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5章 激闘、二回戦!
033話 本能と、次への布石と ①
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SIDE:YUNO
第二ゲーム。
卓球のダブルスは第一ゲームと第二ゲームでサーブとレシーブが逆となる。つまり、第一ゲーム最初にレシーブだった妙高さんがサーブになり、サーブだった稔里ちゃんがレシーブ、三球目が村川さんで四球目が絵東先輩。
実はルール上ではサーブは妙高さんでも村川さんでもどちらでもいいらしいが、ほとんどの場合さきほど話した第一ゲームの裏返しになる。
妙高さんのたぶん下回転のサーブに稔里ちゃんはしっかりと下回転をかけたツッツキでレシーブする。フォア側のちょっと高いがネットぎりぎりでドライブは無理な位置。
(速い!)
村川さんはちょっと浮いたのを見逃さずすかさずフリックで払ってくる。フリックといってもスマッシュのようなスピードだ。先輩はフリックが来るのを見越してカウンターブロックで三球目を返すが、四球目で妙高さんがカウンターにカウンターを被せてきて相手が一点目を先取する。
私はゲーム間の絵東先輩の言葉を思い出していた。
『次のゲーム、キマリにボール二つまで甘くしていいから色々打たせて。ゲーム取られてもいいからなるべく長引かせるよ』
今のはボール一つ分だと思うが、それでもフォア手前に浮けば村川さんはスマッシュ並のフリックで打ち込んでくる。
本当はもっと厳しいボールを打てる稔里ちゃんがわざと村川さんに強いボールを打たせている。全てシングルスで戦う私への布石だ。
私は、しっかりと村川さんを分析しないといけない。
その後の打ち合いも稔里ちゃんがわざとそこまで厳しくないボールを返球することで、村川さんのクセが大分わかってきた。
村川さんのバックの打点はかなり低い。手首の返しがかなり上手なのだろう、チキータでもドライブでも低い球を無理やり擦り上げてくる。
そしてフォアのパワードライブを打つときは、明らかにチャンスボールの時だけだ。相方の妙高さんがフェイント気味に通常の体勢からいきなりパワードライブを打つことがあるのに対し、村川さんは通常のスピードドライブにかなり回転が掛かっているからか、上半身を倒し込む分その次のレシーブに影響が出るパワードライブは体勢を戻せる余裕のあるときにしか打ってこない。
そしてやはりフットワークはあまり使わない。うちのアリスノーの二人の以心伝心のような華麗なフットワークは別として、相手の妙高さんもこちらに負けないようなフットワークを見せるが、動かない村川さんをカバーするような動きだ。これは相手を動かすコースへ打ち分けるのが生命線であるカットマンの私にとって大きなヒントとなる。
試合は稔里ちゃんがわざと村川さんに自由に打たせているため、7-9と相手が二点リードしていた。このゲームは取られてもいいと先輩も話していたし、第三ゲーム以降で取れる自信があるのだろう。
と思ったところで、稔里ちゃんの雰囲気が変わる。妙高さんの難しいコースへのボールに対し、長い腕を巻き込むような強烈なカーブドライブを放つ。
自分のバック側からフォア側へ曲がっていくボールに対し、村川さんは咄嗟に上半身を倒しながら打ち合いに持ち込もうとするが、絵東先輩が倒れ込んだ村川さんの方へ目掛けて高速カウンターを打ち一点を返す。
「ヨシッ!」
このゲーム初めて稔里ちゃんが得点に吠える。先輩は一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに稔里ちゃんと目を合わせるとラケットの裏で何かのサインを出す。
妙高さんのサーブに対し、稔里ちゃんはバックのツッツキに入るようなフォームで潜り込むと、手首をぐるりと擦り上げて逆クロスの強烈なレシーブを叩きこむ。
逆チキータ。
チキータが自分のバックハンド側から相手のバックハンド側へ打つのに対し、相手のフォア側へ打つのが逆チキータだ。女子の方が男子より使い手は多いと聞くが、それでも地区予選じゃ滅多にお目にかかれない高等技術。
「ッサーッ!!」
レシーブエースを決めて稔里ちゃんが綺麗な高音の雄たけびを上げる。
9-9。大事なところで一気に同点に追い付く。
サーブ権が代わり、稔里ちゃんのサーブ。短いサインを出すと、おそらくナックルのロングサーブを出す。普通はバックハンドで止める場所だが村川さんは躊躇なく回り込んでドライブで返そうとする。だが、ぎりぎりまで長いサーブはエッジボールとなり弾まず、村川さんは空振りをする。
左手を上げて謝る稔里ちゃん。こういうときはエッジで得点をするとかえって集中力が途切れたりすることもあるが、全くそんな感じは見せない。
サーブ二本目、一本目と全く同じコースへのボール。レシーブの村川さんには一本目のエッジボールの残像が必ず残っている。やや反応の遅れたドライブはコースも甘いチャンスボールとなり、先輩が必殺の逆クロスドライブを相手の重なる位置へ打ち込み、11-9の逆転で二ゲーム目も連取する。
第二ゲーム。
卓球のダブルスは第一ゲームと第二ゲームでサーブとレシーブが逆となる。つまり、第一ゲーム最初にレシーブだった妙高さんがサーブになり、サーブだった稔里ちゃんがレシーブ、三球目が村川さんで四球目が絵東先輩。
実はルール上ではサーブは妙高さんでも村川さんでもどちらでもいいらしいが、ほとんどの場合さきほど話した第一ゲームの裏返しになる。
妙高さんのたぶん下回転のサーブに稔里ちゃんはしっかりと下回転をかけたツッツキでレシーブする。フォア側のちょっと高いがネットぎりぎりでドライブは無理な位置。
(速い!)
村川さんはちょっと浮いたのを見逃さずすかさずフリックで払ってくる。フリックといってもスマッシュのようなスピードだ。先輩はフリックが来るのを見越してカウンターブロックで三球目を返すが、四球目で妙高さんがカウンターにカウンターを被せてきて相手が一点目を先取する。
私はゲーム間の絵東先輩の言葉を思い出していた。
『次のゲーム、キマリにボール二つまで甘くしていいから色々打たせて。ゲーム取られてもいいからなるべく長引かせるよ』
今のはボール一つ分だと思うが、それでもフォア手前に浮けば村川さんはスマッシュ並のフリックで打ち込んでくる。
本当はもっと厳しいボールを打てる稔里ちゃんがわざと村川さんに強いボールを打たせている。全てシングルスで戦う私への布石だ。
私は、しっかりと村川さんを分析しないといけない。
その後の打ち合いも稔里ちゃんがわざとそこまで厳しくないボールを返球することで、村川さんのクセが大分わかってきた。
村川さんのバックの打点はかなり低い。手首の返しがかなり上手なのだろう、チキータでもドライブでも低い球を無理やり擦り上げてくる。
そしてフォアのパワードライブを打つときは、明らかにチャンスボールの時だけだ。相方の妙高さんがフェイント気味に通常の体勢からいきなりパワードライブを打つことがあるのに対し、村川さんは通常のスピードドライブにかなり回転が掛かっているからか、上半身を倒し込む分その次のレシーブに影響が出るパワードライブは体勢を戻せる余裕のあるときにしか打ってこない。
そしてやはりフットワークはあまり使わない。うちのアリスノーの二人の以心伝心のような華麗なフットワークは別として、相手の妙高さんもこちらに負けないようなフットワークを見せるが、動かない村川さんをカバーするような動きだ。これは相手を動かすコースへ打ち分けるのが生命線であるカットマンの私にとって大きなヒントとなる。
試合は稔里ちゃんがわざと村川さんに自由に打たせているため、7-9と相手が二点リードしていた。このゲームは取られてもいいと先輩も話していたし、第三ゲーム以降で取れる自信があるのだろう。
と思ったところで、稔里ちゃんの雰囲気が変わる。妙高さんの難しいコースへのボールに対し、長い腕を巻き込むような強烈なカーブドライブを放つ。
自分のバック側からフォア側へ曲がっていくボールに対し、村川さんは咄嗟に上半身を倒しながら打ち合いに持ち込もうとするが、絵東先輩が倒れ込んだ村川さんの方へ目掛けて高速カウンターを打ち一点を返す。
「ヨシッ!」
このゲーム初めて稔里ちゃんが得点に吠える。先輩は一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに稔里ちゃんと目を合わせるとラケットの裏で何かのサインを出す。
妙高さんのサーブに対し、稔里ちゃんはバックのツッツキに入るようなフォームで潜り込むと、手首をぐるりと擦り上げて逆クロスの強烈なレシーブを叩きこむ。
逆チキータ。
チキータが自分のバックハンド側から相手のバックハンド側へ打つのに対し、相手のフォア側へ打つのが逆チキータだ。女子の方が男子より使い手は多いと聞くが、それでも地区予選じゃ滅多にお目にかかれない高等技術。
「ッサーッ!!」
レシーブエースを決めて稔里ちゃんが綺麗な高音の雄たけびを上げる。
9-9。大事なところで一気に同点に追い付く。
サーブ権が代わり、稔里ちゃんのサーブ。短いサインを出すと、おそらくナックルのロングサーブを出す。普通はバックハンドで止める場所だが村川さんは躊躇なく回り込んでドライブで返そうとする。だが、ぎりぎりまで長いサーブはエッジボールとなり弾まず、村川さんは空振りをする。
左手を上げて謝る稔里ちゃん。こういうときはエッジで得点をするとかえって集中力が途切れたりすることもあるが、全くそんな感じは見せない。
サーブ二本目、一本目と全く同じコースへのボール。レシーブの村川さんには一本目のエッジボールの残像が必ず残っている。やや反応の遅れたドライブはコースも甘いチャンスボールとなり、先輩が必殺の逆クロスドライブを相手の重なる位置へ打ち込み、11-9の逆転で二ゲーム目も連取する。
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