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軽音部殺人の考察
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現場についた三人は、改めて調査を開始した。
しかし、死体はすでに片づけられている。証拠になりそうな物品に関しては押収されたが、それ以外は当時のまま保全されている。
「それで、ここで何を調査するんだい?」
隼人が式に尋ねる。
「調査というか、確認がしたかったんです。遺体の写真ってまだありますか?」
「ああ、これだ」
隼人から写真を受け取る。
「被害者は頭部をドラムに押しつぶされていたんですよね」
「その通り」
「それで、遺体には他に殴られたような跡はなかったと」
「それだけではなく、睡眠薬や毒物などが使われた形跡もなかった」
隼人は遺体の状況を細かく説明した。
「それなら、なんで遺体が頭部を押しつぶされているのか気になりませんか?」
「え?」
「だって、ドラムで頭部を潰すには、被害者を床に倒す必要があるんですよ。でも殴って気絶させたわけでも、睡眠薬で眠らせたわけでもない。もちろんドラムを持ち上げて上から潰したというのも考えづらい」
「そういえば、そうですね」
言われてみれば当然のことに、榊と隼人は気づかなかった。
「じゃあ犯人はどうやって被害者の頭をドラムで押し潰したんだ?」
「まあ、その方法についてはそんなに難しくないはずです。被害者を床に倒すことさえできればいい。それだけなら、不意打ちで後ろからタックルでもすれば可能でしょう」
「なるほど。つまりこういうことですね」
榊は自分の推理を話し始める。
「まず犯人は何らかの方法で井田さんをこの部室まで呼び寄せる。部室に来た井田さんは、中に入るためにドアを開けた。犯人はその様子を近くで見ていて、井田さんがドアを開けた瞬間に後ろからタックルをする。井田さんはタックルされた衝撃で床に倒れ、気絶する。その隙に犯人はドラムを井田さんの頭まで運び、それを横に倒した……」
「なるほど、そうだったのか」
「俺も榊さんの推理に概ね同意です。でも、いくつか相違点がある」
今度は式が自分の推理を話し始めた。
「タックルをするところまでは一緒だ。その後なんだけど、俺はタックルされただけで井田さんが気絶したとは思えない。仮に気絶したとしても、それは運がよかっただけだと思う。犯人は事前に準備をしていただろうから、そんな偶然に頼った犯行をするとは思えない」
「では、式くんはどう考えていますか?」
「ドラムの下に挟まっていた書籍類を使ったんだろう」
「あれか。あれをどういう風に?」
「そうですね。実践しながら説明しましょうか」
式は部室にあったいくつかの書籍を取り出し、準備した。
本を三冊ほど横に積み重ね、そこに一冊の本を斜めに立てかけた。
「この三つ積み重なった本がドラムの下に挟まっていた本で、斜めに立てかけてあるのがドラムだとしますね。犯人はまずこの積み重なっている本に紐を巻きつける。そしてドアの下の隙間に通して外側から引っ張れるようにしておく。それで榊さんの推理通りに井田さんにタックルした後、紐を強く引っ張って積み重なっている本をどかす。こうすると、斜めに立てかけていた本が倒れるでしょ。これがドラムだとすると、本という足場を失ったドラムは、バランスを崩してそのまま倒れていきます。もちろん井田さんの頭がある方向に」
「な、なるほど」
「これなら、わざわざ犯行時に重いドラムを動かす必要もない。犯行時にドラムを動かして井田さんの頭に倒すのは、人によっては時間がかかるかもしれない。その間に気絶していた井田さんが目を覚ますかもしれないしね」
「確かに、こっちの方がずっと簡単だ。それで式くん、犯人については見当がついているのかい?」
式の推理に関心した隼人が尋ねる。
「はい。俺の頭の中には浮かびあがっています」
「なら、後は証拠を見つけるだけか」
「証拠については、徹底的に調べればなんとかなりそうです」
式は証拠となりうるものについて話した。
「なるほど。それなら僕の方で確認しておこう。じゃあ次は容疑者たちの自宅に行ってみるか」
「式くん、少しいいですか?」
突然榊が話しかけてくる。
「どうしたの」
「吉野先輩の殺人に置かれていたあの遺書について私は気になっているのですが、あれは何時書かれたものなのでしょうか」
「あの遺書か。俺の推理が正しいとするなら、あれは今日この学校で書かれたものだと思う」
「それなら、私もやるべきことがあります」
榊はその『やるべきこと』について説明した。
「……なるほど、それは有力な証拠になるかもしれない」
「ええ。ですから、私はそれを確認しなければならないので、一旦失礼しますね」
そう言って榊は立ち去った。
「せっちゃんが別行動をするなら、7人の自宅へは僕だけで行って、君は取り調べの録画でも見ておくかい?」
「……そうですね、お願いしていいですか?」
「ああ、もちろんだ」
隼人は快諾した。
「それなら、三つ調べておいてほしいことがあるんです」
「三つ?」
「はい……」
式は調べておいてほしい三つのことについて話した。
「……わかった。調べておこう」
「お願いします」
頷き、隼人も立ち去った。
「よし、あともう少しだ」
式も急いで取り調べを確認しに向かった。
しかし、死体はすでに片づけられている。証拠になりそうな物品に関しては押収されたが、それ以外は当時のまま保全されている。
「それで、ここで何を調査するんだい?」
隼人が式に尋ねる。
「調査というか、確認がしたかったんです。遺体の写真ってまだありますか?」
「ああ、これだ」
隼人から写真を受け取る。
「被害者は頭部をドラムに押しつぶされていたんですよね」
「その通り」
「それで、遺体には他に殴られたような跡はなかったと」
「それだけではなく、睡眠薬や毒物などが使われた形跡もなかった」
隼人は遺体の状況を細かく説明した。
「それなら、なんで遺体が頭部を押しつぶされているのか気になりませんか?」
「え?」
「だって、ドラムで頭部を潰すには、被害者を床に倒す必要があるんですよ。でも殴って気絶させたわけでも、睡眠薬で眠らせたわけでもない。もちろんドラムを持ち上げて上から潰したというのも考えづらい」
「そういえば、そうですね」
言われてみれば当然のことに、榊と隼人は気づかなかった。
「じゃあ犯人はどうやって被害者の頭をドラムで押し潰したんだ?」
「まあ、その方法についてはそんなに難しくないはずです。被害者を床に倒すことさえできればいい。それだけなら、不意打ちで後ろからタックルでもすれば可能でしょう」
「なるほど。つまりこういうことですね」
榊は自分の推理を話し始める。
「まず犯人は何らかの方法で井田さんをこの部室まで呼び寄せる。部室に来た井田さんは、中に入るためにドアを開けた。犯人はその様子を近くで見ていて、井田さんがドアを開けた瞬間に後ろからタックルをする。井田さんはタックルされた衝撃で床に倒れ、気絶する。その隙に犯人はドラムを井田さんの頭まで運び、それを横に倒した……」
「なるほど、そうだったのか」
「俺も榊さんの推理に概ね同意です。でも、いくつか相違点がある」
今度は式が自分の推理を話し始めた。
「タックルをするところまでは一緒だ。その後なんだけど、俺はタックルされただけで井田さんが気絶したとは思えない。仮に気絶したとしても、それは運がよかっただけだと思う。犯人は事前に準備をしていただろうから、そんな偶然に頼った犯行をするとは思えない」
「では、式くんはどう考えていますか?」
「ドラムの下に挟まっていた書籍類を使ったんだろう」
「あれか。あれをどういう風に?」
「そうですね。実践しながら説明しましょうか」
式は部室にあったいくつかの書籍を取り出し、準備した。
本を三冊ほど横に積み重ね、そこに一冊の本を斜めに立てかけた。
「この三つ積み重なった本がドラムの下に挟まっていた本で、斜めに立てかけてあるのがドラムだとしますね。犯人はまずこの積み重なっている本に紐を巻きつける。そしてドアの下の隙間に通して外側から引っ張れるようにしておく。それで榊さんの推理通りに井田さんにタックルした後、紐を強く引っ張って積み重なっている本をどかす。こうすると、斜めに立てかけていた本が倒れるでしょ。これがドラムだとすると、本という足場を失ったドラムは、バランスを崩してそのまま倒れていきます。もちろん井田さんの頭がある方向に」
「な、なるほど」
「これなら、わざわざ犯行時に重いドラムを動かす必要もない。犯行時にドラムを動かして井田さんの頭に倒すのは、人によっては時間がかかるかもしれない。その間に気絶していた井田さんが目を覚ますかもしれないしね」
「確かに、こっちの方がずっと簡単だ。それで式くん、犯人については見当がついているのかい?」
式の推理に関心した隼人が尋ねる。
「はい。俺の頭の中には浮かびあがっています」
「なら、後は証拠を見つけるだけか」
「証拠については、徹底的に調べればなんとかなりそうです」
式は証拠となりうるものについて話した。
「なるほど。それなら僕の方で確認しておこう。じゃあ次は容疑者たちの自宅に行ってみるか」
「式くん、少しいいですか?」
突然榊が話しかけてくる。
「どうしたの」
「吉野先輩の殺人に置かれていたあの遺書について私は気になっているのですが、あれは何時書かれたものなのでしょうか」
「あの遺書か。俺の推理が正しいとするなら、あれは今日この学校で書かれたものだと思う」
「それなら、私もやるべきことがあります」
榊はその『やるべきこと』について説明した。
「……なるほど、それは有力な証拠になるかもしれない」
「ええ。ですから、私はそれを確認しなければならないので、一旦失礼しますね」
そう言って榊は立ち去った。
「せっちゃんが別行動をするなら、7人の自宅へは僕だけで行って、君は取り調べの録画でも見ておくかい?」
「……そうですね、お願いしていいですか?」
「ああ、もちろんだ」
隼人は快諾した。
「それなら、三つ調べておいてほしいことがあるんです」
「三つ?」
「はい……」
式は調べておいてほしい三つのことについて話した。
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「お願いします」
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