神石

MJ

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神石3

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所々で車がすれ違えるくらいの広さの道路に出てくると安心感からか尿意を催した。

どこかで車を止めて立ちションでもするしかないな。

そう思いながら、すれ違える十分な道幅を見つけて車を止めた。車外に出ると車内とは違った自然が広がっていた。優しい湿気に包まれた空気が充満している。車の扉には黒いシャクトリムシのようないきものが付いていた。どこかから偶然こぼれ落ちてきたに違いない。上を見上げると木が生い茂っており、枝の間から所々光が差し込んでいる。ここにはこんな虫が沢山いるに違いない。崖の下からは川のせせらぎが聞こえてくる。道路脇の木の幹にはしっかりとした苔が生えている。人の気配がしない。おそらく立ちションをしても人に見られることはないだろう。この数分間、人と一度もすれ違っていない。川で放尿しようと思い崖を少し下って行った。そういえば、昔、カナダの教会の裏の木の下で立ちションをした事を思い出した。
あの時も今日と同じように近くにトイレがなくて我慢ができなくなった。カナダでは珍しく土砂降りの雨が降っていた。こんな所で立ちションをしたらバチが当たるのではないかと思うような神聖な場所に思えたが、近くにトイレがなくてやむなく放尿した。バチが当たったのかどうか分からないが、その日のサッカーの試合で膝に怪我をして当分の間治らなかった。
今日はそれに比べれば自然の中に 方尿をするわけなのでバチは当たらないだろうと考えた。しかし、悪いことをする時には悪いことが起こる予感がする。マムシが現れて噛まれたりしたら大変だ。わざわざ草木の茂った中を進んで川まで下るのはやめて崖の途中で放尿することにした。急いで方尿を終えようとするがこういう時に限ってなかなか終わらない。
なんとか無事に用を済ませて車に戻るとまだシャクトリムシがドアにへばりついていた。払い除けようかどうしようか迷ったが、旅は道ずれとばかりにそのままにして車に乗り込んだ。この虫が自力では到底行けないような場所に移動してそこで一生を終えるのも面白いかもしれない。俺の車に落ちてきたのが運命。このままつけて走ろう。

山道は峠を超えて下り坂になってきた。慣れない道なので慎重に運転していると突如前方のカーブから軽四が突っ込んできた。俺は咄嗟に急ブレーキを踏んだ。助手席に置いてあったペットボトルが慣性の法則でダッシュボードにぶつかり、大きな音を立てて下に落ちた。ぬかるんだ土や湿った葉っぱの上でタイヤが少しスリップしてから止まる。すんでの所で車はぶつからなかったが、もしもこちらが相手と同じようにスピードを出していたら確実にぶつかっていた。ノロノロ運転をしていて良かった。しかし、山道で初めて出くわした車に衝突しそうになるとは恐ろしい。相手はこの道に慣れた地元の高齢者で、スピードを出しすぎていたと思ったのか、苦笑いをしながら頭を下げて通り過ぎて行った。俺もなんとなく苦笑いしてやり過ごしたが、ぶつからなくてほっとした。
それから二、三台の車とすれ違ったがどれも地元の高齢者であった。
なんとか片道一車線の広い道に出ると左右に田植えを終えたばかりの田んぼが広がっていた。
きれいに植えられた苗が規則正しく並んでいるのをみると心が明るくなってきた。前にも後ろにも車がほとんどいないので、スピードを緩めてどれほど規則正しく苗が植えられているのだろうか確認しながら走った。すると、苗は思ったよりも規則正しくは並んでいなかった。恐らく、ゴールデンウィークに普段農作業をしていない家族が来て手伝って植えたのだろう。子供達がワイワイと泥んこになって田植えをしている姿が連想されてほのぼのした気持ちになった。
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