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ご神木
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私たちが住む街の近くの山奥にある、とある神社。
ここにはご神木と呼ばれる木があります。
古くから私たちの街を守ってきたこのご神木は、今でも山奥から私たちを見守っていてくれます。
この木は名前の通り、神様の力が宿っているといわれており、地元では結構有名です。
私は小さい頃から、兄と一緒に山奥の神社に訪れてはこのご神木に登って遊んでいました。今にして思えばすごい罰当たりなことをしていたな、と思います。
でも、神主さんが言うには私たち兄妹は小さい頃から遊んでいるせいか、神様のご加護を受けているとのことです。
本当なのかどうかはわかりませんが、そういわれるのは嬉しいですね。
だから私たちは、特別なことがあるとご神木のもとに向かい、そこでお祈りをしたり、小さい頃のように木に登ったりしています。
ちなみにこの木に登ることを許されているのはなんと私たちだけなのです。他の人は登ろうとしても何故か登れないそうです。神様の不思議な力がそれを妨害しているのでしょうか。
そして今日も、私たちはこのご神木のもとに来ていました。
「神様、今日も来ました」
私はご神木に挨拶をします。返事があるわけではありませんが、一応礼儀としてやっておきます。
「よし、じゃあ登ろう」
挨拶を終えると、兄はすぐに木に登り始めました。相変わらずの素早い身のこなしです。
この木には私も登ることがあるのですが、あまり木登りは得意ではないので、手際よく登ることができません。なのであまり登らないようにしているのです。
だけど今日は登っちゃいます。何しろ今日は大切な日だからです。
「お兄ちゃん、私たち上手くいくのかな」
「上手くいくさ。何せ俺たちは神様に祝福されているんだからな」
木に登り、その上から街の風景を見ていた私たちはぎゅっと手を握ります。こうすると、とても安心します。
「この記念すべき大切な日に、昔からお世話になっている神様の祝福を賜りたいんだ」
「……そうだね」
私たちはそこでお祈りを捧げます。
どうか、私たちのこの時間が永遠に続きますように、と。
「……よし、じゃあ行こう。明日から忙しくなるぞ」
「うん!」
これからは新しい生活が始まる。やることはたくさんある。私たちは一歩ずつ、前に進まなきゃなんだ。
私がゆっくりと木から降りようとしたその時、私の鈍くささが発動したのか、足をかける位置を間違えてしまい、足を滑らせてしまいました。
「あっ……」
その瞬間、私の体は宙に放りだされました。
このまま落下してしまうのかな、と思っていましたが、兄が手を差し伸べて私の手首を掴んでくれました。
「ぐっ……」
しかし、下に落ちようとする力を兄の片手一つで支えるのは不可能でした。そのまま兄は木を掴んでいた手を離してしまい、私と同じように宙に放りだされてしまいます。
「くそっ、せめてお前だけは!」
そういうと兄は空中で私を抱き寄せ、自分の体を下にしました。その光景が、私が最期に記憶していた出来事でした。
ここにはご神木と呼ばれる木があります。
古くから私たちの街を守ってきたこのご神木は、今でも山奥から私たちを見守っていてくれます。
この木は名前の通り、神様の力が宿っているといわれており、地元では結構有名です。
私は小さい頃から、兄と一緒に山奥の神社に訪れてはこのご神木に登って遊んでいました。今にして思えばすごい罰当たりなことをしていたな、と思います。
でも、神主さんが言うには私たち兄妹は小さい頃から遊んでいるせいか、神様のご加護を受けているとのことです。
本当なのかどうかはわかりませんが、そういわれるのは嬉しいですね。
だから私たちは、特別なことがあるとご神木のもとに向かい、そこでお祈りをしたり、小さい頃のように木に登ったりしています。
ちなみにこの木に登ることを許されているのはなんと私たちだけなのです。他の人は登ろうとしても何故か登れないそうです。神様の不思議な力がそれを妨害しているのでしょうか。
そして今日も、私たちはこのご神木のもとに来ていました。
「神様、今日も来ました」
私はご神木に挨拶をします。返事があるわけではありませんが、一応礼儀としてやっておきます。
「よし、じゃあ登ろう」
挨拶を終えると、兄はすぐに木に登り始めました。相変わらずの素早い身のこなしです。
この木には私も登ることがあるのですが、あまり木登りは得意ではないので、手際よく登ることができません。なのであまり登らないようにしているのです。
だけど今日は登っちゃいます。何しろ今日は大切な日だからです。
「お兄ちゃん、私たち上手くいくのかな」
「上手くいくさ。何せ俺たちは神様に祝福されているんだからな」
木に登り、その上から街の風景を見ていた私たちはぎゅっと手を握ります。こうすると、とても安心します。
「この記念すべき大切な日に、昔からお世話になっている神様の祝福を賜りたいんだ」
「……そうだね」
私たちはそこでお祈りを捧げます。
どうか、私たちのこの時間が永遠に続きますように、と。
「……よし、じゃあ行こう。明日から忙しくなるぞ」
「うん!」
これからは新しい生活が始まる。やることはたくさんある。私たちは一歩ずつ、前に進まなきゃなんだ。
私がゆっくりと木から降りようとしたその時、私の鈍くささが発動したのか、足をかける位置を間違えてしまい、足を滑らせてしまいました。
「あっ……」
その瞬間、私の体は宙に放りだされました。
このまま落下してしまうのかな、と思っていましたが、兄が手を差し伸べて私の手首を掴んでくれました。
「ぐっ……」
しかし、下に落ちようとする力を兄の片手一つで支えるのは不可能でした。そのまま兄は木を掴んでいた手を離してしまい、私と同じように宙に放りだされてしまいます。
「くそっ、せめてお前だけは!」
そういうと兄は空中で私を抱き寄せ、自分の体を下にしました。その光景が、私が最期に記憶していた出来事でした。
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