ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ

文字の大きさ
14 / 38
第2章 アイドル同好会!

河川敷練習、スタート!

しおりを挟む
 翌日。
 部室へ行く準備を終えた三人が玲に声を掛ける。

「れいちゃん、今日はどうする? わたしたちは今から部室行くけど」
「うん、アタシも行く」

 内心、声を掛けてもらえるか、昨日のことは夢だったんじゃないかと心配していた玲は、誘いを受けたことにほっとする。

 四人で部室へ向かう。さすがに廊下での勧誘の人数も減ってきていた。軽音同好会の姿もなかった。新入部員は見つかったのだろうか。
 部屋に入るとほどなくして紗夜香もやってきた。

「紗夜香先輩、今日はジャージを持ってきました」
「ふふ、早速ね。じゃ今日は河川敷でのランニングと、せっかくだから軽くダンス練習もしましょうか」
「はいっ。ダンス練習楽しみです!」

 佑香の返事に笑顔で返す紗夜香。あとの二人にも声を掛ける。

「亜紀ちゃんはどうする?」
「あー、ウチは運動系全般ダメなんで、タオルとドリンクもってマネージャーやりますわ」
「ふふ、たまには一緒に走ると気持ちいいかもしれないわよ。成瀬さんはどうする? 私と一緒に見学する?」

 話を振られた玲が、必死に自分の意思を伝えようとする。

「あの、アタシもジャージ、持ってきた、ので。一緒に練習、します……」
「わかったわ。じゃ三人は更衣室で着替えてきて。私と亜紀ちゃんは用意をして正門前で待っているから」
「わかりました」

 更衣室へ向かいながら、佑香が玲に話し掛ける。

「れいちゃんもジャージ持って来てたんだね」
「うん。昨日そういう話、してたから」

 少し照れながら答える玲。美空が話を続ける。

「ダンス練ってどんなことやるんだろう。楽しみだね」
「ワンツースリーフォー、ってやつじゃないかな。なんか本物のアイドルっぽいかも」

 佑香がそれっぽい動きをしながら答える。

「うん。本物のアイドルみたい……」
「じゃ早く着替えてさやか先輩のところへ行こう!」


 着替えた三人は、自転車のかごにCDラジカセを積んだ紗夜香、亜紀と合流し、歩いて数分の豊平川の川沿いまで出た。

「じゃ私達はここを下りた所で待ってるわね」
「わかりました、さやか先輩」

 紗夜香と亜紀が河川敷へ下りていくのを見て、三人が走る準備を始める。川沿いの歩道は、他の部活動の生徒もランニングをしていた。背中に学校名の入った部活独自のジャージに交じって走っている学ジャーの生徒は各部の新入生だろう。

「あの……」

 準備運動をしている二人に向かって玲が口を開く。

「アタシ、運動苦手だから。遅れたら二人で先に走って……」
「大丈夫だよ。わたしも短距離は得意だけど長距離全然ダメでランニングとか苦手だったから」
「うん。私も瞬発力系ばかり鍛えてたからランニングとか持久力系は苦手かな」

 そう佑香と美空に言われて少し安心する玲。

「それじゃ向こうの橋まで走って橋を渡って向こう岸を走ってここの橋を渡って一周しよう」

 佑香の言葉を合図に走り始める。三人で横に並ぶと歩行者の邪魔になるので、くの字型に佑香、美空、玲の順番で並んで走る。
 橋と橋の間は約五百メートル、橋の長さが約二百五十メートルあるため、一周するとおよそ千五百メートルというコースとなる。一周がちょうどよい距離なので、南女の体育会系部活ではよく利用されているコースである。

          ★

「あ、あれ私の中学だよ」
「へえ、本当にすぐ近くなんだね」

 ゆっくりと走りながら佑香が右側を指差し、それに美空が答える。二人ともランニングが苦手ということで、ジョギング程度の速さで時折話しながら走っていた。
 その二人を見ながら、玲が必死の形相で離れないようにしていた。

「(二人ともランニング苦手って言っていたのに……。運動部の人と自分だとこんなにも基礎体力が違うの?)」

 自分が運動を苦手なのは百も承知な玲だったが、それでも二人がランニングは苦手と言っていたので少しはついていけるかと淡い期待を持っていた。だが走り出してみると、二人との体力の差は歴然としていた。
 その後もなんとか食らいつこうとしていた玲だったが、橋の緩やかな上り坂で二人から遅れてしまう。
 玲が遅れだしたのに気付いた美空が歩を止める。

「ごめん玲ちゃん、速かった?」
「ハァ、……ハァ、ハァ。……置いてってくれて、ハァ、良かったのに……」

 肩で息をしながら玲が答える。

「そんなわけにいかないよ。ちょうど半分だし、少し休んでから、後半はもうちょっとゆっくり走ろう」
「そうだね」

 佑香の提案に、美空が同意する。玲は、自分のせいで二人に迷惑を掛けているという思いが強くなった。
 休憩後、前半よりもさらにゆっくりと走るようにする三人。玲もなんとか付いていけるようになったが、気持ちはどんどんと沈んでいた。

「(やっぱり自分がアイドルなんて無理なんじゃ……)」

 そこに、佑香の明るい声が掛けられる。

「さあ玲ちゃん、この橋を渡ったらゴールだよ。最後もうひと頑張りいこう!」
「うん……」

 佑香の笑顔に励まされ、なんとかゴールする玲。ほどなくして、河川敷から紗夜香と亜紀がドリンクを持って上がってきた。


「はい、三人ともお疲れ様でした。スポーツドリンク飲んで」
「ありがとうございます」

 紗夜香からスポーツドリンクを受け取る佑香と美空。

「成瀬さんもお疲れ様。まだ見学で良かったのよ?」
「いえ……、みんなと一緒に、やりたかったから……」
「ん、わかったわ。このあと河川敷でダンス練習と歌練習をするわ。せっかくだから良かったら見ていってね」

 そう言ってジャージの上着を玲に掛ける紗夜香。四月の札幌はまだ寒い、運動を急にやめると汗で身体が冷えきってしまう。


「昨日の、練習したんでしょ? 良かったら参加してね」
「え……、はい」

 紗夜香の言葉に、どきりとする玲。そんな玲の動揺に気付いたのかどうか、紗夜香は再び二人の方へ向かって行った。


「さあ、河川敷でダンス練習を始めましょうか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...