【完結】自己満足が世界を変える時、僕は……。

よーじろー

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八章

怒りを感じた時、僕は……~part3~

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 僕は一度大きく息を吐き、清十郎に向き直る。

「確かに僕はちっぽけで一人では何もできないような存在かもしれない」
「ん? いきなり何言ってんだ、こいつ」
「でも、僕には信頼できる仲間がいる。だけど、お前にはそれがない」
「追い詰められてついに飛んじまったか?」

 そう言って、清十郎が高笑いする。
 たった一つの笑い声が充満するその部屋で僕は視線を茉莉に向ける。

「安心して、茉莉。お兄さんはもう助けた。だから、もう茉莉がそいつらの言うことに従うことはないんだ」

 その一言で清十郎の顔色が一瞬にして変わる。
 大きく開けられた口を堅く閉じ、眉間に皺を寄せる。米神に浮かぶ血管の筋が細かく動くたびに、不思議と僕の心が高鳴っていく。

「だから、茉莉。本当のことを言ってほしい。君の本当の気持ちを」

 その言葉に茉莉の黒目が揺れる。

「それは……本当?」
「ああ、本当だ」

 茉莉の表情が色づく。モノクロだった肌に血色が戻り、鈍く濁っていた瞳に生気が戻る。それだけで僕の行為が認められているような気がして少し心が楽になる。

「そんなのはったりに決まってるだろ!」
「そう思うなら、聞いてみればいい」
「……おい!」

 清十郎が声を上げるとどこからともなく黒服の男が現れ、清十郎に耳打ちする。
 ほんの数秒で顔が見るからに険しくなっていく。

「なんですぐに言わなかった?」
「いえ、あの」

 バンッ!

 嫌な音が耳を劈いた後、黒服の男が仰向けに倒れた。
 何の躊躇もなく部下の心臓を撃ち抜いた。黒服は口を開けたまま指先一つ動かない。胸に空けられた穴と倒れた後に流れ出る血液が全てを物語っていた。倒れた黒服を端から出てきた三人の黒服が急いで運ぶ。

「言い訳するな、クソが。お前らも茉莉も全部俺の言う通りに動いてればいいんだよ。全部俺の駒なんだから」

 あの時の光景がフラシュバックする。
 先生がプールサイドで人工呼吸をしている。
 胸を一定のリズムで押しては口から息を吹き込むが、息を吹き返す様子は見られない。
 周りの子たちはそれを心配そうに見ている。
 僕はその輪から少し離れたところで呆然としていた。
 出来ると思っていた自分の無力さにただただ力なく立ち尽くすことしか出来なかった。
 その時と似ている。
 突然の出来事に僕はこの一連の光景を網膜に写すことしか出来ず、事の成り行きを呆然と見守る傍観者だった。
 出来ることならば敵味方に関係なく誰も傷つかず茉莉を奪還したかった。
 勝負の世界に身を置いている雪乃あたりに言うとおそらく『甘い! 甘すぎる!』とか何とか言いながら竹刀を振り回すのだろう。
 正座しながら説教をされている僕が容易に浮かぶ。
 しかし、それでも人が傷つくこと、ましてや死ぬ姿はもう見たくなかった。
 あんな辛い経験はもう二度としたくなかったのだ。

「……どうやら本当らしいが、それがどうした。状況は何も変わってないぞ」

 そう言いながら拳銃を茉莉の頭に向ける。
 先程は茉莉を自分の所有物にしようとしていたが、そのような余裕はもうない。
 自分の物にならないくらいなら壊してしまうおうという思考に至ったようだ。
 こうなる前に救出できるのがベストだったのだが、こうなるかもしれないと予想はしていた。
 それが功を奏したのか、意外と驚きは少ない。
 むしろ今日で一番落ち着いていると言っても過言ではない。
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