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第1章 アリダン大火災
4.無き痕跡
しおりを挟む窓越しに映る景色は、いつも静かで、今までと変わらない風景が淀んで浮かんでいた。四年前のアリダン国であった、あの火災から、私たちの人生は大きく変わってしまった。
「イヴちゃん、だっけ?彼女はまだ見つからないのかい?」
「えぇ、彼女がいた痕跡さえ、まだ…」
本当に、存在していなかったのではないか。と思わせるように、四年前、彼女は姿を消した。ミアナが孤児院に駆けつけた時には、先生の息はなかった。そして、イヴの部屋の前に倒れたアダムを発見した。それだけだった。
「君は、内心喜んでいるんじゃないのかい?」
「そんなことないわ!」
「だって、彼女がいなくなったことで、君は愛するアダム君の隣に居られるようになったんじゃないか?」
男の、人をからかうような瞳に、ミアナは激しくイラついた。下唇を引き裂かんとばかりに食いしばる。
「アダムは苦しんでるの。あの火災から全てが変わってしまった…生きることにも、苦労して、やっとここまできたの。あなたには何も、わからないわ」
「……で、君はこんな仕事を始めたんだ?」
ふと現実に戻されたような落胆。不気味なライトに照らされたダブルベッド。汚れたのは、心だけじゃなかった。
「さぁ、こっちにおいで。サービスの時間だろ?」
レパートはそう言って、私を手招いた。
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