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金髪婦人警官
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留置所に入れられた涼介は金髪の婦人警官から尋問を受けていた。涼介は白い布の服を着せられている。
「ミスター涼介、いいわね。私からの質問には素直に答えること。もし、嘘なんかついたら不利になるわよ」
「……」
「返事は?」
「はい」
「調べたところ、薬物反応も出てないし、精神異常でも、変態という訳でも無いようね。どうしてあんな所に全裸でいたのかしら」
「服がなかったからです」
婦人警官はメモを取りながら質問を続けた。
「じゃあ何故、服がなかったの?」
「気がついた時には裸で草原の上にいました」
「いったいどこから来たの? あなたのことを色々調べたけれもどこにも記録がないの」
「日本です」
「日本? 聞いたことないわね」
「……」ここは何もかも違う世界なんだ。涼介は下手に元いた世界のことを喋らない方がいいかもしれないと思った。とんでもない好奇の目に晒さられるかもしれない。それからは婦人警官の質問に上手く答えられないフリをした。
「もしかして、記憶喪失の類いなのかしら。このままじゃらちがあかないわ」
「早く刑務所にでも入れてください」
「ふふふ。これくらいの事で刑務所に入れる訳には行かないわ。悪くて執行猶予一年てところかしら」
「知り合いもいないし、やることも無いし、刑務所でいいんですけど」
「幸いこのオーランス国は難民を快く受け入れてるの。難民として登録すればいいわ。ちゃんと職を身につければ普通に生活できるし」
「……」
「ただし、財産とか経験値とか何もかも失ってゼロからのスタートになるけどね」
涼介は何もかにも億劫になっていたのでそんな話はどうでもよかった。何をする気にもなれなかったし、何も信じることが出来なかった。何かを努力しても、誰かを信じても裏切られれば全て終わりだ。そんな世の中で何をする必要があるだろう。サッサと死んでしまえばいい。そんなことを思っていた。
その時、部屋の外からとても美味しそうないい匂いが漂ってきて、涼介のお腹が刺激されて
グウー
と大きく鳴った。
「そうね。お腹空いてるわよね?」
「……」
「もうお昼時だし、何か食べる?」
「……」
涼介はお金もないのに何か食べれば弱みを握られてしまうのではないかと警戒して何も答えなかった。
婦人警官は、牛丼を2つ注文して1つを涼介の前に差し出した。涼介は食べずにいたが、婦人警官は気にせず食べ始めた。柔らかそうな肉とご飯が婦人警官の口に運ばれると、涼介の口の中では唾液がじゅわりと分泌された。その唾を、音がしないように恐る恐る飲み込んだ。涼介の我慢は限界に達していたが、箸に手をつけることは無かった。
婦人警官は食べ終わると席を外した。
人がいなくなったからと言って食べる訳にはいかなかった。プライドもあるが、空腹のまま栄養失調で死んでしまいたいとさえ思っていた。
しかし、美味しそうな匂いが涼介の胃を刺激する。胃液が食いものの入ってない胃に溢れ、痛みを感じた。
涼介は頭の中で自問自答した。
食べるということは生きるということである。生きるということは面倒な事が起こるということである。騙され、裏切られ、食い物にされる。
それでもいいのか。
しかし、涼介の意地は食欲には勝てなかった。
一口だけ食べたくなった。
そして一口食べると、その美味しさに二口、三口と止まらなくなった。食欲を満たすという快感の洪水に押し流されていった。気がつけば涙を流しながらどんぶりを間食してしまっていた。
婦人警官が部屋に戻ってきた時には涼介は満腹になり、一気に血糖値が上がったせいで眠気にみまわれて、涙が乾かぬうちに机に突っ伏して寝てしまっていた。
「ミスター涼介、いいわね。私からの質問には素直に答えること。もし、嘘なんかついたら不利になるわよ」
「……」
「返事は?」
「はい」
「調べたところ、薬物反応も出てないし、精神異常でも、変態という訳でも無いようね。どうしてあんな所に全裸でいたのかしら」
「服がなかったからです」
婦人警官はメモを取りながら質問を続けた。
「じゃあ何故、服がなかったの?」
「気がついた時には裸で草原の上にいました」
「いったいどこから来たの? あなたのことを色々調べたけれもどこにも記録がないの」
「日本です」
「日本? 聞いたことないわね」
「……」ここは何もかも違う世界なんだ。涼介は下手に元いた世界のことを喋らない方がいいかもしれないと思った。とんでもない好奇の目に晒さられるかもしれない。それからは婦人警官の質問に上手く答えられないフリをした。
「もしかして、記憶喪失の類いなのかしら。このままじゃらちがあかないわ」
「早く刑務所にでも入れてください」
「ふふふ。これくらいの事で刑務所に入れる訳には行かないわ。悪くて執行猶予一年てところかしら」
「知り合いもいないし、やることも無いし、刑務所でいいんですけど」
「幸いこのオーランス国は難民を快く受け入れてるの。難民として登録すればいいわ。ちゃんと職を身につければ普通に生活できるし」
「……」
「ただし、財産とか経験値とか何もかも失ってゼロからのスタートになるけどね」
涼介は何もかにも億劫になっていたのでそんな話はどうでもよかった。何をする気にもなれなかったし、何も信じることが出来なかった。何かを努力しても、誰かを信じても裏切られれば全て終わりだ。そんな世の中で何をする必要があるだろう。サッサと死んでしまえばいい。そんなことを思っていた。
その時、部屋の外からとても美味しそうないい匂いが漂ってきて、涼介のお腹が刺激されて
グウー
と大きく鳴った。
「そうね。お腹空いてるわよね?」
「……」
「もうお昼時だし、何か食べる?」
「……」
涼介はお金もないのに何か食べれば弱みを握られてしまうのではないかと警戒して何も答えなかった。
婦人警官は、牛丼を2つ注文して1つを涼介の前に差し出した。涼介は食べずにいたが、婦人警官は気にせず食べ始めた。柔らかそうな肉とご飯が婦人警官の口に運ばれると、涼介の口の中では唾液がじゅわりと分泌された。その唾を、音がしないように恐る恐る飲み込んだ。涼介の我慢は限界に達していたが、箸に手をつけることは無かった。
婦人警官は食べ終わると席を外した。
人がいなくなったからと言って食べる訳にはいかなかった。プライドもあるが、空腹のまま栄養失調で死んでしまいたいとさえ思っていた。
しかし、美味しそうな匂いが涼介の胃を刺激する。胃液が食いものの入ってない胃に溢れ、痛みを感じた。
涼介は頭の中で自問自答した。
食べるということは生きるということである。生きるということは面倒な事が起こるということである。騙され、裏切られ、食い物にされる。
それでもいいのか。
しかし、涼介の意地は食欲には勝てなかった。
一口だけ食べたくなった。
そして一口食べると、その美味しさに二口、三口と止まらなくなった。食欲を満たすという快感の洪水に押し流されていった。気がつけば涙を流しながらどんぶりを間食してしまっていた。
婦人警官が部屋に戻ってきた時には涼介は満腹になり、一気に血糖値が上がったせいで眠気にみまわれて、涙が乾かぬうちに机に突っ伏して寝てしまっていた。
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