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土石流
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午前3時、西田ひろしと妻のあきえはベッドの中で熟睡していた。ところが、ひろしは瞼の裏が急に眩しく感じて目が覚めた。すると、ベッドの上に球状の物体が淡くオレンジ色に光りながら浮遊していた。輪郭はぼやけていて色はゆらゆらと絶えず変化している。夢かと思いしばらく眺めていたが、どうやら夢ではないらしい。
「おい。起きろ!」
ひろしはあきえの体を揺さぶって起こした。
「なに?」
「なんか光ってる」
「うわっ」
「お前にも見えるか?」
二人がベッドの中からその光を眺めていると、光はゆっくりと寝室を出て階段を下って行った。
ひろしとあきえはその光を恐る恐る追いかけて行った。光は玄関まで来ると立ち止まり、ひろしとあきえが近づくのをまっているようだった。ひろしが少し近づくと光はドアをすり抜けて外に出た。ひろしは扉を恐る恐る開けてみた。
外はまだ強く雨が降っている。
光は見当たらなかった。
しかし、暗闇をよくよく見ると8年前に亡くなったひろしの祖母の姿があった。
曲がった背中を雨が濡らしている。
「お婆ちゃん!」
ひろしが急いで靴を履き、外に出ようとした時、土埃の匂いがした。
なにかおかしい。
次の瞬間、
ドカーンという大きな音とともに、家が崩れてきた。
ひろしが「あっ!」と思った時には土砂とともに一気に数メートル流されていた。
ひろしはバランスを崩して転倒し、頭をコンクリートのブロックに強く打ち付けて気を失っていた。しばらくして気がついた時、ひろしは土砂の上に倒れたまま雨に打たれていた。お気に入りのパジャマは泥だらけである。
何が起きたのか、どれくらい時間が経過したのか分からない。酷く頭の奥の方がじんじんと痛む。先程まで何してただろう。記憶が飛んでいる。そう言えば妻と玄関まで来たんだった。
「あきえ!」
急いで玄関のあった方に近づく。
家は土砂に流され倒れている。周りの地形から玄関のあった辺りを推測して泥まみれになった柱や瓦や壁を乗り越えて近づく。
あきえの姿はない。激しく動くと頭がじんじんとするが、構っていられない。もしも、あきえがこの中に埋まっていたら早く助けないと死んでしまう。懸命に土砂や瓦礫を手でかき分ける。
「あきえ、あきえ、あきえ!」
絶叫に近い声を上げながら妻を呼ぶ。
すると、かすかに
「あなた、こっち」
という声が聞こえる。
ひろしが声のする辺りを見回すと、土砂に埋もれている妻がいた。
「く、苦しい」
ひろしはすぐさま近づきあたりの土砂やら瓦礫を取り除く。胸のあたりの土砂を取り除くと
「ハアハア」とあきえは酸素を貪るように呼吸をする。
「痛いところはないか」
「大丈夫だけど、土砂が重たくて動けない」
「ちょっと待ってろ。直ぐに出してやるから」
泥が跳ねてあきえの顔に飛び散るが雨がすぐさま洗い流してくれる。目は開けられない。
近所の人が出てきて手際よく救出を手伝ってくれた。このままここに居ては危ないので直ぐにみんなで避難した。
夫婦は近所の家で手当をしてもらい、着替えを借りた。念のために救急車で病院に運ばれたが、大きな怪我もなく無事だった。これからの生活の事を考えると絶望感を感じたが、二人とも命があっただけ良かったと思える。
「そう言えばあの光はなんだったんだろう」とあきえが呟いた。
ひろしはしばらく先程の記憶を辿り、土砂に流される寸前にお婆ちゃんの姿を見た事を思い出した。
「きっと、お婆ちゃんが助けてくれたんだ」
大好きだったお婆ちゃんとの思い出がひろしの頭に次々と蘇った。
大好きなクリームパンをよく買ってくれたこと、疲れた時におんぶしてもらったこと、お婆ちゃんの作った味噌汁、笑った時のしわくちゃな顔、火傷をした時に氷で冷やしてくれたこと。
「見守っていてくれてるんだ」
抑えきれなくなった涙がひろしの両目から溢れて頬を伝って流れた。
「おい。起きろ!」
ひろしはあきえの体を揺さぶって起こした。
「なに?」
「なんか光ってる」
「うわっ」
「お前にも見えるか?」
二人がベッドの中からその光を眺めていると、光はゆっくりと寝室を出て階段を下って行った。
ひろしとあきえはその光を恐る恐る追いかけて行った。光は玄関まで来ると立ち止まり、ひろしとあきえが近づくのをまっているようだった。ひろしが少し近づくと光はドアをすり抜けて外に出た。ひろしは扉を恐る恐る開けてみた。
外はまだ強く雨が降っている。
光は見当たらなかった。
しかし、暗闇をよくよく見ると8年前に亡くなったひろしの祖母の姿があった。
曲がった背中を雨が濡らしている。
「お婆ちゃん!」
ひろしが急いで靴を履き、外に出ようとした時、土埃の匂いがした。
なにかおかしい。
次の瞬間、
ドカーンという大きな音とともに、家が崩れてきた。
ひろしが「あっ!」と思った時には土砂とともに一気に数メートル流されていた。
ひろしはバランスを崩して転倒し、頭をコンクリートのブロックに強く打ち付けて気を失っていた。しばらくして気がついた時、ひろしは土砂の上に倒れたまま雨に打たれていた。お気に入りのパジャマは泥だらけである。
何が起きたのか、どれくらい時間が経過したのか分からない。酷く頭の奥の方がじんじんと痛む。先程まで何してただろう。記憶が飛んでいる。そう言えば妻と玄関まで来たんだった。
「あきえ!」
急いで玄関のあった方に近づく。
家は土砂に流され倒れている。周りの地形から玄関のあった辺りを推測して泥まみれになった柱や瓦や壁を乗り越えて近づく。
あきえの姿はない。激しく動くと頭がじんじんとするが、構っていられない。もしも、あきえがこの中に埋まっていたら早く助けないと死んでしまう。懸命に土砂や瓦礫を手でかき分ける。
「あきえ、あきえ、あきえ!」
絶叫に近い声を上げながら妻を呼ぶ。
すると、かすかに
「あなた、こっち」
という声が聞こえる。
ひろしが声のする辺りを見回すと、土砂に埋もれている妻がいた。
「く、苦しい」
ひろしはすぐさま近づきあたりの土砂やら瓦礫を取り除く。胸のあたりの土砂を取り除くと
「ハアハア」とあきえは酸素を貪るように呼吸をする。
「痛いところはないか」
「大丈夫だけど、土砂が重たくて動けない」
「ちょっと待ってろ。直ぐに出してやるから」
泥が跳ねてあきえの顔に飛び散るが雨がすぐさま洗い流してくれる。目は開けられない。
近所の人が出てきて手際よく救出を手伝ってくれた。このままここに居ては危ないので直ぐにみんなで避難した。
夫婦は近所の家で手当をしてもらい、着替えを借りた。念のために救急車で病院に運ばれたが、大きな怪我もなく無事だった。これからの生活の事を考えると絶望感を感じたが、二人とも命があっただけ良かったと思える。
「そう言えばあの光はなんだったんだろう」とあきえが呟いた。
ひろしはしばらく先程の記憶を辿り、土砂に流される寸前にお婆ちゃんの姿を見た事を思い出した。
「きっと、お婆ちゃんが助けてくれたんだ」
大好きだったお婆ちゃんとの思い出がひろしの頭に次々と蘇った。
大好きなクリームパンをよく買ってくれたこと、疲れた時におんぶしてもらったこと、お婆ちゃんの作った味噌汁、笑った時のしわくちゃな顔、火傷をした時に氷で冷やしてくれたこと。
「見守っていてくれてるんだ」
抑えきれなくなった涙がひろしの両目から溢れて頬を伝って流れた。
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