誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第二章

第十六話

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 扉を開け部屋に入る。
 そこは天井が高く開放的な空間だったが、予想以上にシンプルな作りだった。
 入って右にテーブルを挟んで高そうなソファーが二つ。
 真ん中から左に等間隔に並べられた黒のデスクと椅子が三組。
 その一つに先ほど玄関で会った執事が姿勢よく座っている。
 そして、奥に他とは基調の違うテーブルと椅子が一組。明らかに高級そうな雰囲気を醸し出している。
 
 ……それだけである。
 
 壁と床は真っ白で何の装飾も施されていない。
 また、ひとつのデスクに完全装備のデスクトップパソコンがある以外、気持ちばかりの書類が端に積まれてはいるが、それも大した量ではない。
 
 …………それだけである。
 
 観葉植物やカレンダー、本棚に絵画といった装飾品は全くない。
 余計な物は一切ない。
 機能的といえば聞こえはいいが、ややもすれば殺伐とした空間である。

「あっ、お姉ちゃん。おかー」

 ソファーに寝転んでスマホをいじっている金髪のギャルが一人。スカートなのに足をばたばたさせているため、見たくなくてもピンクの縞パンが見え隠れしている。

「おい。真冬まふゆ、みっともないぞ」

 歩みを止めることなく進み、あかりが一際奥で輝く立派な椅子に座る。

「えー、別にいいじゃん。どうせメスしかいないんだし」

 真冬と呼ばれた金髪ギャルが笑顔のままばた足を止めることなく答える。
 俺がいることに気づいた様子は見られないが、もし仮に意識してやっているのだとしたら質は物凄く悪い……まあ、どちらにせよ、目のやり場に困ることこの上ないので今すぐにでもやめていただきたい限りである。

「お前ももう大人なんだからちょっとは自覚を持て。だいたい」
「あー、もー、うるさいな。お姉ちゃんだって」

 金髪ギャルはそう言いつつも笑顔を絶やすことはない。
 言葉と表情にギャップがあるためどう思っているのか分かりにくいが、おそらく不機嫌なのだろう。
 気怠そうにむくっと身体を起こし、こちらに視線を向ける。
 そこで初めて目が合った。
 あかりが美人の部類であるとすればこの子は可愛い部類に入るだろう。
 二人とも整った顔立ちであることに変わりはなかったが、違うところがあれば胸部の大きさであろうか……と、自然と目がいってしまうのは男の性である。

「お、お、お、お……」
「…………?」
「おとこ!」

 突如として悲鳴にも似た叫び声が部屋中に鳴り響く。
 しかし、それは恐怖からくるものではなく、間違いなく歓喜からくるものだった。
 目はきらきらと輝き鼻息は音が聞こえてきそうなほど荒い。
 先ほどの綿あめのような雰囲気は消え去り、今は獲物を狩りに来た猟師のそれである。
 飛びつかんばかりの勢いで迫ってくる金髪ギャル。
 その姿にさすがの俺も狂気を感じずにはいられなかった。

「……っち、あの馬鹿!」

 あかりが止めようとこちらに近づいてくるが、時すでに遅し。

「君、どっから来たの⁉ 趣味は何⁉ 今度、僕と食事でも行かない⁉ まあ、君が望むなら泊まりでもいっけど……ねぇ、そうしよ⁉ ねぇ、ねぇ、ねぇ⁉」

 金髪ギャルが胸の谷間に俺の腕を滑り込ませ擦り付ける。
 見た目以上の量感、ぷにぷにとあたる感触の柔らかさと凄まじい勢いに押され、俺はその場から動くことも口を動かすこともできなかった。
 そんな俺を尻目にあかりが心底呆れながら、理性を欠いた金髪ギャルを俺から引き剥がす。

「だから言っただろう。私の傍から離れるな、と」

 なるほど、今になってようやくあかりが口を酸っぱくして言う理由が分かった。
 悪い人ではなさそうだが、間違いなく面倒なことになる。

 ――しかし、どうだろうか。

 最初こそ面を食らったし些か積極的すぎるが、こんな可愛い女性になら別に少し気を付ければ大丈夫じゃないか、そんな警戒することか。
 そう思いながら金髪ギャルの体を抑えるあかりとそれを振り解こうと暴れる金髪ギャルを見ていたが、それが俺の間違いであったと知らされるのは、そう遠くない未来だった。
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