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第二章 キャバクラの客
自立
しおりを挟む「でも、良いよなー。時給5000円だろ。俺らなんて時給950円とか、1000円とかでバイトしてるっていうのに。」
幼馴染は口を尖らせながら言った。
「まぁ、そうだね。大変なんだろうけど。」
僕がそう返すと、幼馴染は続けて言った。
「でも、本当に良いの?キャバクラなんてやらせて。浮気の前科あるのに。」
僕は迷わず答えた。
「そこは信じるしかないよ。束縛したくもないからね。」
「お前は寛大だな。」
幼馴染は納得していない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。
それから彼女は、どんどん綺麗になっていった。
メイクは派手になり、髪は綺麗な栗色に染めていた。
ピアスやネックレス。時計に指輪。
身につけるものは、ハイブランドのものばかりになっていった。
それでも彼女は、"3つの約束"は1日も破らず守ってくれた。
休日は、今まで通りデートしてくれたし、石原さんのことも吹っ切れたようだった。
そして半年が経った頃、彼女が実家を出ることになった。
彼女の新居は、ロフト付きの1Kで、2階建てアパートの203号室だった。
「ついに初一人暮らしだぜ。洗濯機が外置きってところだけ残念だけど。実家の猫も一緒に住めるし、まぁいいでしょ!」
彼女は楽しそうだった。
浮かれている彼女を見て、僕も微笑ましく思った。
そして彼女は、僕に合鍵をくれた。
「なくさないでね。」
「うん。」
僕は、なくなさないようにすぐに合鍵をキーホルダーに付けた。
それから、週の半分は彼女の家に遊びに行った。
幼馴染と3人で遊ぶこともあった。
そして、再び年末がやってきた。
高校時代の友人から、"一緒に年越しをしよう。"と連絡があった。
それから、プール旅行の数日後に彼女と別れたこと。
今は新しい彼女がいること。
友人は近況を話してくれた。
「砂浜で一緒に初日の出を見よう!」
こうして、みんなで初日の出を見に行くことになった。
友人とは現地で合流することになり、僕ら3人は幼馴染の車で砂浜に向かった。
砂浜までは、車で3時間近くかかるため、幼馴染と交代しながら運転をした。
車内のテレビでは紅白歌合戦が流れていて、年末を感じさせた。
「あれ、海じゃない?」
彼女が窓の外を指差しながら言った。
「暗くてよく分かんないなー。」
僕は助手席から外を見たがよく見えなかった。
「ナビだと、もうすぐっぽいけどね。」
幼馴染はハンドルを握りながら言った。
それから少しして駐車場についた僕らは、すぐに車から降りた。
「ずっと座ってるのも疲れるなー。」
そう言いながら腰を反らすと、僕らは目を奪われた。
見上げた夜空には満天の星空が広がっていた。
「うわー!綺麗!」
彼女はそう言い、目を輝かせていた。
「すごい。こんな星空初めて見た。」
幼馴染はそう言いながら、携帯を空に向けていた。
「こんなたくさんの星、プラネタリウムでしか見たことないよ。」
僕は幻想的な夜空から目を離せなかった。
それから、僕らは友人と合流した。
「久しぶり!」
友人は格好がお洒落になっていて、少し雰囲気が変わっていた。
「それにしても、めっちゃ寒いな。」
基本は氷点下だと天気予報で言っていた。
僕らはとても長くはいれなかった。
結局、"それぞれの車で待機しよう。"ということになり、それぞれの車に戻った。
僕らのすぐ近くに友人の車も止まっていたが、友人と彼女が車内でイチャイチャしているのが目に入ってきた。
「あいつら、すげーいちゃついてないか。」
幼馴染が堪らずそう言った。
「うん。あんまり見ないようにしよう。」
僕は苦笑しながらそう言って煙草に火をつけた。
それから、僕らは仮眠をとることにした。
気付けば紅白歌合戦は終わっていた。
「もう少しで年越しだよ。」
僕がそう言うと、幼馴染はすぐに起きた。
「来年もよろしく。」
「こちらこそ。」
それから彼女も身体を起こして言った。
「2人だけでずるい。私も混ぜろ。」
そして、僕らは新しい年を迎えた。
「でも、日の出までまだまだ時間あるね。」
幼馴染が欠伸をしながら言うと、彼女はすぐに口を開いた。
「うん。寝よう。」
それから、6時間くらいが経ち、
ついに日の出の時間になった。
僕らは外に出て海へと近づいた。
友人達も車から出てきていた。
ゆっくりと水面から陽が昇ってくるのが見えた。
歓声と共にその場にいた人達が一斉に写真を撮り始めた。
「2ショット撮ってあげるよ。ほら、並んで。」
幼馴染はそう言うと、僕らに携帯を向けた。
「はい。チーズ!」
こうして、僕らの新しい1年が始まったのである。
それからも幼馴染は変わらず、バイト生活を続けていた。
僕は、月のほとんどを彼女の家で過ごすようになっていた。
俗に言う、"転がり込む。"というやつだ。
世間ではスマホが流行し始め、僕らも"ガラケー"から"スマホ"に乗り換えていた。
彼女はキャバ嬢として頭角を表し、気付けばお店のナンバー2にまでのし上がっていた。
そんなある日、初日の出から3ヶ月が経った頃、これまでよりも彼女の帰りが遅くなることが増えた。
彼女は、"お店が終わった後、他のキャストの子達とご飯に行ってる。"と言っていたが、朝になっても彼女が帰ってこないことは不安に思った。
その日も彼女の帰りを待っていると、朝7時をまわった頃、家のドアが開き、彼女が帰ってきた。
「ただいま~。」
帰ってきた彼女はとても酒臭かった。
「え、飲んできたの?」
まだ未成年だった彼女は、お客さんにはアルコールと偽り、ソフトドリンクのはずだった。
「うーん。もう寝る。」
そう言うと、彼女はそのままベッドに横になり寝てしまった。
僕はモヤモヤしたが、"今度、時間を作って話そう。"とその場は諦め、その日のバイトへと向かった。
僕がバイトを終え、彼女の家へ帰ると、彼女はまだ寝ていた。
僕がシャワーを浴び終わっても、彼女が起きる気配は全くなかった。
タオルで髪を乾かしながら、ふと彼女のスマホに目をやると、LINEの通知が見えた。
"昨日はありがとう❤️すごく気持ちよかったよ。早く会いたいよ。"
まただ。あの日と同じだ。
僕の体の全身から血の気が引いていった。
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