満月

二見

文字の大きさ
1 / 9

リストラと旅立ち

しおりを挟む
 秋月圭一は、当てのない旅を続けている。
 旅に出た切っ掛けは、会社のリストラだった。不況の現代で、利益を保ち続けることは容易ではない。圭一の会社も、例には漏れなかった。会社によって行われた大規模リストラ。まさか、一流企業と呼ばれていた自分の会社で行われるとは思わなかった。入社して間もないので経験もなく、大した成績を上げられていない圭一は、リストラの最優先候補だった。

 会社のリストラに遭ってからは、当然のことだが圭一の食い扶持は無くなった。幸い大した浪費をせずに貯金をしていたので、節約生活をすれば半年ほどは持つ財力はあった。しかし、突然のリストラに、圭一は自暴自棄になっていた。気を紛らわすために、節約生活はしないで一か月ほど自前のバイクで旅をすることにしたのだ。バイクでまだ見ぬ地に行ってみれば、新たな発見や出会いがあるかもしれない。今のモヤモヤとした気分を紛らわすことができるかもしれない。圭一のこの考えは、現実逃避といっても過言ではなかった。今だけは厳しい現実から逃げたい。その思いが、圭一を当てのない旅へと誘ったのだった。

 当てのない旅といっても、漠然とした目的地なら決めている。圭一は山や海などの景色が好きなので、そういった自然に溢れた場所を目指していた。今回目指している場所は、ネットで書かれていた穴場スポットである湖だ。湖は山奥にあり、湖の近くにはペンションがあって、そこから眺める湖の綺麗さといったら、言葉が出ないという。あまり目立たない場所にあるので、人々にはほとんど知れ渡っていないらしい。前から行ってみたかったのだが、今回の旅を切っ掛けに行ってみることにしたのだ。

 自宅からバイクで約五時間走り、ようやく目的地の湖についた。もうすっかり日が暮れてしまった。目的地の湖の名前は湖月という。湖の名前は最後に湖の漢字が来るのが一般的で、湖月のように名前の最初に湖がつくのは非常に珍しく、日本の湖の中では唯一の存在らしい。ならば有名になるのではないかと誰もが思うはずだが、一般的に知れ渡っている湖の名は、日本最大と言われている琵琶湖や、シジミで有名な宍道湖くらいだろう。一般人は湖の名前にそれほど関心はないのだ。湖に行くくらいなら海に行く、そう考えるのが普通だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...