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第一話 吉宗の隠密
鳥屋のたくらみ
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返り血を浴びた状態で人目に付くのは良くないという九鬼丸の助言に従い、日暮れまでこの百姓家で時間を潰してから、雑司ヶ谷に向かった。
宗次郎の姿を見た杢右衛門は、即刻、紀伊国屋へ使いをやり、今は杢右衛門宅の客間にて、吉兵衛と杢右衛門、そして宗次郎が顔を突き合わせている。
宗次郎が杢右衛門に問う。
「鳥見役は奴らに殺されたに違いないでしょう。追い詰めて捕らえますか」
「いや……それにしても、いきなり刀を抜いて来るとはな。隠したいことがあるにしても、乱暴な手口であるな。余程の荒くれ者か、手練れの仕業か……」
「後者だと思います。それもただのならず者ではない、剣術を正しく習った者の構えでした。とすると、人を斬りなれた剣客でしょうか。戦法から考えると忍びのような気もいたしますが」
宗次郎が相手の戦術を細かく説明すると、杢右衛門は腕を組んだまま唸った。
「なるほど……二人が挟み撃ち、一人が目くらましに跳ねる、か。うーむ」
「気になるのは、同士が殺られたことにもほとんど動揺せず背後から斬りかかってきたことです。よほどの覚悟がなきゃ、ああは動けませぬ。それなりに鍛錬された者、例えば百人組や伊賀者のような」
「うむ、忍び崩れかもしれぬな」
杢右衛門の言う『忍び崩れ』とは、中々厄介な存在であった。
戦が無くなった今の世、忍びの末裔のほとんどは百姓となったのだが、中にはその技を使って誰かに仕える者も少なくないと聞く。私的な諜報活動や刺客、用心棒。それが〈忍び崩れ〉である。
「せやったら、主がおるはずや。となると、戸山屋敷け……厄介おすなあ」
吉兵衛の言葉に、杢右衛門が天井を仰ぎ、呟く様に言った。
「尾張の殿様がかかわっているはずもなかろうと信じたいが……」
「しかし、なぜに餌差なのでしょう」
宗次郎の問いに吉兵衛が答えた。
「そうやなあ。わしが江戸に来た時すでに、鳥屋は数が限られておりましたんや。御鷹狩復古に伴い、御鷹の獲物のため、特に水鳥問屋の仕事は決まりごとが厳しゅうてな、それを守れんかった鳥屋が今年も潰されよった」
「つまり、そういう仕事を失った鳥商いの連中が、裏で取引しておると」
「宮井様のおっしゃる通りで。わしらも噂では聞いたことがありまする。そういう鳥商いが公儀の餌差やら在郷餌差から鳥を買い上げ、大名や豪商相手に水鳥や飼い鳥を献上したり、餌鳥を都合したり、あるいは鳥請負へ不正に雀を流しちゃって、金を儲けとるっちゅうわけじゃ」
「やとしたら、鳥役人が絡んでおる可能性も捨てられぬな。ますます厄介じゃ」
杢右衛門の言う『厄介』とは、内輪のことを探る難しさを指しているのだ。
「せやなあ、難儀なことになりましたな。たとえ、尾張殿と無関係やったとしても、尾張の重臣が知らぬでは済まされまい」
それを聞いて、宗次郎は九鬼丸に聞いたことを思い出す。
「その屋敷に出入りしていた中間者に聞いた話ですが、時々あの屋敷の中で怪しい鳥刺しを見かけていたとか。不正をやっているらしいから、関わるなと忠告されました」
「ということは、そういう不正の鳥屋を引き込んだ家臣がおるということやな」
「家臣の不正はお家全体の不始末。しかし、たかが鳥商いじゃ」
「いや、吉兵衛さんよ、たとえ動いた金がはした金であろうが、役人を殺してしまったからには、上様も目を瞑るわけには行きますまいよ」
杢右衛門と吉兵衛が顔を見合わせうなずき合う。
宗次郎といえば、二人の会話を聞きながら、江戸という町に蔓延っている不正がいかに多いかを思い知らされたような気がしていた。
(だから、俺なんぞが隠密に仕立てられたのだ)
そもそも宗次郎など、和歌山でいた頃も、武芸や鳥刺しの修行三昧。ほとんど世間知らずで、おまけに周りには正しい大人しかいなかった。
身分が高いであろう求馬よりも、ある意味、宗次郎の方が坊ちゃん育ちと言える。汚れ知らずなのだ。
「たかが鳥商い……ですか」宗次郎が呟く。
「そうでんな。どない頑張ったところで、今の江戸で豪商に成り上がるんは、むつかしいなぁ。せやさかい、不正言うても、動く金子など、たかが知れてるんや」
「それなのに、あれだけの刺客を雇っているのはやはり、変ですよね。まるで、初めっから役人に狙われるのは覚悟していたみたいだ」
杢右衛門が大きく肯く。
「そうじゃな。それこそ、ただの不正でないのかもしれぬ。たかが一軒の鳥屋と大名家臣の癒着というわけではなかろうよ」
吉兵衛がそっと手を伸ばし宗次郎の手の甲に触れた。
「しかし、そのような手練れ相手に、ようも無事に帰って来なすった」
触れられて、その手にまだ乾いた血の染みが残っていたことに気付いた。
「私は今後、どう動きましょうか。差し向けた刺客が殺されたとなれば、奴らにも動きがあるかと。捕らえるのであれば早い方が」
「いや待て」
宗次郎の提案を杢右衛門が遮った。
「向こうはお前をただの町人餌差だと思い込んでいる。取引の場所を変えるやもしれぬが、戸山屋敷に住まう尾張家家臣との接触は変わらぬであろう」
「つまり、泳がせると」
「そうじゃ。そもそも、なぜに尾張家なのか……を探らねばならぬ」
なぜ、尾張の家臣が鳥屋の不正に手を貸したのか――ということなのだろうか。宗次郎には、杢右衛門の思惑の半分も理解できない。
「とにかくじゃ、此度のことは上様にご報告せねばなるまい。追って、そなたにも下知があろう。大仰な仕事となりぞうじゃが、後も頼むぞ」
杢右衛門に告げられ、宗次郎は居住まいを正した。
◇
この日、宗次郎は久しぶりに宮井杢右衛門の家に泊ることとなった。
杢右衛門の気遣いだから遠慮なく泊まっていきなさいと、吉兵衛に促され、久しぶりに親子水入らずの夜を過ごしたのだった。
九年前、相賀の義父が死んでから引き取ってくれた杢右衛門ではあるが、宮井家の居心地は思いの外よかった。特に新しい父となった杢右衛門に対しては、ずいぶん昔から自分のことを知ってくれているような、なぜかそんな安心感があって、宗次郎はすぐに宮井家の家族と打ち解けていたことを思い出していた。
九鬼丸に打ち明けた過去は嘘ではなく、宗次郎は相賀の家にいた頃と変わらず、剣術をはじめとする武芸の稽古に励んでいた。意外にも血なまぐさい仕事の多い御鷹の仕事には、馴染めなかったということもある。そういう経緯もあって、杢右衛門は宗次郎に餌差の道を用意してくれたのだろう。
(けど、それもこれも、全部お役目のためやった)
当たり前のことなのに、うかつにも物悲しくなってしまった。
雑司ヶ谷にある小栗組の御鷹部屋御用屋敷は、年の初めに新築したばかりで、家のそこかしこから、まだ真新しい木の匂いが漂ってくる。
その少しツンとするような生っぽい木の匂いを嗅ぎながら目を閉じた。木の香が血の臭いを忘れさせてくれるはずだと言い聞かせるように、何度も鼻孔を膨らませ、スンスンと鼻で息を吸う。
スンスンという音は、まるで宗次郎のすすり泣きのように、部屋の中に充満していった。
宗次郎の姿を見た杢右衛門は、即刻、紀伊国屋へ使いをやり、今は杢右衛門宅の客間にて、吉兵衛と杢右衛門、そして宗次郎が顔を突き合わせている。
宗次郎が杢右衛門に問う。
「鳥見役は奴らに殺されたに違いないでしょう。追い詰めて捕らえますか」
「いや……それにしても、いきなり刀を抜いて来るとはな。隠したいことがあるにしても、乱暴な手口であるな。余程の荒くれ者か、手練れの仕業か……」
「後者だと思います。それもただのならず者ではない、剣術を正しく習った者の構えでした。とすると、人を斬りなれた剣客でしょうか。戦法から考えると忍びのような気もいたしますが」
宗次郎が相手の戦術を細かく説明すると、杢右衛門は腕を組んだまま唸った。
「なるほど……二人が挟み撃ち、一人が目くらましに跳ねる、か。うーむ」
「気になるのは、同士が殺られたことにもほとんど動揺せず背後から斬りかかってきたことです。よほどの覚悟がなきゃ、ああは動けませぬ。それなりに鍛錬された者、例えば百人組や伊賀者のような」
「うむ、忍び崩れかもしれぬな」
杢右衛門の言う『忍び崩れ』とは、中々厄介な存在であった。
戦が無くなった今の世、忍びの末裔のほとんどは百姓となったのだが、中にはその技を使って誰かに仕える者も少なくないと聞く。私的な諜報活動や刺客、用心棒。それが〈忍び崩れ〉である。
「せやったら、主がおるはずや。となると、戸山屋敷け……厄介おすなあ」
吉兵衛の言葉に、杢右衛門が天井を仰ぎ、呟く様に言った。
「尾張の殿様がかかわっているはずもなかろうと信じたいが……」
「しかし、なぜに餌差なのでしょう」
宗次郎の問いに吉兵衛が答えた。
「そうやなあ。わしが江戸に来た時すでに、鳥屋は数が限られておりましたんや。御鷹狩復古に伴い、御鷹の獲物のため、特に水鳥問屋の仕事は決まりごとが厳しゅうてな、それを守れんかった鳥屋が今年も潰されよった」
「つまり、そういう仕事を失った鳥商いの連中が、裏で取引しておると」
「宮井様のおっしゃる通りで。わしらも噂では聞いたことがありまする。そういう鳥商いが公儀の餌差やら在郷餌差から鳥を買い上げ、大名や豪商相手に水鳥や飼い鳥を献上したり、餌鳥を都合したり、あるいは鳥請負へ不正に雀を流しちゃって、金を儲けとるっちゅうわけじゃ」
「やとしたら、鳥役人が絡んでおる可能性も捨てられぬな。ますます厄介じゃ」
杢右衛門の言う『厄介』とは、内輪のことを探る難しさを指しているのだ。
「せやなあ、難儀なことになりましたな。たとえ、尾張殿と無関係やったとしても、尾張の重臣が知らぬでは済まされまい」
それを聞いて、宗次郎は九鬼丸に聞いたことを思い出す。
「その屋敷に出入りしていた中間者に聞いた話ですが、時々あの屋敷の中で怪しい鳥刺しを見かけていたとか。不正をやっているらしいから、関わるなと忠告されました」
「ということは、そういう不正の鳥屋を引き込んだ家臣がおるということやな」
「家臣の不正はお家全体の不始末。しかし、たかが鳥商いじゃ」
「いや、吉兵衛さんよ、たとえ動いた金がはした金であろうが、役人を殺してしまったからには、上様も目を瞑るわけには行きますまいよ」
杢右衛門と吉兵衛が顔を見合わせうなずき合う。
宗次郎といえば、二人の会話を聞きながら、江戸という町に蔓延っている不正がいかに多いかを思い知らされたような気がしていた。
(だから、俺なんぞが隠密に仕立てられたのだ)
そもそも宗次郎など、和歌山でいた頃も、武芸や鳥刺しの修行三昧。ほとんど世間知らずで、おまけに周りには正しい大人しかいなかった。
身分が高いであろう求馬よりも、ある意味、宗次郎の方が坊ちゃん育ちと言える。汚れ知らずなのだ。
「たかが鳥商い……ですか」宗次郎が呟く。
「そうでんな。どない頑張ったところで、今の江戸で豪商に成り上がるんは、むつかしいなぁ。せやさかい、不正言うても、動く金子など、たかが知れてるんや」
「それなのに、あれだけの刺客を雇っているのはやはり、変ですよね。まるで、初めっから役人に狙われるのは覚悟していたみたいだ」
杢右衛門が大きく肯く。
「そうじゃな。それこそ、ただの不正でないのかもしれぬ。たかが一軒の鳥屋と大名家臣の癒着というわけではなかろうよ」
吉兵衛がそっと手を伸ばし宗次郎の手の甲に触れた。
「しかし、そのような手練れ相手に、ようも無事に帰って来なすった」
触れられて、その手にまだ乾いた血の染みが残っていたことに気付いた。
「私は今後、どう動きましょうか。差し向けた刺客が殺されたとなれば、奴らにも動きがあるかと。捕らえるのであれば早い方が」
「いや待て」
宗次郎の提案を杢右衛門が遮った。
「向こうはお前をただの町人餌差だと思い込んでいる。取引の場所を変えるやもしれぬが、戸山屋敷に住まう尾張家家臣との接触は変わらぬであろう」
「つまり、泳がせると」
「そうじゃ。そもそも、なぜに尾張家なのか……を探らねばならぬ」
なぜ、尾張の家臣が鳥屋の不正に手を貸したのか――ということなのだろうか。宗次郎には、杢右衛門の思惑の半分も理解できない。
「とにかくじゃ、此度のことは上様にご報告せねばなるまい。追って、そなたにも下知があろう。大仰な仕事となりぞうじゃが、後も頼むぞ」
杢右衛門に告げられ、宗次郎は居住まいを正した。
◇
この日、宗次郎は久しぶりに宮井杢右衛門の家に泊ることとなった。
杢右衛門の気遣いだから遠慮なく泊まっていきなさいと、吉兵衛に促され、久しぶりに親子水入らずの夜を過ごしたのだった。
九年前、相賀の義父が死んでから引き取ってくれた杢右衛門ではあるが、宮井家の居心地は思いの外よかった。特に新しい父となった杢右衛門に対しては、ずいぶん昔から自分のことを知ってくれているような、なぜかそんな安心感があって、宗次郎はすぐに宮井家の家族と打ち解けていたことを思い出していた。
九鬼丸に打ち明けた過去は嘘ではなく、宗次郎は相賀の家にいた頃と変わらず、剣術をはじめとする武芸の稽古に励んでいた。意外にも血なまぐさい仕事の多い御鷹の仕事には、馴染めなかったということもある。そういう経緯もあって、杢右衛門は宗次郎に餌差の道を用意してくれたのだろう。
(けど、それもこれも、全部お役目のためやった)
当たり前のことなのに、うかつにも物悲しくなってしまった。
雑司ヶ谷にある小栗組の御鷹部屋御用屋敷は、年の初めに新築したばかりで、家のそこかしこから、まだ真新しい木の匂いが漂ってくる。
その少しツンとするような生っぽい木の匂いを嗅ぎながら目を閉じた。木の香が血の臭いを忘れさせてくれるはずだと言い聞かせるように、何度も鼻孔を膨らませ、スンスンと鼻で息を吸う。
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