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第4章 アイドルとは、何ですか?
初アイドルライブ
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ライブ当日。
空は曇っているものの、雨になりそうな気配はない。
美空は、待ち合わせ場所の地下鉄すすきの駅改札前に立っていた。いわゆる東京で言うハチ公前やいけふくろう前といった、待ち合わせ場所の定番である。夜になると飲みに行く学生やサラリーマンでごった返す改札前も、昼のこの時間は比較的空いていた。
「おまたせー」
美空が時間を確認しようとスマートフォンを見ていると、後方から声を掛けられた。
「おはよう。あれ、佑香ちゃん地下鉄じゃなかったの?」
「うん、近いしチャリで来ちゃった」
「すすきのだとチャリ留めておく場所無いんじゃない?」
「ふっふっふ、そこは地元民、穴場を知っているのです」
そんな会話をしていると、改札口を通って玲がやってきた。
「おはよう、佑香、美空」
「ちょっ、れいちゃんその格好!」
玲の格好を見た佑香が、挨拶もせずに突っ込みを入れる。
「え……、へ、変かな……」
自分でも自覚があったらしく、玲が顔を赤くして俯く。
玲は、真っ黒の皮のジャケットにショートパンツといった服装で来ていた。入学初日に軽音同好会の会長が着ていた服を、さらに派手目にした感じである。モデル体型の玲が着ているので見事に着こなせてはいるのだが、すすきのという繁華街の駅前でも明らかに周りから浮いている。
「ライブに行く女の人ってこういう格好をしているイメージがあったから」
「うーん、たぶんそれはアイドルのライブじゃなくてビジュアル系バンドのライブだと思う」
佑香にそう言われ、自分の勘違いに益々顔を真っ赤にしてしまう玲。
「まあ服装なんていいじゃない。それより会場に向かおう」
美空にそう言われ、三人は会場のライブハウスを目指す。ライブハウスは、駅からそう離れてはいない、すすきのの繁華街にあるビルの地下にあった。
「へえ、建物の地下にライブハウスってあるんだ」
「ライブハウスは地下にあることが多いから、昔はライブ中心のアイドルを地下アイドルって呼んだ、ってネットに書いてあった」
「玲ちゃん詳しいね」
「ん……、ただ初めてのことって不安だったから色々調べただけ」
「あ、受付だよ。チケット、チケット、っと」
ビルの階段を下りると、狭いテーブルに、受付らしい男性と女性の二人組が座っていた。佑香が緊張しながら、美奈子に言われた通りに行動する。
「あ、あのっ、佐藤美奈子で予約の三名です」
受付の男性は、一瞬怖そうな外見だったが思ったよりも柔らかい物腰で対応をしてくれた。
「佐藤美奈子さんで三名様……、はい、確認できました。どうぞ」
「お一人様ドリンクチケット五百円になります」
隣の女性に言われ、動揺する佑香。
「え、ドリンクチケット……?」
「佑香、とりあえずアタシが出しておくから」
玲が佑香の耳元でそう囁くと、手元から素早く千五百円を出す。
「三人分でお願いします」
「はい、千五百円ちょうど頂きました。こちらをカウンターで渡してくださいね」
そう言って女性が三人に赤いチップのようなものを手渡す。佑香と美空は何が起きているのかよくわかっていなかったが、後ろから次のお客さんが続いていたのでとりあえず会場に入ることにする。
「入場チケットとは別に、ドリンクチケットを受付で買うのがライブハウスのルールだってネットに載ってたから」
中に入りながら玲が説明する。
「へえ、そんな制度があるんだ。れいちゃんいなかったらわたしすごい挙動不審者だったよ~」
「うん、玲ちゃん前もって調べてくれてありがとう」
二人に礼を言われて照れる玲。
「いや、アタシ自身が調べてないとすごい挙動不審になるから……」
「あ、そうだれいちゃん立て替えてくれてありがとう。今のうちに払うね」
「私も。これってどう使えばいいの?」
「えっと、会場内にカウンターがあって、そこで渡すとドリンクと交換してくれるはず」
「でもこういうところのドリンクってなんかカクテルとかビールとかお酒ばっかりのイメージ」
「大人の人でも飲めない人はいるし、ミネラルウォーターくらいあるんじゃないかな」
そんなことを話しながら開きっぱなしになっている会場のドアをくぐり中に入る三人。
「うわぁ……」
三人とも会場内の光景を見て一瞬固まる。会場は薄暗く、ステージまでは容易に歩いていくことができる距離だった。それどころか、ステージから一番遠い場所でもステージ上の人間の表情まで見える距離だ。ぎゅうぎゅう詰めで入っても、ホール全体に百人入るか入らないかという狭さだ。そんな狭いホールの中に、早めに着いたためか、入っている人はまばらだった。
「思ってたよりも狭いね」
「うん」
「アタシも市民会館やkitaraの小さい感じだと思ってた」
札幌市民会館も札幌コンサートホールkitaraも、合唱のコンクールでよく使われる会場である。海外の有名オーケストラも使用する、ともに着席で二千人強が入る大きさなので、このライブハウスとは比べるべくもない。
「なんか来てる人も常連、って感じの人ばっかりだね」
そう話す佑香。たしかに、フロアにいるのはほとんどが顔見知りらしく、入ってくると挨拶周りをした後に、数人で固まって談笑を始めている。
三人は自然と会場の最後方の隅に陣取った。開演まで特にすることもないのでドリンクチケットを交換しにいく。幸いノンアルコールもミネラルウォーターやオレンジジュースなどがあった。
「んー、にがい」
「だからやめた方がいいんじゃって……」
佑香だけはドリンク担当のお兄さんに「未成年が飲んでも大丈夫ですか」と確認した上でノンアルコールカクテルを頼んでみた。その結果がこの反応である。
「今日のはこの前私たちが出たときみたいに、何組もアイドルが出るんだね」
「うん。『対バン形式』って言ってたよね」
「色んなアイドルを見て勉強したいから、たくさんのアイドルが見られるのは嬉しいかな」
美空と玲が会話をしていると、開演時間が来たらしく、薄暗かったフロアの照明がさらに暗くなる。玲は自然と自分のファーストライブを思い出していた。ステージの幕の向こうには、あの時の自分のように出番を待っているアイドルがいるのだ。
★
ステージの幕が上がる。真っ暗なステージ上に、パッと照明が灯り、五人の少女を映し出す。ドラムスティックのカッカッカッカッというリズムと共に前奏が流れ出す。
「ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!」
センターのアイドルが掛け声を出して観客を煽る。それに合わせて、前から二列くらいの観客が五色のケミカルライトを振って跳び上がる。
最初のアイドルは、歌もダンスもそこまで上手だとは美空は思わなかった。歌なら玲の方が上手だし、個々のダンスなら自分達の方がキレがあると思った。
ただし、観客の盛り上げ方という点で美空は勉強になると感じた。自分のファーストライブは、歌って踊るということに集中していて、観客のことは全く見ていなかった。今歌っているアイドルは、観客に掛け声を要求したり、MCでも観客の声を拾ってトークをしたり、そういう部分でアイドルとしての経験値を感じた。
「お客さんがペンライト振って、本物のアイドルみたい」
玲がライブを見ながら隣の佑香に話し掛ける。
「うん。実はわたしも持ってきてるんだけど、振るならやっぱり前の方に行かなくちゃだね」
「佑香、ペンライト持ってるんだ」
「うん、前にアニソン歌手のミニライブに行くときに買って。でもプロの歌手のライブだと会場中のお客さんがみんなペンライト振ってる印象だったけど、ここだと前の方のお客さんだけなんだね」
最初のグループが終わり、拍手に送られながら退場する。それと共に前の方の観客もごそっと総入れ替えになる。おそらくお目当てのグループのファンが最前列に陣取っているのだろう。少しの間の後、すぐに二組目のライブがスタートする。
そんな感じで数組のグループのライブが終わったところで美空が口を開く。
「佑香ちゃん、玲ちゃん、見ていてどんな感想?」
「うーん、わたしはライマスみたいな大きいライブのイメージしかなかったから、実際はこうやって下積み? をしていくんだなぁって。でも、ダンスの振り付けとかはすごい勉強になってるよ」
「アタシは初ライブのとき観客が見えてなかったから……。みんな観客の盛り上げ方が上手だなって思う」
玲も同じことを考えていたんだなと思う美空。そのとき、玲が少し声を潜めて話し掛けてくる。
「ところで、美空、佑香。さっきから視線を感じない?」
「視線?」
「うん、なんか、ちらちらと見られている気がする」
「そりゃれいちゃんそんな生足出して皮ジャン着てたら目立つし」
「もう、それは言わないでよ……。アタシだけじゃなくて、アタシ達三人が見られている感じ」
「気のせいじゃないかな。私は特に何も感じないけど」
「あれじゃない? わたしたちみたいに女子だけ三人組が珍しいからじゃないかな。他の女性ファンの人は自分の推しグループの時は前に行って応援しているけど、わたしたちはずっと後ろで黙って見てるし」
玲はまだ納得がいっていない感じだったが、とりあえず佑香に言われた通りの理由なんだと思うようにする。
ライブも残り二組となり、気付けばフロア内の人口密度もかなり高まってきていた。最初は前から二列くらいだったペンライトを振っている観客も、前から四、五列くらいまで振るようになっていた。
「このグループが終わると最後が『ailes』だね」
「うん。後半になるに連れて歌も上手になってるから、楽しみ」
美空と玲が会話を交わす。ちょうど最後から二組目のグループがライブを終え、手を振りながら舞台袖へ戻っていく。
と同時に、フロア内に一気に人がなだれ込んできた。最後方にいた三人だが、目の前まで観客でいっぱいになる。
「え、な、なに!?」
佑香が驚いていると、ステージの幕が上がった。
空は曇っているものの、雨になりそうな気配はない。
美空は、待ち合わせ場所の地下鉄すすきの駅改札前に立っていた。いわゆる東京で言うハチ公前やいけふくろう前といった、待ち合わせ場所の定番である。夜になると飲みに行く学生やサラリーマンでごった返す改札前も、昼のこの時間は比較的空いていた。
「おまたせー」
美空が時間を確認しようとスマートフォンを見ていると、後方から声を掛けられた。
「おはよう。あれ、佑香ちゃん地下鉄じゃなかったの?」
「うん、近いしチャリで来ちゃった」
「すすきのだとチャリ留めておく場所無いんじゃない?」
「ふっふっふ、そこは地元民、穴場を知っているのです」
そんな会話をしていると、改札口を通って玲がやってきた。
「おはよう、佑香、美空」
「ちょっ、れいちゃんその格好!」
玲の格好を見た佑香が、挨拶もせずに突っ込みを入れる。
「え……、へ、変かな……」
自分でも自覚があったらしく、玲が顔を赤くして俯く。
玲は、真っ黒の皮のジャケットにショートパンツといった服装で来ていた。入学初日に軽音同好会の会長が着ていた服を、さらに派手目にした感じである。モデル体型の玲が着ているので見事に着こなせてはいるのだが、すすきのという繁華街の駅前でも明らかに周りから浮いている。
「ライブに行く女の人ってこういう格好をしているイメージがあったから」
「うーん、たぶんそれはアイドルのライブじゃなくてビジュアル系バンドのライブだと思う」
佑香にそう言われ、自分の勘違いに益々顔を真っ赤にしてしまう玲。
「まあ服装なんていいじゃない。それより会場に向かおう」
美空にそう言われ、三人は会場のライブハウスを目指す。ライブハウスは、駅からそう離れてはいない、すすきのの繁華街にあるビルの地下にあった。
「へえ、建物の地下にライブハウスってあるんだ」
「ライブハウスは地下にあることが多いから、昔はライブ中心のアイドルを地下アイドルって呼んだ、ってネットに書いてあった」
「玲ちゃん詳しいね」
「ん……、ただ初めてのことって不安だったから色々調べただけ」
「あ、受付だよ。チケット、チケット、っと」
ビルの階段を下りると、狭いテーブルに、受付らしい男性と女性の二人組が座っていた。佑香が緊張しながら、美奈子に言われた通りに行動する。
「あ、あのっ、佐藤美奈子で予約の三名です」
受付の男性は、一瞬怖そうな外見だったが思ったよりも柔らかい物腰で対応をしてくれた。
「佐藤美奈子さんで三名様……、はい、確認できました。どうぞ」
「お一人様ドリンクチケット五百円になります」
隣の女性に言われ、動揺する佑香。
「え、ドリンクチケット……?」
「佑香、とりあえずアタシが出しておくから」
玲が佑香の耳元でそう囁くと、手元から素早く千五百円を出す。
「三人分でお願いします」
「はい、千五百円ちょうど頂きました。こちらをカウンターで渡してくださいね」
そう言って女性が三人に赤いチップのようなものを手渡す。佑香と美空は何が起きているのかよくわかっていなかったが、後ろから次のお客さんが続いていたのでとりあえず会場に入ることにする。
「入場チケットとは別に、ドリンクチケットを受付で買うのがライブハウスのルールだってネットに載ってたから」
中に入りながら玲が説明する。
「へえ、そんな制度があるんだ。れいちゃんいなかったらわたしすごい挙動不審者だったよ~」
「うん、玲ちゃん前もって調べてくれてありがとう」
二人に礼を言われて照れる玲。
「いや、アタシ自身が調べてないとすごい挙動不審になるから……」
「あ、そうだれいちゃん立て替えてくれてありがとう。今のうちに払うね」
「私も。これってどう使えばいいの?」
「えっと、会場内にカウンターがあって、そこで渡すとドリンクと交換してくれるはず」
「でもこういうところのドリンクってなんかカクテルとかビールとかお酒ばっかりのイメージ」
「大人の人でも飲めない人はいるし、ミネラルウォーターくらいあるんじゃないかな」
そんなことを話しながら開きっぱなしになっている会場のドアをくぐり中に入る三人。
「うわぁ……」
三人とも会場内の光景を見て一瞬固まる。会場は薄暗く、ステージまでは容易に歩いていくことができる距離だった。それどころか、ステージから一番遠い場所でもステージ上の人間の表情まで見える距離だ。ぎゅうぎゅう詰めで入っても、ホール全体に百人入るか入らないかという狭さだ。そんな狭いホールの中に、早めに着いたためか、入っている人はまばらだった。
「思ってたよりも狭いね」
「うん」
「アタシも市民会館やkitaraの小さい感じだと思ってた」
札幌市民会館も札幌コンサートホールkitaraも、合唱のコンクールでよく使われる会場である。海外の有名オーケストラも使用する、ともに着席で二千人強が入る大きさなので、このライブハウスとは比べるべくもない。
「なんか来てる人も常連、って感じの人ばっかりだね」
そう話す佑香。たしかに、フロアにいるのはほとんどが顔見知りらしく、入ってくると挨拶周りをした後に、数人で固まって談笑を始めている。
三人は自然と会場の最後方の隅に陣取った。開演まで特にすることもないのでドリンクチケットを交換しにいく。幸いノンアルコールもミネラルウォーターやオレンジジュースなどがあった。
「んー、にがい」
「だからやめた方がいいんじゃって……」
佑香だけはドリンク担当のお兄さんに「未成年が飲んでも大丈夫ですか」と確認した上でノンアルコールカクテルを頼んでみた。その結果がこの反応である。
「今日のはこの前私たちが出たときみたいに、何組もアイドルが出るんだね」
「うん。『対バン形式』って言ってたよね」
「色んなアイドルを見て勉強したいから、たくさんのアイドルが見られるのは嬉しいかな」
美空と玲が会話をしていると、開演時間が来たらしく、薄暗かったフロアの照明がさらに暗くなる。玲は自然と自分のファーストライブを思い出していた。ステージの幕の向こうには、あの時の自分のように出番を待っているアイドルがいるのだ。
★
ステージの幕が上がる。真っ暗なステージ上に、パッと照明が灯り、五人の少女を映し出す。ドラムスティックのカッカッカッカッというリズムと共に前奏が流れ出す。
「ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!」
センターのアイドルが掛け声を出して観客を煽る。それに合わせて、前から二列くらいの観客が五色のケミカルライトを振って跳び上がる。
最初のアイドルは、歌もダンスもそこまで上手だとは美空は思わなかった。歌なら玲の方が上手だし、個々のダンスなら自分達の方がキレがあると思った。
ただし、観客の盛り上げ方という点で美空は勉強になると感じた。自分のファーストライブは、歌って踊るということに集中していて、観客のことは全く見ていなかった。今歌っているアイドルは、観客に掛け声を要求したり、MCでも観客の声を拾ってトークをしたり、そういう部分でアイドルとしての経験値を感じた。
「お客さんがペンライト振って、本物のアイドルみたい」
玲がライブを見ながら隣の佑香に話し掛ける。
「うん。実はわたしも持ってきてるんだけど、振るならやっぱり前の方に行かなくちゃだね」
「佑香、ペンライト持ってるんだ」
「うん、前にアニソン歌手のミニライブに行くときに買って。でもプロの歌手のライブだと会場中のお客さんがみんなペンライト振ってる印象だったけど、ここだと前の方のお客さんだけなんだね」
最初のグループが終わり、拍手に送られながら退場する。それと共に前の方の観客もごそっと総入れ替えになる。おそらくお目当てのグループのファンが最前列に陣取っているのだろう。少しの間の後、すぐに二組目のライブがスタートする。
そんな感じで数組のグループのライブが終わったところで美空が口を開く。
「佑香ちゃん、玲ちゃん、見ていてどんな感想?」
「うーん、わたしはライマスみたいな大きいライブのイメージしかなかったから、実際はこうやって下積み? をしていくんだなぁって。でも、ダンスの振り付けとかはすごい勉強になってるよ」
「アタシは初ライブのとき観客が見えてなかったから……。みんな観客の盛り上げ方が上手だなって思う」
玲も同じことを考えていたんだなと思う美空。そのとき、玲が少し声を潜めて話し掛けてくる。
「ところで、美空、佑香。さっきから視線を感じない?」
「視線?」
「うん、なんか、ちらちらと見られている気がする」
「そりゃれいちゃんそんな生足出して皮ジャン着てたら目立つし」
「もう、それは言わないでよ……。アタシだけじゃなくて、アタシ達三人が見られている感じ」
「気のせいじゃないかな。私は特に何も感じないけど」
「あれじゃない? わたしたちみたいに女子だけ三人組が珍しいからじゃないかな。他の女性ファンの人は自分の推しグループの時は前に行って応援しているけど、わたしたちはずっと後ろで黙って見てるし」
玲はまだ納得がいっていない感じだったが、とりあえず佑香に言われた通りの理由なんだと思うようにする。
ライブも残り二組となり、気付けばフロア内の人口密度もかなり高まってきていた。最初は前から二列くらいだったペンライトを振っている観客も、前から四、五列くらいまで振るようになっていた。
「このグループが終わると最後が『ailes』だね」
「うん。後半になるに連れて歌も上手になってるから、楽しみ」
美空と玲が会話を交わす。ちょうど最後から二組目のグループがライブを終え、手を振りながら舞台袖へ戻っていく。
と同時に、フロア内に一気に人がなだれ込んできた。最後方にいた三人だが、目の前まで観客でいっぱいになる。
「え、な、なに!?」
佑香が驚いていると、ステージの幕が上がった。
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