサーブを放つ。向こうは定石通りにバックハンドでのスピードドライブを返してくる。
そのボールに対して、これしかないというタイミングで回り込んでフォアハンドでのパワードライブで打ち抜く。
左手でガッツポーズ。
前のセットを最後四連続失点で取られた。このセットの一点目は絶対に取って流れを渡さない。今までの経験からそう決めていた。
そのまま二本目のサーブを打つ。フォア側ネットぎりぎりの下回転ショートサーブ。とっておきのサーブをこのタイミングで出すとは向こうも思っていないはずだ。案の定体勢を崩したツッツキでレシーブしてくるので、チキータの強打からの打ち合いを制して連続得点する。
こちらが2-0とリードしたところで向こうはナックルサーブを放ってくる。反射的に四球目攻撃をイメージし、二球目をしっかりと下回転をかけたツッツキで返す。相手はフォアでツッツキかフリックしか打てない場所だったが、アリスちゃんは素早くフォア側へ踏み込むと、その長い腕を伸ばしてスマッシュのような高速チキータを真っすぐストレートで打ち抜いてきた。全国大会の上位の方でもないとお目にかかれない超のつく高等技。
「ッシャー!!」
三点差にはできないという場面でのこの集中力。やはりこのアリスちゃんの超集中力に勝たない限り私の勝ちはない。
向こうの二本目のサーブ、おそらく横下回転のミドルレンジサーブ。
ここで私は今までの三ゲームで考えたアリスちゃんの弱点を突く作戦を実行する。
バックハンドへのドライブ。当然向こうもバックドライブで対応してくる。ここで私はサイド、横へ外れるギリギリまでバック側のこちら側から見て右側のコースへドラーブを放つ。アリスちゃんはバック側へフットワークを使うことなく腕を伸ばすだけでドライブを返してくる。フットワークでバック側、こちらから見て右へ踏み出すと次にフォア側、左への打球に対応できなくなる。だから上半身と腕の長さだけでバック深くのコースへ対応する。理屈としては理に適っている。
だけど、腕が伸びた状態のドライブはそんなに威力は出ない。同じコースへ二本続けたところで完全に威力の弱まったドライブが返ってきたので、上半身の向きを変えてフォア側へ打ち抜くと見せかけて、三連続で同じコースへ、バックハンドのスマッシュで打ち抜く。
いくら集中力の乗っていないギアが入る前の状態でも、クセや弱点というのは見ていればわかる。アリスちゃんはフォアへのフットワークが素早い分、バック側へはフットワークを使わず腕だけ伸ばして対応するというクセが今までの三ゲームでわかっていた。
3-1としたところで、次のサーブもロングの横下回転サーブ。カットマンでもない限りレシーブにバックハンドドライブ以外の選択肢はないコース。狙い通りバックハンドドライブで返球がきたので、さっきと全く同じサイドぎりぎりのバックへのドライブの打ち合いで打ち勝つ。
高校で三年間卓球をやって、もしくはエースという役割になって中学との一番の違いを感じたのは、この弱点の突き方だ。自分が一年生や二年生で相手の方が格上だったときも、平気で三連続、四連続とこちらの苦手なコースや球種を突いてきた。苦手な球への対応に苦慮すると、他の普通の打法も打ち方、フォームを崩される。
4-1となっても、もう一本同じバック横下回転サーブを打つ。たぶん向こうももう一本来ると予想しているだろうが、このコースはチキータも回り込んでのフォアも無理な場所だ。ドライブかカットくらいでしか返球できない。
と思っていたら、アリスちゃんはなんと二球目からロビングでボールを高く放り込んできた。
完全にこちらの想定外。とっさに前セットのロビングを思い出し相手の回転をしっかりと確認しながらスマッシュを打ち込む。ロビングは男子のように後陣からでも強打を打てるだけの筋力のない女子にとっては、なんとか相手のスマッシュミスを願うだけの守備的、後ろ向きな技だ。しっかりとスマッシュを打ち込めばこちらの得点になる。
という常識を覆し、アリスちゃんのロビングは男子のボールのように強烈な横回転がかかっていてスマッシュを打つこちら側がミスをしないよう追い付くのに精一杯だ。最後は横上回転、ロングドライブとカーブドライブの合わせ技のような打球にこちらがしっかりと上から被せることができずにスマッシュがコートオーバーしてしまう。
「ヨッシャアア!!」
SIDE:YUKI
「よし、まず一ゲーム。よく取った」
「はい!」
スポドリを飲むアリスに話し掛ける。
「戦術はもう言う事なし。自分の好きにやりな」
「はい」
今更私がこの局面でアドバイスすることなどアリス相手には何も無い。ただ、妙高静香にとっての絵東雪は相手を徹底的に分析する戦術家。そのイメージを利用してアリスに色々と戦術を伝えているふりをする。
「静香、もう一段階ギア上げてくるよ。アリスもまだまだいけるね?」
「はい!」
「ダブルスへの疲れなんて考えなくていいよ。アリスが疲れたら静香だって疲れる。そしたら私がダブルス全部点取ってやるから」
「はいっ!」
「よし、行って来い!」
次は第四ゲーム。私もそろそろ身体も精神もダブルスの準備だ。
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SIDE:SHIZUKA
第四ゲーム。こちらのサーブで開始。
最大限に集中して、何の変哲もないバックへのミドルレンジのサーブを放つ。向こうは定石通りにバックハンドでのスピードドライブを返してくる。
そのボールに対して、これしかないというタイミングで回り込んでフォアハンドでのパワードライブで打ち抜く。
左手でガッツポーズ。
前のセットを最後四連続失点で取られた。このセットの一点目は絶対に取って流れを渡さない。今までの経験からそう決めていた。
そのまま二本目のサーブを打つ。フォア側ネットぎりぎりの下回転ショートサーブ。とっておきのサーブをこのタイミングで出すとは向こうも思っていないはずだ。案の定体勢を崩したツッツキでレシーブしてくるので、チキータの強打からの打ち合いを制して連続得点する。
こちらが2-0とリードしたところで向こうはナックルサーブを放ってくる。反射的に四球目攻撃をイメージし、二球目をしっかりと下回転をかけたツッツキで返す。相手はフォアでツッツキかフリックしか打てない場所だったが、アリスちゃんは素早くフォア側へ踏み込むと、その長い腕を伸ばしてスマッシュのような高速チキータを真っすぐストレートで打ち抜いてきた。全国大会の上位の方でもないとお目にかかれない超のつく高等技。
「ッシャー!!」
三点差にはできないという場面でのこの集中力。やはりこのアリスちゃんの超集中力に勝たない限り私の勝ちはない。
向こうの二本目のサーブ、おそらく横下回転のミドルレンジサーブ。
ここで私は今までの三ゲームで考えたアリスちゃんの弱点を突く作戦を実行する。
バックハンドへのドライブ。当然向こうもバックドライブで対応してくる。ここで私はサイド、横へ外れるギリギリまでバック側のこちら側から見て右側のコースへドラーブを放つ。アリスちゃんはバック側へフットワークを使うことなく腕を伸ばすだけでドライブを返してくる。フットワークでバック側、こちらから見て右へ踏み出すと次にフォア側、左への打球に対応できなくなる。だから上半身と腕の長さだけでバック深くのコースへ対応する。理屈としては理に適っている。
だけど、腕が伸びた状態のドライブはそんなに威力は出ない。同じコースへ二本続けたところで完全に威力の弱まったドライブが返ってきたので、上半身の向きを変えてフォア側へ打ち抜くと見せかけて、三連続で同じコースへ、バックハンドのスマッシュで打ち抜く。
いくら集中力の乗っていないギアが入る前の状態でも、クセや弱点というのは見ていればわかる。アリスちゃんはフォアへのフットワークが素早い分、バック側へはフットワークを使わず腕だけ伸ばして対応するというクセが今までの三ゲームでわかっていた。
3-1としたところで、次のサーブもロングの横下回転サーブ。カットマンでもない限りレシーブにバックハンドドライブ以外の選択肢はないコース。狙い通りバックハンドドライブで返球がきたので、さっきと全く同じサイドぎりぎりのバックへのドライブの打ち合いで打ち勝つ。
高校で三年間卓球をやって、もしくはエースという役割になって中学との一番の違いを感じたのは、この弱点の突き方だ。自分が一年生や二年生で相手の方が格上だったときも、平気で三連続、四連続とこちらの苦手なコースや球種を突いてきた。苦手な球への対応に苦慮すると、他の普通の打法も打ち方、フォームを崩される。
4-1となっても、もう一本同じバック横下回転サーブを打つ。たぶん向こうももう一本来ると予想しているだろうが、このコースはチキータも回り込んでのフォアも無理な場所だ。ドライブかカットくらいでしか返球できない。
と思っていたら、アリスちゃんはなんと二球目からロビングでボールを高く放り込んできた。
完全にこちらの想定外。とっさに前セットのロビングを思い出し相手の回転をしっかりと確認しながらスマッシュを打ち込む。ロビングは男子のように後陣からでも強打を打てるだけの筋力のない女子にとっては、なんとか相手のスマッシュミスを願うだけの守備的、後ろ向きな技だ。しっかりとスマッシュを打ち込めばこちらの得点になる。
という常識を覆し、アリスちゃんのロビングは男子のボールのように強烈な横回転がかかっていてスマッシュを打つこちら側がミスをしないよう追い付くのに精一杯だ。最後は横上回転、ロングドライブとカーブドライブの合わせ技のような打球にこちらがしっかりと上から被せることができずにスマッシュがコートオーバーしてしまう。
「ヨッシャアア!!」
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