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神石2
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神石高原町の風呂屋に無料チケットで行こうと決めた日曜日の朝はゆっくり起きた。つまらないテレビ番組を観ながらつまらない番組構成やつまらない出演者のコメントに文句を言いながらだらだらと時間を過ごしているとあっという間に昼前になった。外でご飯を食べるとお金がかかって勿体ないので家で軽くご飯を済ませてから神石高原町に向けて車で出発した。高速道路を使うか下道を使う2パターンあったが、ゆっくりと下道を使っていくことにした。途中気になる場所があったら車を止めてジョギングか散歩でもしようなんて呑気に考えていた。時間はたっぷりとある。
6月も半ばだとというのに今年は湿気もなくて気温も低く涼しくて気持ちがいい。ただ、毛虫が異常発生して路面を歩いていた。空は晴れてはいたが所々に重くなりそうな白くて濃い雲が動いていた。こんな風に大した用事もないのに気ままに出かけて事故でも起こしたら嫌だなと心の隅で思った。道路の左側にあるコンビニで2ℓの水と500mlのスポーツドリンクを買った。車のナビ通り走っていると府中の街中に出て、そこからまた遠ざかった。店が少なくなり車の数が減った。地元のスーパーやホームセンターが郊外の道路沿いに現れ、それを過ぎるといよいよ本格的な田舎道に入った。田んぼ、田んぼ、田んぼ、民家、というような日本の田舎のどこにでもあるような風景が山間に見られる。すると、土砂災害の復旧工事のために日曜日以外は通行止めという大きな看板が立てかけてあった。迂回ルートを通行してくださいと矢印は左の道を指している。ナビも左にいけという。「日曜日以外」という言葉に引っかかりながらも(今日は日曜日だ)、看板とナビが指し示す左側に舵を切る。この時なんだか嫌な予感がしたのだが、狭い坂道をどんどんと上がっていく。ナビがどちらの道を示しているのか分からないほどの狭い路地の三叉路でおじさんが草刈りをしていた。おじさんが草刈りをやめない限り、通れない方向が恐らくナビの示している道である。ただ、自信はない。もしも間違えて登っていったら引き返してこないといけない羽目になる。そうなると恥ずかしい目にあうがとにかく左のような気がする。しばらく待っているとおじさんが草刈りの機械を止めてくれた。おじさんにお辞儀をしながら通り過ぎる。ここで道を訪ねようかと一瞬よぎったが、自分が神石高原町のどこにどうやって行こうとしているのかいまいち分かっていないので聞くのも面倒だなと思いそのまま素通りした。そこから道はさらに厳しくなった。乗用車がギリギリ通れるくらいの道幅で、右側は山、左側は崖になっていて下には川が流れている。左側に脱輪してしまったら川に転落するだろう。一気に危機感が増してハンドルを握る手に汗が滲む。カーレースのゲームに比べて危機感が半端ないなと思う。ゲームは所詮、崖から落ちても何度もやり直せれるが、本物は落ちたら終わりだ。そう考えるとゲームなんてつまらない気がしてきた。
狭い道を走っていると自動車の走る道には大きくわけて5種類に分類出来ると思った。高速道路のような自動車専用道路、片道一車線の走りやすい道、車がすれ違うことが出来る広さのある道、所々ですれ違う事が出来る道、そして全くすれ違うことの出来ない道。今まさにすれ違うことができない道をずんずんと進んでいる。こういった道を進んでいってもし、運悪く対向車と巡り会ったら、この狭い道をすれ違うことのできる所までバックで戻らなければならない。そんな恐怖と戦いながら狭い道をひたすら進んでいく。ここではペットボトルの水を飲みながら運転するのは止めておこう。万が一ハンドルさばきを誤って川に転落したらシャレにならない。そんなふうに緊張しながらどこまで続くのか分からない狭い道を走り続けて5分、いや実際にはもっと短い間だったかもしれないが、とにかく狭い道を脱することが出来た。
神石3に続く
6月も半ばだとというのに今年は湿気もなくて気温も低く涼しくて気持ちがいい。ただ、毛虫が異常発生して路面を歩いていた。空は晴れてはいたが所々に重くなりそうな白くて濃い雲が動いていた。こんな風に大した用事もないのに気ままに出かけて事故でも起こしたら嫌だなと心の隅で思った。道路の左側にあるコンビニで2ℓの水と500mlのスポーツドリンクを買った。車のナビ通り走っていると府中の街中に出て、そこからまた遠ざかった。店が少なくなり車の数が減った。地元のスーパーやホームセンターが郊外の道路沿いに現れ、それを過ぎるといよいよ本格的な田舎道に入った。田んぼ、田んぼ、田んぼ、民家、というような日本の田舎のどこにでもあるような風景が山間に見られる。すると、土砂災害の復旧工事のために日曜日以外は通行止めという大きな看板が立てかけてあった。迂回ルートを通行してくださいと矢印は左の道を指している。ナビも左にいけという。「日曜日以外」という言葉に引っかかりながらも(今日は日曜日だ)、看板とナビが指し示す左側に舵を切る。この時なんだか嫌な予感がしたのだが、狭い坂道をどんどんと上がっていく。ナビがどちらの道を示しているのか分からないほどの狭い路地の三叉路でおじさんが草刈りをしていた。おじさんが草刈りをやめない限り、通れない方向が恐らくナビの示している道である。ただ、自信はない。もしも間違えて登っていったら引き返してこないといけない羽目になる。そうなると恥ずかしい目にあうがとにかく左のような気がする。しばらく待っているとおじさんが草刈りの機械を止めてくれた。おじさんにお辞儀をしながら通り過ぎる。ここで道を訪ねようかと一瞬よぎったが、自分が神石高原町のどこにどうやって行こうとしているのかいまいち分かっていないので聞くのも面倒だなと思いそのまま素通りした。そこから道はさらに厳しくなった。乗用車がギリギリ通れるくらいの道幅で、右側は山、左側は崖になっていて下には川が流れている。左側に脱輪してしまったら川に転落するだろう。一気に危機感が増してハンドルを握る手に汗が滲む。カーレースのゲームに比べて危機感が半端ないなと思う。ゲームは所詮、崖から落ちても何度もやり直せれるが、本物は落ちたら終わりだ。そう考えるとゲームなんてつまらない気がしてきた。
狭い道を走っていると自動車の走る道には大きくわけて5種類に分類出来ると思った。高速道路のような自動車専用道路、片道一車線の走りやすい道、車がすれ違うことが出来る広さのある道、所々ですれ違う事が出来る道、そして全くすれ違うことの出来ない道。今まさにすれ違うことができない道をずんずんと進んでいる。こういった道を進んでいってもし、運悪く対向車と巡り会ったら、この狭い道をすれ違うことのできる所までバックで戻らなければならない。そんな恐怖と戦いながら狭い道をひたすら進んでいく。ここではペットボトルの水を飲みながら運転するのは止めておこう。万が一ハンドルさばきを誤って川に転落したらシャレにならない。そんなふうに緊張しながらどこまで続くのか分からない狭い道を走り続けて5分、いや実際にはもっと短い間だったかもしれないが、とにかく狭い道を脱することが出来た。
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