【完結】自己満足が世界を変える時、僕は……。

よーじろー

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八章

怒りを感じた時、僕は……~part4~

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 改めて清十郎を見る。
 権力や腕力を使って強引に人を自分の物にしようとする。
 仲間を仲間と思わず、仲間の死など路傍の石程度にしか考えない。
 おそらく身内であっても心から信じるということをしない、いや出来ないのだろう。
 
 ――本当に救いようのない奴だ。呆れを通り越して哀れになってくる。
 
 そう思うも今や清十郎は一つ扱いを間違えれば爆発してしまう地雷と化している。
 人の命を命とすら思っていない奴だ。
 僕が変な動きを見せようものなら躊躇なく引き金を引く。
 
 ――どのように処理したものか……。
 
 緊張感は最高潮に達していた。
 そんな時、茉莉と目が合う。
 ガラス球のような透明な瞳の奥に映っていたのは赤く揺らめく炎だった。
 綺麗に光るそれは僕に『引くな!』『そのまま行け!』と訴えていた。
 それに従い、僕は茉莉に訊く。

「茉莉、僕にどうしてほしい?」
「……たす……」

 顔を俯かせた茉莉から小さく声が聞こえてくる。

「茉莉、それ以上、喋ったら撃つぞ!」

 清十郎の脅しは本物だろう。
 だが、茉莉は止まらない。

「普通の恋をして普通に結婚して普通に子供を作って普通の家族を作りたい! 好きなプロレスをもっと観たい! 医者になって一人でも多くの人を救いたい! まだまだまだまだやりたいこと、いーっぱいある! だから」
 
 顔を真っ赤にしながら叫ぶ。その声は僕の心に刺さる。
 そして思い切り息を吸い、今一度、中に溜まった全てを吐き出す。

「助けて! むっちゃん!」

 僕が動くのにこれ以上の動機は必要なかった。
 呆気に取られている清十郎との距離を一気に詰める。
 清十郎がこちらに気づき銃口をこちらに向けるが、それと同時に茉莉が清十郎の腹を思い切り殴り、手刀で持っていた拳銃を叩き落とす。
 そして、そのまま清十郎の手を後ろに回し身動きが取れないよう背中を足で押さえつける。
 その流れは洗練されており、まさに達人のそれだった。
 ただ考えなしに飛び出した自分が恥ずかしい。

「……茉莉、凄いね」
「これですか。前に祖父……ああ、この場合、血の繋がった祖父という意味ではなくて、香椎組の先代、つまり香椎貞臣の父にあたる人ですね、その人に習ったことがありまして。でもその人、教えるのだけは上手かったんですけど、ただの激弱エロ爺だったんで、稽古と称してめちゃくちゃ殴って、あばらと腕の骨の何本かを、こう、ぼきっと」
「分かった、分かった。もう大丈夫だよ、そこまで説明しなくても」

 こんなところでも茉莉節は健在だった。
 ほっと胸を撫でおろすが、それも束の間、地面に伏せられた清十郎が突然笑い出す。

「ん? どうして笑う?」
「かっかっか……お前ら、詰めが甘いって言われたことないか?」

 その瞬間、先程黒服が現れたところも含めた前後左右から黒服の屈強な男たちがぞろぞろと部屋に入ってきた。
 ざっと数えても二〇、いや三〇人はいる。
 その黒服集団が僕と茉莉を囲み拳銃を構える。
 一人であればどうにかできたものの、この数となると到底僕と茉莉の二人でどうにかできるような数ではない。
 僕と茉莉はおとなしく両手を挙げる。

「形勢逆転だな」

 伏せられていた清十郎が起き上がり、シャツの裾に付いた埃を払う。
 三六〇度拳銃に囲まれたこの状況で、周りのことを一切考えず自分の感情を最優先させて行動する司令官。
 しかも、その司令官は今、非常に機嫌が悪いというおまけ付き。
 よく考えなくても分かる。
 これが絶体絶命というやつだ。
 茉莉の腰に手を回し、自分の方に寄せる。
 茉莉が抵抗するが、単純な力だけで勝てるわけもなく、茉莉の身体は清十郎に引き寄せられる。

「ここでお前を殺してやってもいいんだが、俺は慈悲深いからな。特別に選ばせてやろう」

 勝ち誇ったような顔を作り、人差し指を立てる。

「ひとつは死んだ方がましになるほどの苦痛を味わって死ぬか」

 次に中指を立てる。

「それとも潔く自分で命を絶つかだ。まあ、俺としては後者がおすすめだが、さあ、どうする?」

 気持ち悪い笑みを浮かべながら選択を迫る。
 茉莉は丸太のような腕で身体を固められ身動きが取れない。
 先程のような奇襲が二度も通じるような相手ではないし、第一敵の死角が全くない。
 これでは何をすることもできない。
 八方塞がりもいいところだ。
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