魂伝子 ~ 情けはモンスターの為にあらず~

MJ

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掃除クエスト

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涼介の端末に書かれたクエストは掃除とモンスター討伐だけだった。職業なしで経験値も少ないと選べるクエストはこの2つだけらしい。

装備なしでモンスター討伐に向かうのは余りにも無謀のような気がしたので、そちらは検討せずに、掃除を選択した。

掃除のカテゴリーの中には公園や海岸、道路などのゴミ拾いがあり、とりあえずクエストを一度クリアしてみようと一番近い公園の掃除を選択した。

地図にある公園に歩いていき、10分ほどゴミや落ち葉を拾ってゴミ箱に捨てると端末からタラタラッタラーと音楽が流れてクエストがクリアされたことが分かった。

報酬は1ブロンズだった。
早速、パン屋さんに行ってみたが、買えるのは小さな硬いパン1つだけだった。

何かすれば報酬が貰えることは有難かったが、涼介は何か違和感を感じていた。何かに操られてそうせざるをえないような束縛感のようなものである。悪いことをしている訳では無いのだが、何となくしっくりこないような直感がする。しかし、今は地道にクエストをこなして食いつないで行くしかない。

涼介はしばらく公園で野宿をしながら清掃を続けた。ある時には遠くまで歩いていき、海岸を掃除したりした。その方が報酬が多かったからだ。その際、大きな夕日が水平線上に見えた時にはとても綺麗で感動した。

気楽なホームレスの生活も悪くはないなと思っていたが、ひどい雨が降った時には家が恋しくなった。幸せそうな家族を見ると憧れずにはいられなかった。いつしか、いい職業に付けたら家を買うことが出来るのだろうか。涼介はもう少しいい生活がしてみたいという欲が出てきていた。

ある日端末をいじっていると、基礎パラメーターという項目があることに気づいた。ここには体力、知力、技術力、芸術力、感性、優しさ、コミュニケーション等あらゆる能力が数値化されている。このパラメーターはさらに細かく分類されており、例えば体力の中には走力、腕力、柔軟性、スタミナ等の項目に別れていた。これらの数値を観察していると、涼介がなにか行動する度に増えたり減ったりしていることが分かってきた。遠い場所まで歩いて掃除に行くのは時間の無駄だと思っていたが、長い時間歩くと体力が向上し、感性や、知力も向上していることがわかった。こういった数値化されることに関しては涼介は得意であった。何をすればどの能力が伸びるかがわかりやすい。努力をすれば数値となって報われる。涼介は能力をあげることに夢中になった。

ある日、端末からタラタラッタラーと音楽がなり、職業欄に配達という項目が増えた。そして、新たに新聞配達というクエストが現れるようになった。新聞配達は朝早く起きなければならなかったが、一つ配る度に1ブロンズの報酬が貰えたので掃除よりも時間効率がよかった。働けば働くほど能力が上がり、報酬も増えた。しかし、当然お腹も早くすくようになった。

節約のために硬い小さなパンばかり食べていたら基礎能力値があまり上がらなくなった。そしてある日端末から警告音が鳴った。

タンパク質不足

と表示されていた。
さすがに炭水化物ばかり取っていても体が持たないようだ。動いた分栄養のあるものを食べないといけない。お店の人に安くてタンパク質の取れるものを尋ねると、
「それならば卵がいい」と教えてくれた。卵は5ブロンズもしたが、ひとつ買ってみた。調理器具も何も無いので割って生のまま口に放り込んだ。ズルズルとした白身を飲み込んでいると口の中で黄身が割れた。するととても濃厚でまろやかな味が口の中に広がった。足りなかった栄養素が体の中に染み込んでいくようであった。涼介は物足りなさを感じたが、一つだけで我慢した。

お金が足りない。

何とかお金を手に入れなければ生活もままならない。

ふと、端末に表示されているモンスター討伐が目に入った。
クエストは一番弱いスライムを倒すだけで1シルバーの報酬が貰える。1シルバーは1ブロンズの100倍の価値があるのだ。これだけあればハンバーガーが買える。

端末を使って倒し方を調べたところ、素手では難しいが初心者でも棍棒を使って3回殴れば倒せることが分かった。

涼介は山の中を歩いて手頃な木の棒を探してきた。ちょうど手に持てるような形をしていてスライムを殴るにはちょうど良さそうだった。

涼介はその棒を持って初めて村の外に出てみた。
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